国会質問

質問日:2024年 5月 8日 第213国会 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

人口減少と最低賃金について

最賃・男女賃金の格差解消こそ

人口減少対策めぐり高橋氏

衆院地こデジ特委

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=8日、衆院地こデジ特委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は8日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、人口戦略会議が4月に公表した「消滅可能性自治体」に関連して、転出入にともなう人口減(社会減)の要因に最低賃金の地域間格差などがあるとして、政府の責任をただしました。

 高橋氏は2008年をピークに人口減少が急激に進んでいる背景を質問。加藤鮎子こども担当相は「出生数減の背景には、家事育児と仕事の両立の難しさなど、結婚・妊娠・子育てに関する個々人の希望を阻む要因が複雑にからんでいる」と答えました。

 高橋氏は、人口減の背景に経済的な不安定さもあるとして、男女の賃金格差の是正が必須だとただしたのに対し、加藤担当相は「男女間の賃金差異は、政府としても手を打てる。取り組んでいきたい」と述べました。

 高橋氏は、青森県労連などが作成した資料をもとに、社会減の要因に最低賃金の地域間格差があると指摘。厚生労働省の増田嗣郎審議官は「格差解消は重要だ。昨年度は最高額に対する最低額の比率は80・2%と9年連続で上がっており、引き続き改善に努める」と答えました。

 高橋氏は「東北6県の県労連が試算した最低生計費では、時給1500円は必須で、最賃では月200時間以上の長時間働かなければ暮らしていけない」と強調。「賃金支払能力を考慮」するとした最低賃金法の条文を削除し、国が中小企業支援に責任を持つべきだと主張しました。

