生活保護法改悪 / 高橋議員 申請の断念につながる
日本共産党の高橋ちづ子議員は4日の生活保護改悪法(本会議で可決・成立)について採決に先立つ衆院厚生労働委員会で質問に立ち、制度制定以来60年ぶりの大改悪を行うものだと批判しました。
高橋氏は、生活保護法第7条の「申請権保護の原則」は変えておらず口頭での申請を認めること、書類が整わなくても申請した時点を保護開始時とすることの確認を求め、厚労省の岡田太造社会・援護局長は認めました。
高橋氏は、扶養義務が保護の要件でないことを重ねて確認した上で、扶養義務者の調査強化は締め出しにつながると指摘。田村憲久厚労相は「(親族との)人間関係が壊れている場合にはあえて扶養照会をかけない」、岡田局長は申請者が親族の名前を書かなくても申請を認めると答えました。
高橋氏は「扶養義務者への調査を強めれば、その過程で申請を断念することにつながる」と強調しました。
(しんぶん赤旗 2013年12月10日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今、特定秘密保護法案をめぐる参議院での強引な運営、あるいは参議院厚労委員会で職権による委員会立てなど、不正常、混乱が続いております。この短い臨時国会に重要法案を無理やり押し込み、数の力で通そうとする与党と、慎重審議を求める世論との矛盾が激化しているからであり、この生保二法案についても、このような中で、たった三時間の審議で採決など、やはり絶対にあってはなりません。午前の質疑でも、民主党議員さんがさまざま危惧を述べておりました。きっぱりと反対されたらいかがでしょうか。心から訴えたいと思います。
さて、質問に入ります。
本法案は、第一条、目的から保護の原則まで、一切変えておりません。焦点となっている第二十四条についても、現行の取り扱いと変わらないと繰り返し答弁をしています。なのに、大臣は六十年ぶりの大改正と答弁をしているのはなぜでしょうか。
○田村国務大臣 生活保護法は、昭和二十一年にでき上がりまして、二十五年に改正をしたわけであります。それ以降、きょうも午前中申し上げたんですが、何かの法律改正ではねる部分に関して改正はしたことはございますけれども、目的を持ってこの生活保護法というものを改正したことはないわけでございまして、六十年ぶりという形でございます。
今般の中において、就労等々を含め自立等々に向かった内容、さらには医療扶助の適正化等々、さらに不正受給対策ということで、そのような意味では、今委員がおっしゃったところは改正していないところもございますけれども、中身として、大きく、この生活保護法の内容自体、それを目的としてこれを改正しようとするわけでございまして、そのような意味からいたしますと、これは六十年ぶりの大改正であろうというふうに我々は認識をいたしております。
○高橋(千)委員 実は、これは参議院で何度も大臣が答弁されているので、非常に不思議に思ったんですよね。
つまり、私、前回の国会のときも何度も聞きました。それで、やはり基本は変わっていないんだ、先ほどの議論にもありましたが、憲法二十五条の理念に基づきということも全然変わっていないんだ、原則変わっていないんだ、運用も変わっていないんだというのに、大改正だとおっしゃるその心は、やはりこれは社会保障制度改革推進法によって社会保障の考え方が変わった、そして、予算においても、やはり適正化ということで絞っていくという枠の中で、この保護法の見直しがされている。
そういう意味で、字面は変わっていないけれども、本当は大改正なんだということが本音として出てくるのかなというふうに思ったからであります。
その中身について議論をしていきたいと思います。
焦点となった第二十四条についてですが、前国会で、民主党を初め四党が提出した修正案、「特別の事情があるときは、この限りでない。」これを条文に組み込んだものになりました。政府原案でも現行と変わらないと説明をしていたのに、この「特別の事情」を組み込んでしまったということは、要するに、特別の事情じゃなければもう原則ですよということで、むしろ打ち消しになって、限定的になってしまわないかと思いますが、いかがでしょうか。
○岡田政府参考人 今回の改正案におきまして、申請時に必要な書類を添付して書類を提出する規定を法律上設けることとさせていただいています。これは、法律に基づいて調査を実施するのであれば、申請事項についても法律に位置づける必要があるという法整備上の観点から規定したものでございます。
現在でも、申請は書面を提出して行うことが基本とされており、申請事項や申請時の様式も含め、現行の運用の取り扱いを変えるものではございません。
また、現在、事情がある方について認められている口頭申請につきましても、その運用を変えることはなく、申請方法がこれまでより厳格化されるということはないということでございます。
なお、今般の法案は、さきの通常国会で、現行の運用の取り扱いを変えるものではない旨、条文上明確となるよう修正いただいたものを反映したものであり、御指摘は当たらないものと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 特別の事情と言ってしまえば、特別の事情とは何かとなります。それは当然、政省令でおろすわけですよね。そうすると、そうじゃない場合は特別じゃないということになっちゃうわけですよ。
