国会質問

質問日:2014年 2月 21日 第186国会 厚生労働委員会

労働者派遣法改悪を批判

EU派遣は均等待遇 / 高橋議員 日本の法改悪批判

 日本共産党の高橋ちづ子議員は21日の衆院厚生労働委員会で、今国会提出の労働者派遣法改悪案を批判しました。
 高橋氏は、政府の規制改革会議のワーキンググループがEU諸国を例にあげ、派遣社員を正社員の代わりに使う「常用代替」を解禁せよと求めていることを指摘。「そもそもEU諸国はEU派遣労働指令により、派遣先の正社員との均等待遇という原則がある。この均等待遇に踏み込まずに常用代替だけというのは議論にならない」と指摘しました。
 田村憲久厚労相はEU諸国と状況が違うと認め、「非正規と正規の待遇をなるべく近づける努力をしていかなければならない」との考えを示しました。
 高橋氏が、厚労省の研究会による報告書(昨年8月)が「派遣先は派遣労働者を、雇用主の責任を負わずに容易に入手できる労働者とみる傾向が生じ利用が拡大する」と指摘していると迫ると、厚労相は「雇用の安定性は確かに直接(雇用)の方があるのかもしれない」と認めました。
(しんぶん赤旗 2013年2月24日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、十四日の予算委員会に続いて、派遣法改正について、少し積み残しがありましたので、質問させていただきたいと思います。きょう、三十分でも足りないんですけれども、お願いをしたいと思います。
 まず、前回はちょっと期間制限に絞って質問いたしましたので、専門二十六業務についてから始めたいと思います。
 専門二十六業務については、私自身も何度か具体的な事例なども、この間、委員会でも取り上げまして、コピーだとかお茶出しだとか、普通の一般事務をしているだけで、二十六業務だと届け出て期間制限を免れている名ばかり専門業務のような、そういう実態を質問してきました。
 専門業務についての見直しは必須だと考えていたわけですけれども、今回の提案は見直しではなく廃止であります。これはなぜでしょうか。

○田村国務大臣 二十六業務というところに着目して、期間制限がないというようなことをやってきたわけでありますが、そもそも、今までの期間制限が非常にわかりづらかったということもございまして、そこは、今般は、働く方、派遣労働者、そして派遣先というところに注目して期間制限という形にさせていただいて、二十六業務を廃止させていただく、そういう法案であります。
 それはなぜかというと、やはりその二十六業務という業務に制約がありますから、そういう意味では、派遣労働者の方々がキャリアアップする中において非常に窮屈だということもあるものでありますから、そういうことを踏まえながら、二十六業務を今般廃止させていただくという法案を出させていただいたわけであります。

○高橋(千)委員 今の大臣の答弁、ちょっと驚いたんですが。というのは、オブザーバー参加をした派遣業界の皆さんがそういう趣旨のことをおっしゃっているんですよね。
 これは、例えば昨年十月十日の労働力需給制度部会なんかでは、業界のオブザーバーが、二十六業務は極めて厳格で、割合も規制されている、この割合というのは、要するに専門業務と付随業務との割合がこうでなければならない、こういうのがあるので、フレキシブルに対応するのが難しくて、職場に合わない、あるいは、専門業務以外の知見、経験を広げることができず、キャリア形成を妨げている、あるいは、派遣の仕事を職場の業務に合わせることが現実的ではないかということまでおっしゃって、期間制限の廃止とセットでやるべきだと。
 私、言いたい放題だなと思うんですが、特に、その後、専門二十六業務は高度に専門性があるというわけではないはずだ、単純業務も含まれている、ここまで言っている。
 そうすると、語るに落ちるというんですか、専門業務ということをあえて区別してきたのに、それをごっちゃにしてきたのは自分たちなわけでしょう。単純業務をやらせるために名ばかりだった。偽っておきながら、今度はこれをなくす。つまりは、自分たちに都合がいいように違法を合法化することになる、こういう改正であってはならないと思いますが、いかがですか。

○田村国務大臣 二十六業務を残した方がいいというような御意見のもとでおっしゃっておられるのか、ちょっと私はよくわからない中で御質問を今受けているわけでありますけれども。
 決して、二十六業務自体を取っ払うということ自体、今まで二十六業務という範囲が、ここしかだめですよというものをなくすこと自体を合法化するものではありませんでして、ちゃんと期間制限がある中におきまして、その期間制限の一つの基準というものがわかりやすいので、そこを変えたということでございます。そういう意味では、決して合法化とかそういうような問題で今般のことをやっているわけではございません。

