原発事故「逃げ場失う」
高橋氏が複合災害で質問
衆院復興特委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=22日、衆院震災復興特委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は、22日の衆院復興特別委員会で原発事故と自然災害の複合災害について質問しました。
能登半島地震では家屋の倒壊や避難ルートの一部寸断が起き、北陸電力志賀原発に近い地域で孤立状態が発生しました。高橋氏は志賀原発と同様に半島地域にある東北電力女川原発について、宮城県内の有権者を対象とした河北新報の意識調査では、能登半島地震で不安が大きくなったとの回答が30・9%を占めたと紹介。原発運転の可否を判断する新規制基準では避難計画が審査対象外となっている理由をただしました。原子力規制庁長官官房の児島洋平審議官は「地域ごとの実情を熟知する自治体が地域防災計画の中で定める」と答弁しました。
高橋氏は東日本大震災では女川原発周辺で道路が寸断し、住民が原発内に避難したとして、原発で何らかの事故が起きれば「完全に逃げ場を失う」と強調し、能登半島地震を受け、山中伸介規制委員長が複合災害は重要な問題だと認めたが「どのように整理したのか」と質問。児島審議官はUPZ(5~30キロ圏内)の住民は屋内退避を基本とする原子力災害対策指針は「見直すものではないという結論に至った」と強弁しました。
高橋氏はひとたび原発事故が発生すれば、正確な情報把握もできず、適切な避難も困難で「自治体で対応できる範疇(はんちゅう)を超える」と指摘。推進側の経産省は規制庁の審査を根拠に稼働させるとしており、互いに責任をなすりつけあっているもとでの原発再稼働は「絶対にやめるべきだ」と批判しました。
(「しんぶん赤旗」2024年3月24日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
能登半島地震が発生した元日、志賀原発から北に十キロほどの地域に住む男性が、自宅が壊れ、原発のことまで考える余裕がない、何ともなくてよかったと声を出したことを、二月二十一日付の朝日が報じています。
石川県の計画では、原発が立地する志賀町の北部の住民は山間部を抜けて能登町に避難するが、基本的な避難ルートの十一路線のうち七路線が崩落や亀裂で寸断、いわゆるPAZ、UPZに当たる三キロから十キロ圏内では、一時、輪島市と穴水町の計八地区が孤立状態でした。
二月六日の東京新聞は、志賀町の稲岡健太郎町長が、海にも空にも逃げられないと述べたと報じています。
原発事故と自然災害という複合災害のときに、避難はどうあればよいのか。東日本大震災は、地震、津波という自然災害と原発事故による複合災害であり、既にその時点で課題は明確だったと思います。この点で、福島第一原発の事故は避難においてどんな教訓があったか、大臣の認識を伺います。
○土屋国務大臣 福島第一原子力発電所事故を踏まえた原子力防災に関する教訓としては、例えば、住民の避難等の範囲が、事前に防災対策を重点的に充実すべきとされた範囲、八キロから大幅に増えて二十キロになったということ、事故の進展に応じて避難区域を拡大した結果、多くの住民が避難先を転々とせざるを得なかったこと、そして、病院や福祉施設の入居者が避難中又は避難先で亡くなるという痛ましい事態が発生したこと等が挙げられると思います。
このような教訓を踏まえて、内閣府では、原子力発電所の所在地域ごとに地域原子力防災協議会を設置して、各地域の原子力防災体制の充実強化を図り、原子力災害対応の実効性の向上に取り組んでいると承知しております。
復興庁としても、東日本大震災、原子力発電所事故の風化防止と教訓の継承がなされるよう、関係省庁と連携してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
本当に、どれも思い起こす事例ではなかったかなと思います。特に、避難の範囲がどんどん逆に広がっていったということでの混乱というのは非常に大きかったと思っています。
それで、原子力規制庁に伺います。
現在、新規制基準適合性審査を行っております。主なもので七つの電力会社、九基の原発本体施設について審査中と承知をしておりますが、避難計画の有無やその実効性については審査の対象としないという理解でよろしいかと思いますが、確認します。それがなぜそうなっているのか、理由を簡潔にお願いします。
