国会質問

質問日:2023年 11月 15日 第212国会 国土交通委員会

国交大学校研修での障害者差別資料問題、国交省における障害者雇用の実態について

国交省障害者雇用 総点検を

高橋氏、研修での差別表現告発

衆院国交委

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=15日、衆院国交委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は15日、衆院国土交通委員会で、国交省の障害者雇用の実態について質問し、総点検を求めました。

 国交省の研修機関である国土交通大学校が実施した研修で使われたテキストに、「対応が困難と思われるクレーマーのタイプ」として、「軽度の人格障がい」「発達障害」などの障害者に対する差別的な文言が書かれていた問題を、「赤旗」日曜版10月15日号がスクープしました。

 高橋氏は、「どういう表現が、なぜ問題があったと思うか」と質問。斉藤鉄夫国交相は「特定の疾患や障害がある方をクレーマーと結びつける表現があった。差別を助長しかねない内容で、大変遺憾だ」と答え、再発防止を約束しました。

 高橋氏は、「民間に委託した研修であっても国交省に責任がある」と指摘。斉藤国交相は責任を認めました。

 高橋氏は、差別の背景に、2018年の障害者雇用をめぐり、国交省が大量の水増し報告を行っていた問題があると指摘し、「事務集中チーム」と称して障害者を集めて軽微な作業をやらせている実態も告発しました。

 その上で、同省の障害者活躍推進計画の「実施状況」に、「法定雇用率達成」「(障害者被雇用者の)9割が満足」とあるのは「数字あわせの形式的な報告ではないか」と指摘。大本に差別意識があるとして障害者雇用の総点検を行うべきだと主張しました。

(「しんぶん赤旗」2023年11月17日付)

 