○高橋(千)委員 二十六業務、そのまま残せなどということは言っていなくて、もっと厳密に、限定的に絞るべきだという趣旨でお話をしていました。
 これは当然時代によって変わってきたということは、議論をされていたわけですよね。ファイリングだとか、かつてはタイプライターが貴重な時代だったかもしれないけれども、今では誰でもパソコンを打つ。そういうことで、見直しが求められてきたのは当然なわけですよね。
 だけれども、それを、だから廃止だというと、結局、この間も指摘をしましたが、限定的であることとか一時的であるとかということがもう全部なくなっちゃって、もうどこでも派遣が可能だよということになるから問題だと言っているんです。
 ちょっと具体的な話をしますけれども、当時、この問題が非常に議論されたときに、野党だった自民党さんは強く批判をしました。なぜかというと、規制を強化すれば労働者が逆に派遣切りに遭う、要するに、適正化プランをやりますよね、そうすると、二十六業務に合わないということで逆に派遣切りされるということを随分指摘されました。野党時代の自民党さんが、大臣も含めてですね。
 そうすると、私は、これをやっちゃうと、厳しくすれば労働者が切られるじゃないか、だったら、では、むしろ実態に合わせようという議論になって、どこまでも実態に合わせようといって、どんどん緩くなっちゃう。そうすると、やはりいつまでたっても派遣のまま、問題があっても泣き寝入りのままではいけないということを考えなくちゃいけないんですね。
 それで、適正化プランを二〇一〇年の三月から四月の二カ月間、取り組みましたね。どのような成果があったでしょうか。

○宮川政府参考人 お答えいたします。
 専門二十六業務適正化プランでございますけれども、派遣可能期間の制限を免れることを目的として、契約上はいわゆる二十六業務と称しつつ、実態的には二十六業務の解釈を歪曲したり拡大させたりしていて、二十六業務以外の業務を行っているという事実が当時散見されていたところ、平成二十二年の二月に、二十六業務の適正な運用について関係団体に要請するとともに、都道府県労働局におきまして、二十六業務の派遣適正化のための指導監督を平成二十二年の三月及び四月に集中的に行うことを内容といたしました専門二十六業務派遣適正化プランを実施したところでございます。
 その結果、この集中的な指導監督期間でございます三月、四月における指導監督の実績といたしましては、指導監督件数が八百九十一件、そのうち文書指導を行ったのが二百二十七件であり、行政処分を行った件数が四事業主ということでございます。

○高橋(千)委員 それで、もともと専門二十六業務というのは、期間制限はないかわりに、三年を超えて新たに労働者を雇い入れる場合は、優先雇用申し込み義務がありました。これを二〇一二年改正で削除してしまったわけですね。もともとこれは、専門業務というのは雇用が安定しているからだという理由で削除してしまった。つまり、ずっと期間がなくなったわけですよ。
 今回は、大臣がさっきおっしゃったように、もう期間でそろえるんだ、逆に、長く働かせるという意味ではないんだということでおっしゃったわけですよね。
 でも、だったら、これまで、この人たちは安定しているんだといってずっと働かせてきた人たちを、ちゃんと、その実績を見て、一旦削除した優先雇用、あるいは、もう実態からいうとみなしですよ、やられるべきじゃないでしょうか。どう思いますか。

