国会質問

質問日:2024年 4月 9日 第213国会 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

子ども・子育て支援法の参考人質疑

社会保険料増認める

子育て支援金の大臣懇座長

衆院委 高橋氏に

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(写真)答弁する柴田参考人(手前)と(後列左から)秋田、西沢、遠藤の各参考人=9日、衆院地こデジ特委

 9日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、子ども・子育て支援法案について参考人質疑が行われました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は、医療保険料に上乗せし徴収される支援金は、社会保険料として整理されると政府が答弁したことにふれ、「社会保険料は給付と負担の状況にてらして見直されるので引き上げられるのではないか」と質問。「支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会」の遠藤久夫座長は「個人的には(支援金は)保険ではないと思う。どんな制度でも給付額が増えれば負担は増えるのは当然」と認めました。

 支援金制度に反対を表明した西沢和彦日本総合研究所理事に、高橋氏は「支援金制度で社会保険本来の役割がそがれてしまい、保険制度が脆弱(ぜいじゃく)になるのではないか」と質問。西沢氏は「まったくその通り」と述べました。

 また、高橋氏が「こども未来戦略の働き方改革は、スローガン倒れではないのか」と質問したのに対し、柴田悠京都大学大学院教授は、働き方改革のためには「労基法が貧弱だ」として、改定が必要だと強調しました。

 高橋氏は、新たに創設する「こども誰でも通園制度」について、「今後、さらなる規制緩和が進むのでは。またアプリの気軽さで、親の都合が子どもの利益にまさってしまうのではないか」と指摘。秋田喜代美学習院大学教授は「同じ危惧を抱いている」としつつも「こども基本法の理念にそうかどうか、試行的事業含めこの数年が正念場」と答えました。

