国会質問

質問日:2024年 5月 9日 第213国会 本会議

こども性暴力防止法案

性犯罪から守れるのか

高橋氏 日本版DBS実効性問う

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=9日、衆院本会議

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認する「日本版DBS」の創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法案」が9日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の高橋千鶴子議員が質疑に立ち、子どもの性暴力被害をなくす観点から「法案はどのような効果をもたらすのか」とただしました。

 高橋氏は、子どもへの性暴力は心身を深く傷つけ「人生への影響は計り知れない」と強調。その上で、認可外保育施設などが性被害防止措置義務化の対象外となっているとし、「対応に差をつけながら、すべての子どもを性被害から守ることができるのか」と同法案の実効性について質問しました。加藤鮎子こども担当相は「申請して認定を受けた場合は実質的に義務化と同程度になるよう努める」と答えました。

 本法案は、国が性加害の前科がある者のデータベースをつくることで、子どもと接する仕事に就けないようにするもの。前科がなくても性暴力の「おそれ」がある場合には、子どもと接する業務から外す対応を求めます。高橋氏は、おそれの判断基準についてただし、「解雇権の乱用や不利益変更が問われる場合もあるのではないか」と迫りました。加藤氏はガイドラインで示すと述べるにとどめました。

 高橋氏は、加害者、被害者を出さないために、「加害者に対する更生プログラムを充実させること」が必要だと指摘。加害者への医学的治療のほか、互いの人権や多様性を学ぶ包括的性教育などの必要性を訴えました。

(「しんぶん赤旗」2024年5月10日付)

 

