子の貧困調査 精度上げよ
高橋氏 見える化進め対策を
衆院特委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=24日、衆院地こデジ特委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は24日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、子どもの貧困対策についてとりあげました。
子どもの貧困対策推進法は、2013年に超党派の議員立法として成立。議連の一員として関わってきた高橋氏は、貧困の見える化を重視し貧困に関する指標を作ったとし、これまでに前進した点、今後の重要な点を質問しました。
こども家庭庁の小宮義之官房長は「子どもの貧困率に改善が見え始め、教育分野を中心に多くの指標が改善傾向」と答弁。加藤鮎子こども担当相は「一人親世帯では相対的貧困率が依然高く、生活保護世帯の子どもの大学進学率が低いなど、困難な状況の家庭がある。引き続き貧困の解消に取り組む」と述べました。
高橋氏は、指標の一つ、就学援助制度の周知や新入学時の学用品費の入学前支給が8割台であり一律に実施すべきだと指摘。文部科学省の梶山正司戦略官は「実施は市町村の判断。就学援助ポータルサイトで周知し、確実に支援を受けられるようにしていく」と述べるにとどまりました。
高橋氏は自治体の格差による貧困は避けるべきだと主張。これに対し加藤担当相は「問題意識を共有する。自治体こども計画策定のためのガイドラインを公表したので、自治体こども計画を通じ地域の子どもの貧困状況にできる限り差が生じないよう取り組んでいく」と答弁しました。
また高橋氏は、民間団体やNPO団体が行う貧困の実態調査にも着目し、政府の調査の精度向上や追跡調査も行い、見える化を進めて貧困解消をめざすよう求めました。
(「しんぶん赤旗」2024年5月28日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
二〇一三年、超党派の議員立法として子どもの貧困対策推進法が成立してから十年以上がたちました。私も当時、超党派の議員連盟の一人として、団体の皆さんの熱意に突き動かされるように法案ができていったことを覚えています。子供の七人に一人が貧困状態、一人親家庭の二人に一人が貧困である、こうしたことが言われていました。当初は、貧困の見える化が重要であるとして、指標作りにも注力をしてきました。
資料は、その指標と二〇二二年までの指標の変化をまとめた表であります。まず、この指標を作ったことで前進したと思えるものは何か、また、今後も引き続き重要と思うのは何か、伺います。
○小宮政府参考人 お答えいたします。
御質問の、指標を作ったことで前進したと思えるものは何か等でございます。
委員御質問のとおり、超党派の議員立法として制定されました子どもの貧困対策の推進に関する法律では、第八条において、子供の貧困率等、子供の貧困に関する指標及び当該指標の改善に向けた施策を子供の貧困対策に関する大綱に定めるということが明記をされました。
その後、当該大綱に必要な指標と施策が盛り込まれ、施策の実施状況や効果等について、当時の内閣府に置かれた子供の貧困対策に関する有識者会議、ここにおきましても検討、評価いただきながら、対策が進められました。
子供の貧困率について、その後、改善が見られ始めているほか、教育分野を中心に、多くの指標も改善傾向にあるというふうに認識をしてございます。
子供の貧困対策に関する大綱を引き継いだ、こども大綱におきましても、貧困と格差の解消、これを基本方針とし、子供の貧困対策を重要事項として掲げ、子供の貧困率など様々な指標を掲げているところでございます。
引き続き、子供の貧困対策に政府を挙げて取り組んでいくことが極めて重要であると考えてございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
見える化、指標を明確にして、そして課題を明らかにするということが最初の目標だったんですが、そのことが施策にも位置づいて、政府としても取組をいろいろあっても進めてきた、このように言えるのではないかと思っております。
それで、今、答弁の中にあったように、こども大綱に、子供の貧困だけではなく、少子化対策大綱、あと子供・若者育成支援推進大綱、この三つがまとめられることになりました。大事なことだと思うんですが、逆に薄まっては困ると思っているわけですね。いずれも重要であり、子供の貧困の現状や、これまでの対策の実施状況を踏まえていくことが重要と思います。
子どもの貧困対策推進法十年の意義と、今後は更に子供の貧困解消そのものを目指すべきと思いますが、大臣の認識を伺います。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
