運転者の処遇改善を
高橋氏質問に参考人訴え
衆院国交委
衆院国土交通委員会は5日、流通業務総合効率化法、貨物自動車運送事業法両改定案について参考人質疑を行いました。
日本共産党の高橋千鶴子議員は、物流の「2024年問題」への対応のための法案の審議が4月に入ってようやく始まったとして、政府の対応を批判し、「現場では何が変わったか」と質問。馬渡雅敏全日本トラック協会副会長は「運転者の生産性向上と待遇改善のための法律なので、それに応えなければと進めている」と述べました。
高橋氏は、1990年の物流2法(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法)の施行でトラック事業が規制緩和されたものの、事業者数は当時の1・5倍で高止まりしている原因について質問。首藤若菜立教大経済学部教授は「経済的緩和に対する社会的規制はある程度されたが、市場の競争は強い力を持っており、参入してくる事業者が適正に事業をやれるのか、厳しいチェックの仕組みが必要だ」と述べました。
高橋氏が契約にない荷役作業をやめさせるための方策について尋ねると、成田幸隆全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長は「法案の規制の趣旨を伝えていく」と発言。馬渡氏は「契約にないことは日常茶飯事。スーパーの売り場にまで行って並べさせられるときもある。われわれを小間使いのように使う荷主を改めてほしい」と訴えました。
(「しんぶん赤旗」2024年4月9日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に御出席いただき、また、大変貴重な御意見を伺いました。ありがとうございました。
早速質問させていただきます。
最初は、馬渡参考人と成田参考人に伺います。
二〇二四年問題に対応して、政府が様々なパッケージなどを打ってきたわけでありますが、とはいえ、本来、それに対応するはずのこの法案が四月に入ってから審議入りをしたということ、非常に私は残念に思っております。
改善基準告示は、一般の労働者と比べ、年間二百四十時間も長い労働時間にとどまりました。それでも、このままでは輸送力が不足し荷物が運べないとの声が大きいことと、また、現場のトラックドライバーからは、非常にこれも残念に思うんですけれども、現状の状態からいくと、もっと長く働かせていただかないと暮らしていけない、そういう率直な声も寄せられている。そうすると、なぜ五年も猶予しておきながら、四月を迎えてしまったのかなというふうに思っているわけです。
それで、現場では、もう四月に入ったということで、ドライバーや関係者の間で何か変わったことがあるのかどうか、実態をお聞かせいただきたいと思います。
○馬渡参考人 先ほどの成田さんの方が言われるかもしれませんけれども、各運送会社でも人手不足に対応して、やはりトラックドライバーの生産性を上げるとともに待遇も改善しようというために法律を作っていただいているわけですから、我々が応えなければ絵に描いた餅になりますので、そこはしっかりやりましょうということで協会も言っておりますし、多分、労働組合の方もそういうような要求を出されて、これから進んでいくんだろうというふうに思います。
経営者の立場からいいますと、そういうふうにして応えなければ、ほかの産業に行かれます。ドライバーとしてだけじゃなくて、これから先も、さっき申し上げましたように、工場の労働者の方が賃金が高いからそっちに行こうとか、そういう労働の流動性は確かに高まってきていますので、一定のトラックドライバーのいい部分、ほかの人に煩わされないで、ハンドル一つで行けるというのをよしと思っていただいている方もいらっしゃるので、そういった方に、きちっと待遇を改善しながら対処していきたいと思いますので、法律には本当に期待をしているところでございます。
以上でございます。
○成田参考人 ありがとうございます。
今回いろいろ、先ほどドライバーの給与の仕組みのことも少しお話ししましたが、少し労働時間が長くなる、なったらそれで賃金がどうなるという話もありましたけれども、今までは、やはり労働時間の長さでどうしても賃金ができ上がっていた部分がありますので、そういう意味では、私たち、組合、現場から聞きますと、時間短縮に取り組むことについては組合員も理解していますが、そのことによって逆に賃金が下がるということになると、そこはすごいアレルギーがあるというか、それは許されないということになりますので、そういう意味では、賃金の仕組みというのを、やはり基準、基本給的なものを上げながら、そして手当に依存しないような形に、仕組みを変えながらしていかないと、実質の賃金が増えても時間外が減って、総支給が減ったという形になりますので、その辺もテーマとして思っていまして、そういう意味では、しっかりそういうことができるように、労働組合としてもその環境等の整備をしていきたいと思っています。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