ー議事録ー

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、子供性暴力防止法案について質問します。(拍手)
 若年層の約四人に一人が何らかの性暴力被害を受けたことがあるといいます。社会的地位を背景にした事案が多く、人が信じられなくなった、相談まで十年以上かかったなど、長期に影響を与え、訴えてもセカンドレイプになるという現実があり、だからこそ性暴力は魂の殺人と呼ばれています。自ら声を上げた被害者、支援者たちが国会を動かし、ようやく昨年、不同意性交罪を認める刑法の見直しがされました。
 とりわけ、子供の性暴力被害は、意味も分からないまま、信頼していた先生が加害者になるなど、子供の心身を深く傷つけ、人生に与える影響は計り知れません。本法案は、日本版DBSと呼ばれるように、国が性加害前科のある者のデータベースを作り、子供に関わる仕事に就けないようにします。子供の性被害を絶対になくすために、法案はどのような効果をもたらすのか、伺います。
 二〇二一年に成立した教員性暴力等防止法並びに翌年の児童福祉法改正により、特定免許状失効者等と保育士の登録を取り消された者等について、それぞれデータベースが整備されています。今回新たにつくる登録制度とこれらの制度との違いは何ですか。施行からまだ二年、どのような効果、弊害があるか、検証が先ではないでしょうか。
 今回、認可された学校、保育等施設のみに性被害防止措置が義務づけられます。子供の目から見れば、認可外であっても教育、保育の場であることに違いはありません。性被害防止措置を取れる体制があるかなしかで対応に差をつけておきながら、全ての子供を性被害から守ることができるでしょうか。
 法案は、犯罪事実確認の結果、前科がある場合は教育、保育等の業務に従事させないなどの防止措置義務を学校設置者等に課しています。それ以外に、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると判断するのはどのようなときか、お答えください。労働契約法による解雇権の濫用や不利益変更が問われる場合もあると考えますが、見解を伺います。
 文科省の指針では、任命権者が特定免許状失効者を任命又は雇用することはできますが、もし当該者が再び児童性暴力等を行った場合は、任命権者が損害賠償の責めを負う場合があると書かれています。これでは任命権者が重大な責任を負うことになりますが、見解を伺います。
 犯罪歴の扱いの問題です。犯罪歴は、個人情報保護法においては本人も開示請求できないなど、最も機微な個人情報とされています。漏えいや目的外利用を禁じているとはいえ、学校設置者等、又は認定された民間教育保育事業者に渡すことに問題はないのですか。イギリス始め諸外国でも採用されているように、従事者本人が犯罪歴のないことを証明する方法にしなかったのはなぜでしょうか。
 こども家庭庁が学校設置者等の申請を受けて法務大臣に照会するデータには、罪名と判決も含まれています。これを基に個人ごとの犯罪事実確認管理簿を作成するとしていますが、使用目的、方法について伺います。
 加害者も被害者も出さないために、もっとやるべきことがあるはずです。加害者に対する更生プログラムを充実させること、その中で、異常性愛者など犯罪を繰り返す人には医学的治療が必要です。妊娠、出産や避妊、性感染症などの正しい知識と、互いの人権や多様性を学ぶ包括的性教育が必要ではありませんか。
 また、子供に寄り添う相談、支援には専門家が必要です。全都道府県が設置している性犯罪・暴力に対するワンストップ支援センターにはいまだ設置根拠法がなく、関係機関との連携、支援員の不足や待遇改善などが課題とされています。抜本強化が必要と考えますが、見解を伺います。
 最後に、学校、保育施設等による性加害事実の隠蔽、もみ消しがなくならない限り、子供を性暴力から救うことはできないし、被害もなくなりません。絶対に初動を誤ってはならないと思いますが、見解を伺います。
 以上述べて、質問とします。(拍手)
    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕
○国務大臣(加藤鮎子君) 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。
 子供の性被害防止対策についてお尋ねがありました。
 誰一人として子供が性被害に遭うことのないよう、安全、安心を確保することは重要です。このため、本法案は、性犯罪歴、前科の有無を確認する仕組みによる再犯対策だけでなく、初犯対策にも対応できるよう、子供と接する職員等に対する研修、児童等への面談、児童等が相談を行いやすくする措置などの安全を確保するための措置を講じることについて事業者に直接義務づけるなど、予防策を徹底する内容としています。
 また、子供の性被害防止対策を進めるには、本法案に基づく取組だけでなく、関係省庁が連携して総合的な対策を進めていくことが必要であり、こうした措置を講じることで、子供の性被害防止対策を更に推進してまいります。
 教員性暴力等防止法などの先行する制度との違いについてお尋ねがありました。
 今回の子供性暴力防止法案は、教員免許や保育士資格の有無にかかわらず、学習塾講師など幅広い業務の従事者を対象とするものであるほか、教員性暴力等防止法では義務とされているのが事業者によるデータベースの活用であるのに対し、本法案では、犯罪事実確認を行った上で、その結果等を踏まえた防止措置が義務づけられているなど、先行する制度とは顕著な違いがあります。
 子供が性暴力に遭う事件が後を絶たず、子供への性暴力防止に向けた取組は待ったなしです。子供への性暴力を防止していくためには、先行する制度の状況を踏まえつつ、こども家庭庁が中心となり、文部科学省などの関係省庁と緊密に連携を取りながら、本法律案も含めた総合的な対策を進めていくことが必要と考えます。
 本法律案の対象事業者についてお尋ねがありました。
 学校や認可保育施設など、特に公的関与の度合いが高い認可等を受けた事業者は、その認可等を受けるに当たり、個別法において定められた運営、体制等の基準を満たしていることから、この法律案に基づく措置を直接義務化しても対応できるものと考えています。
 他方、認可外保育施設や学習塾等の民間事業者は、法令上、このような運営、体制等の基準がないため、この法律に基づき学校等が講じる措置と同等のものを実施する体制が確保されていることや、犯歴確認の対象となる従事者の範囲を個別に確認する必要があることから、認定の対象としているところです。
 認定の取得は任意ではありますが、国による認定事業者の公表、認定事業者による表示等を通じて、保護者の選択に資するような仕組みにするとともに、関係業界等に対して制度への参加を強く働きかけ、実質的に義務化と同程度の状況とすることができるよう努めてまいります。
 児童対象性暴力等のおそれ及び防止措置についてお尋ねがありました。
