処遇改善へ周知必要
建設業法改正案 高橋氏に参考人
衆院国交委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=21日、衆院国交委 |
衆院国土交通委員会は21日、建設業法、公共工事入札契約法両改正案について参考人質疑を行いました。
日本共産党の高橋千鶴子議員は、技能者の技能や経験を処遇アップにつなげる建設キャリアアップシステム(CCUS)について、「どう加点され賃金に反映されるのか」と質問。全国建設労働組合総連合の勝野圭司書記長は「すべての発注者に周知、理解を図り、合意形成を進めていく必要がある」と答えました。
高橋氏は、建設工事の見積もりについて「著しく低い額を禁止するとあるが、著しくとの言葉はあいまいではないか」と質問。楠茂樹上智大教授は「著しくなければいいのかという話になるので基準を出さなければならないが、下限に張り付く恐れもあるので今後の課題だ」と述べました。
高橋氏は、4月から建設業にも残業規制が適用された一方、日給月給のために休みを取ることに躊躇(ちゅうちょ)があるとして「月給制に近づけることが必要ではないか」と質問。建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は「現場はすべて休んでいるわけではなく、職人は空いている現場に行って所得を確保する。お金が下がらない仕組みにすれば働き方も変わるのではないか」と期待を述べました。
(「しんぶん赤旗」2024年5月26日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見を承りました。ありがとうございます。
どんどん聞きたいことが出てきちゃって分からなくなってきているので、早速質問させていただきます。
まず岩田参考人に伺います。
建設工事は、本当に多岐にわたる工程と様々な専門職の組合せなのだと思います。そうした中で、今回の法案は、標準労務費を中建審が示すことや、労働者の処遇改善のため建設業者に努力義務を課し、国がその取組状況を調査、公表し、中建審に報告するとしております。
岩田参考人は、総価一式の請負契約が慣例である建設業界の特徴からいって、賃金を一定水準にすることが難しいということをこれまでも主張してこられました。今回の法案はそこを変えることが期待できるでしょうか。
○岩田参考人 大きくできるというふうに理解しています。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
同じ質問を勝野参考人にも伺いたいと思います。
○勝野参考人 私もできるというふうに思っております。
○高橋(千)委員 はい、分かりました。期待が募るわけでありますけれども。
あわせて、勝野参考人に伺います。
先ほど来議論がされているキャリアアップシステムの活用の問題なんですけれども、全建総連として、これまでもキャリアアップシステムの活用を重視して、強く要望されてきました。一方、このキャリアアップがどう加点され賃金に反映されるのか、つまり、そのための原資がないと現実的ではないわけですよね。
例えばキャリアアップをインセンティブにしようとかいっても、レベルフォーの人ばかり集まっちゃうとかとなると、その分取れるんですかということにもなるわけですよね。その点、どのようにお考えになっていらっしゃるか。
○勝野参考人 先ほども申し上げましたが、カードの取得だけではなくて、レベル別の能力判定ということが非常に重要になっていると思っておりますので、両輪の取組として現在進めているところであります。
その際、やはりしっかりと能力に応じた処遇に改善されていくということが重要だというふうに思っておりますし、加えて、レベルワンからレベルフォーまで、同様にしっかりと就業が履歴をされていく、そういう仕組みを全ての現場で整えるということが重要だというふうに考えております。
○高橋(千)委員 全ての現場でレベルワンからフォーまで整っていくことが、要するに、それに見合う賃金が得られる体制が伴うということがどうしても必要なわけですが、その点、もう一言。
○勝野参考人 昨年の六月に、国交省におかれましては、建設キャリアアップシステムのレベル別の年収を公表していただきました。こうした取組を、公共、民間、全ての発注者に周知、理解を図って、技能、経験に応じた処遇の改善、工事発注金額への反映等について、サプライチェーン全体での合意形成を進めていく必要があるというふうに考えております。その点でも、今回の業法の改正は有用であるというふうに理解をしております。