だから、今の前段の説明のように、今までと変わらないというのであれば、特別な云々と入れる必要がないんですよ。だって、だから、そういう原案を出していたわけでしょう。矛盾しませんか。
○岡田政府参考人 これは、委員も御承知のとおり、さきの通常国会で、衆議院におきまして、現行の運用の取り扱いを変えるものではない旨、条文上明確化するということで修正が行われたものでございますので、今回の法案では、その趣旨を尊重して、そういうような取り扱いをさせていただいたところでございます。
○高橋(千)委員 趣旨を尊重してとしか言えないんですよ。だから、条文上どうなのかということに対しては明確な答えがなかった、このように思います。
それで、そもそも口頭云々という話は、第七条、申請保護の原則、ここで私は担保されていると思うんですね。「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。」こういうふうに書かれているわけですよね。これは、本人が申請する権利を妨げないということが趣旨であって、当然、口頭も念頭に置いている、まずここを確認します。
○岡田政府参考人 先ほども答弁いたしましたように、申請は現在でも書類を提出して行うことが基本でございますけれども、障害によって字を書けないというような方もいらっしゃるということから、口頭による申請方法についても認めているところでございますので、その運用を今後も現状どおりさせていただくということでございます。
○高橋(千)委員 ちゃんと聞いたことに答えてください。
先ほども同じじゃなくて、第七条のことを聞いています。
○岡田政府参考人 第七条の規定に基づきましても、先ほども申しましたような特別の事情がある場合には口頭でも可能だということで現行でも取り扱っておりますし、それも変更するものではございません。
○高橋(千)委員 そういうことなんですよ。第七条はさわっていないわけですね。
だから、申請保護の原則、口頭でも当然認められるということはここで担保されているわけですよ。だから、二十四条と分けて考えるべきなんですね。二十四条は単に申請手続について書いているだけであって、書類はこれまでもやってきた、それを条文にしたということを言っているわけですよね。
それで、口頭で申請したいと訴えたときに、そうはいっても、今、この申請のために必要な書類、条文にいろいろ書いてありますよね、それを、全部整うまでには一回では済まないわけです。その時間差があります。保護開始時期はどこで見ますか。
○岡田政府参考人 たびたび答弁していますように、この申請に係る現行の運用を変更するものではございません。
したがいまして、現行では、事情がある方には口頭での申請を認めることや、必要となる書類の提出については、迅速な保護決定のためにはできるだけ早い時期に提出していただきたいということでございますが、申請書提出から保護決定の間でよいというような扱いをしておりまして、これまでの取り扱いに変更はございません。
そのため、必要となる書類の提出時期にかかわらず、保護の申請が明確に示された時点から保護が開始されるというような取り扱いでございます。それが現行でございますので、それを変更することではございません。
○高橋(千)委員 書類が全部整っていなければならないということではないということですね。これを確認させていただきます。
結局、北九州の餓死事件にしても、三郷、岸和田の判決にしても、申請書を手にできない、あるいは辞退をさせている。つまりは、結局、今何度も何度も答弁されている口頭による申請というのが認められているにもかかわらず、現場ではそうなっていないということがずっと問われて、闘われてきた、裁判によっても問われてきた、そういうことなんですね。だから、現状で変わっていないと言っても、現状がこうなんだということをちゃんと変えなければ意味がないということを重ねて指摘したいと思います。
そこで、午前、山井委員が紹介をしていましたけれども、参議院で我が党の小池晃議員が取り上げた、長野市の、扶養義務について、扶養が要件とされる、そういう誤解される表現があったんだということが指摘をされました。これについては、厚労省が誤認であるということで調査をして、訂正を求めているわけですね。
ただ、二〇〇〇年に厚労省がつくった案文であること、まず、そもそも、もとは厚労省であったということがあるのと、そして、それに従って案文を訂正したとしても、扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされておりますと。つまり、長野市で言っているところの、前提であるという言葉は取った、それはだめだと。だけれども、優先して行われるということは改めて書いているわけですよね。つまり、それは、扶養優先であることには違いはない。
これはおさらいになりますが、去年も質問していますけれども、扶養優先と法律に書かれているんだけれども、それが要件でないというところの心は、扶養義務者が仮に断って、それで保護を認めないとした旧法は、それをやってしまうと本当に保護が必要な人が救われないからということだと思いますが、そこをまず確認します。
その上で、申請書に親族の名前を、扶養ができる人は誰もいないということで、書かなくても受理されるか、確認します。