貧困により日々の食事に困る子供、学習の機会や部活動、地域クラブ活動に参加する機会を十分に得られない子供、進学を諦めざるを得ない子供たちのことを考えますと、子供の貧困を解消し、連鎖を断ち切る必要があると強く認識をしてございます。
お尋ねの子どもの貧困対策の推進に関する法律が成立してから、政府としては、子供の貧困対策に関する大綱の策定及び改定を通じて、子供の貧困対策を総合的に推進してきたところでございます。また、その中で、子供の貧困率などについても改善が見られていると承知をしております。
一方で、一人親世帯について、相対的貧困率が依然として高く、また、養育費の受領率も低い、また、生活保護世帯などの子供の大学進学率も、改善は見られるものの、全体より低いなど、いまだに困難な状況に置かれている子供や家庭があるものと考えてございます。
これまでの子供の貧困対策に関する大綱を引き継ぎ、昨年末に策定をしましたこども大綱、ここにおきましては、子供の貧困を解消することを明記した上で、教育の支援、生活の安定に資するための支援、保護者の就労の支援、経済的支援を進めること等としてございまして、引き続き、こうした方針に基づきながら、子供の貧困対策にしっかりと取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 貧困率の改善とお話しされましたけれども、最初にこの法律を作る頃は七人に一人と言っていたものが、今、九人に一人。改善は確かにしていると思っております。
それで、子供の貧困に関する指標のうち、資料を見ていただきたいんですが、一枚目の下の方ですね、就学援助に関する周知、これが八二・三%となっています。これが二〇二二年の数字、令和四年の数字で、スタートは二〇一七年、六五・六%。その下の、新入学児童生徒学用品費の入学前支給、これは大事なんですよね、入学前に支給してあげないと全部立て替えなきゃいけなくなるということで、これも小学校で八四・九%、中学校で八六・二%。ですから、伸びたというのは間違いないんですね。
だけれども、正直言って、こういう問題というのは、自治体で差が出るというのはもうなくていいんじゃないかと。なぜ八割なのかなと思うんですよね。できるだけ一律が望ましいと思いますが、どうでしょうか。
○梶山政府参考人 お答え申し上げます。
義務教育段階においては、経済的理由によって就学困難と認められる児童生徒の保護者に対しましては、市町村が地域の実情に応じ学用品等を支援する就学援助を実施しており、市町村における制度の周知及び入学前支給の実施については重要と考えております。
文科省の調査では、令和五年度には、新入学時や毎年度の進級時に学校で書類を配付している市町村の割合は八三・二%と増加しているほか、各市町村においては、民生委員やスクールソーシャルワーカー等を通じた書類の配付も行われているなど、周知のための様々な取組が行われているものと承知しております。また、新入学児童生徒等学用品等の入学前支給を実施している市町村の割合についても、小学校については、令和五年度は八五・八%と増加しているところでございます。
就学援助の周知方法や入学前支給の実施につきましては各市町村が判断することでございますので、文科省といたしましては、都道府県別や市町村別の実施状況を公表する、また、入学前の支給等を促す通知の発出や各種会議での周知、それから、自治体での周知に活用できるチラシの作成などにより自治体に対して積極的な働きかけを行うとともに、文部科学省といたしましても、就学援助ポータルサイトなどにより制度の周知を図り、今後も対象となる方々が確実に支援を受けることができるよう取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 実情は、今の答弁、とてもよく分かりました。
問題は、市町村の事業だというのはよく分かるんですよ、だけれども、実際に就学援助という制度があることを知らないという世帯がまだあるということですよね。それから、要保護世帯、準要保護世帯と、生活保護だったらそれはみんな一律なんだけれども、それ以外のところで自治体によってすごく差があるですとか、そうしたことというのは、やはりみんな同じにしていくということが必要なんじゃないかなと、考え方として今日は聞いたんですけれども、どうでしょうか。
○梶山政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のように、就学援助というものに関して、市町村の実情に応じて行うことは極めて重要だと思っております。その際に、制度の周知、それから入学前の実施について、極めて重要であり、文科省としても、できる限りのことを行うとともに、市町村等に対して促してまいりたいというふうに考えております。
