国会質問

質問日:2024年 5月 29日 第213国会 国土交通委員会

住宅セーフティネット法改正案

住居確保支援さらに

改正法成立 高橋氏が提起

衆院国交委

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=5月29日、衆院国交委

 「住宅確保要配慮者」の円滑な入居を支援する改正住宅セーフティネット法(参院先議)が、5月30日の衆院本会議で日本共産党、自民、公明、立民、維新などの賛成多数で可決・成立しました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は同29日の衆院国土交通委員会で、高齢単身世帯の44%が入居に何らかの条件をつけられている背景には、孤独死への不安や保証人がいないなどの実態があり、居住支援法人への「残置物処理」業務の追加と入居者死亡で契約が終了する「終身建物賃貸借」はこの不安に応えるものだと評価しました。

 改正法により、要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国が新たに認定します。高橋氏は、認定要件は個人の連帯保証人を求めず、居住支援法人などが受け皿となると評価する一方、「居住サポート住宅」の生活保護受給者の家賃は原則代理納付となるとして、住宅扶助費よりも家賃が高い場合はどうなるかとただしました。

 厚労省の斎須朋之審議官は「生活保護法の趣旨に照らして適切ではなく、代理納付を適用することになじまない」と答弁。高橋氏は「そもそも住宅扶助費が安すぎる」と批判しました。

 高橋氏は要配慮者限定のセーフティネット「専用住宅」の登録が6000戸未満にすぎないと指摘。斉藤鉄夫国交相は「要配慮者の入居機会が拡大している」と弁解。高橋氏は家賃が5万円未満の住宅は2割ほどしかないとして、家賃低減策の強化を求めました。

 高橋氏は、居住支援法人の半数が赤字なのは「家賃が安い住宅がなくマッチングできないからだ」と指摘。住宅セーフティネットの一翼を担うUR賃貸住宅に安心して住み続けるための支援も必要だと強調しました。

(「しんぶん赤旗」2024年6月4日付)

 