(「しんぶん赤旗」2024年5月14日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 二〇一四年にいわゆる増田レポートを発表した人口戦略会議が、先般、二〇二四年版を発表、若年女性人口が二〇一〇年から二〇四〇年までの三十年間で五〇%以上のスピードで急減する地域では、消滅可能性自治体であるとして、七百四十四の自治体が該当すると発表をいたしました。資料の1は朝日新聞の二十五日付でありますが、この消滅可能性自治体の数の多い順から並べておりまして、上から四つが我が東北の四県でして、なかなかの衝撃であります。
 レポートでは、一つは、二十歳から三十九歳の女性が減り続けることは出生数も低下し続けること、二つは、十年前のレポートでは人口流出という社会減に重点が置かれ過ぎて、若年人口を近隣自治体間で奪い合うかのような状況も見られる、このように指摘をしております。
 今日のテーマは、人口減少に政治の責任はないのか、裏を返せば政治の責任でできることはないのか、このことを、短い時間ですが、聞いていきたいと思います。
 まず、加藤大臣に伺います。
 資料の二枚目なんですが、このグラフ、出発点は一一八五年の鎌倉幕府の成立から遡っているんですが、人口が徐々に増え続けてきたものが、二〇〇八年、一億二千八百八万人をピークに急降下しているんですね。この急激な人口減少が進んだのはなぜだと思われますか。大臣の認識を伺います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
 厚生労働省の人口動態統計によれば、出生数が減っている一方で死亡数が増えていることから生じる自然減が、総人口のピークであった二〇〇八年以降の人口減少の理由とされていると承知をしております。
 このうち、こども政策担当大臣として出生数について申し上げれば、その減少の要因は、女性人口の減少、未婚化、晩婚化、そして夫婦の持つ子供の数の減少、この三つであると認識をしております。
 さらに、その背景を申し上げますと、経済的な不安定さや出会いの機会の減少、仕事と子育ての両立の難しさ、家事、育児の負担が依然として女性に偏っている状況、子育ての孤立感や負担感、子育てや教育に係る費用負担、年齢や健康上の理由など、個々人の結婚、妊娠、出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると認識をしております。
○高橋(千)委員 様々な要因が複雑に絡み合っているというのは、そのとおりだと思うんですね。
 それで、問題は政治の責任で何を見るかということなんですけれども、やはり、今大臣のお言葉の中にもあった経済的な不安定さということがあるんですけれども、急激な人口減の背景は、やはり経済ではないかと思うんですね。経済が縮んで、当然、消費購買力も下がる。しかし、デフレの中でも、皆さん御存じのように、企業の内部留保は上がり続けてきたわけです。小泉構造改革やアベノミクスによる新自由主義経済の帰結ではないかと思うんですね。
 安倍元首相が有効求人倍率が一を超えましたと、それを成果として訴えていたことがすごく私は印象に残っているんですけれども、私、実は教員時代は進路担当でありましたので、まだバブル前だったんですけれども、山のような求人票をさばくのが仕事で、求人倍率一というのは、一人に一件しかない、つまり選べないということなので、とんでもない話だ、こういうふうに思ったんですね。
 これは単に、人手不足が急速に進んだからだということであって、決して経済が上向いたということではないというふうに見るべきではないかと思うんですね。ですから、やはり賃金を上げていくこと、長時間労働を是正していくこと、そして男女差別賃金の是正、これは必須だと思いますが、よければもう一言お願いできますか。
○加藤国務大臣 委員の問題意識について、共有させていただくところもございます。特に、今のお話の中で、私の担当する所管として、ここはちょっと、地・こ・デジではありますが、男女共同参画の担当として、あえて申し上げれば、男女間の賃金差異、こういったことは、制度的に、政策的に様々手を打てる部分もあることも考えれば、政府としてやるべきことをしっかり進めていくということが重要だというふうには考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。しっかり大臣の言葉でお答えいただいて、ありがとうございます。
 次に、今度は自見大臣に伺うんですけれども、地方創生特別委員会ができて、まち・ひと・しごと創生法ができたのも十年前だったと思います。しかし、地方創生は東京一極集中の打破を目標としていたはずなのに、結局失敗していると言えるのではないか。市町村合併や広域化が進み、地域の公共交通、医療、学校の統廃合も同じように進みました。人口減だから統合するとなると、負のスパイラルになっていったこと。一方では、地方にやはり人を呼び込まなきゃいけないということで、駅前再開発など、補助金や交付金に合わせた箱もの、それが、どちらかというと、どこも似たり寄ったりのものになっているというのが印象だと思うんですね。これもある意味、政府の誘導策でもあったと思いますが、反省点はあるでしょうか。
○自見国務大臣 お答えいたします。
 地域が抱える課題でございますが、一様ではなく地域ごとに様々でございますので、地方創生の推進に当たりましては、それぞれの自治体が主体的に行う創意工夫の取組を国が後押しすることを、基本的な、まず考え方としてございます。
 それについて申し上げると、具体的には、言及もいただきましたけれども、まち・ひと・しごと創生総合戦略において位置づけてございます地方創生三本の矢を掲げた当時から、国が行う交付金などの財政支援、そして地方への人材派遣などの人的支援、そして情報支援、この三つを活用いたしまして、各自治体において様々な地域課題の解決に向けた取組が進められてきたところでございます。