○児嶋政府参考人 お答えいたします。
まず、新規制基準は、原子炉等規制法に基づき、施設の構造等に着目して、災害の防止上支障がないかどうかを確認するための基準であり、いわゆる避難計画は含まれておりません。
一方、いわゆる避難計画につきましては、災害対策基本法に基づき、地域ごとの実情を熟知する自治体がそれぞれの地域防災計画の中で定めることとされています。
また、立地地域ごとの地域原子力防災協議会が、避難計画を含む緊急時対応について、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的なものであることを確認することとしているほか、地域原子力防災協議会において、関係府省庁が一体となって緊急時対応の具体化、充実化に取り組んでおります。
さらに、原子力規制委員長が参画する国の原子力防災会議でもその緊急時対応を了承することとしており、原子力規制委員会としては、これらのプロセスを通じて、専門的、技術的観点から所要の役割を果たすこととしております。
以上です。
○高橋(千)委員 それぞれの役割があるというように聞こえるんですけれども、結局は、じゃ、どのタイミングで決めるのかということが、実はお互いに責任を任せている、そういうことになるんですね。そこがずっと問題に私は考えてきました。
二月の頭に珠洲市に行ったんですけれども、その前日、青森県の大間原発三町村の首長らが来室をしました。とても人ごとではないと訴えられました。
下北半島も半島地、まさに似たような地域でして、一昨年の豪雨災害で、国道を始め、土砂崩れで不通となりました。まさに目の前の橋を渡ればすぐそこが役場なんだけれども、それが陥没してしまったわけで、風間浦役場にたどり着くために、夜の山道を二時間以上かけて、迂回路を回ってたどり着いたことを思い出しています。
半島部という点では、宮城県の女川原発も同様です。東日本大震災のときは、東北電力ですが、原発の体育館の中に、最大時では三百六十四名の町民を避難させております。これは、私自身が直接、被災者がいたときにその体育館に訪れているんですけれども、原発の周辺は何十か所も道路が寸断されて、ほかに逃げ場がなかったわけであります。逆に、女川原発が直接何らかの事故に遭えば、完全に逃げ場を失うということは明らかだったと思います。
共同通信によると、国交省が公開している地理情報データを基に、道路が土砂災害警戒区域を横断しているかどうかを分析すると、建設中を含む国内十九の原発の三十キロ圏内にある自治体のうち、十八道府県、計百九市町村で、地震など災害時の緊急輸送道路が土砂崩れなどにより寸断される可能性があることが分かった。実に三十キロ圏内に含まれる市町村の七九%に当たるといいます。
原発周辺の自治体の避難道路がこのような条件下にあるという実態はどこまで掌握されているでしょうか。その上で、どのように避難計画を作るんでしょうか。
○森下政府参考人 お答え申し上げます。
内閣府では、御指摘の道路状況も含めて、地域の実情をよく知る関係自治体、関係省庁、機関が参加する地域原子力防災協議会の枠組みの下で、自治体の避難計画の策定、充実化の支援や緊急時の対応の取りまとめ、あるいは取りまとめに向けた検討を進めております。
具体的には、この協議会には、国交省やNEXCOや道府県、市町村、三十キロ圏内の関係自治体が参加しておりまして、これら道路管理者も参加して、地域ごとの緊急時対応において、大規模な自然災害と原子力災害の複合災害も想定して、道路が寸断した場合の防護措置についても整備してきております。
先ほど御指摘がありましたのは道路の寸断についてでございますけれども、その対応といたしましては、避難経路をあらかじめ複数設定する、あるいは必要な代替経路を設ける、陸路が駄目な場合は海路、空路による避難、また、その避難の準備が整うまでは屋内退避を継続する、さらには、必要な場合、警察、消防、自衛隊といった実動部隊が住民の避難を支援するということとしております。
引き続き、この協議会の枠組みの下で、自治体の避難計画の策定、充実化の支援や原子力災害対応の更なる実効性の向上にしっかりと取り組んでまいります。
以上です。
○高橋(千)委員 複数の道路が、要するに、さっき言った女川なんかはまさにそうなんですよ、西も東も南も北も八方塞がりになるわけです、道路寸断。一般的な災害であれば、そこが埋まったら代替道路と考えるけれども、そうじゃない場合が当然想定されるということも含んでいますかと聞いています。