(「しんぶん赤旗」日曜版 2023年11月26日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 資料の配付、すぐ質問しますので、お願いします。
 資料の一枚目を見ていただきたいんです、まだ届いていないと思いますが。十月十五日付の赤旗日曜版です。「国交省研修で障害者差別」という大きな見出し、国土交通大学校が実施した行政相談対応・交渉力研修、二〇二一年一月二十六日から二十八日まで行われたものですが、国交省や内閣府の職員ら約三十人が参加、オンライン形式で開かれたとあります。
 そして、この研修のテキストを持っておりますが、そのうち該当部分を、資料の二ページにあります。対応が困難と思われるクレーマーのタイプとして、軽度の人格障害、不安神経症、パラノイア、発達障害、アスペルガーなど、具体的な障害の名前を特記しています。下段の暴走老人もちょっとすごいんですけれども、前頭葉が劣化とか、ちょっとひどいんですが、これは、同名の著作があるということが、断り書きがありますので、ここは論をしないようにしておきますが。
 実は、この赤旗新聞が出た後に、十月十七日、超党派の発達障害議連がありました。ちょうど私、この日、出席できなかったんですけれども、代理が出ていた中で、総会で話題になりました。公明党の先生方が事務局長をずっと続けてやってくださっている、本当に真面目な議連であります。当然のことながら、発達障害の関係団体がそろい踏みしている中でこの問題が明らかになったので、皆さん驚かれたのは当然のことだと思います。
 それで、先週の参議院国土交通委員会で、れいわ新選組の木村英子議員が取り上げておりましたが、大臣は、既に改善を指示したと答弁をされました。
 そこで伺いますが、大臣は、この中で、どういう表現が、なぜ問題があったと思うか、認識を伺います。
○斉藤国務大臣 国土交通大学校で実施した行政相談の研修において、民間の講師によって作成された資料の中に、特定の障害や疾患がある方をクレーマーと結びつける表現がありました。こうした表現は、障害や疾患がある方に対する差別を助長しかねないものと認識しております。
 国土交通省では、全ての国民が、障害や疾患の有無にかかわらず、互いに尊重し、理解し合える共生社会の実現に向け、差別やバリア解消のための様々な取組を全力で進めてきているところです。そうした中で、今般の事態が発生したことは大変遺憾でございます。
 そのため、直ちにこの研修の抜本的な見直しを行うとともに、今後実施される研修において、こうしたことを防ぐべく、しっかりと再発防止策を講じるよう指示いたしました。
 また、研修以外の業務一般につきましても、障害や疾患がある方への差別的な表現や対応を行っていないか、改めて点検し、仮にそうした実態が認められた場合には直ちに改善措置を講じること、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の必要性について、職員の認識を深めるとともに、その実行を徹底すること、以上二点を周知徹底するよう指示いたしたところでございます。
 再びこのようなことが起きることがないよう、しっかりと対応してまいります。
○高橋(千)委員 大臣、もう一言伺います。
 差別ということをきちっと認めていただきました。その代わり、前段に、民間が行ったこととはいえというお話があったんですが、民間に委託したそのことも含めて、チェックも含めて、これは国交省の責任であるという立場でよろしいですね。
○斉藤国務大臣 民間がどのような内容をしているかということ、内容を正確に把握していなかったということは、これは国土交通省として至らなかった点だと思っております。
○高橋(千)委員 確認しました。
 ちょっと具体に聞きたいんですが、研修の実施はどういう趣旨で、また、いつから行われており、対象はどうなっているのか。そして、委託先についてどのように選んでいるのか。また、当該研修受託先はいつから、私はどこの会社か知っているんですが、あえて言いません、いつからかということもお願いします。
○寺田政府参考人 本件の研修につきましては、行政相談対応に必要となるスキルを習得させることを目的に、平成二十三年度から、課長補佐、係長、係員などの職員を対象に、国土交通大学校で行ってきたものです。
 本件研修を委託した講師につきましては、過去の古い記録がございませんので、記録に基づいた御説明はできないんですが、平成二十三年度当初から、この研修を開始する際に、こうした研修の趣旨に照らして、当時の担当者が当該講師の知識や経験を踏まえて依頼したというふうに考えてございます。
○高橋(千)委員 つまり、公募でも何でもなく、漫然と、前回やった人、講師が変わるかもしれないけれども、同じところに委託していたということなんですね。このこと自体が重大な問題ではないかと指摘したいと思います。
 それから、個別の障害の名前と特性などが、先ほど大臣がお話しいただいたように、決めつけ的に書かれているわけですよね。本来、こういうものを作るときには、医師とか、あるいは当事者らの意見を聞くべきだと思うし、聞いたんでしょうか。