(「しんぶん赤旗」2024年4月10日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見、本当にありがとうございます。
 早速質問させていただきます。
 まず、遠藤参考人に伺います。
 先生は、支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会の座長であられました。昨年十二月の第二回の議事録を見ますと、支援金の性格について多くの構成員の方から意見が出されておりました。この間ずっと予算委員会や本委員会で議論をされている社会保険の逆進性なども議論されていると思います。
 それで、例えば、商工会議所の代表からは、支援金とは何か、社会保険料という位置づけとは説明されていない、このような指摘があり、安易に支援金の拡大でなし崩し的な対応がなされることがないようにお願いしたい、つまり、引上げはこれ以上しないようにというくぎを刺しているのかなと思って聞いておりました。
 当時は、社会保険のルートを使うけれども社会保険ではないと説明をしていたと思います。しかし、本日、立憲の早稲田議員からも紹介がありましたように、もう社会保険料として整理されるという答弁があったわけです。
 そうなると、社会保険料というのは給付と負担の状況を鑑みて見直しがされていくわけで、引上げも当然されていくという理解になると思いますが、いかがなんでしょうか。また、当初の議論から見ておかしくないのか、伺います。
○遠藤参考人 ありがとうございます。
 私、その検討会の座長をさせていただいて、そのような御意見もありました。ほかにも様々な御意見がございました。そういう意味では、基本的には支援金を保険の徴収システムの中で徴収するという枠組みの中での議論だったわけでありますけれども、様々な御意見が出ていたわけで、もちろんそれに対する反対の意見もあったわけでありますけれども、多くはその枠組みの中の議論でした。
 そこで、私は、実は今でも、あれは保険ではなく、あくまでも保険の徴収システムを使っている徴収制度だ、こういう理解でいるわけであります。それはなぜかというと、保険ではない、リスクのヘッジという形ではないからだということで、そういう理解をしておるわけであります。
 それから、保険制度であろうがなかろうが、給付額が増えてくれば負担を増やさなければならないということは当然の話になるわけでありますから、それについては、どの財源を使うのかという議論は当然出てくるとは思いますけれども、これは保険でなくてもそういう話は出てくるのかなというふうに思って、私が御質問を正しく理解しているかどうか、申し訳ないんですけれども、取りあえず、そんなようなお返事をさせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○高橋(千)委員 どの制度であっても、今後もあり得るだろうとおっしゃるのは当然だと思うんですよね。支援金が完全に整うのは二〇二八年度だと説明をされて、一兆円まで積み上げていきますのでね。
 だけれども、支援金が、先日私が質問したんですけれども、つなぎ公債の返還に充当されて、それが、償還が終わるのは二〇五一年と答弁していますから、じゃ、それまでどうなるのかなと素朴に疑問に思いました。その点でもし意見があれば伺いたいと思います。
 それで、続けてもう一言、遠藤参考人に伺うんですが、社保審の会長でもありますし、医療保険部会の会長でもいらっしゃいます。それで、ちょっとスキーム的には似たような、でも医療の世界だからと言えなくもないんですが、後期高齢者の保険料から出産育児一時金の増額分を出すということが医療保険部会でも議論されて、そのとき、後期高齢者から出産育児一時金というのは、ちょっと余りにも露骨というか、私にしてみれば、少子化対策のためには高齢者は我慢せよと国から言われたようなものだなというふうに思ったんです。医療保険部会の中でも、弱いところから取るのかといった意見もあったと思うんです。
 今回の支援金は、それを全世代から取るんだからというふうに説明をしているわけですけれども、こうした拠出を重ねてきたことで、被用者保険では半分あるいはそれ以上が他制度への支援金などに回っているという現状をどう見るのか。これは、社会保険制度そのものがかなり厳しい状況になっているのではないかと思いますが、見解を伺います。
○遠藤参考人 ありがとうございます。
 まず、ちょっと冒頭、つけ加えますと、今回の子ども・子育ての支援金が、今後は給付が増えてくるのであって、負担も増えるだろうという話で、これは当然そのとおりなんですが、ただ一方で、高齢者医療とか介護とは違いまして、そもそもが、そんなに拡大をしていくような、構造的にはなっていないと私は理解しております。その辺は、だから、したがって、医療費や介護費がだんだん増えていったのとはまた違う構造だというふうに理解しております。何しろ少子化のための構造だということですね。
 それからもう一つは、医療保険の枠組みを使って医療保険でないものの徴収をされてきた、その経緯は、それは適切ではないのではなかろうかと。今回は逆に、そういうことも医療保険ではやってきたので、それなりの合理性があるから今回もその枠組みで徴収できるんだ、こういうロジックになっているかと思うんですけれども、やはり広く負担をするような仕組みとして、しかも個別には課題もありましょうけれども、低所得者に配慮をしている仕組みをつくっているとかいうことで、医療保険制度から取るということについて、私は完全に否定するものではありません。
 そのためごとに一々また新しい仕組みを考えていかなきゃいけないのかという形になると、医療保険制度が機能的に複雑になったのとはまた別に、徴収システムが非常にたくさんできてしまうということも考えられますし、それから、今回の場合に関して言うならば、新しいスキームを考えるための時間が、やはり合意形成の時間が非常にかかる、それは惜しいというのが今回の私の考え方であります。