ー議事録ー
高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 住生活基本法第六条に基づき、二〇〇七年、住宅セーフティーネット法が成立しました。
 国交省が全国の不動産関係団体と会員事業者に行ったアンケート調査によれば、高齢者単身世帯の入居制限を行っている、五%、条件付で制限している、三九%、合わせれば四四%に上ります。その理由の第一が、孤独死などの不安、八二%、第二位は、保証人がいない、保証会社の審査に通らない、四三%と、厳しい実態が浮き彫りになっています。必要な支援策として、見守りや生活支援、死亡時の残存家財の処理が六割以上になっていたことからも、そこに応えたのが本法案だと受け止めています。
 まず、住宅確保要配慮者居住支援法人の業務規程に残置物処理等業務規程が追加されました。これは、貸借人が入居者死亡時の残置物処理に関する契約を結ぶわけですが、終身建物賃貸借契約とセットで効果を生むという理解でよろしいでしょうか。
○石坂政府参考人 今回の法案では、居住支援法人の業務に入居者が亡くなった後の残置物処理を追加し、令和三年に国交省と法務省が協力して策定した、残置物処理等に関するモデル契約条項を活用した円滑な残置物処理を推進することとしています。
 入居者がお亡くなりになった後も賃貸借契約が有効である場合には、入居者の相続人がその物件を使用、収益することができるため、家財等を置き続けることができ、また、第三者は住宅内に立ち入ることができないこととなってしまいます。
 このため、モデル契約条項では、残置物処理に関する条項に加えて、死亡時の賃貸借契約の解除を委任する条項も併せて示しているところでございます。
 なお、終身建物賃貸借を利用する場合は、入居者がお亡くなりになった際に賃貸借契約が終了することになります。したがいまして、モデル契約条項の利用促進に加え、御指摘のような終身建物賃貸借の利用を促進することで、残置物の円滑な処理、進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 最初の読み方、また間違えました。賃借人の話でした。
 賃貸借契約は死亡時で解除という終身建物賃貸借契約は、その後の面倒な相続問題がないということで、両者の安心につながるのではないかと思います。
 また同時に、残置物処理は、生前、賃借人がこれはどこどこへやってほしいなどというように指定した残置物以外は処分するんだけれども、換金できる残置物があった場合の扱いが、結局、相続人を探すとなれば、居住支援法人にとっても大きな負担になると思いますが、どのようにされますか。
○石坂政府参考人 まず、残置物の処理をするに当たりまして、賃貸住宅物件内にあった金銭や残置物を換価して得た金銭でございますけれども、残置物処理等の費用に充当した上で、残額を入居者の相続人に返還することになりますが、相続人の存否や所在が明らかでない場合には供託していただくことになると考えています。
 また、御指摘のように、相続人を探すかどうかという点についてでございますけれども、モデル契約条項を活用する場合は、賃借人から残置物処理等の事務を委任した居住支援法人には、賃借人死亡後、その事務を実行するに当たり、戸籍調査のような相続人の積極的な探索までは求められるものではないというふうに考えているところでございます。
 したがいまして、居住支援法人にとって相続人の探索による過度な負担は生じないものと考えてございますが、国土交通省といたしましては、モデル契約条項の正確な理解を広げるということで、周知をしっかり図ってまいりたいと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 過度な負担にはならないようだということが分かりましたけれども、万が一、非常に大きな、換金できる大きな財産が見つかってしまったというようなときに混乱が生じないように、しっかりと事前の取決めをしておくことが大事なのではないか。それでまた、相続人ですと突然名のり出てくるというようなことがあっては非常に困るなということがあって、それは大震災の後などでも大変自治体の皆さんが苦労した問題ですので、そこは整理していただきたいなと思っております。
 そこで、居住支援法人の業務規程には債務保証業務規程というのもあるわけですけれども、家賃債務保証業者を今回認定制度としてつくった、それとの関係はどうなるでしょうか。
○石坂政府参考人 御指摘の債務保証業務規程につきましては、都道府県知事の指定を受けた居住支援法人が適正に家賃債務保証業務を行うことを担保するものであり、都道府県知事は、求償権の行使方法が適正であるかなどを確認し、認可することとしています。
 仮に、認可を受けた規程に基づかずに家賃債務保証を実施した場合には、指定の取消しの対象となります。
 今回の法案で創設する認定家賃債務保証業者については、緊急連絡先として個人の連絡先を求めないなどの基準を満たす者を国土交通大臣が認定するものでございます。
