「日本版DBS」追及
高橋氏「更生教員も排除か」
衆院特別委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=16日、衆院地こデジ特委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は16日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、「日本版DBS」の創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法案」についてただしました。
同法案は、現職の教員などについても犯罪事実確認を施行後3年以内に行うとしています。高橋氏は、前科があっても更生した教員が「何事もなく何年も働き、子どもたちに信頼されていても、『(性加害を行う)おそれ』があると判断し、子どもから遠ざけるのか」と追及。加藤担当相は「対象業務に従事させることは望ましくない。教員として本来の業務に従事させない措置を講ずることが必要だ」と答えました。
2022年に性犯罪防止プログラムの受講が必要とされた受刑者は534人でした。高橋氏は性非行で少年院送致となった少年には「自身の幼児期の性被害や虐待、貧困などで教育が十分に受けられていないことが背景にある」と指摘。法務省の小山定明審議官は「約半分は自身に経験がある。知的に制約のある子どもが少なからずいる。その特性に対応したプログラムを別途実施し、必要に応じてフォローアップしている」と答えました。高橋氏は、加害者をつくらないためのアプローチも重要だと指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2024年5月18日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
早速質問します。
犯罪事実確認の対象とする性犯罪歴の対象期間について、先ほど来ずっと議論がされているわけですけれども、政府は、子供の安全を確保するため必要性と合理性が認められる範囲と説明をしています。二十年、十年の話です。それは、平たく言うと、拘禁刑を受けた者の場合は、再犯を犯すまでの間、大体二十年間の中、九四%収まっている、そこから導いた二十年ということで、これは逆に言うと、前科のある者はすべからく再犯を犯すリスクがある、そういう考えなんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法案の対象期間につきましては、再犯に至った者の実証データに照らして、再犯の蓋然性が高い期間を犯歴確認の対象期間として設定をしたものでございます。すなわち、過去五年度分の各年度、性犯罪で有罪判決が確定した者のうち、同種の前科があった者について、その直前の前科の判決確定から今回の判決確定までの期間がどの程度であったかといった分布に基づきまして、拘禁刑については刑の執行終了等から二十年、罰金については刑の執行終了等から十年経過するまでの期間を確認の対象としたということでございます。
したがいまして、対象期間内の対象前科を有する者は、集団として類型的に再犯の蓋然性が高いということで、今回の犯歴の確認の対象と判断をするということでございます。ですので、個人としてのリスクを評価をする、そういったことをこの仕組みの中に介在させるものではありません。
○高橋(千)委員 何か九四%が独り歩きして、六%がみんな犯罪を起こす危険性があると。確かに、そういう資料を示されればそうなんですよね。でも、九四%の上の数字は約五・八%の再犯、そこから始まっているわけですから、みんなが再犯を犯すという考えではないと思うんですが、そこをはっきりさせてください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
今回のこの五年分の実証データ、二十年、十年という期間設定をした根拠に使いますこのデータでございますが、全体が一万五千四百九十六人でございます。このうち前科があったという方々の分布を見たと言っている方々は全体の五・八%でございました。逆に言うと、その残りの九割ぐらいが初犯であったということでございます。
ですので、今回のこの法律案につきましては、犯罪事実の確認という仕組み、ある意味再犯に注目をした対策、これに加えまして、やはり九割を占める初犯をしっかり対応するということで、面談とか相談とかそういったことを日頃からしっかりやっていただいた上で、性暴力が行われているおそれがあると認められている場合にも安全措置を講じていただく、そういった初犯対策についても今回この法律案の中に入れているということでございまして、この大きな二つの柱が相まって子供たちを性犯罪から守っていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