○高橋(千)委員 レベルごとの目標といいましょうか、これだけの収入が得られるよというのが示された。先ほど岩田参考人もお話ししてくださったんですが、まだ現実は乖離があるわけですよね。何としてもそこに近づけるために仕組みをつくっていかなければならない、このように思っております。
そこで、今度は堀田参考人に伺いたいんですけれども、建設マネジメントの立場から、諸外国のルールについてお話をいただきました。私も昨年、UITBB、建設インターの、労働組合の国際組織ですけれども、ミカリス書記長らと懇談したことがあって、キプロスの出身の方なんですけれども、多重下請構造の話は世界どこでも共通だよというふうにおっしゃいました。その上で、やはり公共工事を下請に出す場合、条件を付した契約書でなければそもそも受注ができない。だから、一定の基準より下げては絶対いけないのだと。
このお話をされて、公契約法に近いものなのかなと思って聞いていたのですが、今度の法案がそこに近づいたのか、あるいは超えたのか、是非先生の御意見を。
○堀田参考人 ありがとうございます。
標準労務費が導入されれば、委員御紹介のような他国の仕組みに近づいてくるのではないかというふうに考えます。
ある意味で、ヨーロッパ型、スイス、フランス等の仕組み、これは労働協約がベースとなって、これが一般拘束力宣言を持つことによって全体に実効性が適用されるということ。
一方、米国においては、デービス・ベーコン法、これは基本的には公契約と同じような考え方で、政府の公共調達において適用される。しかしながら、米国においても、これは公共工事だけに適用されるとはいっても、その水準が民間工事にも波及しているので、同様な効果を持つ。
こういったことで、仕組みが、有効に働くメカニズムは異なるかもしれませんけれども、それぞれの社会で、そういうことが実現しているという現状があるかと思います。
日本においても、標準労務費あるいはCCUSの活用もあるかもしれませんけれども、こういったことを通して、しかるべきシステムを構築していくべきだというふうに考えます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
次に、楠参考人に伺いたいと思います。
参考人は、中建審の委員ですとか検討会の座長を務めてこられたということであります。
そこで、具体に伺うんですけれども、二十条になると思うんですが、著しく低い額による建設工事の見積りの禁止というふうな表現がされているんですよね。それで、下回ってはいけないというのではなく、著しくという言葉がついていて、そこが非常に曖昧で、どの程度を指すのかな、著しくなければいいのかなとか、いろいろな不安が出るわけなんです。先生、どのようにお考えで。
○楠参考人 独禁法にも、不当廉売規制の中で二つあって、著しく原価を継続して割った場合と、あと、不当に低い対価と、二つ分けているんですね。
ですので、言葉の使い方としては、二つ分けられるものだと思うんですけれども、先ほどおっしゃったように、著しくなければいいのかという話になってしまいますので、やはりその辺は、ある程度の基準というものを出していかないといけないとは思うんですね。
ただ、明確に出してしまうと、これは国交省の説明にあったと思うんですけれども、下限に張りつくというおそれもありますので、その辺は今後また詰めていかなきゃいけない課題なのかなと思っております。
○高橋(千)委員 確かに、基準が必要だけれども、下限に張りついてはまずいと。おっしゃるとおりだなと思っておりました。
同じように、著しく短い工期というのもありますけれども、これは同じ考えでよろしいでしょうか。
○楠参考人 著しく短い工期の著しさというものは、実際には、総合評価といいますか、様々な要素を考慮して判断することだと思いますので、なかなかその基準作りが難しい一方で、法の明確性というのも大事ですので、その辺のバランスかと思っております。
○高橋(千)委員 今、先生がお示しいただいた趣旨が本当に現場に浸透していけばいいなと、このように思って聞いておりました。
それでは、岩田参考人に伺いたいと思います。
先ほど来、建設業は他産業よりも賃金が低く、就労時間も長いということをるるお話がありましたし、担い手確保が大きな課題となっているわけです。
それで、四月から働き方改革の一般則が適用されたわけですが、現状では日給月給のために、週休二日としても、休みが増えた分、年収が減る、現状のままではということで、非常に不安の声が上がっていると。
