財源確保 軍事費増分で
子ども・子育て支援金制度 高橋氏が指摘
衆院本会議
(写真)質問する高橋千鶴子議員=2日、衆院本会議 |
少子化対策の財源となる支援金制度などを創設する子ども・子育て支援法改定案が2日、衆院本会議で審議入りし、日本共産党の高橋千鶴子議員が質問に立ちました。(質問要旨)
高橋氏は児童手当の所得制限の撤廃について、児童手当法に「父母その他の保護者が子育ての第一義的責任を有する」と書かせた自民党に「この認識を反省し、改めるのか」と追及。岸田文雄首相は「所得制限撤廃と党の考えは矛盾しない」と開き直りました。
就労要件を問わず3歳未満児の保育所等が利用できる「こども誰でも通園制度」について、高橋氏は「全国どこでもアプリで空き状況を把握して臨時に保育を頼める仕組みは、子どもの利益となるか」と質問。加藤鮎子こども政策担当相は「保護者が空き状況を確認し、簡単に予約できるシステムが必要だ」と答弁しました。
少子化対策の財源とする支援金について、高橋氏は「もともとある社会保険の逆進性をさらに強める」と指摘。医療・介護の自己負担率の引き上げなど負担増が含まれており、「社会保障負担率というマクロの数字を使って実質負担増がないというのは、国民に対して極めて不誠実だ」と追及しました。
「軍事予算の前年比増分だけでも1兆1000億円で、子ども・子育て支援金制度分の財源がつくれる」と批判。「『こどもまんなか』を財源においても貫くべきだ」と迫りました。岸田首相は「防衛力と子ども・子育て政策はどちらか一方ではない」などと釈明しました。
(「しんぶん赤旗」2024年4月3日付)
ー議事録ー
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法等改正案について質問します。(拍手)
少子化に歯止めがかかりません。異次元の少子化対策といいますが、問われるのは政治の責任です。こども未来戦略には、少子化の要因として、雇用形態別に見て非正規より正規の方が、年収が低いより高い方が、配偶者がいる割合が高いとあります。また、これから先、子供の生活を保障できるほどお金を稼げる自信がない、コロナ禍で突然仕事がなくなったり解雇されたりすることへの不安が強くなったなど、若い世代の声を紹介しています。
そうした要因をつくってきたのは政府自身ではありませんか。相次ぐ労働法制の緩和で正規雇用を派遣や契約社員に置き換え、不安定雇用と低賃金、あるいは過労死するほどの長時間労働の中に若者を置いてきたからにほかなりません。
こども大綱には、子供、若者の多様性が尊重され、尊厳が重んぜられ、固定的な性別役割分担意識や特定の価値観、プレッシャーを押しつけられることなく、主体的に、自分らしく、幸福に暮らすことができるよう支えていくとあります。同感です。
しかし、政府は、人口減少に歯止めをかけなければ、社会保障のみならず、我が国の経済社会システムを維持することは難しいと強調しています。結局、経済優先ですか。若い世代に価値観と責任を押しつけてはなりません。
法案について伺います。
児童手当の拡充は、私たちが求めてきたことでもあります。特に、所得制限の撤廃は、子供は社会が育てるという理念によるものでしょうか。自民党は、野党時代に、この理念を否定し、子ども手当を頓挫させ、児童手当法に、父母その他の保護者が子育ての第一義的責任を有すると修正させました。自民党はこうした考えを反省し、改めますか。お答えください。
急がれるべきは、子供の貧困の解消です。特に母子世帯は、八六・三%が就労していながら平均年収は二百七十二万円にすぎず、二人に一人が貧困ライン以下です。今回、児童扶養手当の所得制限を満額百九十万円、一部支給三百八十五万円に引き上げますが、低過ぎます。三百八十五万円を満額支給の上限にするなど、更に拡充すべきではありませんか。
また、全国の自治体で広がっている学校給食の無償化や三歳未満児の保育料無料化などは、国の責任で行うべきです。高校授業料の完全無償化、学費や奨学金返済も半額、入学金ゼロなど、思い切って教育費の負担軽減を進めるべきです。
次に、こども誰でも通園制度について伺います。
三歳未満児は、就労要件を問わずに保育所の利用ができるようになります。ワンオペ育児など、子育ての悩みに応え、全ての子供の育ちを応援するという理念は重要だと考えます。
誰でも通園制度が一時預かりと違うのは、保護者の都合ではなく子供の利益のためだといいます。それなら、全国どこでも、アプリで空き状況を把握して臨時に保育を頼めるという仕組みは、本当に子供のためになりますか。新しい給付制度の対象には、現在の教育・保育給付の対象となっていない施設も入るのですか。
保育とは、養護と教育を一体的に提供するものであり、保育士の役割は決定的だと思いますが、認識を伺います。誰でも通園制度の配置基準はどのようになるのですか。限定的な利用とはいえ、保育の質を割り引くようなことはあってはなりません。全ての子供の育ちを応援という理念が通常の保育においても生かされること、保育士の処遇改善と配置基準改善を更に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
焦点となっているのは、加速化プラン三兆六千億円の財源についてです。