○田村国務大臣 今、直接雇用を優先的にという話がありましたが、基本的に今回も、これは雇用安定化策で、要は措置で、直接雇用を依頼するというような文言は派遣元に義務づけたわけであります、幾つかありますけれども。
 ですから、そういうことはやれるんだろうというふうに思います。本当に働ける、自分のところで欲しいという話になれば、直接雇用ということもあるかもわかりませんが、私はいつも思うんです。直接雇用でも、正規ならば、それはそれで大変意味のあることだと思いますけれども、直接雇用であってもそのまま有期であったとすれば、また雇いどめをされれば、そのときには雇用は非常に不安定になるわけですね。ですから、派遣はだめだ、直接雇用の非正規はいいというような議論は余りしたくない。
 ですから、ある意味からいたしますと、より安定したという意味で、直接雇用ということになればそれはいいと思いますし、その直接雇用の、言うなれば義務化といいますか、依頼の義務化も、やはり御本人がそこは納得しなければ、当然、そのまま派遣を選ばれるわけでもありますし、そこはやはり本人の意向というものはかなり重きがあるのであろうと思います。
 いずれにいたしましても、そういうことも含めて、今回はキャリアアップでありますとか、いろいろな政策を入れているわけであります。派遣元にしてみれば、かなりこれは大胆な改革であろうというふうに我々は思います。
 ですから、そういう中において、より安定した処遇の改善ができる派遣労働、もしくは、それからさらに一歩進んだ正規雇用へと進んでいくような施策に、我々としては温めてまいりたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 話をごっちゃにしちゃだめなんです。
 有期なら不安定とおっしゃいましたけれども、優先雇用申し込み義務というのは、同じ職場で同じ仕事をしていて、正社員を雇うんだったらこの人が先でしょうという意味ですよ。でも、その人が、私、嫌よと言ったら、それを無理やりやれという話じゃないですよ、優先雇用申し込みなんですから。それさえもやらないということが問題じゃないかということを指摘しているんです。意味わかりますか、いいですよね。
 次、言いますけれども、国が是正指導したら、解雇をされて、闘っている女性がおります。
 この方は、派遣会社スタッフサービスから日赤の献血センターに、専門業務五号、OA機器操作として派遣されていた廣瀬明美さんという方です。その後、是正指導がスタッフサービスに対して何度もやられて、それで、十六号、受付に変更したりしているんです。でも、実態は受付でもないしOAでもなくて、さまざまな分担をしていた一般業務だったということなんですね。三カ月契約を三年三カ月の間更新して更新して、廣瀬さんは、〇九年の十月二十日に、神奈川労働局に職場復帰と違法派遣の是正勧告を申告いたしました。
 実はこの廣瀬さんの申告に対する対応が、先ほど私が質問した、二〇一〇年三月の専門二十六業務派遣適正化プランの最初の事案だったんです。これは、厚労省と東京労働局が業務改善命令をやりました。残念ながら彼女は切られたんですが、以後の派遣労働者は、違法派遣であるということで、直接雇用しなさい、そういう指導になったはずです。局長、御存じでしょうか。

○宮川政府参考人 個別の案件については直接お答えすることは避けたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、現行法において違法な派遣に対しては厳正に対処するという立場で、現在、業務を運営しております。

○高橋(千)委員 そういうのはわかっていて聞いているんですよ。自覚していただきたかったから。
 廣瀬さんの申告によって、違法派遣、一定は是正されたわけです。だけれども、彼女自身は職場に戻ることができずに、以来、丸四年間闘っています。その間、なかなかその相手との関係は不調なんですけれども、裁判所は実は和解をあっせんしているんですね。それは、詳細な内容は和解ですので明らかにできませんけれども、やはり職場に戻る方向であっせんをしているということなんです。
 廣瀬さん自身は、事前面接もありました。特定行為ですよ。いずれは直接雇用というような話もありました。新規展開への配属を采配したりとか、受付、接遇、広報など、まさに献血センターの看板的な役割ですね、そういう役割を果たしてきたんです。
 これは、言ってみれば、みなし制度ができていれば救われていたはずですよね。だって、是正勧告の後の人は救われているわけですから。彼女は一日も早く職場へ戻りたいと言っているだけなんです。献血は国民一体の愛の助け合い運動なわけですよね。その名のとおり、血の通った仕事がしたい、こう述べているだけなんです。
 だから、大臣にもう一回聞きますけれども、一般論でいいですからね。違法派遣としてもう何度も指導を受けている、こういう違法派遣は実態を見て直接雇用にやっていく、これがみなし雇用制度ですよね。これは前向きにやっていくんだということであるべきなんだということで、いかがですか。

○田村国務大臣 今般、そのような違法派遣が減るようにということで、許可制というものを盛り込ませていただいて、今までの特定派遣、登録のみで業ができる、こういうものに関してはやめようという方針であります。
 いずれにいたしましても、みなし制度自体は、違反があればそのような形になっていくわけでございますし、今般は、みなし制度に関しましては見直しはされなかったわけであります。もちろん、期間制限のところは若干変わっておりますけれども。そのような中において運用されていくということになろうと思います。