ですから、繁閑の多い建設工事をなるべくやはり平準化して、月給制に近づけていくということが必要かなと思うんですが、その点での御意見をいただければと思います。
○岩田参考人 日給月給という仕組みで、仕組みといいますか、形になっていますので。
現場が、では、全て休んでいるかというと、休んでいないところもあります。大手から順にやっていっていますので。だから、職人は空いている現場に行くんですね。それで所得を確保している、それで所得をキープしている状況なので、早くこの制度をつくっていただいて、お金が下がらないような仕組みにしていただくことによって働き方も変わるのではないかと期待しています。
○高橋(千)委員 実際には、埋め合わせといえばあれなんでしょうかね、そういう働き方が実際にはあるということで、改善を図っていきたいというお話でありました。
あわせて、岩田参考人に伺いたいと思うんですが、ICTの活用で、いわゆる緩和というんでしょうか、現場での技術者、専任の技術者がかけ持ちでも可能になるということと、営業所の専任技術者が、同じように、かけ持ちしてもよいことになる。特に現場の場合は二時間まで離れてもよいということになっていて、ICTがあるんだからいいんだということなんですが、元々それが必要だった理屈からいって、安全性とか、そういう問題は大丈夫なのかなとちょっと心配もありますので、伺えればと思います。
○岩田参考人 我々、技能者の団体ですので、技術者の制度については非常にお答えしにくいところはあるんですが、現実、我々の処遇改善等を行っているように、技術者もやはり現場の処遇改善を進めない限り、人は来ないんじゃないかなというふうに思います。
お答えになったかどうか分からないですけれども。
○高橋(千)委員 そうですね、なかなか、不足しているので、駄目とは言えないんだという声も聞こえています。ただ、それでやはりぎりぎりのところなのかなと思っているので、これ以上の緩和はどうなのかなという思いで聞かせていただきました。
それでは、堀田参考人に伺いたいと思うんですが、資材高騰が労務費へのしわ寄せにならないように、契約前と後の協議を努力義務というふうに書きました。これは、コロナの中やその後の資材高騰の話を聞いていて、本当にこれ、しわ寄せにならないようにするべきだと思うし、大事だと思うんですが、これに実効性を保たせる、実効性をできるようにするためにどんなことができるでしょうか。御意見を伺います。
○堀田参考人 ありがとうございます。
二つ考えられるかなと思います。
一つは、受発注者間で適切なリスク分担ができるような、そういった契約の形態ということを考えることができると思います。先ほど来、総価契約が一般的であるという我が国の建設市場の特徴について御指摘がありましたけれども、総価契約だけが唯一の契約形態ではございませんので、建設市場においても、様々なリスクを受発注者間で適切に分担する、そのやり方はいろいろな方式が考えられてございます。そういったことの検討、導入が考えられるかと思います。
もう一つは、先ほどの標準労務費等の仕組みで言われていますように、要するに、労務費の下支えがあれば、仮に資材価格等が高騰したとしても、そこから調整をするということがそもそもできないという仕組みであれば、そういうことは起こらないわけですので、そのやり方と併せて考えるということがよろしいのではないかというふうに思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
最後に、楠参考人に伺いますが、今回の国の役割というか、これが適切に働いているのかを調査、公表、報告というのまで初めてやるんだよということをおっしゃっていて、今の体制の中で本当にできるのかなという懸念もあるんですが、どのようにお考えでしょうか。
○楠参考人 これに関しましては、公正取引委員会が積極的にこの問題に対して動いておりますので、公取委との連携を図るとか、下請に関しても、そういうふうに公取委、中小企業庁との連携を図る形で行っていくべきかなと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
なるほどなと思って聞いたのと同時に、いろいろな心配点もまだ少し残っているかなと思いますが、今日は、これを参考にさせていただいて、次の、明日の質問にしたいと思います。
ありがとうございました。