また、実際の中身、どのような中身を行うかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、やはりその市町村の実態を見つつ行うということは重要だとは思っております。ただ、周知等に関して、子供たち、それから保護者が確実にその状況が分かるようにするということ、そのようなことに関して、私どもとしても引き続き促してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。周知徹底を行っていただけるということだと思います。
やはり、私が聞いているのは、自治体がいろいろな取組をして、特色ある子育て支援ですとか、それは大いにやった方がいいと思うんですよ。だけれども、貧困の問題としてこれはもう絶対やった方がいいよなというものはやはり一律で、標準というんでしょうか、スタンダードと言えばいいんでしょうか、そういうふうにやっていくということも必要だと思うんですよ。
今ちょっと就学援助を例として取り上げたわけですけれども、そういうことは、大臣に伺いたいと思うんですが、自治体の格差によって貧困が起きるということはできるだけ避けるべきと思うんですが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
問題意識、共有させていただきます。
昨年末に閣議決定をしましたこども大綱、こちらでは、貧困の状況にある家庭が抱える様々な課題や個別のニーズに対応した支援を進めることにより、貧困の解消、貧困の連鎖の防止に取り組むことを基本的な方針として掲げております。また、子供の貧困対策を重要事項の一つとして盛り込んでいます。さらに、ここが大事だと思いますけれども、地域間格差をできる限り縮小していくことも念頭に置きつつ、必要な支援を行うとともに、現場のニーズを踏まえた地方自治体の先進的な取組を横展開すること、このようにしてございます。
地方自治体は、こども基本法において、このこども大綱を勘案して自治体こども計画を定めるよう努めることとされておりまして、自治体のこども計画には子供の貧困対策が盛り込まれることが大変重要であると考えております。
ちょうど本日、自治体こども計画策定のためのガイドラインを公表いたします。このガイドラインの周知等を通じまして、地方自治体における子供の貧困対策を含めた自治体こども計画の策定を促し、各地域での子供の貧困状況にできる限り差が生じないようにすべく、地方自治体や関係省庁としっかり連携しつつ取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
こども大綱に移行する前の、子供の貧困対策に関する有識者会議が二〇二三年に出した意見の中で、子供の医療費助成について、こんなふうに言っています。子供、若者の医療の無償化は、将来的な国民医療費削減の効果が高く、特に貧困状態にある親子に医療が気兼ねなく受けられる機会を拡大することは、子供自身の健康にとって重要な支援であり、十八歳までの医療の無償化を国として実施するべきである。子育て家庭の経済的負担軽減のため、全ての子供が平等な医療サービスを受けることができるよう全国一律の支援が必要とあります。
先般の委員会でも、私、この少子化対策の文脈で、各自治体がすごい頑張って広がってきたということを指摘した上で、国としても医療費無料化をやるべきではと質問いたしました。
政府はこれまで、無料化すれば医療機関の安易な受診が増えて国民医療費が増える、こういう論調だったと思うんですね。だけれども、やはり、子供の貧困対策に関する有識者会議にしてみれば、そうじゃないよ、いろいろな事情があってためらう子供たちがいる、世帯がいる、そこがむしろ気兼ねなく受けられることによって重症化を防ぐことになるわけだから、それはひいては国民医療費削減の効果が高いんだし、これは一律でやるべきだよとおっしゃっているのはすごく大事なことだと思うんですよね。
その認識に立ってもう一踏ん張りしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
委員御指摘の、子供の貧困対策に関する有識者会議の構成員の御意見は承知をしてございます。
子供の医療費につきましては、医療保険制度において、就学前の子供の医療費の自己負担が三割から二割に軽減されており、これに加えて、各自治体独自の助成制度により、自己負担の更なる軽減が図られているものと認識をしてございます。
子供の医療費の無償化に関しましては、不適切な抗生物質の利用などの増加が懸念されるですとか、比較的健康な子供の外来受診を増やすなどを示唆する実証研究の指摘もあると承知をしてございまして、国の制度としましては、子供の医療費の助成制度を創設することについては課題が多いものと考えてございます。
子供医療費の負担軽減については、基盤となる国の制度と、各地域における様々な実情を踏まえた地方自治体による支援、これが相まって行われることが適当であると考えております。