まず、支援金について。今回示された金額は平均額にすぎず、所得や世帯の構成によって大きく変わります。特に市町村国保は、無収入の被保険者が半数を占め、今でも負担が重過ぎるのに、現在の保険料に対する支援金の比率は五・三%と最も高くなります。いずれにしても、負担増であること、元々ある社会保険の逆進性を更に強めることになるのではありませんか。
次に、社会保障の改革工程表の中には、介護保険のケアプランの有料化、医療、介護の自己負担率の引上げなど、負担増が含まれています。社会保障負担率というマクロの数字を使って、実質負担増がないと言うのは、国民に対して極めて不誠実ではありませんか。まして賃上げは、民間企業の努力を期待しているだけであって、政府自らの成果のように言うべきではありません。
さらに、既存予算の徹底活用として、インボイス導入による消費税増収分を充てるのはなぜですか。また、その見込額を伺います。
少子化はまさに国の存続そのものに関わる問題というのに、なぜその財源は社会保障関係予算の中でのやりくりなのかという私の質問に、社会保障関係費以外のやりくり分は防衛力強化のための財源だと答えました。とんでもありません。総理、防衛予算の前年比増の分だけでも一兆一千億円、子ども・子育て支援金制度分が賄えるではありませんか。本気で国の存続を考えるなら、まずは、こどもまんなかを財源においても貫くべきです。
終わりに、自民党派閥の裏金問題を通し、政治は誰のためにあるのかとの問いが突きつけられています。中途半端な処分で幕引きにせず、全容解明と、パーティー券含め企業・団体献金の禁止に踏み出すときです。この問題を自ら解決する力のない自民党、岸田政権に子供の未来を語る資格はないと申し述べ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 高橋千鶴子議員にお答えいたします。
少子化と若い世代の雇用との関係についてお尋ねがありました。
若い世代の雇用や所得などの経済的基盤の問題は、少子化の要因の一つであると認識をしています。
労働法制については、例えば、派遣労働者のキャリアアップや、雇用安定のための措置の導入や、時間外労働の上限規制の導入など、労働者保護に資する累次の改正を行ってきております。
また、若い世代の経済的基盤の強化のため、最重要課題である賃上げに加え、それを持続的、構造的なものとするための三位一体の労働市場改革、さらには、同一労働同一賃金の徹底や、希望する非正規雇用労働者の正社員への転換に向けた支援などに取り組んでまいります。
少子化対策に関する若い世代への価値観等の押しつけについてお尋ねがありました。
結婚、妊娠、出産、子育ては、個人の自由な意思決定に基づくものであり、特定の価値観を押しつけたりプレッシャーを与えたりすることは決してあってはならないと考えます。
その上で、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけなければ我が国の経済社会システムを維持することは難しく、それは、若い世代や将来世代も含め、あらゆる方々に影響することです。このため、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てができるよう、社会全体で若い世代を支えていくことが重要であると考えており、価値観等の押しつけとの指摘は当たらないと考えます。
児童手当の拡充についてお尋ねがありました。
こども未来戦略においては、全ての子供、子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援するという基本理念の下、全ての子供の育ちを支える基礎的な経済支援としての位置づけを明確化するため、児童手当の所得制限を撤廃することといたしました。
法の目的規定については、引き続き、平成二十四年の三党合意に基づき、父母その他の保護者が子育ての第一義的な責任を有するという基本的認識の下、児童手当を支給する、このことを維持することとしており、自民党の基本的な考え方と所得制限を撤廃する趣旨は矛盾するものではないと考えております。
教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。
政府としては、加速化プランにおいて、高等教育費について、令和六年度から給付型奨学金等の多子世帯及び理工農系の中間層への拡大等を行うとともに、令和七年度から多子世帯における大学等の授業料等の無償化をすることなど、負担軽減を行うこととしています。
様々な御提案をいただきましたが、政府としては、加速化プランで掲げた教育費負担の軽減を着実に進め、その実施状況や効果を検証し、引き続き教育費の負担軽減に取り組んでまいります。
こども誰でも通園制度及び保育士の処遇改善と配置基準改善についてお尋ねがありました。
こども誰でも通園制度は、全ての子供の育ちを応援し、子供の良質な生育環境を整備するものであるため、保育士の役割が重要であり、保育の質の確保に十分に配慮しつつ、制度を実施してまいります。
また、このことは、通常の保育についても同様であり、全ての子供が良質な保育を受けられる体制を早期に確保するため、今後とも、保育士等の処遇改善や職員配置基準の改善に取り組んでまいります。
