約束破り重ね汚染水放出
国・東電は中止直ちに
衆参閉会中審査 高橋・岩渕議員が追及
(写真)質問する高橋千鶴子議員=8日、衆院連合審査会 |
(写真)質問する岩渕友議員=8日、参院連合審査会 |
東京電力福島第1原発事故の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出をめぐる閉会中審査が8日、衆参両院の経済産業・農林水産委員会の連合審査会として行われました。日本共産党の高橋千鶴子衆院議員と岩渕友参院議員は、政府と東電が漁業者との約束を踏みにじり、海洋放出を強行したことに断固抗議。ただちに中止すべきだと迫りました。
高橋氏は、政府と東電が2015年に福島県漁連と交わした「(汚染水を)関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束を反故(ほご)にしたと批判。岸田文雄首相が約束の当事者である福島県漁連と直接会うこともなしに放出に踏み切ったのはなぜかとただしました。
西村康稔経産相は「一定の理解を得られたと判断し、放出の日程を決めた」としてまともに答えませんでした。
高橋氏は、そもそも同年に約束が出された背景には、東電が汚染地下水をくみ上げて浄化処理後に海に流す「サブドレン計画」の受け入れを漁業者に迫った経緯があると指摘。東電が汚染水漏れを把握しながら公表しないなど不祥事を重ねる中で、「何度も裏切られた」との思いを持ちながらも、漁業者が「苦渋の決断」で同計画を受け入れたときの約束だとして、「そのような約束を結果として今回また踏みにじった。その反省が全くない」と厳しく批判しました。
岩渕氏は、約束した文書のなかで東電は「多核種除去設備(アルプス)で処理した水は発電所敷地内に貯留する」と記載していると指摘。「東電は今回の放出は『関係者の理解を得た』と判断したのか」と迫りました。
東電の小早川智明社長が「政府の方針に沿って放出を開始した」と答弁したのに対し、岩渕氏は「約束も守らず、当事者でありながら判断も示さず政府任せにしている。あまりにも無責任だ」と批判しました。
岩渕氏は、「福島県の沿岸漁業の水揚げ量は事故前の約2割、漁獲高は約4割で、震災前の5割以上の回復を目指し、試験操業を経てようやく本格操業へと向かおうとしている。こうした努力に水を差すのが海洋放出だ」と強調。「約束を守るということはちゃんと対策を取るということだ。海洋放出は今すぐ中止するべきだ」と求めました。
(「しんぶん赤旗」2023年9月9日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
八月二十四日、東電は、福島第一原発事故により生じたいわゆるALPS処理水の海洋放出を開始しました。断固抗議いたします。
全面禁輸という極端な対応に出た中国などに対して粘り強く理解を求めていくことや、大きな影響を受けている水産業を始め関連産業を守っていくことは当然やるべきことであります。問題は、だからといって今回の海洋放出が正しかったのか、あるいはそこに至る政府と東電の対応がどうだったのか、これは問われなければならないと思います。
岸田総理は、坂本全漁連会長との面会で、今後、数十年の長きにわたろうとも全責任を持って対応すると述べました。しかし、僅か八年前の同じ日です、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないと交わした約束はほごにされたわけです。
約束の当事者である福島県漁連とも直接会うことなしに放出に踏み切ったのはなぜでしょうか。
○西村(康)国務大臣 まず、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないとの福島県漁連との約束、これは経済産業省が行ったものでございます。
そして、二〇二一年四月の基本方針を決定以後、経産省から漁業者を始めとする地元の皆様に、回数でいいますと一千五百回以上の説明会を重ねてきております。私自身も直接、漁業者の皆さん、あるいは車座で集会的に意見交換なども行って対応してまいりました。漁業者の皆さんのお気持ちにしっかり寄り添って対応しなきゃいけないということを改めて感じているところであります。
その上で、八月二十一日に、全漁連の坂本会長を始め幹部の皆様、そして被災地の漁連会長の方々と岸田総理でお会いをされて、そして、政府の方針について御理解をいただけるようお願いをしたところであります。
その際、全漁連の坂本会長からは、漁業者のなりわい継続に寄り添った政府の姿勢と安全性を含めた対応について、我々の理解は進んできているというお言葉をいただいておりますし、県漁連から代表で出席されました鈴木専務から、約束は果たされていないが破られたとは考えていないという声もいただきました。また、復興と廃炉という共通目標に向けて、漁業者と国、東電は同じ方向を向いて進んでいるということもいただいたわけであります。