○森下政府参考人 そのような場合も想定をして、先ほど申し上げましたけれども、啓開作業に取りかかりつつも、自衛隊による住民の避難、これは実動部隊により、警察、消防、自衛隊の力をかりますけれども、それによりまして住民の避難を行うというふうに計画しております。
○高橋(千)委員 想定していることとできるということは、要するに、可能な計画が組めるということは別ですからね。
例えば、冬だったらどうしますか。私がお話をした下北半島に行く途中の横浜町という、下北半島の首のつけ根みたいなところにあるところがありますが、国道です、雪で全部塞がりました、いわゆる数珠つなぎに車がなって。自衛隊に出動要請をしました。だけれども、青森市からもむつ市からも、渋滞しているので届かないんですよ。そういう実態が起こり得るということをやはり複合的に議論をしなくちゃ駄目なんだということを指摘したいと思います。
十七日付の河北新報によれば、能登半島地震を受け、女川原発の重大事故時の避難計画に対して不安が大きくなったと答えた方が三〇・九%、元々不安と感じていて、その気持ちは変わらないと答えた方と合わせると、六四・八%に上りました。当然だと思います。
原災指針によれば、五キロ圏内は直ちに避難、三十キロ圏内は屋内退避を基本とします。改めて、地震なら、家屋が倒壊するなどして、屋内退避は厳しいねということが突きつけられたと思うんですね。
原子力規制委員会は、一月十三日に女川原発関係の市町村との懇談を経て、複合災害について議論してきたと思います。一月十七日の規制委員会で山中委員長が、能登半島では、家屋が倒壊をしたり集落が孤立をしたりという状況にございますけれども、そういう状況下での原子力災害という複合災害の問題、これは非常に重要な問題であると発言をされています。
この発言を受けて議論を始めて、どのように整理されましたか。
○児嶋政府参考人 お答えいたします。
まず、原子力災害対策指針では、住民等の被曝線量を合理的に達成できる限り低くすると同時に、被曝を直接の要因としない健康等への影響も抑えることが重要であるといった基本的な考え方を示しております。
この考え方に沿って、各地域の緊急時対応において、家屋倒壊が多数発生する場合には、自然災害に対する避難行動を最優先で行い、地方自治体の開設する指定避難所で屋内退避をするなどの複合災害時の対応は基本的に示されているものと承知しております。
そこで、これらの経緯を踏まえまして、去る二月十四日の原子力規制委員会におきまして、複合災害について議論が行われた結果、能登半島地震の状況を踏まえて原災指針を見直すものではないという結論に至っております。
以上です。
○高橋(千)委員 結局、重要な問題だと言ったけれども、見直しをしなかったんですね。山中規制委員長は、我々の範疇ではないと語ったと報道されて、責任逃れだなと思いました。
さっき、最初の質問がそうなんですよ。結局、地方自治体が作るからと言いますが、地方自治体にしてみたら、自分たちの範疇を超えているんですよ、これだけの災害が起こったときに。そして、経産省も、逆に、審査は規制委員会だから、安全審査はちゃんと規制委員会がやってくれるからと、お互いに責任をなすりつけ合っている、それが実態なんです。
規制委員会で議論された中身をざっくり言うと、自然災害時にはどのみち避難しなければならないんだ、だから、自分たちではなく内閣府防災がちゃんとやるはずだよという議論と、被曝を恐れるよりも、まず、それだけの災害になったら、いわゆる倒壊だとか、そういうことによる影響の方を先に心配をするわけだから、そういうことを考えたら、原子力災害ではなく自然災害に対する計画がしっかりできていればいい、そういう意味ですよね。
○児嶋政府参考人 お答えいたします。
自然災害に対する対応としての避難所の確保等につきましては、各地域防災計画の中で具体化、充実化されるものと承知しております。
○高橋(千)委員 だから、複合災害であっても、自然災害が避難計画をちゃんとやっていれば自分たちはいいんだ、そういう理屈でしょうと聞いています。
○児嶋政府参考人 複合災害を含め、自然災害に対する対応につきましては、地方自治体の各地域防災計画で具体化、充実化されるものと承知しております。
○高橋(千)委員 本当に信じられない答えなんですね。