 認定保証業者は、要配慮者の家賃債務保証を行うことから、家賃債務保証業務を適正に行うことができると認められる者に限り申請を行う必要があるため、家賃債務保証業務規程の認可を受けた居住支援法人と、国土交通大臣の登録を受けた家賃債務保証業者がその申請を行うことができることとしているところでございます。
 このような取組を通じて、家賃債務保証の適正な運営の確保とともに、要配慮者でも家賃債務保証を利用しやすい環境の整備を図ってまいります。
○高橋(千)委員 今の、個人の連絡先を求めないというのは、言ってみれば連帯保証人という、それでいつも苦労するわけですが、そこがなくて、それを、居住支援法人、認可を受けたところが引き受けるという理解でよろしいですね。
○石坂政府参考人 認定家賃債務保証業者につきましては、これはいわゆるサポート住宅に限らず、緊急連絡先について、個人ではなく、例えば法人、居住支援法人ですとか社協さんですとか、そういった法人でもいいということにすることによって、身寄りのない方でも入居しやすくなるということで、今回創設するものでございます。
○高橋(千)委員 非常に大事なことだと思います。
 そこで、今話題になった居住サポート住宅のことなんですけれども、生活保護世帯の場合は、原則、家賃は代理納付にします。住宅扶助費よりも家賃が安い場合は、多分その額を代理納付ということになると思うんですが、問題は、家賃の方が高い場合、どのようにするでしょうか。厚労省に伺います。
○斎須政府参考人 お答え申し上げます。
 本法案におきましては、生活保護受給者が居住サポート住宅に入居する場合に、保護の実施機関が住宅扶助費を賃貸人に直接支払う住宅扶助の代理納付を原則化することとしております。
 住宅扶助の代理納付を適用しない場合につきましては、省令で規定を整備することとしておりますが、例えば、住宅扶助基準額を超える家賃の住居に居住している場合につきましては、一般生活費に充当すべき生活扶助費を家賃に充当することとなります。生活保護法の趣旨に照らしますと適切ではないことと考えられますので、住宅扶助費の代理納付を適用することはなじまないというふうに考えております。
 なお、家賃の満額の住宅扶助費が支給される場合につきましては、家賃が口座振替により納付される場合等を除きまして、代理納付を適用することを想定しているところでございます。
○高橋(千)委員 つまり、代理納付が原則なんだけれども、家賃の方が住宅扶助費よりも高ければ、それができないわけなんですよ。今、理由でおっしゃいましたように、一般扶助費を家賃に充当するのはなじまない、生活保護の要するに趣旨からいって。だけれども、それができないような、家賃が結局高過ぎるというか、逆に扶助費が安過ぎるんですね。東京二十三区の単身世帯でも五万三千七百円、大阪市では四万円、北九州市では二万九千円、これでとても賄えるはずがないじゃないか、これを何とかしなきゃいけない、そういう認識に立っていただきたい。
 そこを踏まえて答えていただきたいと思うんですが、コロナ等で住居確保給付金の要件が緩和され、活用が増えたと思います。最大時の給付件数と現在の件数がどのくらいか。それから、要配慮者が増えている現状から見ると、もっとこの住居確保給付金の要件緩和と拡充が必要と思いますが、いかがでしょうか。
○斎須政府参考人 お答え申し上げます。
 住居確保給付金の年間給付件数につきましては、コロナ禍で要件緩和を行っておりましたが、最も多かったものは、これは新規決定件数と再支給決定件数の合計数でございますが、令和二年度の十三万九千七百四十件、現在把握しております直近の数字で申し上げますと、令和四年度の三万七千七百九十件となってございます。
 住宅確保給付金の支給に当たりましては、原則三か月、最大九か月の支援終了後に自ら家賃を支払って生活していくことができるよう、求職活動等の増収に向けた活動を行うことを要件としているところでございます。
 現行の給付金が自立を促進するための制度であるという趣旨を踏まえますと、求職活動の要件を撤廃して、生活に困窮していることをもって対象とすることはなかなかなじまないというふうに考えておりまして、引き続き、就労を通じて生活の安定を目指していただくことが重要ではないかというふうに考えております。
 その上で、先日公布されました生活困窮者自立支援法の改正によりまして、令和七年四月一日から住居確保給付金を拡充することとしております。具体的には、収入が著しく減少し、家計改善のために転居により家賃負担等を軽減する必要がある生活困窮者に対しまして、家賃の低廉な住宅への転居のための初期費用を補助することでその自立を促進することとしており、この転居費用の支給に当たりましては、求職活動を要件としない予定でございます。
○高橋(千)委員 求職活動を要件としないということで、今回、法改正がされたということでありました。最大時から、今、十万件はもう利用、活用の対象になっていないわけですけれども、じゃ、十万件が何事もなく今無事に暮らせているかということも、思いを致さなきゃいけないと思うんですね。
