一極集中 リニア不要
高橋氏 地方切り捨てを告発
衆院国交委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=15日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は15日の衆院国土交通委員会で、人口減少、災害対応、地方危機などで時代の重大な岐路だと叫ばれる中でリニアは必要ないと主張しました。
高橋氏は、トンネル等の掘削で発生する残土の処分先は解決したのかと質問。国土交通省の村田茂樹鉄道局長は「約8割の最終受け入れ先を確保している」と答弁し、2割が未定であることが明らかになりました。
また村田局長は「東海道新幹線の輸送量が3割減少し、東海道新幹線の静岡県内の停車回数が1・5倍になる」と答えました。
高橋氏は、昨年7月に閣議決定された第3次国土形成計画で静岡工区の対策としてリニアが国家プロジェクトとして位置付けられたと指摘。「シームレスな拠点連結型国土の構築といっても、結局、東京一極集中が進むのではないか」とただすと、斉藤鉄夫国交相は「逆だ」と強弁しました。
高橋氏は、国土形成計画では2050年までに、2割が無居住化するとしているが、「リニアで日本中央回廊を造り、東北の仙台市など拠点都市の人口を増やし、整備新幹線や高規格道路が延びても、赤字ローカル線など地域公共交通や中山間地が切り捨てられることになる」と厳しく批判しました。
(「しんぶん赤旗」2024年5月18日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。十六分しかないので、早速質問をしますので、答弁も簡潔にお願いします。
昨年閣議決定された第三次国土形成計画では、リニア新幹線について、三大都市圏を結ぶ日本中央回廊の形成による地方活性化、国際競争力強化のための国家的プロジェクトと強調をされております。
しかし、今般の国土形成計画では、人口減少と気候危機の下で、災害への対応ですとか地方の危機とか、時代の重大な岐路が叫ばれていたと思いますが、その中でなぜリニアが必要なんでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 リニア中央新幹線は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を一つの圏域とする日本中央回廊を形成し、人口減少、少子高齢化に直面する状況において日本経済の持続的成長を牽引するとともに、東海道新幹線とのダブルネットワークを構築することにより、気候変動や災害の発生に対応してリダンダンシーの確保を図る、国家的見地に立ったプロジェクトでございます。
また、コロナ禍を経て、リモートワークやワーケーション、二地域居住など、新しい働き方や住まい方など、様々な生活スタイルの選択肢や価値観の変化も出てきており、移動の効率化による生産性の向上に寄与するとともに、デジタル田園都市国家構想の実現を支えるインフラとなるものです。
このように、意義あるものと考えております。
○高橋(千)委員 昨年五月二十六日の国土審議会計画部会で国土形成計画の原案が出されておりますけれども、本当に真っ赤に加筆修正がされているわけですね。
同日の大臣会見では、静岡工区が未着工になっている中、改めてリニアを位置づけ直していますねと記者から聞かれております。ああ、なるほどな、そう思ったわけです。
それでも、この日の審議会で、課長が幾らリニアリニアと発言をしても、委員からは全く発言がございませんでした。地方の危機から飛躍し過ぎているのではないか、このように思うんですね。
この間の資材高騰、二〇二七年開業予定を二七年以降に延長したこと、名古屋―品川のいわゆる大深度地下駅、難工事などにより、総事業費は増えているのではないかと思いますが、伺います。当初三兆円の財投をJR東海が自己資金で返済していくとの説明でしたが、それはどうなっているでしょうか。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
まず、事業費でございますけれども、JR東海によれば、このリニア中央新幹線品川―名古屋間の総工事費につきましては、当初の平成二十六年工事実施計画申請時点では、約五・五兆円と見込んでおりました。
その後、令和三年に、難工事への対応、地震対策への充実などに伴いまして、約一・五兆円増額する見込みであることを公表しておりまして、これも踏まえて、令和五年十二月に変更認可をいたしました工事実施計画におきましては、総工事費は約七・〇兆円とされているところでございます。
また、品川―名古屋間の開業時期について、JR東海は本年三月に、二〇二七年の開業は実現できないと公表しておりますが、財政投融資の返済につきましては、元本の返済が令和二十八年、二〇四六年まで据え置かれていることや、東海道新幹線を主力とするJR東海の収益力を踏まえれば、自己資金で返済していく計画に現時点では特段の影響はないものと考えております。
○高橋(千)委員 難工事自体が非常に住民との関係でも大きな問題になっていると思うんですけれども、今、七兆四百八十二億円ということで、大体一兆五千億円が増加された。大阪までは九兆円を超すプロジェクトですので、十兆円以上になることはもう確定しちゃったのかなと思うのと、今後更に増えるのではないかということが想定できると思います。