特に、馬渡参考人からは、応えなければという決意をいただいたと思いますし、やはり本来は働き方改革、いい方向に向かうはずであったわけですから、そこからスタートして、課題を解決していくというふうにしていければいいなと思って伺っておりました。ありがとうございます。
それで、次は根本参考人と首藤参考人に伺いたいと思うんですが、先ほど来ちょっと話題になっていますが、一九九〇年の物流二法による規制緩和の影響をどのように見ているかということなんです。
参入規制と運賃規制を緩和して以降、一・五倍にトラック事業者が急増して、非常な買いたたきといいましょうか、ダンピングになったと思うんですが、ただ、不思議に思うのは、三十年たって、ドライバー不足は叫ばれるけれども、トラック事業者の数はほぼ横ばいになっている。また、荷主に交渉したくても、もっと安い事業者がいるんだからというふうな圧力を受けているという現場の声も聞きます。
だから、結果として、三十年、そうした事業者を野放しにしてきたのか、あるいはそういう事業者が増える土壌があるということなのか、御意見を伺いたいと思います。
○根本参考人 御指摘のように、規制緩和がありましてトラック事業者は増えました、ただ、ドライバーさんの数はどんどん減る一方ですということなんですけれども、規制緩和によって優良な事業者が生き残るというメカニズムが働かなかったんだと思うんですね。
というのは、やはり経済的な規制の緩和と同時に、社会的な規制の強化もセットでやるべきだったかもしれません。例えば、社会保険にちゃんと入ってください、過積載をやめてください、労働時間を守ってくださいとか、そういうことをきめ細かく、もしちゃんと規制を強化して取締りをすれば、例えば、分かりやすいところでは、過積載をして安い運賃を提示するとか、そういうふうなメカニズムが働けば、真面目にやっている人は困りますし、運賃が下がってしまうわけですから、やはりルールを守ってやりましょうという意味での社会的な規制の強化を、経済的な規制の強化と一緒にやるべきだったのかなというふうに思います。
以上です。
○首藤参考人 今、根本先生の方から、経済的規制の緩和と社会的規制の強化を同時にやればというお話がございました。私も物流二法の影響はすごく大きいと思っていまして、ある程度、社会的規制の強化は行われてきたんだと私は認識をしています。
それで、これはセットでやらないといけないんだという議論は、以前からあったと思っています。ただ、セットでやったとしても、経済的な規制の緩和に引きずられていったというのが実態なんじゃないかというふうに思っています。
ですので、セットでやれば本当にうまくワークするのかどうかというのも、私はこの過去三十年間のトラック業界を見てみると、やはり経済的な市場競争というのは非常に強い力を持っていて、そちらにどうしても引きずられていく面があったのかなというふうに私は思っているところではあります。
いまだにトラックの事業者数は横ばいで、多いというのも本当におっしゃるとおりで、この段階でも参入してくる事業者がたくさんいるというのも事実です。ただ、入ってきている事業者さんが本当に適正な事業をできるような環境にあるのかどうかというようなところを、やはりもう一度チェックを、きちんと厳しくできるような体制をつくっていくということも考えていく必要があるのかなというふうに思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
この規制の在り方ということをすごく考えさせられました。ありがとうございます。
それで、馬渡参考人にもう一度伺いたいと思うんですが、先ほど、ドライバーの所得をアップさせる、そこから逆算的につくっていくという提案、大変興味深く伺いました。
先生は、多重下請構造に、今回の実運送体制管理簿、これは非常に期待をされているというふうに思うんですが、やはり見える化をしていくことが重要だと思うし、そこに載せていくものとして、例えば運賃とか手数料などを書き込むとか、そうしたことはできないものだろうかと、これを本当に有効に働かせるためにいろいろ考えているんですが、御意見があったら伺いたいと思います。
○馬渡参考人 荷主さんもいらっしゃいますので、我々が例えばネット上で情報開示をしてしまおうということについては、荷主さんたちの承諾も必要だというふうに思っています。
今のところ、荷主さんたちは、ここの会社に幾ら出したとか、こっちの会社に幾ら出したとかは、基本的には教えないというふうにおっしゃいますので、開示をしていくというのは、荷主さんたちと話を進めて、一緒に協力して労働時間を短めようね、その代わり、時間当たりの単価を上げるためにも、荷主さんも協力しようというふうな話があれば、ひょっとしたら開示をオーケーしていただけるのかなというふうに考える次第です。
以上でございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
同じ質問を根本参考人にも伺ってよろしいでしょうか。