こうした、岸田総理は直接漁業者の皆さんと意見交換をされまして、その上で、今申し上げたような御発言をいただいたものですから、私ども、一定の理解は得られたというふうに判断をし、海洋放出を、最終的に日程を決めさせていただいたところでございます。
○高橋(千)委員 私が最初に指摘したことには答えていないと思うんですね。福島県漁連と交わした約束なのに、総理は会っていないわけですよ。その場に専務が一人いたというだけじゃないですか。それは全然約束にならないし、だったら、この場になぜ総理がいない。総理がいないところで委員会をやっているわけですよ。それ自体がやはり誠実じゃないし、約束をほごにした。だって、反対と最初に言っているわけですから、それに対しては答えていないと指摘をさせていただきたいと思います。
東電の小早川社長は、放出開始に当たっての記者会見で、放出開始はあくまで政府の判断だと強調したと報じられております。
資料の一枚目を見てください。一部ですが、平成二十七年八月二十五日、これは東電が社長名で福島県漁連に対して出した回答書です。
右側の四番のところを読みます。発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないこととの要望に対して、こうしたプロセスや関係者の理解なしにはいかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内に貯留いたします、こう約束した。これは約束じゃないんでしょうか。
○小早川参考人 御質問にお答えいたします。
二〇一五年に福島県漁連様と交わした文書では、漁業関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うことを約束しており、これまでも県漁連様には、廃炉・汚染水・処理水対策の内容につきまして、定期的に御報告、御説明をさせていただいておりました。二〇二一年四月に政府がALPS処理水の処分に関わる政府方針を定めた以降も、安全かつ慎重に作業を進め、理解醸成活動につきましても継続して取り組んでまいりました。
当社は、ALPS処理水の海洋放出について、この度、政府が関係者からの一定の御理解が得られたと御判断されたことを重く受け止め、政府の方針に従って慎重に放出の作業を開始したところでございます。
当社といたしましては、実施主体として果たすべき役割である設備運用の安全、品質の確保、それから、迅速なモニタリングと正確な情報発信、IAEAレビューなどを通じた透明性の確保、さらには風評対策、そして、損害が発生した場合の適切な賠償を廃炉の期間を通じて遂行し続けることがこの一定の御理解の前提になっていると受け止めており、重い責任を感じているところでございます。
関係者の御懸念の本質は、風評被害により、安心してなりわいが継続できなくなることだと認識しております。私どもといたしましては、先ほど申し上げた取組を廃炉の期間を通じて徹底し、ALPS処理水の海洋放出が完全に完了したその先に、子々孫々までしっかりとなりわいが継続していることをもって御理解が完了したことになると考えております。
当社は、実施主体として責任と役割をしっかりと果たすべく、引き続き、廃炉が終わるそのときまで、緊張感を持って一つ一つのプロセスを積み重ねる努力を継続してまいります。福島県漁連様と当社が交わした文書の内容につきましては、引き続き、廃炉が終わる期間を通じ、しっかりと遵守してまいる考えでございます。
私からは以上でございます。
○高橋(千)委員 この後、質問するんですけれども、廃炉に何年かかるか分からないのに、廃炉が終わって初めて理解が得られるかどうか検証されるみたいな、そんな無責任な話はありませんよ。しかも、放出の実施主体であるということはおっしゃっているんです。だけれども、理解を得られたかどうかというのは、政府がそう言っているという、何でそこだけ間接話法になるんですか。そこも、さっきから言っているように、約束を交わしたのは東電と福島県漁連なんですよ。そこは約束の主体であるということもきちんと認めた上で答弁してほしいと思います。
それで、そもそも、八年前の約束はどういう背景で出されたものだったかということなんです。
資料の二を見てください。「流出非公表 東電に憤り」、これは二〇一五年二月二十六日付の朝日新聞です。写真の真ん中は、おわびで頭を下げる東電の新妻復興本社副社長、その左隣が福島県漁連の野崎会長です。この日は、原子炉建屋の手前の地下水をくみ上げて浄化後に流すサブドレーン計画を協議する予定でした。しかし、港湾外の海に汚染水が流出していた事実を把握しながら東電が公表してこなかったことが発覚、一旦この協議が棚上げされたという記事であります。しかも、それが一つではなくて、右下に表がありますが、二〇一三年六月六日、一四年一月、一五年二月と、情報公開が常に問われている、そういうことが記録されているわけなんですね。