もちろん五・八%だからいいんだと言っているわけではありません。今、九割が初犯だということで、その対策も取らなきゃいけない、全体として総合的な対策が求められているんだということで伺いました。
そこで、現職の教職員等についても犯罪事実確認を施行後三年以内、それ以降は五年以内に行うこととされています。犯罪事実確認書に書かれているのは何か、これを簡単にお答えください。その上で、前科はあり、データもあるが、もう何年もたっていて、その後何事もなく働いていて子供たちにも信頼されている、そういう教員がいたとして、それでも、あっ、前科があった、じゃ、これもおそれがあるということで子供から遠ざける、そういう法案なんでしょうか。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
まず、犯罪事実確認書の記載内容につきましてでございますが、犯罪事実確認書には、対象事業者が児童対象性暴力等を防止するために必要な措置の実施に必要最小限の情報を記載することとしてございます。
具体的には、申請に係る従事者が特定性犯罪事実該当者であると認められない場合は、その認められないというその旨を、また、特定性犯罪事実該当者であると認められる場合は、特定犯罪事実該当者の区分、拘禁刑なのか罰金刑なのか執行猶予なのかというその区分及びその特定性犯罪の裁判が確定した日などを記載することとしておりますが、対象前科に係る犯罪行為の具体的な内容や当該前科に係る裁判における具体的な量刑、こういったことについては記載しないこととしてございます。
また、子供たちからも信頼をされているような現職者への対応につきましてですが、本法律案において、対象前科ありとされる者、特定性犯罪事実該当者に当たる者の範囲は、過去の性犯罪の再犯状況等のエビデンスに着目し、再犯の蓋然性が高いと判断される者であり、その者をそのまま対象業務に従事させることは望ましくないことから、現職者であって、御指摘のような事情があったとしても、前科ありの旨の回答がなされているときは、基本的には、法律上に例示として規定をしております、その者を教員等としてその本来の業務に従事させないことを講ずることが必要になるものと考えてございます。
○高橋(千)委員 二つ重要な答弁だったと思うんですね。
犯罪事実確認書には、区分と、それから判決が確定した日のみを書くんだと言っているわけですけれども、ただ、採用している者にとっては、その者のいわゆる履歴書など、つまり犯罪とかは別ですよ、履歴書などは持っているわけですよね。そのことと、確定した日と、区分、拘禁刑だったかどうかなどが分かれば、例えば、ニュースですとか判例集ですとか、そういうのを見れば特定できるおそれがある、私はこのことを言いたいと思う。午前中に参考人にも伺いましたし、昨日、法務省にも聞きました。それだけの情報だということを指摘をさせていただきたいと思います。
それから、現場の皆さんが、もう何年も、それは何回も再犯しているというのは別ですよ、何年も頑張っているけれども、そして、子供たちの信頼もかち得て問題がないという人でも、たった一度でも前科があればそういう対応をするんだということは、やはりこれは問題があると思います。
そういうところに、前回質問したように、代わりに入ってくる人も結局同じ、犯罪事実確認ができるまでは特定性犯罪該当者としてみなすわけですから、誰もそれだったら、これだけ人が足りない、教員も足りないと言っているときに、誰もやりたいという人が出てこなくなりますよ。そのことを真剣に考えるべきだと思っています。ここは今日は指摘にします。
それで、再犯を完全に防ぐことはできないかもしれませんが、性犯罪を犯して刑事施設に入所した者や保護観察の者に対して、検討会も行って、性犯罪者処遇プログラムを充実させてきたと思いますが、その基本的理念について伺います。簡潔にお願いします。
○小山政府参考人 お答えいたします。
刑事施設及び保護観察所の性犯罪処遇プログラムにつきましては、効果検証の結果や性犯罪者処遇プログラム検討会の提言などを踏まえまして、その内容を改定し、令和四年度から実施してございます。
改定いたしましたプログラムでは、例えば、夜出歩かないといったような、再犯をしないといったための取組を実行させる指導だけではなく、将来なりたい自分や達成したい目標とその実現に向けた取組を受講者に考えさせ、受講者の前向きな意欲を喚起する内容を加えてございます。