○根本参考人 確かに、今の実運送体制管理簿、そういう運賃とか料金は、基本的に記載しなくてもいいような形になっていると思います。やはりそこを全部出すというのは、今、馬渡さんがおっしゃったように、それぞれビジネスでいろいろな人と取引をしていますから、そこを全部さらけ出すというのもなかなか難しいのかなという感想を持っています。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
政府からは、逆に手数料が見えてしまうと値引きの抗争になっちゃうんだみたいなことを言われまして、それを何とか逆転させられないのかなということを今一生懸命考えておりました。ありがとうございます。
それから、首藤参考人にもう一度伺いたいんですが、先ほど陳述の中で、普通は三者協議なんだけれども、消費者を交えた四者協議という提案がありまして、なるほどなと思っております。
今、例えば大きな課題となっている再配達をなくしていくことの問題で、政府は、消費者が再配達をなくすための工夫をすればポイントを付与するというふうに言っているのは、私、逆に、逆さまなんじゃないのかなと。むしろ、お願いするんだったら、追加料金を消費者が払うべきじゃないのかしらというふうに思うんですね。先ほど来言われている送料ゼロというのも全くそのとおりだし、もっと消費者の理解を粘り強く得ていくこと、ただではないんだ、二度手間だったら二度料金はかかっているんだというふうなことなんかを、だから、協議をしていくと同時に、政府自身がもっとそこを分かってもらう努力も必要なんじゃないかなと正直思っているんですが、御意見を伺いたいと思います。
○首藤参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。
消費者にポイントを付与するのか、追加料金を支払うのかということなんですけれども、基本的にはどちらも同じなんだと思っているんですね。要するに、価格に差をつけるということなんだと思っています。価格に差をつけることによって、消費者に、経済合理的に行動することによって物流の効率化に協力していただくというような仕組みをつくっていくことが重要だと私は思っています。
それをやるためには、価格が見えないと当然差がつかないということになりますので、送料無料というのは、そう考えると論外な話でして、価格が見えることによって、例えば急いでいる荷物はそれなりに高い価格であっても急ぎで持ってきてもらう、でもゆっくりでよければ安い価格になりますよ、どちらを選びますかというような選択肢ができれば、消費者も経済合理的に考えて、例えば安い方でゆっくりでいいですというようなことをやったり、再配達をお願いする場合には倍の料金を払いますとか。ですので、やはり価格の見える化ということは、私は鍵なんだというふうに思っています。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
見える化の意味が非常によく分かったなと思います。ありがとうございました。
成田参考人に、もう一言伺いたいと思うんですが、荷役の問題で、ドライバーが、約束じゃないのに、行ったら普通に仕事をさせられるという感じ、それがどこにも出てこない、いわゆる賃金としてどこにも出てこないということ、だから、待機時間が長いことと同時に、不要な仕事をさせられている、これをどうにかしてやはり解決していかなきゃいけないと思うんですが、先生の御意見を伺いたいと思います。
○成田参考人 ありがとうございました。
不要かどうかは分かりませんが、契約にないことをさせられているというのは現状としてありますので、今回のいろいろな法案の中でそこをしっかり整理をして、我々もそのことをしっかり伝えていくということが大事だと思いますので、そんなことで取り組んでいきたいと思います。
○高橋(千)委員 ちょっと余裕があるみたいなので、馬渡参考人にも今の質問を伺ってよろしいですか。
○馬渡参考人 済みません、今、成田さんだと思って、よく考えていなかったんですけれども、どういう御質問でしたでしょうか、済みません。
○高橋(千)委員 ごめんなさい、ドライバーが荷役を手伝わされるという問題についてです。
○馬渡参考人 契約にないことは、もう日常茶飯事です。その辺のところも、一番ひどいのは、本当に、スーパーまで行って、売場まで並べさせられている運転手もおります。ですから、そういったことは本当にやめていただきたいですし、実際、そういったスーパーさんに入るときには、テレビカメラがあって、そこの周りでぐるっと一回り、こう手を上げて回らなきゃいけない。要は、何か盗んでいないかというようなことをさせられた上に、売台まで並べろと。もっとひどい場合は、消費期限が過ぎたものは回収してこいというような荷主さんも、いまだにいらっしゃいます。
ですから、我々からいうと、常識的な部分が、いまだに我々を小間使いのように使っておられる部分を、まず改めていただければなというふうに思う次第でございます。
済みません、質問を聞いていなくて、申し訳ございません。
○高橋(千)委員 貴重な実態を聞くことができて、ありがとうございました。
終わります。