だから、漁業者に言わせれば、何度も裏切られた、そういう思いを持っているんですよ。東電に対する信頼が何度も崩れている。そうしたことが繰り返された上で、理解なしにいかなる処分も行わない、そういう条件をつけて、最終的に、山側、海側の地下水バイパス、建屋周辺のサブドレーン、これはまだ原子炉建屋に触る前の水ですから、そこまでは認めよう、やはり復興には必要だ、そういう決断をしてきたんですよ。このことを理解されているんですか。
○小早川参考人 御質問にお答えいたします。
当社は、二〇一一年の福島第一原子力発電所の事故以降、プラントの安定化を始めとする廃炉作業に取り組んでまいりましたが、その中で様々な御心配をおかけする事態を生じさせてしまったことも事実でございます。改めて、この場をおかりし、おわびを申し上げます。
今回、ALPS処理水の放出時期の判断に先立ち、八月二十日に岸田総理が福島第一原子力発電所にお越しになり、廃炉の現場を直接御確認いただきました。ALPS処理水の設備についても御視察いただきました。
その中で、現場と経営が最大限の緊張感と決意を長い期間しっかりと持続し、責任を果たし続けること、また、地元の皆様の御懸念や御不安にしっかりと向き合い、丁寧なコミュニケーションと分かりやすい情報発信を続けることに加え、国内外の関係者の皆様との信頼の上に今日があり、最大限の緊張感を持って、長期間を見通して内外の信頼を裏切らないとの決意と覚悟をしっかり持って全力を尽くすことについて強く要請を受け、当社は、このことを大変重く受け止め、決意と覚悟を持って長期にわたる廃炉をしっかりとやり抜くことをお約束いたしました。
二〇一五年に福島県漁連様と交わした文書では、漁業関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うことを約束させていただいており、これまでも県漁連様には、廃炉・汚染水・処理水対策の内容について、定期的に御報告、御説明をさせていただいてまいりました。二〇二一年四月に政府がALPS処理水の処分に関わる政府方針を定めた以降も、安全かつ慎重に作業を進め、御理解いただけるよう継続して取り組んでまいりました。
いずれにしましても、当社がこうした重い責任を負っていることにつきまして、しっかりと、今後の廃炉期間を通じてその責任と役割を自覚し、全力で取り組んでまいりますことで、福島県漁連様と交わした文書の約束を遵守してまいる所存でございます。
私からは以上でございます。
○高橋(千)委員 何度も裏切られたという思いに対しての答えではなかったと思います。
私たちも、笠井亮委員とも一緒に、二〇一三年八月二十二日でした、県漁連、それから、いわき、福島、相馬漁協、それぞれの単協を回って御挨拶をしたことがありました。あのときも、本当に苦渋の決断をするという決意をしていた、その前の日に三百トンの汚染水が流れていたということが分かって、それをずっと公表しなかった。また裏切られた、そういうことを繰り返してきた。繰り返してきた上の約束なんだと。これを結果として今回また踏みにじったことになるわけですよ。その反省が全くない。今からでも中止すべきだと思います。
それで、次の廃炉の問題に行きたいと思うんですが、資料の三の読売新聞、これは「処理水放出開始 完了まで三十年」、毎日新聞、「東電処理水放出を開始 完了まで三十~四十年」と、大概の新聞各紙、このように書いております。多くの方は、あと三十年たてばタンクがなくなるのかしらとか、若しくは、廃炉が完了して、あそこ、きれいになるのかしら、そう受け止めているのではないのでしょうか。
それで、実際そんなことはないと思うんですね。資料の五、最後のページにあるんですが、放出開始から第一回目は七千八百立方メーター、今年度中は三万一千二百立方メーター、これを放出する予定ですが、百三十四万立方メーターの一%にすぎません。しかも、当初から減ってきたとはいうものの、現在、一日九十トン汚染水は発生し続けているわけです。地下水の流れを止められていないからです。
そこで、今から三十年後の辺りには汚染水の発生はゼロになりますか。
○小早川参考人 御質問にお答えいたします。
現在、二〇二五年内に一日当たり百立方メートル以下に抑制するという中長期ロードマップの目標に向け、重層的な対策に取り組んでいるところでございます。