○寺田政府参考人 本件の研修の資料につきましては、委託した講師において作成されたものでありまして、国土交通省において、改めて専門家や障害者の方から御意見を伺うことはしておりませんでした。
 本件研修について、先ほどもございましたけれども、大臣からの指示を受けて、見直しあるいは今後の再発防止策を検討することとしております。
 その中で、民間に委託する研修でありましても、その内容、研修資料について、必要に応じて障害者の方などの意見も聞きつつ、事前に十分な確認などを行っていくことを検討してまいります。
○高橋(千)委員 今後についてはそうするということでありました。
 ただ、先ほど、課長補佐から係長まで対象になっているというお話があったんですね。それだけの方たち、当然人事の担当の方はいらっしゃると思うんですが、自分たちが参加をしていて、何も違和感を持たなかったのか、受講者の中から指摘はなかったのか、これはどうですか。
○寺田政府参考人 本件の研修の実施後に、一部の受講生の方から一部の表現の適切性について指摘がございました。その後に行われた研修以降、その指摘のありました表現については、講師に修正を依頼しておりました。
○高橋(千)委員 初めてお認めになったと思います。
 研修参加者の中に、指摘されている障害の当事者がいたわけです。直接抗議をしたんですけれども、講師の方は、発達障害などは医師の診断を受けて分かるものなのに決めつけていないかという指摘に対して、弁護士の確認を取ったから問題ないと答えたそうです。
 その方の受講後のアンケートを見ると、ほかの部分は、何か所か大いに参考になったと書いています。つまり、国交省は、私に説明したときに、講師の評判がよかったと聞いているので、そういう意見が出なかったと思っていたわけです。
 確かに、講師は、元の仕事柄、そうした接客がとても得意で、また、多くのクレーマーとも接した分だけリアルに話せたのかもしれません。それがとても分かりやすいという評価になったかもしれません。しかし、何年もやってきて、当事者が訴えるまで職員の中で違和感を持った人もいなかった、それが深刻だと思うし、それとも、実はほかにもあったんだけれども黙殺してきたのか、どうなんですか。
○寺田政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、平成二十三年度からこの研修を行っております。その過程で、国土交通省としても、教材の内容、それから研修の内容についてしっかりと確認して、不適切な表現がないようにすべきであったというふうに思っておりますので、過去、そうしたこと、対応ができなかったことについては、大変遺憾なことだというふうに思っております。
○高橋(千)委員 私は、その背景にあると感じたのは、平成三十年の国の行政機関による障害者雇用水増し問題であります。
 資料の三を見てください。国土交通省障害者活躍推進計画、令和二年から七年までの計画であります。この一番左側の、ちょっと幅の多いところに書いてありますけれども、水増し問題を受けて取り組んできた、この計画に取り組むこと、そして、令和元年十二月三十一日に法定雇用率を達成したとあるわけです。
 毎年六月一日が障害者雇用促進法の所管庁である厚労省への通報期限となっておりますが、毎年達成すること、そして、三にありますが、満足度の全体評価九〇%を上回るよう努めるとあります。
 水増し問題が起こった当時、私は厚労委員だったので、全部の省庁の評価を読んでいます。当時、国交省が極めて多かったことを記憶しています。
 資料の四を見てください。資料の四のゼロが並んでいるやつ、これは水増ししたままの数字であります。本来、国土交通省は、ちょっと真ん中より下の方にありますけれども、八百九十人の障害者を雇用するはずであって、実雇用率、当時の目標である二・三八ということで超えていて、不足はないという評価だったわけです。
 ところが、その次を見ていただければいいんですが、資料の五にあるように、実際にカウントし直すと二百八十六・五人しかいなくて、実雇用率は〇・七%、六百五十九・五人が不足していた。これは国税庁に次ぐ高い数値であるんですね。
 私は、そのときの手法、大きな問題があったと思います。これだけの人数を毎年毎年採用しているわけではなくて、とにかくいる人の中から、ちょっとでも病院に行ったことがある人をカウントしていて、だから本人がカウントされていることを知らないという実態があったり、もう十年も前に辞めた人がずうっと名簿に載っていて、その中には亡くなった人も数人いた。そうしたことをずうっと、この問題が起きるまで繰り返していたわけです。
 私は、障害者に対する差別意識は、そうしたところからもあったと言えないかと思うんですね。水増し問題をどのように反省し、取り組んできたのか、大臣に伺います。
○斉藤国務大臣 障害者雇用につきまして、国土交通省においては、二〇一八年に相当数の不適切な計上があり、結果的に法定雇用率を達成していない状況が明らかとなりました。民間事業者に率先して障害者雇用に積極的に取り組むことが当然の責務である中で、このような事態は、あってはならないことです。