○高橋(千)委員 間違いなくこれは違法派遣の実態でありますから、裁判所自体が認めているし、労働局が指導しているわけですから。そこに労働局が、いや、だけれども、だめよという話ではないと思うので、やはり、これは前向きに議論をしていただきたいなと思うんですね。
 このみなしの問題は、派遣先との関係を明確にしたという点で非常に重要なものなんですね。派遣元というのは、やはり派遣先との関係が弱いですから、いろいろ言っても、お客様の都合です、こんなことを言われたりとか、お願いベースでしかないわけですよね。そこを打ち破ることができなければだめなんだということが、やはり問われるのではないかなと思っています。
 そこで、次の話題に移りますけれども、派遣元に無期雇用される派遣労働者に対して、期間制限をなくすとしています。まず、この無期雇用というのは、いわゆる民主党時代は常用雇用という表現を使っていまして、私の質問に対して長妻元大臣が、一年以上継続していれば常用雇用と呼んでいた。これと無期雇用は違うんだということで、明確に違いを御説明ください。

○宮川政府参考人 現行の労働者派遣法におきます常時雇用される労働者とは、一つはまず、いわゆる期間の定めなく雇用されている労働者でございますが、もう一つの類型としましては、雇用期間が反復継続されて、一年を超える期間引き続き雇用されている方または一年を超えて引き続き雇用されると見込まれる方、この二つのものを指すものと解釈しております。
 一方、今回の無期雇用される派遣労働者とは、字義のとおり、期間を定めないで雇用される派遣労働者のみを意味しているものでございます。

○高橋(千)委員 明確に違うということをまず御説明いただいたと思います。
 派遣労働者の六四%が常用雇用なわけですけれども、そのうち正社員というのは一五・二%で、それでも無期雇用というのは六・四%にすぎない、こういう実態なわけですね。だから、反復しているのを見て、常用雇用だから安定だ、そういう議論はもうないということをまず確認していただきたいと思います。
 その上で、リーマン・ショックの時代も、当時は常用雇用と言っていた人たちが、七七・一%が離職し、九四・三%が解雇されたわけですよね。そういう意味では、本当に安定していなかったということは、実例としてわかっているんですね。
 今回は、それが無期雇用だからといって、本当に安定できるだろうか。これはちょっと予算委員会のときも私も言いましたけれども、つまり、派遣の契約がなくてもずっと雇用を維持していて、派遣会社が教育訓練などをやってくれる、そういうことを言っているんだと思うんですけれども、それは担保できているんでしょうか。

○宮川政府参考人 今回の建議におきましては、先ほど先生からお話ありましたように、常時雇用する労働者という考え方、これは使われる場面が二つございまして、そのうちの一つは、特定か一般か、許可か届け出かという関係での問題。それから、今回のような問題のときに、いわゆる無期雇用、安定しているかどうかという議論の際の一つのカテゴリーとしての考え方でございます。
 今回の建議の中におきましては、特定派遣につきましては、先ほど大臣の方から御報告させていただきましたように、いわゆる許可制に全て統一する。一方で、いわゆる派遣労働者の中で、無期雇用の働き方という形の中で、いわゆる派遣契約の終了を理由として解雇するというようなケースがあるのではないかという議論もあり、今回の建議の中では、「派遣元事業主は、無期雇用の派遣労働者を派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないことを指針に規定すること、また、派遣契約の終了のみをもって解雇しないようにすることを許可基準に記載することが適当である。」旨、記載されているところでございます。

○高橋(千)委員 当面は終了のみをもって解雇はしないと。だから、かなりハードルが高いぞということが、我々にしてみればかなり全面解禁のような法案だなと思っているんだけれども、派遣会社の方はむしろそれがまだきつい、厳しいという意見が出ているという中でのことなのかなと思っています。
 それで、昨年の十月の規制改革会議のワーキンググループの報告書では、派遣制度に関して、依然として、正社員の仕事を奪うべきではないとする常用代替防止が規制の根拠として維持されている、非正規労働者が全体の四割近くなった現在、派遣法だけが常用代替防止を通じて従来の日本的な雇用慣行の維持を法の基本原則とすることに固執するのは妥当ではないとして、常用雇用の代替防止という考え方そのものを見直せと迫っているわけですよね。大臣は同じなんですか、考え方。