子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。
国民健康保険については、低所得者への保険料軽減措置等、公費を他の制度より手厚く投入するなどの措置が講じられています。医療保険料と併せて拠出いただく支援金についても、これに準じた措置を講ずること等を通じて、所得に応じて拠出いただく仕組みとすることとしており、逆進性が強まるとの御批判は当たらないと考えています。
なお、御指摘の現行の医療保険料に対する比率は、どの医療保険制度においても一定の範囲内に収まっているものと考えております。
社会保障の改革工程と社会保障負担率を用いた説明との関係についてお尋ねがありました。
昨年末に閣議決定した改革工程では幅広いメニューが列挙されていますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。これらのメニューの中から、実際に取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。
社会保障負担率については、支援金制度の構築に当たって実質的に負担が生じないと申し上げている際に、抽象論に陥らないよう、具体的なメルクマールを設けることとしております。歳出改革によって生じる保険料負担の軽減効果を積み上げ、その範囲内で支援金制度を構築することを基本とすることにより、支援金制度の構築によって社会保障負担率が上昇しないことといたします。
インボイス制度導入に伴う増収分の活用についてお尋ねがありました。
加速化プランの実施を支える財源の確保として既定予算の最大限の活用に取り組む際には、消費税収は社会保障四経費に充てるという消費税法の規定も踏まえ、今般のインボイス制度の導入に伴う御指摘の増収分を足下の喫緊の課題である子供、子育て政策強化の財源に充てることとしたところです。
なお、当該増収分の金額の見込みは、平年度において国、地方合わせて約〇・二兆円程度であります。
子供、子育て政策と防衛力強化の関係についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源確保に当たっては、防衛関係費が非社会保障関係費であることを踏まえ、社会保障関係費以外の経費を対象として歳出改革を行うこととしております。
他方、少子化対策のための歳出改革については、社会保障関係費を対象にすることとしていますが、このような歳出改革を財源として少子化対策を進めることは、全世代型社会保障の構築に資することとなり、適切なものであると考えております。
防衛力の抜本的強化と、子供、子育て政策の抜本強化、どちらか一方ということではなく、共に必要な予算をしっかりと措置するための財源確保に取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕
○国務大臣(加藤鮎子君) 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。
児童扶養手当の拡充についてお尋ねがありました。
児童扶養手当については、給付の重点化を図る観点から、所得限度額を設け、所得が一定額を超えると減額する仕組みとしています。
今般、所得限度額の引上げを行いますが、近年の一人親の就労収入の上昇等を踏まえた見直し内容としています。
一人親家庭への支援については、児童扶養手当等による経済的支援のみならず、就業支援、生活支援や養育費確保支援など、多面的に支援を行うこととしております。こうした支援を確実にお届けしていくことで、一人親家庭の生活をしっかりと支援してまいります。
こども誰でも通園制度についてお尋ねがありました。
こども誰でも通園制度については、全ての子供が円滑に利用できるよう、保護者が空き状況を確認し、簡単に予約することが可能となる一元的なシステムが必要と考えています。
また、現在の教育・保育給付の対象となっていない施設においても、実施主体である市町村による認可の下、受入れ体制が整っている場所において実施することも可能とすることを考えております。
さらに、配置基準につきましては、試行的事業において、一時預かり事業と同様の人員配置基準で行うこととしております。その上で、制度の本格実施に向けて、試行的事業の実施状況などを踏まえながら、保育士以外の人材の活用も含め、保育の質の確保にも十分に配慮しつつ、更に検討を行ってまいります。
保険料に対する支援金の比率についてお尋ねがありました。
先日公表した医療保険制度ごとの支援金額の試算においては、御参考として、令和三年度の医療保険料額に対する令和十年度の支援金額の比率をお示ししております。
国民健康保険につきましては、御指摘のとおり、この比率が五・三%となっていますが、医療保険各制度の保険料額については、それぞれの医療費水準や制度間の財政調整等の影響を受けるものであり、一定のルールに従って機械的に拠出額が按分される支援金の額との比率は、各制度で厳密に一致するものではありません。
このため、この比率は、結果として医療保険制度間で違いが出ていますが、一定の範囲内に収まっているものと考えています。(拍手)