そこで、次に伺うのは、二〇二二年、盛土法の審議の際に、リニアの建設残土は五千六百八十万立方あるじゃないかと、私、取り上げました。当時、最終受入れ先が決まっているのは約七割との答弁でありました。この残土の処分先については解決しているでしょうか。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十六年にJR東海が作成した環境影響評価書によりますと、リニア中央新幹線品川―名古屋間の工事では、今委員御指摘のとおり、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土が生じるということが見込まれております。
これらの建設発生土につきましては、環境影響評価法に基づきまして、平成二十六年の国土交通大臣意見におきまして、JR東海に対して、関連する事業等と調整して、建設発生土の最適な利用先を選定できるよう十分に検討し、可能な限り早期に大量の建設発生土の利用先を確保することなどを述べております。
建設主体であるJR東海におきましては、令和六年三月末時点で、この建設発生土のうち約八割の最終受入れ先を確保していると聞いております。また、残りの二割につきましても、複数の候補地と受入れの協議を進めていると聞いております。
国土交通省といたしましては、JR東海におきまして、環境影響評価の国交大臣意見に基づいて建設発生土が適切に処理されるよう、引き続きJR東海を指導監督してまいります。
○高橋(千)委員 七割と当時言っていたものが、今、八割まで来たということであります。やはり長期で巨大な建設工事だからこそ、まだ決まっていない不安要素がたくさんあるということだと思います。
要対策土を拒否すると発表した岐阜県御嵩町でも、それ以外の残土は受け入れると表明をしているわけです。ただし、その候補地は、掘削口に近い山林の谷間二か所を埋める、よりによってハナノキなどの絶滅危惧種が生息する湿地群だということで、なぜそうなるのかなと思うわけですが、日弁連も候補地の変更を会長声明で指摘をしているところであります。これ自体も重大な問題ではないかと思うんですね。
次に、リニア沿線自治体が、東海道新幹線の止まる場合が増えて活性化できるといった議論があると思うんですが、どのくらい現実的なんでしょうか。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
国土交通省におきましては、リニア中央新幹線の開業に伴いまして、東海道新幹線の利便性向上等のポテンシャルにつきまして、昨年十月に調査結果を取りまとめ、公表しております。
この調査におきましては、リニア開業によりまして、東海道新幹線の輸送量が約三割程度減少する可能性があり、東海道新幹線の輸送力に余裕が生じる見込みであり、この輸送力の余裕を活用して、東海道新幹線の静岡県内の停車回数が約一・五倍程度増加するとした場合に、新幹線と在来線の乗り継ぎがスムーズになるなど、利便性の向上が期待されるとしております。
さらに、県外からの来訪者等の増加による経済効果が期待されるなど、リニアの開業は、静岡県や東海エリア全体にとっても大きな効果をもたらすことが期待されております。
これらの調査結果につきましては、JR東海としても、違和感がなく、あり得る範囲のものであるとの見解をいただいているところでございます。
○高橋(千)委員 一・五倍くらいになるかもしれないということで、しかも、JR東海があり得る範囲だと答えたということを伺いました。
国土審議会の中にも、駅の地図が載っておりまして、丸がいっぱいついていて、こんなに止まるのかと正直思ったんですが、そうすると、在来線の方は、東海道線の方は、影響はあるんでしょうか。
○村田政府参考人 在来線とは東海道本線の在来線ということだと認識しておりますが、これは、今申し上げましたように、東海道新幹線がそのように活性化されるということも含めまして、東海道新幹線と在来線のトータルの利用ということで、より静岡県内の利便性が向上、期待されるというふうに認識をしております。
○高橋(千)委員 ちょっと私、ここは通告しておりませんでしたので、はっきりとしたお答えがなかったと思います。どこにも影響がなくて、みんながよかったねというふうにはならないんだろうと。当然、この間の経過からいくとそれが言えると思うんです。今、静岡対策ということでそうしたことを言ったのではないか、このように思います。
それで、資料の一枚目に、シームレスな拠点連結型国土の構築として、日本列島太平洋側と日本海側南北に走る回廊がありまして、その真ん中に、おへそのようなところに、三大都市圏の日本中央回廊がある。この左側の囲みに、「人口が減少する中にあっても、人々が生き生きと安心して暮らし続けていける国土の形成を目指す。」これ、いいことを書いてはいるんですね。
それで、二枚目は、この波及効果を、全国的に波及できる、こういうふうに書いているんですが、これは、見方を変えれば東京一極集中が進むことになるんじゃないかと思いますが、大臣、どうですか。
○斉藤(鉄)国務大臣 いや、その逆だと思います。一極集中の解消につながると私は思っております。
リニア中央新幹線の開業等を通じた日本中央回廊の形成により、三大都市圏がいわば一つの都市圏ともなる時間距離の短縮が図られ、一時間圏の中に、多様な自然や文化を有する地域を内包し、二地域居住など新たな暮らし方、働き方の先導モデルの形成にも資するなど、世界に類を見ない魅力的な経済集積圏域が形成されることになります。
