作業員被ばくを追及
高橋議員 福島第1汚染水処理で
衆院復興特委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=17日、衆院復興特委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は17日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、福島第1原発の汚染水を処理する多核種除去設備(アルプス)の配管洗浄作業中に作業員が被ばくした事故(10月25日)について質問しました。
高橋氏は質疑で、今回の事故の原因となった作業が、認可を必要とする廃炉作業の実施計画に違反していることを認めさせた上で、16日に東電が公表した報告書では、事故現場にいた作業員が当初発表の5人ではなく10人で、班長資格のある2次下請け作業員が現場から離れ、班長資格のない3次下請け作業員に班長を代行させていたことが、事故から2週間以上経過後に判明したことを問題視しました。
高橋氏は、作業員の被ばく線量評価の結果はまだ出ていないとしつつ、線量評価を求める理由と重要性についての認識を質問。山中伸介原子力規制委員長は「放射線管理区域であるため(規則等で定める報告基準に該当するか否か)被ばく線量を評価する必要がある」と答弁しました。
高橋氏は、東電は事故の経緯をわかっていないとして「もっと現場に出るべきだ」と批判。作業員の労働条件の改善とともに、廃炉作業と同時進行の柏崎刈羽原発の再稼働をやめ、「(東電は)廃炉に集中するべきだ」と、吉田宣弘経済産業政務官に求めました。
(「しんぶん赤旗」2023年11月20日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
土屋大臣に初めて質問をいたします。
先ほど来、大臣の所信に対する皆さんの質問の意見というか趣旨というか、同じことをみんな感じているんだなと思いましたし、同時に、大臣が非常に誠意を持ってお答えいただいているということは、とてもその気持ちは伝わってきたなと思っております。
就任以降、福島、宮城、岩手を頻繁に訪問して、被災地の声を聞いてきたとおっしゃいました。ただ、復興大臣として被災地を訪ねるのは本当に敬意を表したいと思うんですが、被災地にしてみると、毎回違う大臣が初めましてとなると、それはどうなんでしょうかと、やはりどうしてもそれを言いたくなるんですね。
改造のたびに復興大臣が替わるというのは、政府の復興に対する姿勢が問われるのではないか、やはり軽く見られている、そう思うんですが、大臣の受け止めを伺いたいと思います。
○土屋国務大臣 これは、人事に関しては、私が言うまでもなく総理の専権事項でございますので、なかなか、私からそれ以上は言えない状況でございますけれども。
私自身は、復興大臣に指名されたとき、先ほどもちょっと話しましたけれども、戸惑った部分もあったんです。ですけれども、待てよといろいろ考えてみますと、法律にも書かれているように、司令塔の機能であるということを考えますと、私も議員生活が非常に長くなっておりますので、いろいろな委員会にも所属しておりますし、いろいろな省との関係も築いてこられましたので、もしかして私に向いているのかなという気持ちは持ちました。
そしてまた、地域を回って歩いて女性たちの声をしっかり聞いていきたいなというのが私の思いでございましたけれども、まだそんなに大勢の女性と話はしておりませんけれども、やはり災害があると、見えないけれども女性がバックで頑張っているというのは前から言われていることでございますので、そういう点も見ながらしっかりと活動していきたいなと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
人事に対しては言えないんだというお話でしたけれども、その思いをしっかりと伝えて、やはり復興大臣というのは責任を持ってやるべきなんだということ、司令塔の役割を、正直、やはりちょっと、皆さんも指摘されたように、各省庁に遠慮しているというような事態がありまして、復興庁をつくるときに、ほかとは違うんだ、司令塔の役割なんだということを確認して、私もその場にいましたので、やはりそこを大いに発揮をしていただきたいと思うし、また、せっかく女性たちの声も生かしたいということをおっしゃいましたので、どうしても、大臣が来る、総理が来るというと、いいところを見せたくなるというのもありますから、そうじゃなくてリアルなところを話を聞きたい、そういうことで頑張っていただければいいなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
次に移ります。
資料の1を見てください。先ほど来議論になっておりますけれども、東電福島第一原発で十月二十五日に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染の、これは時系列の表であります。ALPSの運転に伴い配管内にたまった炭酸塩を硝酸で溶かして洗浄するという作業だそうです。
洗浄廃液を受入れタンクに注ぐホースが外れて、作業員がこれを浴びてしまったということで、資料の2にあるように、その作業員は五人、三次下請であります。三つの協力会社の社員であって、元請は東芝エネルギーシステムズ。計画線量が〇・六ミリシーベルトで、ガンマ〇・五ミリシーベルト、ベータ五ミリシーベルトのところを、APDが振り切ってアラームが鳴ったということでありました。