 そういった地方創生の観点でございますが、現在は四つの柱で、地域に、地方に仕事をつくる、人の流れをつくる、結婚、出産、子育ての希望をかなえる、魅力的な地域づくりの四つの柱とさせていただいておりまして、結果といたしまして、全国各地で地方創生関連の交付金の活用等を通じまして活性化がされてきた側面もあると存じております。
 また一方、このような状況、今申し上げた地方創生、地域が元気になるというところでありますが、私といたしましては、委員御指摘のように地方創生の取組そのものが失敗しているということは、当たらないと思ってございます。
 ただ一方で、もう一つの柱でございます、東京圏への一極集中の課題は依然として残っていると当然ながら承知をしておりまして、この大きな流れを変えることは容易ではございませんが、若年層を中心とした東京圏への過度な一極集中の流れを食い止め、地方に対してしっかりと人口を戻していくことが大変重要だと考えてございます。
 地方の声を十分に伺い、悩みや課題に寄り添いながら、地方の活性化、地域活性化にしっかりとつなげてまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 もちろん、その政府が進めてきたことを失敗と簡単には言えないというのは、それは当然だと思います。ただ、一極集中の是正という点では、まだまだ成功していないということはお認めいただいたと思う。
 やはり、指摘された、近隣の市町村、都道府県で、同じことをやっていればどうしても違いが出ない、あるいは奪い合いになっているという指摘も一部当たっているということになるのかなと思っております。今日は、ここは芽出しでお話ししておきました。
 そこで、社会減、社会的な減少、この要因になっているのが、私は最低賃金の格差が大きいと思います。
 資料の3を見ていただきたいんですが、これは、日本地図に最低賃金を落としました。全国平均が千四円といいますが、実際に千円を超えているのは八都府県にすぎません。この赤い色だけです。
 次に、資料の4なんですけれども、私の青森県と東京都を比較しますと、残念ながら、その差二百十五円で、大体一・三倍の格差で、ほぼずっと横ばいで固定しているということになります。
 それから、資料の5なんですけれども、これは、全都道府県の社会増と社会減が棒グラフです。それに対して、折れ線グラフが、これは昨年の数字ですけれども最低賃金だと。そうすると、やはり高いところに人口が寄っているということは言えると思うんですね。
 これは青森県労連が作成したものでありますが、同様の趣旨のグラフというのは、多分、与党の皆さんも御覧になったことはあると思いますし、予算委員会でも議論になりました。チェーン店では、仕事の内容は同じなのに、川を渡れば隣の県になって賃金が全然違う、こういう事例も紹介されてきたわけです。
 そうなると、やはり最低賃金の格差が人口流出並びに地域格差とリンクしているということはあると思いますが、これは厚労省に伺います。
○増田政府参考人 お答えを申し上げます。
 御質問にございましたように、最低賃金につきましては、昨年度、全国加重平均で四十三円の引上げを行い、政府目標でありました全国加重平均千円を達成したところでございます。
 御指摘の労働者が都市部へ移動する理由につきましては、仕事のほか、教育や家族の事情などがあると承知をしているところでございます。
 一方で、最低賃金の地域間格差は改善していく必要があると考えておりまして、最低賃金審議会におきまして地域間格差の観点も含めて御議論をいただいた結果、最低賃金の最高額に対する最低額の比率につきましては、昨年度八〇・二%と、九年連続で改善をしているところでございまして、引き続き、地域間格差の改善に向けて取り組んでまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 何度も質問をしてきましたので、改善してきているというのは分かるんです。ただ、スピード的には全然追いついていないと言えるのではないかと思うんですね。
 資料の最後のところを見ていただきたいんですけれども、これは、東北六県の県労連の皆さんが、一番下に最低賃金を書いているんですけれども、それに比較して、実際に最低生計費、一月どのぐらいかかるかなというのを、自らの体験を通して試算した数字なんですね。
 どうやってそれを採用するかというのにはとてもいろいろな議論があって、例えば、見ていただくと、書籍費がゼロですとか、かなり我慢しているわけですよ。町会費三百円とあるんですけれども、これも前はゼロ円で数えていた。それはやはり社会的に問題じゃないかというので、町会費は入れましょうとか、そういう涙ぐましい努力をして計算をしていくと、やはり、例えば青森市でいうと、消費支出は十七万九千五百二十二円、それで、本当であれば、時給、百五十時間換算でいうと千六百六十四円必要ですよねと出るわけです。そうすると、これを、この最低生計費をこの当時の最低賃金で割ると、月二百九時間働かないとこの分が稼げない。そうすると、常に超過密労働ということになってしまうわけですよね。
 中央最賃の審議会であっても、この最低生計費というのは当然考慮すると思うんですけれども、こうした観点からいくと、健康で文化的な最低限度の生活というふうに言えるのかどうか。どのようにお考えでしょうか。
○増田政府参考人 お答えを申し上げます。