○高橋(千)委員 残念ながら、全く前回と同じ答弁なんですよね。
やはり、今引き合いに出したその論文というのは、言ってみれば一つのチームの論文でしかないわけですよ。だけれども、全国の自治体が実証し、それを踏まえて有識者会議が提言をしている、その方がずっと総合的じゃないですか。そういう視点に立ってほしいということを私は指摘をしましたので、多分、もう一度聞くとまた同じ答弁になってしまうと思いますので、引き続きこれは述べていきたいと思うので、検討していただきたいと思います。
それで、時間の関係で、次の質問はちょっと丸めて質問をいたしたいと思います。
資料の二枚目は、なかなかこれは空欄が多いんですね。数字が入っておりません。
例えば、二〇一七年の数字で、食料が買えない経験、一人親家庭は三四・九%、子供がある全世帯は一六・九%。衣服が買えない経験、一人親家庭は三九・七%、子供がある全世帯は二〇・九%。剥奪指数と言われるわけですが、所得の金額だけでは分からない貧困の状況を、こういう形で、一般の家庭なら当たり前にできているはずのことができていないこと、こうしたことをピックアップして表すというのは非常に重要だと思います。
まして、今、子供食堂や食料支援などが全国各地で取り組まれ、給食だけが唯一の栄養というような子供が増えている実態が広く認知されています。
昨年十二月二十七日の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定による、食料安全保障強化政策大綱には、国民一人一人の食料安全保障という節があり、全ての消費者がいかなるときにも十分かつ健康的な食生活が実現できることが重要であるが、食品価格の高騰はこれに支障を与えるおそれがある、加えて、トラックドライバーの人手不足、不採算地域からの流通業の撤退などと述べた後で、貧困、格差の拡大等により、国民全体の食料の必要量が確保されていても、国民に行き渡るとは限らない、いわゆる食品アクセス問題が社会問題となっているとあります。
つまり、食料は足りている、数字的には足りているんだけれども、格差が、貧困であるがために、食品にアクセスできない、十分に食べられない、そういう状況を政府自身が認めているということだと思うんですね。
それで、やはりこうしたことを浮き彫りにしていく必要があると思うんです。子どもの貧困議連では、たくさんの民間団体、NPOなどがヒアリングなどに参加していますし、一度この委員会でも紹介した、子供と保護者六千人調査というのは、非常に圧巻で、実態がよく分かるし、よく集めたなと思ったとともに、自分たちの調査には限界がある、そうおっしゃっておられました。
政府も、しっかりここに着目し、調査を精度を高めていくこと、そして、追跡調査などを行って、貧困の解消が、本当に役に立ったのか、そうしたことを見える化していく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○小宮政府参考人 お答えいたします。
まず、御指摘ございました、食料が買えない経験、衣服が買えない経験等の数字でございます。
それで、年末に定めましたこども大綱には間に合わなかったんですけれども、元々のデータは、社人研が作っております生活と支え合いに関する調査というのが五年ごとにございまして、その基データを基に、更に社人研にお願いをして、この子貧困大綱で掲げている指標を集計、精査してございます。
それで、近々、こども白書を国会に御報告する予定にはなってございますけれども、その中でこの数字についても掲げようと思っておりますが、今、最終調整中でございますけれども、現時点の状況を一言だけ御報告申し上げますと、子供がある全世帯で、食料が買えない経験、それから衣服が買えない経験、共に、二〇一七年の数字に比べると、四、五%、若しくはそれ以上、改善を実はしてございます。それから、一人親世帯について見ますと、食料を買えない経験が、一七年に三四・九%が二一%程度。衣服が買えない経験も、一七年が三九・七%だったのが一九%程度ということになっております。これは、いずれも最終精査中でございますので、それを御理解の上でお聞きいただければと思います。
今後に向けてでございますけれども、まず、本年度に、このような子貧困に関する指標についての研究を実施をしてございまして、外部の専門家の知見もいただきながら、具体的な調査の設計について、今検討を進めることとしてございます。
これも踏まえつつ、また、御指摘いただいた点も踏まえつつ、令和七年度に子供・若者総合調査というものを実施したいと考えてございまして、その中でも、子供の貧困対策の観点を含むウェルビーイング指標の在り方についても検討を進めることとしておりますので、その中で、できる限り見える化を図っていきたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 終わります。よろしくお願いいたします。