 以上でございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 次に、同じ質問を西沢参考人に伺いたいと思いますが、正直、徴収システムを新しくつくる手間がとおっしゃるんだったら、一体改革をやったのになということを素朴に感じてしまいますよね。だから、租税でいいんじゃないかという西沢参考人の指摘が理があるのかなというふうに正直思います。
 それで、社会保険に乗っかって支援金や拠出金を徴収するやり方は、今議論していたように、これまでもやられてきた。だけれども、今回の支援金制度でもって、いよいよ社会保険本来の役割がそがれてしまって、そのために保険料を上げなければいけないし、これでは雇用者にも雇用主にも負担が重く、保険制度そのものが脆弱になってしまうのではないか。元々あった課題、協会けんぽとか特にあったと思うんですが、それに更に拍車をかけてしまう気がしますけれども、いかがでしょうか。
○西沢参考人 全くそのとおりだと思います。それ以上のお答えがないぐらい、そのとおりだと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 予算委員会でも質問させていただきましたので、まさにそうだなと思って伺っておりました。
 次に、柴田参考人に伺います。こども未来戦略の加速化プランをどう見るかについてであります。
 私は、子育て支援のメニューについては、出産後の伴走型支援から高等教育費の負担軽減、児童手当の拡充など、それ自体はわざわざ反対するものはありません。ただ、これほど財源論が争点になっている中での三兆六千億円のメニューとしては、バランスとしてどうなのかなと思うわけであります。
 つまりは、全ての子供の育ちを応援するを強調するが余り、児童手当に大きく予算が取られて、逆に子供の貧困対策などはまだまだ端緒という形で格差を広げることにならないか。高等教育の負担軽減というのは極めて少ないですから、理系の人だけ応援するとか、そうなっておりますので。そして、柴田参考人が陳述で指摘された長時間労働の働き方改革などは、最初にこども未来戦略といったときに三つの柱の中に入っていたんだけれども、加速化プランの中ではほとんど議論されていないと思うんですよね。
 などなど考えているんですが、御意見を伺います。
○柴田参考人 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりかと思います。加速化プランについては、これだけ短い期間でかなり幅広なメニューを出されたというのは評価したいと思います。それぞれ少子化対策という面で見ると、給付の規模額がどうしても小さいので、効果は出生率〇・一上がるか上がらないかというところになってしまうかと思いますが、それでもプラスな面はあるのかなというふうに思います。
 あとは、やはり、加速化プランは少子化対策だけが目的ではなくて、児童虐待予防だとか子供の貧困だとか、様々な、子供を取り巻く、発達の支援も含めて広い視野でのものですので、そういった意味で、その広さをしっかり評価すべきだと思います。
 ただ、他方で、委員おっしゃられたように、元々、未来戦略の中では、働き方について結構、勤務間インターバルも含めて文言は言及されていましたが、加速化プランではどうしても、短期間でできること、予算をつければすぐ給付できるものに限られていますので、男性の育休の面だとか、そういったところに絞られてしまいました。
 それは、必要なところなのでやるべきなんですが、やはり、これからは、加速化プランだけが今後の政策ではありませんので、加速化プランの今後も見据えて、しっかり働き方改革、とりわけ長時間労働の是正も含めた未婚の人々への支援、これは賃上げも含めてです。やはり根本的には、結婚難というのが根本的な原因ですので、未婚の男女の経済的な状況と、あと、とりわけ男性全体の働き方、この二点をしっかり根本策として進めていくことが今後の大きな課題だろうというふうに認識しております。
 ありがとうございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 日本の男性が世界でワーストに長時間労働であることですとか、夫婦で男女の賃金格差が大きいがために育休があっても取らないですとか、世界で一番有休が短い国であるとか、正直言って、働き方改革をやらなきゃいけないんだということはみんな分かっているのに、まるっきりこれはスローガン倒れになっていないかという気がするんですね。
 先生がおっしゃったように、いやいや、労働時間をきちっと短縮していくことによってむしろ生産性が高まるんだと。だって、諸外国を見れば明らかなわけですから、何でそれができないのかなと正直思うわけで。なので、スローガンに入れるだけでは進まないだろう。まあ、私たちの力も弱いかもしれませんけれども。
 もしも一言ありましたら、お願いします。
○柴田参考人 ありがとうございます。
 とても大事なところで、やはり労基法の改正が、だから必要だ。アメリカも含めて先進諸国、アメリカやヨーロッパに比べて余りにも労基法が貧弱です。ですので、これは変えなくてはいけないと思います。
 ありがとうございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。全くそのつもりでおりました。
 秋田参考人に伺いたいと思います。せっかくなので、こども誰でも通園制度について伺いたいと思います。
 保護者の就労要件を問わないという点では、保育制度の歴史をまた一つ大きく変える改正ではないか、このように思います。