 最低賃金法におきましては、各地域における労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力を考慮して最低賃金を決定することとされているところでございます。このうち、労働者の生計費につきましては、労働者の生活のために必要な費用をいうところ、これは、最低賃金制度が労働者の生活の安定に資することを目的としていることからも重要な要素であると認識をしております。
 最低賃金の審議の際には、生活保護基準に関する資料や、また、各都道府県の人事委員会が作成いたしました標準生計費などの資料も踏まえ、公労使の委員に御議論をいただいているところでございます。
 引き続き、こうした資料等を踏まえ、公労使三者構成の最低賃金審議会において、毎年の最低賃金額についてしっかりと御議論いただきたいと考えております。
○高橋(千)委員 前提は、例えば格差を是正するべきだとか、最低生計費が必要だということの前提は一致しているんだけれども、そこが、結局、実態がずれていくのはなぜかというときに、やはり、今答弁の中にあった中小企業の支払い能力、これを盛り込んでいるからなんですね。総理が二〇三〇年までに全国一律千五百円なんと言っていますが、この委員会の議論で二〇三〇年までが勝負だとか最後のチャンスだなんと言っているときに、そこまで延ばすというのは、全然追いつかないわけなんですよ。
 やはりこれは、中小企業の支払い能力を勘案するという条文を削除して、国がもっと中小企業を支援するということを明確にするべきだと思います。いかがですか。
○増田政府参考人 お答えを申し上げます。
 繰り返しになりますが、最低賃金法では、各地域における労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力を考慮して最低賃金を決定することとされております。
 最低賃金につきましては、法的強制力をもって労働者の賃金の最低額を保障するものでございますので、国民経済や各地域の経済力とかけ離れた水準で決定されるものではなく、三要素のいずれも考慮されるものと考えております。
 最低賃金の引上げに当たっては、中小企業が賃上げしやすい環境整備が必要であると考えておりまして、厚生労働省としては、中小企業の生産性向上の取組を業務改善助成金で支援をしており、中小企業庁などとも連携しつつ、引き続き中小企業への支援に取り組み、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指すとした目標につきまして、より早く達成できるよう取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 各地方審議会が、最賃審議会が、やはり中小企業に対する直接支援を行ってほしいと。そうじゃなければ、これはやはり、極端に増やすことを、必要だと思ってもできないという要望が各県から出ているわけですから、それをちゃんと受け止めていただきたいし、もちろん、これが要因、たった一つだとは言いませんけれども、社会減の大きな要因となっているという点では、本気で向き合っていただきたいと思います。
 もう質問する時間がないのでここは言いませんけれども、女性の担い手が多い保育、介護、看護などの分野を、これでも、やはり賃金が違うために都市部に取られてしまう、こういう実態がありますので、これは本当に本気で取り組んでいただきたい。これは要望にします。済みません。
 それで、二〇一四年のレポートの衝撃は大きくて、地方自治体にも非常に衝撃を与えたんですが、同時に、子育て支援策を充実強化して、消滅可能性自治体を脱却したところもたくさんあるわけなんですね。その中でも、やはり特筆すべきなのは、子供医療費無料化を本当に各地で頑張ったことではないかと思うんです。
 子ども医療全国ネットによれば、二〇一五年までに、都道府県議会四十七のうち四十二の都道府県議会で国による医療費無料化への意見書を採択しています。二〇一二年までには、入院について、就学前以上とした市町村は一〇〇%となっています。二〇一四年で、高卒以上を対象に助成している市区町村は、通院で二百二、入院では二百十六になっていました。
 それで、ちょっと時間がないので、これが今現在どうなっているかということと、国として、やはり位置づけて、無料化に踏み込むべきだと思いますが、済みませんが、大臣、お願いします。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
 まず、前段の現状というところでございますが、二〇二三年四月一日現在、高校生以上の子供医療費の援助を行っている自治体は、通院で千二百九市町村、入院で千二百七十七市区町村となってございます。これが今、現状の最新のデータでございます。
 さらに、先ほど後段の御質問の、更に踏み込むべきではないかという御質問に対してですけれども、子供の医療費につきましては、医療保険制度において、就学前の子供の医療費の自己負担が三割から二割に軽減をされており、これに加えて、各自治体独自の助成制度により、自己負担の更なる軽減が図られているものと認識をしております。お話のとおりだと思います。
 一方、国の制度として子供医療費の助成制度を創設することにつきましては、医療費の無償化による受診行動への影響なども見極める必要があるなど、課題が多いものと考えております。子供の医療費の負担軽減につきましては、基盤となる国の制度と各地域における様々な実情を踏まえた地方自治体による支援が、両方が相まって行われることが適当であると考えております。
○高橋(千)委員 これで終わります。急降下の人口減少に対して、国の施策はまだまだ遅々として、ゆっくり過ぎるかなというふうに思いますので、引き続きお願いしたいと思います。
 終わります。

【資料】2024.5.8 地域・こども・デジタル特委 提出資料

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