○田村国務大臣 前回、予算委員会でも申し上げましたけれども、十一年改正のときにネガティブリストを導入した、このときに、臨時的、一時的なそういう働き方であるということであって、労働需給の調整、そういうような役割であるということであり、常用雇用代替ではないですよというような話になったわけであります。
 そういう意味からいたしますと、今般の改正、提出をさせていただく法案に関しましても、これは常用雇用の代替ではないという、そこは我々は認識のもとで法案を提出させていただくわけであります。

○高橋(千)委員 大臣の気持ちを聞いたんですけれども、ないとおっしゃる。はい、どうぞ。

○田村国務大臣 期間制限も入れておりますし、それは常用雇用の代替ではないという中において今般の法律を提出させていただいたということであります。

○高橋(千)委員 規制改革会議の議論というのは、何で常用代替防止という概念をやめろと言っているかというと、これはカテゴリーが違うんだという話をして、正社員の保護と期間の問題は違うんだという話を一つしているのと、諸外国ではそういう考え方というのがもうないじゃないか、EUなんかでは、濫用防止という表現はしているけれども、常用代替の防止ということを言っていない、このように指摘をしているわけなんですね。
 やはりここに大事なことが隠されていて、つまり、EUではもともと均等待遇という原則がありますよね。ですから、常用代替するメリットがないわけです。それを議論する必要がないわけですよね。
 二〇〇八年の十一月十九日に採択されたEU派遣労働指令では、第五条第一項、均等待遇原則、派遣労働者の労働雇用条件は、その利用者企業での派遣期間中、同一職務に直接採用されている者に適用されたものを下回らないものとする、こういうふうに書いている。
 そうすると、派遣先の正社員と派遣労働者が均等待遇できていれば、一時的な使い方が必要なんだということ以外に、わざわざ派遣を雇用する必要がないわけですよ。つまり、同じ人を雇っている方が企業にとってはプラスになるわけですからね、技術がスキルアップしていく。
 そこを踏み込んでいないわけでよ、今回は。均衡処遇で少し踏み込んだ、通勤手当くらいのお話ですよ。それで、日本だけが世界とは違うと。前提が違うんだから、それはおかしくないでしょうか。

○田村国務大臣 委員おっしゃられたとおり、ヨーロッパと日本は形態が違うわけで、職務給であるヨーロッパは、派遣先というか、そことの給料の待遇も同じでありますが、他の企業でも、同じような職務であれば、ほぼ同じような賃金体系になっているわけですよね。
 日本は、今般の場合、我々も、均衡待遇という意味からいたしまして、派遣先の従業員の方々と同じような働き方ならば、なるべく同じような賃金に合わせていただければありがたいなというような方向ではありますが、それでも、ほかの企業の同じ職務とは違うわけであります。
 そういう意味からいたしますと、同じ派遣会社で同じ職務であっても違うということが起こるわけでございまして、そこは日本がやはりヨーロッパと体系が違うところであるわけであります。そのような意味からすれば、我々といたしましても、常用代替の防止というような意味で、今般の改正が常用代替を促すものではないというような中において提出をさせていただいておるということであります。

○高橋(千)委員 均等待遇に踏み込みたいということは確認をしてよろしいんでしょうか。

○田村国務大臣 今も申し上げましたとおり、制度が違いますから、ヨーロッパで言っておるような均等待遇まではなかなかすぐには難しいわけであります。
 しかし、非正規で働く方々、そして正規で働く方々、それぞれがその仕事の内容に応じてなるべく近づけていく、こういう努力は我々はしなきゃいけないと思っておりますし、多様な正社員というものを、職務という形でその側面から捉えていけば、そのような形に近づいていく一つの道のりであるのではないのかな、私はそのようにも思っておる。これはちょっと御賛成はされないのかもわかりませんが、そういう認識を持っております。