 そういうことを含めて、大臣に伺いますが、住宅確保要配慮者を断らない賃貸住宅の登録は九十万戸を超えたといいますが、そのうち、どれだけ要配慮者を受け入れているのかのデータがないとお答えであります。家賃低減策などがセットの専用住宅は六千戸弱という程度にとどまっており、これを増やさなければ住宅セーフティーネットとは到底言えないと思うんですが、どのように増やしていくのか、伺いたいと思います。
○斉藤(鉄)国務大臣 セーフティーネット専用住宅は、入居者の資格を要配慮者に限定している住宅でございまして、今年三月末時点で約五千九百戸が登録されております。
 一方、専用住宅以外のセーフティーネット住宅は、大家さんにとって専用住宅よりも入居者を確保しやすく、セーフティーネット住宅としての登録に理解を得やすいことから、その数は増加傾向が続いておりまして、結果として、要配慮者の方々の入居機会も拡大しているのではないか、このように認識しているところです。
 また、今回の法案では、要配慮者がより円滑に住まいを確保できるよう、いろいろな、例えば、ICTを活用した安否確認とか訪問による緩やかな見守りなどでございますけれども、居住サポート住宅制度を創設することとしておりまして、改修費や家賃低廉化の支援を実施することとしております。
 こういう形で、要配慮者が入居しやすい体制をつくっていきたい、これが今回の法案でございます。
○高橋(千)委員 ですから、断らないということで門戸を広げていても、結局、家賃の低減がなければ、肝腎な方に入っていただけないわけですよ。純粋に言っても、五万円未満の家賃のところは二割くらいしかないという実態でありますので、実際には、本当に必要とされている方が入れないという状況なんだ。ここを思い切って増やしていただきたい。重ねて指摘をしたいと思います。
 時間の関係で質問をちょっと飛ばして、今日はURにも来ていただいておりますので、一言伺います。
 UR賃貸住宅の中で、セーフティーネット住宅、専用住宅のスキームを取っている団地数と戸数がどのくらい今あるか、今後増やしていく考えはないのかということを伺います。全国のURの入居世帯数と、そのうち独居老人世帯がどのくらいか、それと併せてお答えください。
○田島参考人 お答えいたします。
 お尋ねの、セーフティーネット住宅の団地数と戸数でございますけれども、私どもUR賃貸住宅におけるセーフティーネット住宅の専用住宅の団地数と戸数は、令和五年度末時点で十五団地二十七戸になります。
 私どもUR賃貸住宅は、民間賃貸住宅への入居を拒まれやすい世帯の受皿として、住宅セーフティーネット機能の一翼を担ってございます。セーフティーネット住宅を更に増やしていくこと、充実させていくことにつきましては、国土交通省との連携の下、今後とも、地方公共団体への働きかけを進めてまいる所存でございます。
 また、もう一点お尋ねの、UR賃貸住宅の入居世帯数と独居老人世帯数でございます。入居世帯数が約六十四万世帯、そのうち六十五歳以上の高齢単身世帯、独居老人世帯になりますけれども、URが令和二年に実施いたしましたUR賃貸住宅の居住者定期調査の結果から、約十五万世帯と推計しているところでございます。
 以上でございます。
○高橋(千)委員 専用住宅の一翼を担っていく、また増やしていくというお答えをいただいたんですが、そうはいっても、十五団地二十七戸というのは余りにも少ない。十五万世帯が独居老人世帯であるということをお話しいただいたことと比べても、やはり問題じゃないか。とても残念だと思うんですね。
 だから、今いる人たちが、やはり、それは安心できる専用住宅なんだよというふうに位置づけていくこと、それが必要なんじゃないかと思いますが、もう一言お願いします。
○田島参考人 お答えいたします。
 今いらっしゃる方も含めて、居住者の方に対してどういうサービスができるかということにつきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、国土交通省との連携の下、今後とも、地方公共団体の方に積極的に申入れを行っていきたいというふうに考えているところでございます。
 以上であります。
○高橋(千)委員 残念ながら時間になってしまいましたので、ここは、大臣に質問を用意していましたが、要望としたいと思います。
 それで、居住支援法人が、今、八百五十一法人がいるうちの半分が赤字だという話がるるされているんですけれども、やはり、アンケートを見ますと、その理由が、そもそも、相談を受けてもマッチングする住宅がない、安い住宅がないと答えているわけなんですよ。年間二十件も相談を受けられない、それは住宅がないからなんです。それじゃもう本末転倒であるということで、やはり本気で専用住宅だとか家賃の補助そのものに取り組んでいく必要があるんじゃないか。
 だから、自分自身が賃貸物件を持っている不動産屋だけが逆に今度の法案でビジネスとして利益を上げていく、それだけでは本来の趣旨とは全く違うんじゃないかということを指摘して、終わります。

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