 国土交通省では、この事態を真摯に受け止め、深く反省し、二度とこうした事態を生じさせないという決意の下、公務部門における障害者雇用に関する基本方針に沿って、様々な再発防止策を講じた上で、障害者雇用を計画的に進めてまいりました。
 この結果、令和元年十月一日以降、法定雇用率を達成しており、直近では、法定雇用率二・六%に対し、二・八九%、令和四年六月一日時点でございますけれども、このようになっております。
 こうした努力を重ねてきている中で、今般の研修に係る事態を招いたことは大変遺憾であり、必要な対策を着実に講じてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 資料の最後を見てください。取組の実施状況、これは令和三年度なわけですね。私は、率直に言って、翌年には達成できていたというのは、逆に、本当だろうかと思うんです。数字合わせではなくて、本当に、数字を合わせていたことが問題だったわけですから、まだ途中だけれども頑張っているよという方がむしろいいんじゃないか。非常に心配になるわけですね。
 採用に関する目標は、実雇用率二・八九%であり、法定雇用率、その後引き上がっていまして、二・六%を上回っているとあるわけです。そして、三のところです、障害者である職員の約九割が国土交通省で働いていることについて満足しており、約八割が現在の仕事の内容に満足している、こう書いております。
 これは、さっき紹介したように、活躍推進計画に、九割を超える満足度というのが目標になっているわけです。これを達成しちゃっている。本当でしょうか。大変失礼な言い方ですが、本当でしょうか。数字を合わせているわけではないですか。本当に職場内で障害者雇用の職員に対して差別がないと言えるのか、伺います。
○寺田政府参考人 今、委員からアンケートの御指摘もございました。
 国土交通省では、国土交通省障害者活躍推進計画というものを定めております。その中で様々な取組をすることとしておりまして、職場の、職務の満足度に関するアンケート調査を行っております。アンケート調査以外にも、相談員を配置するとか職員向けの研修を実施するとか、様々な取組がございます。
 今ほどのアンケートについて申し上げますと、障害者である職員の約九割が国土交通省で働いていることについて満足をしているという肯定的な評価がある一方で、やはり、職場の執務環境の改善を求めるなどの指摘もあります。
 アンケートなどを通じて寄せられた個々の職員からの声を踏まえて、必要な改善措置をしっかりと講じていくことが重要だというふうに考えております。
○高橋(千)委員 アンケートのまとめを、せめてまとめ、誰が書いたかなんて必要ないですから、出してくださいというのに対しても、お答えをいただいていません。この二行だけでアンケートの結果だというのが国交省の説明だったんです。
 出していただけますか。
○寺田政府参考人 アンケート内容については様々な記述がございますので、その答えをそのままお出しするというのは控えさせていただきたいと思いますが、一番大事なのは、やはりアンケートなどを通じてしっかりと職員の意見を聞いて、耳を傾けて対応していくということだと思いますので、そうした観点から、引き続き取組を進めていきたいと思っております。
○高橋(千)委員 そうです。そのまま出せなんて一言も言っていないんです。だけれども、九割満足という一行で誰が満足できますか、そんなものが答えになりますかということを言っています。
 先ほど紹介した職員は、正規雇用で入職した年に、障害者ばかりが集められた事務集中チームに配属になり、しかも、配属した途端にチームリーダーと言われました。まさしく名ばかりリーダーであります。民間にも法定雇用率を達成するための特例子会社という制度がありますが、私は、それをまねたものだなと思いました。
 思い出したのは、これは国交省とは違いますけれども、桜を見る会の事件のときに、招待名簿はシュレッダーで処分してしまったという答弁がありましたよね。あのとき、野党ヒアリングの場で、障害者が作業に当たっているからみたいな説明がついたんです。なぜあえて障害者がやったことと説明するのかと、野党が追及したことがありました。
 私は、こういうところに、もしかしたら、軽微な作業、それしかできないわけがないのに、こうしてやっている、それで、いざというとき、その責任にする、こういう風潮がやはり各省庁の中にあるんじゃないか、このことを改めて言わせていただきたいと思うんですね。
 この実施状況の人材面、職務環境などを読めば、障害のある職員と業務の適切なマッチングができているかの点検を行うこと、定期的に面談により必要な配慮等を把握して、要望を踏まえて必要な措置を講じる、つまり、どういう仕事が向いているかも、ちゃんと要望を聞きながらやっていくと言っているんですよ。それが事務集中チームであるはずがないんです。形式的な計画、報告となっていないか、総点検が必要ではないか。
 これは大臣に質問する予定でしたが、質問時間が終わっちゃったので、要望として、大臣、聞いていただいたと思いますので、しっかりとやっていただきたい。お願いして、終わります。

2023.11.15 国土交通委員会 提出資料

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