山中原子力委員長は、今回の事態、事案を東電の実施計画違反とコメントしています。資料の二枚目にあるように、本来は、タイベックを二重に着て、その上にアノラックを着て、やはり撥水性がないといけないというべきところが、着ていなかったことが指摘されておりますが、実施計画上はどうなっていたのか。
つまり、資料の3に五人の配置図があるんですけれども、これは、協力会社、X、Y、Zで分けて描いております。受入れタンクの前にいた作業員Aさんは、一時的にCさんと交代したということなんですね。それをちゃんと言わなかったのが悪いとかいうのもあるんですが、元々、交代云々にかかわらず、五人全員が着ているべきだったという理解でよいのか、そのほかには違反はないのか、お願いします。
○山中政府特別補佐人 お答えいたします。
東京電力が福島第一原子力発電所事故後に必要な作業を行うに当たっては、認可された実施計画に従って保安措置等を実施することが法律では義務づけられております。
御指摘の事案については、五人の作業員のうち、身体汚染を受けた作業員が、本来作業手順に定められているアノラックの着用を行っていない状態で作業に従事していたことなど、東京電力が定めた手順に違反していたことが既に確認されていることから、実施計画に違反していると考えております。
原子力規制委員会としては、今回の事案が発生した直後から、現地の検査官が中心となり、他に違反がなかったかという観点を含めまして、事案の発生経緯等について保安上の問題点の確認をしているところでございます。
この検査の結果を受けて、実施計画違反の影響の程度や再発防止策の妥当性等について判断する予定でございます。
○高橋(千)委員 今、手順違反だというところで、実施計画違反ではあるだろうと。ただ、ほかにもあるということについては詳細な審査の上でというお答えだったかと思います。
それで、エネ庁に伺います。
昨日、東電から、「増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染発生を踏まえた対応について」が公表されました。当初、広報は五人全員が東芝傘下の同じ企業の社員だと認識していた、こう書いてあって驚きました。
さらに、配付資料にはなかった工事担当者一人、今、五人の配置図を広げているんですが、このほかに工事担当者一人と放射線管理員二人が図の中に追加されていて、参考ということで、その五人の作業員とは別に、工事担当者、設計担当者、管理員二人、別現場にいた作業責任者の方の被曝線量も記されていて、身体の汚染付着がありませんので、大したことはないという資料なんですよね。
ただ、そのうち四名は元請である東芝の社員であった。そのうち四名というのは、ここに描いている人以外の人は東芝の社員であったということが、昨日の資料を見て分かったわけです。そして、班長資格のない三次請のBさんに班長を代行させていた。ちょっとこれ自体、大変驚く中身だったわけですね。
二十五日に事故発生して、最初の規制庁と東電の面談が三十一日、規制委員会で議論されたのは翌一日です。詳細な事故原因などがすぐに分からないのはやむを得ないと思っていましたが、当日その場にいた人の数が二週間以上たって初めて分かるというのはどういうことなんでしょうか。
私が通告していたのは、本来、班長などが、その場にいなければならなかった人はほかにもいるんですよね、つまり、五人のほかにも、いなければならなかった人という質問を通告しておりました。実際は何人で、何人いなければならなかったのかということを、お分かりになったら、お答えください。
それから、せっかくですので、この問題について、人の配置が全然最初の報告と違っていたということについて、山中委員長の感想を一言伺いたいと思います。
先にエネ庁。
○湯本政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、昨日、東京電力が公表いたしました資料によりますと、今回の事案が発生した現場にいた人数ということでは、十名ということになります。
広報の関係では、これまで身体汚染というところで事実関係を御説明してきたということでございまして、そういう意味で、これまで身体汚染の懸念があった作業員の方を中心に御説明をしてまいりました。
昨日、東芝の方から正式な形で今回の事案についての結果の報告書が上がってきたということで、その中に含まれておりましたその他の工事担当者等の情報についても御説明をさせていただいているというふうに承知しております。
○山中政府特別補佐人 お答えいたします。
東京電力の発表が、本事案につきまして二転三転しているということは承知しております。
繰り返しになりますけれども、原子力規制委員会としては、今回の事案が発生した直後から、現地の検査官が中心となって状況を正確に把握するとともに、他に違反がなかったのかどうかという観点を含めまして、事案の発生の経緯、保安上の問題点の確認を現在行っているところでございます。
この結果を受けまして、実施計画違反の影響の程度あるいは発生防止策の妥当性等について今後判断をする予定にしております。
○高橋(千)委員 先ほどの十名という答弁は、正直、すごく驚くんですよね。五人しか図に載っていない理由が、線量評価の必要がある人ではないみたいなことを言っておりましたけれども、それもおかしいと思うんですよね。そもそも、東芝の社員だと思い込んでいたということ、班長資格のない人がやっていた。ここにあるCさんという方は現場を離れています。別エリアに移動しているから、汚染されていないんですよ。その理屈でいったら、ここにいた方は、東芝の社員であろうと、当然、図に載っていて報告されるべきではなかったか。これは曖昧にできないと思いますが、いかがですか。