また、このプログラムの受講者自らが再び性犯罪をしないために作成いたします再発防止計画につきまして、刑事施設とそれから保護観察所の様式を共通化するなどいたしまして、刑事施設収容中から出所後までの一貫性のある指導を実施いたしまして、より効果が上がるような改善を図ってございます。
○高橋(千)委員 直近の数字で、性犯罪で入所した者のうちどのくらいの者が更生プログラムを受講しているのか。また、その受講者を選ぶ基準、どのようにやっているのか。簡単にお答えください。
○小山政府参考人 令和四年の新受刑者数は一万四千四百六十人でございまして、そのうち、性犯罪再犯防止指導の受講が必要とされた人数は五百三十四人でございます。
受講が必要とされます者の選定につきましては、入所いたしました全ての受刑者に対しまして、その犯罪事実の内容や常習性の有無、性犯罪につながる問題の大きさなどにつきましてスクリーニングを実施いたしまして、詳細な専門的な調査が必要だと判定された者につきましては、さらに、再犯につながる問題性の大きさや性犯罪の原因となる認知の偏り、自己統制力の不足等を評価して選定をしております。
なお、この性犯罪再犯防止指導の受講の対象とならない者でございましても、必要な者に対しましては、別途認知行動療法に基づくプログラム等を実施いたしまして、問題行動を起こさないように対処する方法を身につけさせるなどしてございます。
○高橋(千)委員 とても大事なことだと思うんですね。今までは直線的に、再犯を起こさないために夜出歩かないとか、そういう指導だったものが、そうでなくて、その人自身の立ち直っていく姿を想像させながらしっかりと寄り添っていくプログラムであるということ。それから、新受刑者のトータルから、まず、いわゆる強制性交とかそういうはっきりしたもの以外の、例えばこの間議論されてきた下着泥棒とかも、窃盗罪になっているから対象にならないみたいにカウントされているけれども、そういうものも含めてちゃんと見ていくという、そういう思想というのはとても大事だと思うんですね。それがしっかりとワークしていけばもっと違う対処方法ができるのではないか、このように思って、更生プログラムを大切にするべきだというふうに思っています。後で大臣にも一つ、そのことを伺いますので。
その前に、一つ飛ばしまして、少年院における性非行防止指導において、一般の成人に対する更生プログラムとは違う特徴があれば伺いたいと思うんです。
特に少年の性非行においては、その非行を行った少年自身が、幼児期の性被害や虐待など、あるいは貧困などにより教育が十分に受けられていないことなど様々な背景がある、こう思うんですよね。この点も含めてお願いいたします。
○小山政府参考人 お答えいたします。
少年院におきましては、まず、少年院に参ります前に、在院者は少年鑑別所というところで鑑別というのを受けてまいります。この結果などを踏まえまして、性非行の原因となります認知の癖や偏りなどが認められる、こういった在院者を対象といたしまして、性非行防止指導を実施しております。
その特徴といたしましては、個々の在院者の特性に柔軟に対応できますように、集団とそれから個別の指導を組み合わせて実施することとしておりますほか、少年院在院中という発達の途上の者であるということを踏まえまして、性非行をしている現在の自分とそれから本来自分がこうありたいといったような姿のギャップに気づかせまして、自分自身の自己理解を深めさせますとともに、性非行に代わる健全な行動を獲得させることなどを通じまして再非行を防止しようとしていることが特徴として挙げられようかと思います。
また、少年院には、知的に制約のあるお子さんなどが少なからずおりまして、その特性に対応いたしましたプログラムを別途実施しておりますほか、このような在院者に対しましては、個別面接などにより個々の理解度を測りながら、必要に応じてフォローアップを行うなど、より丁寧な指導を行っておるところでございます。
○高橋(千)委員 残念ながら、今日とても時間がなくて、時間が来てしまいました。大臣に要望だけをしたいと思います。
今のお話の中で、少年院に入る方の半分は、自身が被害者であった、そういう性被害の経験を持っている、あるいは虐待などの。やはり、子供が子供同士傷つけ合っているという現実もあって、加害者を生まないためにどんなことをするのかということに、やはり多様な選択肢というかアプローチが必要だ、そういう立場からお話をさせていただきました。
ですから、先ほどお話ししたように、更生プログラムの可能性をしっかり伸ばしていく、そうでなければ、やはりどこかに漏れがあって、次から次と犯罪はどこかで起きてしまうということになるので、そういうこともしっかりと踏まえて、もちろん、こども家庭庁だけでなく、法務省だけでなく、連携も取りながら取り組んでいっていただきたいということで、今日はここまでにいたします。
ありがとうございました。