○高橋(千)委員 この均等待遇というのは、確かに技術的な難しさということを多分おっしゃっているんだと思うんですね。
 パートタイムの問題でもずっと議論してきたじゃないですか。さっきから大臣は、派遣の話をすると、いやいや、派遣だけじゃない、期間社員だっているんだという話をしますよね。だけれども、これも、EUはもっと早く、九七年にパートタイム労働指令を出しております。ここには、もう均等待遇どころか、差別の廃止ということで書いているわけです。
 要するに、パートタイムというのは、働く時間が正社員より短いだけだ、その時間だけを切り分ければ待遇は同じなんだ、そういう考え方がもうずっとあって、日本だって、少しでもそれに近づけようと研究してきたわけですよ。全く白地ではないわけです。そういう立場に立って、いかに近づけるのかということがなければならない。いや、ちょっと待ってください。
 そういうことでいうと、例えば、派遣先の労働組合にただ意見を聞くというだけじゃなくて、これも積み残しになった、民主党が政権を交代する前に案として挙げていた派遣先への交渉権ですとか、やはりこういうものを対等に持っているということで初めて、常用代替の防止ではないんだよ、こういう議論ができるんですよ。そういう土台がないのに、そこだけ比べて、もう世界には日本だけだ、厳し過ぎるとかという議論をしているから、指摘をさせていただいたわけであります。
 もう一つだけ質問したいので、それで後で答えていただきたいと思うんですが、実は、昨年八月二十日に出された今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書、これは、本来であれば今回の労政審の建議の土台となっているものですけれども、ただ、研究会の報告書自体もいろいろ問題がありますが、報告書と建議の間にいろいろ意見を言った人がいるわけですよね。その中で大分変わってしまった。私は、大事なことを指摘していると思います。
 つまり、「労働者派遣は、派遣元事業主が雇用した労働者を派遣し、派遣先が」「指揮命令を行う間接雇用の仕組みである。」「派遣先は派遣労働者を、必要なときに、雇用主としての責任を負わずに容易に入手できる労働力として見る傾向が生じ得る。」「このような性質のため、他の非正規雇用より利用が拡大しやすい」、こう指摘をしているんです。
 政府の研究会の報告書ですよ。つまり、よく、派遣だけじゃないとか、なぜ派遣だけを言うんだということをおっしゃいますけれども、間接雇用なのは派遣だけなんですよ。そのことに着目して、研究会は、安易に使われることがある、あるいは、ほかの非正規雇用より利用が拡大しやすい、そういう指摘をしている。
 まずそこから出発をすれば、こんな建議は出てこなかったなと思うんですけれども、やはり間接雇用という弊害を、労働者を強制労働させたりピンはねさせたり、その原点に立ち返って、本来、やるのであれば抜本改正をするべきだというふうに思っておりますが、さっき、大臣、手を挙げたので、あともう一回、時間ですので。

○田村国務大臣 済みません、まず、一点訂正いたしますが、まだ提出しておりませんので、今、建議をいただいた中において議論をさせていただいておるということであります。
 その上で、今の御意見も含めて、派遣先の配慮義務も今回は入れさせていただいたわけであります。でありますから、派遣先に関しましても、やはり一歩も二歩も前進をいただくという話になります。
 もちろん、間接という形は確かでございますから、その点の雇用の安定性という部分は、確かに直接の方が安定性はあるのかもわかりませんが、一方で、一般的な賃金を見ますと、派遣の方が契約社員等々よりも高く出ておる等々という数字もございます。
 でありますから、それも含めて、今般、派遣元もかなりこれは規制を強化した部分があって、しっかりと派遣先の方にいろいろなことを言っていくということにもなっておるわけでございますので、その部分を含めて、今般の建議のもとでこの後提出をさせていただく予定の法案でございますが、じっくり御議論をいただければありがたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 終わりますが、一言だけ言わせてください、ちょっと大臣の答弁で。
 今大臣、また賃金の話をした。予算委員会のときに、派遣の方が契約よりも賃金が高いという話をしたでしょう。でも、午前中に自分でそれを否定したじゃないですか。期間社員は、要するに、短時間労働者もいっぱいいるから、それとならせば派遣の方が高くなるのは当たり前だと自分自身が指摘をしておきながら、それをまた私に対しては、派遣の方が賃金が高いからなどというふうに言うのはだめなんです。
 そういう比較ではなくて……(田村国務大臣「時給換算」と呼ぶ)もういいですから。時給換算。これは十二で割るから、こうなるんですよ。なので、間接雇用は安定性に欠けるということはお認めになりましたので、この続きをまたやりたいと思います。
 ありがとうございました。

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