要するに、私は、分担してもいいけれども、それぞれに限界がある、だからこそ、それを総合してちゃんと責任を持つというのは誰ですかということが知りたいわけなんですよ。ずっと聞いています。
東電の福島第一原発が水素爆発をしたのは翌日でしたよね。十二日の午後三時過ぎです。ですから、そこまで原発が深刻な事態に至っていたことは、周辺の自治体は知る由もなかったんです。SPEEDIが作動しないと言われて、実際はしていたんですが、プルームの流れが発表されなかった。何の指示も示されないために、浪江町の住民は、津島地区、最も濃度の濃かったところに避難して幾日も過ごしたわけです。
能登では、百十六か所あるモニタリングポストのうち十八か所で一時データが得られなくなりました。通信機能の多重化が課題になっていると聞きますが、こうしたモニタリングを仮に適切に行ったとしても、それを着実に判断する人、屋内退避じゃなくて逃げなきゃいけないよとか、そういう判断をする人は誰か、正しい情報を送る、それは誰ができるんですか。
○児嶋政府参考人 お答えいたします。
モニタリングポストの一部の測定が確認できない場合には、まず、我々が必要に応じて可搬型のモニタリングポストの設置や航空機モニタリングの実施等の代替措置を講じ、必要な判断基準に照らして、原子力規制委員会が避難等の防護措置の実施を判断することとしております。
その判断を受けて、原子力災害対策本部が輸送手段、経路、避難所の確保等の要素を考慮した避難等の指示を、地方公共団体を通じて、住民等に混乱がないように適切、明確に伝えることとされております。
○高橋(千)委員 ですから、自治体はまず原発のことを考えないわけですよ、地震だと思って、逃げなきゃいけないと思う。そのときに、モニタリングポストがどうなっているかなという話ではない状態になっている。そして、皆さんの計画は、自治体が安全な避難の計画を元々立てているはずだ、そっちが最優先だと言っているわけですよ。だったら、それを本当に規制委員会が正しく速やかに伝える、そういうことでいいんですか。あなたたちがやるということでいいんですか。
○児嶋政府参考人 お答えいたします。
複合災害時を含む原子力災害の発生の際には、原子力立地地域からモニタリングポストを通じて必要な情報を得て、原子力規制委員会において所要の判断をし、先ほど申し上げたルートを通じまして、地方公共団体を通じて指示等をお伝えいたします。
その際には、必要な地域公共団体との連携の体制は既にできておりますし、対応できるものと考えております。
○高橋(千)委員 第一原発から十キロ、第二原発から五キロの富岡町は、発災直後、原発に何か起こるなんて考えてもみなかったといいます。役場の会議をやっていて、そのまま避難した後の様子が長く残っていましたので、私もその場に行きましたけれども、町内の実情をつかんでなぐり書きしていたホワイトボード、炭化したおにぎり、つまり炭になったおにぎりがそのまま机の上に散乱していました。これは、今、資料館にそのまま再現をされております。
そのとき、机の上には、地域防災計画原子力編というラベルの貼った分厚いファイルがありました。課長は、それを指さして、あれが何の役にも立たなかった原子力編と指を指してつぶやいたのが忘れられません。自治体にしてみたら、そういうことなんですよ。ここに適切な指示ができますかと聞いています。
あの年の国会で、二〇一一年八月九日です、江田五月当時の環境大臣が、昭和三十年代に原子力基本法を基盤にする原子力法制ができた、そのときに、原子力発電所であるとか、あるいはその他の放射性物質を扱う場所から環境中に放射性物質が飛散するというようなことはない、そういう前提があったんですね、環境法制については、放射性物質はそもそも適用外だったということをおっしゃった。私は、反省を込めておっしゃったと思うんです。そういう措置をずっと取ってきて、今日まで来てしまっている。
でも、あのときの反省から見て、やはり変わっていないな、こう思うんですね。想定できなかったんじゃなくて、八六年にはチェルノブイリの事故があって、放射性物質が外に飛ぶということを、IAEAはちゃんと深層防護ということで示しているんですよ。日本はその条約に締約もしています。それでもこういう状態だということでは、余りにも責任がなさ過ぎる。
私は、こういう状態で再稼働をするということは絶対やめるべきだと指摘をして、残念ながら、時間が来ましたので終わります。