 児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認められるときの具体的な場合としては、犯罪事実確認の結果、前科が判明した場合のほか、児童等との面談や相談等により、特定の教員等による児童対象性暴力等のおそれがあると判明した場合などが考えられます。
 このようなおそれがある場合には、事業者は児童対象性暴力等を防止するために必要な措置を講ずることが義務づけられますが、本法律案は労働法制等の整理を変更するものではなく、雇用管理上の措置については、労働法制等に従うものと認識しています。
 法の施行に当たっては、おそれの具体的な内容やその判断プロセス等、おそれに応じた防止措置などについて、雇用管理上の措置における濫用等が生ずることのないよう、関係省庁、関係団体の御協力も得てガイドライン等を作成し、分かりやすく示していくことを想定しています。
 犯歴確認の方法についてお尋ねがありました。
 本法案においては、犯罪事実確認記録等の漏えい等の防止や、万が一漏えい等した場合の被害拡大防止、再発防止を徹底するため、犯歴確認を行う事業者に対して、犯罪事実確認記録等の適正管理義務、重大な漏えい等の事態が生じた場合の報告義務を課すとともに、適正管理義務違反については是正命令を可能としています。
 仮に従事者本人が自らの犯罪事実確認書の交付申請をできることとしても、事業者に対して提出することとなり、結局、漏えい等が問題となる上、対象事業とは無関係の業種への就職時に犯罪事実確認書の提出を求められ、前科の有無が明らかになるおそれがあること、偽造した犯罪事実確認書が事業者に提出されるおそれもあること等の課題があるため、事業者を申請主体とすることが適切と考えております。
 犯罪事実確認書管理簿の使用目的及び方法についてお尋ねがありました。
 犯罪事実確認書管理簿は、再度の犯罪事実確認の際に、既に提出された情報を利用することができるようにするため、本人特定情報を継続的に管理すること、訂正請求等がなされたときに適切に対応すること、犯罪事実確認に関する不正に対応できるよう必要な情報を把握しておくことを目的として作成することとしており、それらに必要な利用方法で用いることを想定しています。
 ワンストップ支援センターの体制強化についてお尋ねがありました。
 各都道府県等に置かれる性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおいては、被害者の意思を尊重しつつ、被害直後からの医療的支援、法的支援、相談を通じた心理的支援などを、可能な限り一か所で提供しております。
 内閣府においては、都道府県等への交付金を通じて、ワンストップ支援センターの運営の安定化や支援の質の向上、警察や医療機関、学校、児童相談所等の関係機関との連携、相談員の処遇改善などへの支援を充実させてきたほか、支援能力向上のため、相談員等への研修も実施しています。
 引き続き、ワンストップ支援センターが、個々の被害者の置かれた状況に対応し、被害者に寄り添った支援を提供できるよう、支援体制の整備や連携強化のための取組の更なる推進に努めてまいります。(拍手)
    〔国務大臣盛山正仁君登壇〕
○国務大臣(盛山正仁君) 高橋議員にお答えいたします。
 まず、特定免許状失効者等を任命又は雇用した際の任命権者の損害賠償責任についてお尋ねがありました。
 いわゆる教員性暴力等防止法に基づく基本的な指針においては、採用候補者が特定免許状失効者等に該当する場合、当該採用候補者の任命又は雇用に当たっては、教育職員等による児童生徒性暴力等を根絶するという法の趣旨を踏まえ、少なくとも、児童生徒性暴力等を再び行わないことの高度な蓋然性が必要であるとしています。
 これを踏まえ、任命権者等が、任命又は雇用時に、過去に行った児童生徒性暴力等の内容や、特定免許状失効者等となって以降の状況等について適切な確認を怠ったことなどにより、当該採用候補者が再び児童生徒性暴力等を行わないということについての確証が十分に得られていないにもかかわらず任命又は雇用し、採用後に再び児童生徒性暴力等を行った場合には、任命権者等が損害賠償の責めを負う可能性があり得ることを指針において記載しているものとなります。
 子供性暴力防止法案が成立した場合には、教育職員等を任命又は雇用しようとする任命権者等は、教員性暴力等防止法に基づくデータベースでの確認に加え、今般の法案に基づく犯歴照会の活用により、教員免許の有無にかかわらず、特定性犯罪の前科の有無を確認することになるものと認識しております。これにより、教師の任命権者等において、より一層丁寧な対応が求められることとなり、児童生徒等に対する性暴力等の防止等により一層資するものとなると考えております。
 次に、妊娠や避妊、性感染症などの正しい知識と、互いの人権や多様性を学ぶ包括的性教育についてお尋ねがありました。
 学校における性に関する指導については、発達段階を踏まえつつ、児童生徒が性に関して正しく理解し適切な行動が取れるよう取り組むことが必要であると考えています。
 このため、各学校においては、学習指導要領に基づいて、発達段階に応じ、受精、妊娠、性感染症の予防などの身体的側面のみならず、異性の尊重、性情報への適切な対処など、様々な観点から指導を行うこととしています。
 文部科学省としては、引き続き、学習指導要領に基づく着実な指導に努めてまいります。
 次に、性加害事実があった場合の初動対応における隠蔽の防止等についてお尋ねがありました。
 教員等が児童生徒等に性暴力等を行うことは断じてあってはならないことであり、教員等による性暴力等を根絶するため、あらゆる角度から実効的な対策を講じていく必要があると考えております。
 いわゆる教員性暴力等防止法においては、児童生徒性暴力等があったと思われる場合に、学校は学校設置者等に通報しなければならないとされているなど、学校や学校設置者等が適切な措置を行うことが求められています。また、同法に基づく基本的な指針においては、あしき仲間意識や組織防衛心理から事なかれ主義に陥り、必要な対応を行わなかったりすることがあってはならないことなどを示しているところです。
 文部科学省としては、同法を踏まえた対応等について、これまでも様々な機会を捉えて各教育委員会等に対して取組の徹底を求めてきたところであり、今般の子供性暴力防止法案が成立した場合においても、引き続き適切な対応がなされるよう、一層の取組の徹底を図ってまいります。(拍手)
    〔国務大臣小泉龍司君登壇〕
○国務大臣(小泉龍司君) 高橋千鶴子議員にお答え申し上げます。
 子供に対する性暴力の加害者に対する更生プログラムの充実、治療の必要性についてお尋ねがありました。
 刑事施設や保護観察所においては、性犯罪者に対して、認知行動療法の手法を取り入れた処遇プログラムを実施しています。また、釈放後に治療等が必要な性犯罪者には、保護観察所が矯正施設収容中から医療機関等との調整を行っているほか、保護観察中も必要に応じ医療機関等と連携した処遇を行っております。
 今後とも、プログラムの充実を図るとともに、性犯罪者が治療等を受けられるよう、医療機関等との連携を図ってまいります。(拍手)

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