二〇二二年度の汚染水発生量は、年間降雨量が少なかった影響もありますが、敷地舗装などの対策により、先生今御指摘いただきましたとおり、一日当たり約九十立方メートルとなっております。これを、更なる対策を進めていくことで、二〇二八年度末には一日当たり五十から七十立方メートルに抑制してまいる計画としております。
汚染水の発生をゼロにすることにつきましては、引き続き努力し、目指してまいりたいと考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 ゼロにはできない、答えられないと思います。減らしてきたことは分かった上で質問して、今のお答えでありました。
そこで、今話題になったロードマップ、資料の四にあります。これは、廃炉が、冷温停止から三十年から四十年後という目標はずっと同じなんですね。
それで、廃炉とともに汚染水の発生もなくなる、先ほど西村大臣の答弁の中にそういう表現があったと思うんですが、ただ、これまでの、私、何度もこの問題を質問していますが、エネ庁も東電も、廃炉の最終的な姿がどうなっているのか描けないと答えてきているんです。これは変わらないんでしょうか。そうだとすれば、三十年たったとしてもそれはまだ通過点にすぎないと思うんですが、廃炉、一体どんな状態になっているということでしょうか。お答えください。
○湯本政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のありましたとおり、中長期ロードマップにおきましては、三十年から四十年後の廃止措置完了、二〇一一年十二月の冷温停止状態からの目標ということで取組を進めてきております。
廃止措置を完了した状態でございますけれども、現在、事故を起こした炉内の状況ですとか燃料デブリの性状など、これを明らかにすべく、内部調査ですとか、それに基づくデブリ取り出しに向けた研究開発を今進めているところでございます。
こういった取組の成果を踏まえながら、適切な廃炉の工法あるいは廃棄物の処分の在り方について検討を深めていく必要があると思っております。
したがいまして、現時点ではこういった取組を進めているところでございまして、廃炉の最終的な絵姿については、地域の皆様とも、思いをしっかりと受け止めて具体化していくということでございます。
○高橋(千)委員 そういうことなんですよ。描けていないんです。だから、三十年から四十年といっても、それを廃炉と言えるのか、どんな状態がそれを廃炉と呼ぶのか分からないということなんです。
そういう中で、その最大の問題は、やはり燃料デブリの取り出しが、全く見通しがまだ見えていないということなんですよ。
この資料の中にあるように、初機の、二号機から着手をして、段階的に取り出し規模を拡大とあるんですが、着手が二〇二一年の予定だった。それすらもできないで、一応、今年内、二〇二三年内と言われています。だけれども、八百八十トンと言われる燃料デブリはまだ一ミリも取り出せていないんだと。取り出しが開始されて以降は、何をするか、場所、方法、それからメンテナンス、様々なことをやらなきゃいけない。それがまだ何にも決まっていないと思いますが、いかがですか。
○小早川参考人 御質問にお答えいたします。
まず、二号機の燃料デブリの試験的取り出しにつきましては、現在、現場設備を模擬した各種試験を行うなど、慎重に準備を進めているところでございます。
また、廃炉中長期実行プランにてお示ししておりますが、二号機での少量の試験的取り出しから始め、段階的な取り出し規模の拡大、さらに、その知見を踏まえて、一号機及び三号機での取り出し規模の更なる拡大と、ステップを踏んでまいります。
今後、まず、試験的取り出しを行ったその廃棄物の性状などの解明を進めた上で、適切な処理処分の方法について安全を最優先にしっかりと検討してまいります。
以上でございます。
○高橋(千)委員 結局ちゃんと答えていないんですけれども。
昨日聞いたのは、試験的取り出しをこれからやっていくわけですよ。だけれども、その中で、処分方法も処分先も、それから、当然、例えば機械のメンテナンスですとか、いろいろなことを準備しなくちゃいけないんだということをおっしゃっていた。そのことの説明がまだ全くない。つまり、着手されていないわけですから。
そういう意味では、残念ながら時間が来たのでこれで終わりますが、廃炉の道のりというのは本当にまだまだ遠いし、しかも、その姿さえ見えていないということをきちんと国民や関係者に説明する必要があるんですよ。それは、その間ずっと流れ続けるわけですから、海洋放出だけを急ぐべきではないんです。トリチウムの分離技術についても現在進行形のはずです。そして、海洋放出を中止して、安全な保管方法も様々意見が出されています、それを本当に検討して、別の道を決めるべきだ、そのことを訴えて、終わります。