 保育は、それこそ先生がお話しした新システムの制度のときも、私、随分質問しましたけれども、直接契約なのかどうかという問題ですとか、従うべき基準をどうするのかという問題だとか、規制改革会議だとか地方分権改革とのせめぎ合いでもあったのかな、こう思います。
 それで、伺いたいのは、孤立した子育てを応援し、集団の中で保育ができる、これは大変意義あることだと思っています。しかし、元々、現行制度が保育士の処遇改善や配置基準などをもっと改善しなきゃいけないという課題を抱える中で、全国での実施にこだわり、また、今の保育・教育給付の対象にもなっていない地域子育て支援拠点などが対象になるというのは、正直どうなのかなと思うんです。
 質問したときに基準を聞くと、今の一時預かり保育と同じ基準なんですと言うんですね。でも、それが満たせるなら、とっくに保育・教育給付の対象になっていいはずじゃないか。そういう施設になっていていいはずなのに、そういう対象じゃないところを今入れるというわけですよね。それがすごく疑問に思うんです。
 今後、大型店の例えばキッズスペースでもよいとか、更なる規制緩和が進むんじゃないかということと、アプリの気軽さで親の都合が子供の利益に勝ってしまうのではないかということを非常に危惧するわけでありますが、御意見を伺います。
○秋田参考人 御質問ありがとうございます。
 私も同じような危惧を抱きながら、こども誰でも通園は従来の保育とは違いますけれども、これまでは、逆に言えば、保育園や幼稚園、こども園に通わせているところには公費が入りましたけれども、御家庭でお子さんを、特にゼロから二の部分の子育てをしていた方たちにどうやって支援をしていくかという意味で、これがとても意味を持っている。
 新たな形で、しかも、そのときの保育の質というものを今度はどう考えるのかというのが従来以上に、従来は毎日お子さんが来ていたので、保育士は専門的にチェックができました。今回は新たな形で、親が自由に選ぶ、園を幾つも選んで通う場合もあれば、それから特定のところに通う場合もあり、いろいろなパターンが今設定されていきますので、それを試行事業としてまずは見て、どうやって歯止めをかけながら、やはり親の都合ではなく、これがこども誰でも通園という、こども基本法の理念に沿った形にしていくことができるのか、そのためにどういうガイドラインを作っていくのかということがこの数年のやはり正念場ではないかというふうに考えているところなので、御指摘いただいたようなところを更に議論を丁寧にしていきたいと考えているところになります。
 御回答になっているかどうか分かりませんが、以上で私の答えとしたいと思います。ありがとうございます。
○高橋(千)委員 先生も、危惧を抱いていますとおっしゃっていただいたので、少しほっとしました。
 本当に、自分自身も、保育所に入りたいんだよと言っても保育に欠ける状態ではないからということで断られたお母さんたちが、やはり毎日自分だけが子供と向き合っているのではなく集団の中で育てたいという思いをかなえていくというのは、それは本当に大事なことだと思うし、今、保育者の皆さんもそれは分かっていると思うんです。
 ただ、今、やはりすごく慎重でなきゃいけないと思うのは、モデル事業もやった中で、モデル事業を、やはりある程度の、十時間ではなく、少し長いスパンで見ていますよね。それから、専門のベテランの保育士さんが、むしろ経験が十一年以上やっている方が、七割近くの方たちが、預かりを、モデル事業の担当として予備面接、事前の面接をやって、その子の様子をよく知りながらやると、やはり大切にしてきたんだと思うんですよ。
 それが、そうはいっても、来年から始まりますよといったときに、その体制が本当に取れるんだろうか。むしろ人を増やさないと駄目なんじゃないか。だって、説明の中では、定員の中に余裕があれば保育士を一人も増やさなくてもいいことになっちゃうわけですよ。本当にそれでいいのか。むしろ、そういう毎日通っていないお子さんであるからこそ特別な体制を取れなければお互いに大変なんだという意味で、やはり保育士さんを増やすということがすごく必要だと思っているんですが、もう一言、お願いします。
○秋田参考人 ありがとうございます。
 保育士を増やすということは極めて重要です。ただし、誰でも通園は、十時間をフルに使う方よりは、毎週二・五時間を四週とか、そういう形になると、午前あるいは午後のある時間だけということで、現在保育士を辞められて御自宅におられるような方の再就職を私たちは更に可能にしていったり、今潜在的に眠っていらっしゃる方ももう一度社会で活躍をしていただけるような、そういう形の機会にもできるのではないかというふうに思っているところではあります。
 ただし、今、そうでなくても保育士が足りない、困難ということが、処遇が余りに低い、これは改善してきているんですけれども、まだ低いという現状がありますので、そこにも向き合っていく必要があるというふうには考えているところですので、重要な御指摘をいただいて、こうしたことをもっと社会に発信していきながら、保育や教育の仕事がいかに重要なことかということを、社会にエッセンシャルワークとしてどれだけ重要かということを皆様にも知っていただきたいなと思っているところでございます。
 大事な御指摘、ありがとうございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 試行的事業は十時間以内なんですが、法案は十時間以上になっておりますので、一気に拡大するのではなく、やはり、せっかくそうやって大切にとおっしゃってくださっているので、本来の理念に合ったものになっていけばいいなということを思っております。
 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

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