あわせて、全国各地との時間距離の短縮効果を生かしたビジネス、観光交流、商圏、販路の拡大、ダブルネットワークによるリダンダンシーの確保など、その効果の全国的波及が期待されるところでございまして、国土形成計画の理念であります東京一極集中の是正、これに資するものと考えております。
○高橋(千)委員 さっき私が読んだところには、「南北に細長い日本列島において、人口が減少する中にあっても、人々が生き生きと安心して暮らし続けていける」。しかし、その生き生きと安心して暮らし続けていけるのが日本列島全部じゃないということなんですよ。
三枚目の資料を見ていただくと、二〇五〇年には有人メッシュの約二割が無居住化ということで、地図に落としているんです。そういう危機感を持って国土形成計画、計画部会がやられてきたと思うんですが、その中で議論されてきたのがこの回廊であるということでは、結局、シームレスな拠点連結型国土というのは、三大都市圏、そして地方に拠点都市があって、東北でいえば仙台というように、都市機能、人口を集中させるという考え方、つまり、分散はするけれども、結局その拠点都市に集中する、こういうふうになるんじゃないですか。
○黒田政府参考人 お答えいたします。
昨年策定いたしました国土形成計画では、まず、国土全体にわたって、広域レベルでは人口や諸機能が分散的に配置される国土構造を目指す、それと併せて、人口減少下において地域の持続性を高めるために、広域レベルの都市機能から身近な地域のコミュニティー機能まで、重層的な生活、経済圏域の形成を図るということが求められております。
計画では、高次の機能から日常生活の機能まで、各地域の生活、経済圏の階層ごとに、諸機能を多様な地域の拠点に集約し、各地域の補完、連携関係を強化して、交通とデジタル、このネットワークの強化を通じて結びつけていく、これが国土構造でいうシームレスな拠点連結型国土ということとしております。
その階層としましては、中枢中核都市を核とした、まず、広域圏の自立的な発展、圏内、圏間の連結強化、これがこの図の中で全国的な回廊ネットワークとされておりますが、これの形成、また、二つ目には、この中心都市の核としまして、市町村界にとらわれない、むしろ生活レベルの地域生活圏の形成、また、小さな拠点を核とした集落生活圏、これを一体的に三層構造で進めていくという考え方を取っております。
このように、この生活、経済に関する階層、圏域が役割分担するということが非常に大事なところでございますので、各諸機能が特定の地方都市に集約をされるということではないというふうに考えております。
○高橋(千)委員 役割分担ということの意味なんですよ。
村井宮城県知事、今、知事会の会長になりましたけれども、仙台市が震災以降も転入が転出を大きく上回っている状況を見て、仙台市が東北の人口のダムになると表現をしています。人口のダムになるというのは何だろうなと思っていたら、この語源は国土形成計画の中にあるわけですよね、東京への流出を抑制するダム機能。それは、ですから、札幌、仙台、広島、福岡ですか、そうした拠点都市がダム機能を果たす。だけれども、やはりそれは、じゃ、東北六県あるんだけれども、宮城の中だって仙台だけだしという意味では、地方の都市はどうなるのかということがやはり問われると思うんですよ。
それで、例えば、中央回廊と、整備新幹線、高規格道路、これはまた延びていきますよね。だけれども、赤字のローカル線、地域公共交通、中山間地、これは切り捨ててもやはりやむなし、全部にはお金はかけられない、そういうふうになっているんじゃないですか。
○斉藤(鉄)国務大臣 地方の公共交通、また、ローカル線もしっかり維持させるためにも、このネットワーク間の基幹交通は高速化、充実していかなきゃいけない、基本的にこういう考え方だと思います。
御指摘のリニア中央新幹線については、全線開業により三大都市圏が一時間で結ばれ、人口七千万人の巨大な都市圏が形成されることになります。また、我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済全体を発展させるものであると考えております。
一方、地域公共交通の重要性についても、国土形成計画においては、交通体系に関する基本的な施策として位置づけられております。
特に、一部のローカル鉄道については、輸送需要の減少など厳しい状況にあるため、昨年、地域交通法を改正し、制度面、予算面でローカル鉄道の再構築に向けた関係者の取組を支援する仕組みを整えたところです。
このように、リニア中央新幹線や整備新幹線などの高速交通ネットワークに合わせて、ローカル鉄道を含む地域公共交通体系の構築を図り、有機的かつ効率的な交通ネットワークを形成する、こういう基本的な考え方が国土形成計画です。
○高橋(千)委員 いっても一時間ちょっと短縮するというだけなんですよね、節約する、だったら飛行機だってあるじゃないかと。たくさんの選択肢がある中央回廊とその拠点都市、それ以外のところは、やはりそこにはお金がかけられないということで今議論されているわけじゃないですか。そうしたことを、やはりちょっと、言葉では確かに、大臣、どっちも守るとおっしゃってくださっているけれども、そのようにはとても読めないわけです。
続きの議論はまたやっていきたいと思います。
終わります。