○湯本政府参考人 お答え申し上げます。
東京電力の方で事案の内容について御説明をしている際に、それぞれ、東芝から幾つかの下請を介していますけれども、どういった下請の構造の中でこの事案が行われたかということも御説明をしてきたかと思います。
実際に、現場の地図の形ではお示しはしておりませんけれども、こういったことが判明した都度、追加の情報という形で公表させていただいているというふうに承知しております。
○高橋(千)委員 規制委員会が最初に聞き取りをしてから二週間たっているんですよ。線量評価の話はこの後しますけれども、それは難しいのは分かっています。でも、その場にいた人が何人かも二週間たたなきゃ分からない、それは分からないんじゃなくて、教えていないというだけの話ですよね。そういうことがやはり姿勢が問われる、このように思うんですね。
それで、ちょっと時間の関係で一つ飛ばしますが、線量計が振り切れてアラームが鳴って、管理区域退出基準以下に除染しても落とせなかったというほどの汚染があったわけですけれども、まだ線量評価は完成していないという状態でありますけれども、これをきちっと求める理由、重要性について山中委員長に伺います。
○山中政府特別補佐人 お答えいたします。
東京電力は、福島第一原子力発電所事故の影響を受けまして、福島第一原子力発電所事故の敷地のほぼ全体を放射線管理の対象区域として指定した上で、規制委員会の認可を受けた実施計画に基づいて、放射線業務従事者の被曝を合理的に達成できる限り低くするよう、放射線防護の措置や作業管理を行うことになっております。
また、事故トラブルの発生によって放射線業務従事者の全身に対する実効線量が五ミリシーベルト、又は皮膚に対する等価線量が年間五百ミリシーベルトを超える被曝があったときには、原子炉等規制法に基づき定めた規則等により、事業者が規制委員会にその旨を報告することを求めております。
こうしたことを踏まえまして、東京電力は、汚染による被曝が生じた放射線業務従事者の被曝線量を評価する必要があり、規制委員会としてもこの状況の把握に努めているところでございます。
○高橋(千)委員 今、法令報告に該当する基準かどうかというのを評価する必要があると。やはり全体が放射線管理区域であるからという御指摘があったのはとても大事なことだと思いますし、十一月一日の記者会見で山中委員長自身が、作業員の健康の問題というのは非常に重要ですので、実効線量の評価というのは重要なポイントの一つだとおっしゃっております。やはりそういう立場ではないのかなと思っています。
今回の作業員のBさんという方が、この作業を前にもやったことがあって、今まで一度も飛散する、浴びるということがなかったから、アノラックを着なくてもいいと思ったと。つまり、三次下請なのに自分の経験で判断しちゃっているという、本当にこういう深刻な事態が起こっているんだなと思って、徹底していかなければならないと思うんですね。
それで、私は八日の記者会見で山中委員長がおっしゃったことはとても大事だなと思うんですが、東電の社員が現場に出て、きちっと現場が分かった上で作業を進めてくださいということをお願いしていると答えていらっしゃいます。これは本当に、実際に元請の東芝ですらちゃんと把握していなくて、まして、そこに委託した東電自体は事のてんまつをほとんど分かっていないということなわけですよね。そして、こういうラインが無数にあるということでは、やはりもっと東電が現場に出なければいけない、そういう事態なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○山中政府特別補佐人 お答えいたします。
東京電力福島第一原子力発電所における廃炉作業に当たっては、東京電力の社員自身が現場の状況をよく把握した上で作業を管理して進めることが重要であると考えております。この考えについては、私が現場を視察する際にも常々東京電力に伝えているところでございます。
なお、今回の事案については、東京電力の作業管理の在り方も含め、発生要因など、現地の検査官が中心となって検査で確認をしているところであり、具体的な再発防止策の妥当性については、今後の検査の結果を通じて判断をしていくことになると考えております。
○高橋(千)委員 一つ一つの事案については、再発防止ということで、大事には至らない、そういう判断かもしれないんですね。だけれども、それが無数に積み重なって、三十年、四十年、五十年とずっとこの作業をやっていかなきゃいけないんだということを考えたときに、やはり作業員もかなりの限界ですよね、タイベックを着てマスクを着けているだけでも私は本当につらいと、自分自身がF1に入ったときにそう思いましたけれども、その上にアノラックを着て作業しているわけですよ。
こういうことを考えても、本当にこの作業を、モチベーションを続けていけるように東電がもっともっと責任を果たさなきゃいけないし、そのためには、やはり廃炉作業に集中すべきだと思うんです。
申し訳なかったです、この質問は、吉田政務官にいらしていただいているんですが、時間が来てしまいましたので、要望にしたいと思うんですけれども。
やはり規制委員会も、この東電の福島の事故を取り上げているその傍らで、また柏崎刈羽の原発の再審査の問題もやっているわけですよね。でも、同じ東電、やはりそこに集中する、それだけの人がもういるんじゃないんだ、再稼働を考えている場合じゃないんだということを私は今日は言いたかったということであります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。