○岡田政府参考人 お答えします。
生活保護法の第四条二項では、民法に定める扶養義務者の扶養は、この法律による保護に優先するという形で書かれておりますので、厚生労働省でお示しした様式にはそういう趣旨のことを書かせていただきます。
問題になりました長野県での取り扱いにつきましては、扶養が保護を受けるための要件である、保護開始に当たって、扶養を受けないと受けられないようなふうに誤解されるおそれがあるということで、その点については調査を行って、訂正をお願いしたというようなことでございます。
先ほど、申請書に親族の名前を書く必要があるかどうかということでございますけれども、保護の申請がありましたときには、まず、扶養義務者がどういう方がいらっしゃるのかということを要保護者から御申告いただくとともに、さらに必要があるときは、戸籍謄本などで確認をさせていただいているところでございます。
その後、把握した扶養義務者につきまして、その職業、収入や要保護者との交際状況などにつきまして、要保護者その他の関係者から聴取するなどの方法によって扶養の可否を確認するというような取り扱いをさせていただいております。
生活保護を申請する場合の申請書の様式につきましては、各地方自治体に対しまして通知をしておりまして、援助をしてくれる者の状況を記載する欄を設けているところでございます。仮に、この欄に必要な事項が記載されていないとしても、申請の意思が確認されれば、申請があったものとして取り扱うということとさせていただいているところでございます。
○高橋(千)委員 大変長い答弁でしたけれども、書かれていなくても受理するということがまず一つあったと思います。
それで、聞かれたことに答えていないんですけれども、扶養が優先だけれども要件ではないことの意味というのは、さっき私が言った意味でよろしいですね。イエスかノーかで。
○岡田政府参考人 先ほど法律の規定を申し上げましたけれども、親族による扶養は保護に優先するというのが法律上の規定でございます。そういう趣旨を、ここで、扶養が生活保護に優先するという趣旨で、標準様式でお示ししているところでございます。
長野市で問題になりましたのは、扶養が保護を開始する要件だというようなことを誤解されるというようなことでありましたので、その訂正を求めたところでございます。
○高橋(千)委員 ちょっと、何回も同じことを答えないでくださいよ。
大臣、私の言っている意味、わかりますよね。今言ったように、法律第四条には「保護に優先」ということは書かれています。だけれども、長野市に誤認だというふうに言ったその心は、なぜ前提と書いてはいけないかというときに、前提となってしまうと旧法の世界になっちゃって、扶養をしてもしなくても、扶養義務者がいるじゃないかということで保護を断られた。そういうことではない、それだと、断られたときに本当に必要な人が受けられないじゃないか、それでは困るから、優先とは書いているけれども、要件ではないという意味だ。イエスかノーか。
○田村国務大臣 優先の心は、要件ということでは当然ないわけで、仮に、そのような意味で、扶養義務を負う方々がおられて、その方々が扶養しなかったといたしましても、生活保護は、それは給付されるわけであります。
その後で、本来扶養するに十分に足りるというふうな判断が下るような場合に関しましては、例えば家裁審判等々でそれに対して我々は請求をさせていただくということがある。そういう意味では、優先をするということでございます。
委員がおっしゃられましたとおり、これは要件ではございませんから、そうであったとしても、生活保護決定というものには進むわけであります。
○高橋(千)委員 おさらいにこんなに時間がかかるとは思わなかったんですよね。
わざわざ長野市に誤認だと言っておきながら、なぜそれが要件ではないということがきちんと説明されていないかということが問題なわけですよ。
それで、審査に当たっての扶養照会について、さっきの続きなんです。
長野市に対して、前提というのは間違っているよと訂正をしたんだけれども、十二日の参議院厚生労働委員会で、我が党の辰已議員の質問に対して、二枚目に添付している書面、これは変える必要はないと答弁をしているわけです。書面は変える必要はないと。
そうすると、この書面は、保護申請者の扶養義務者と見込んだ人の家族までも、家族ですよ、だから、義務者の子供さんとか兄弟とかもいるわけですよ、そういう人たちまで勤務先や月収を明らかにしたり、資産、負債の状況などを書かせる、こんなことも厚労省として指示しているんでしょうか。あるいは、書かないことは認められますか。
○岡田政府参考人 生活保護を申請した方の扶養義務者に対しまして福祉事務所が行います扶養照会の様式については、地方自治体に対して通知をしており、扶養義務者の方の家族の氏名、勤務先、平均年収額などを記載する欄を設けているところでございます。
これは、扶養義務者の方にどの程度の扶養の責任を果たしていただくかについて、受給者と扶養義務者との交際の状況、扶養義務者の収入や資産、生活状況といった諸事情に応じまして個別に判断する必要があることから記載を求めて、お願いしているものであり、可能な限り記載をしていただきたいと考えております。
しかしながら、仮に記載されていない場合であっても、扶養は保護の要件ではございませんので、保護の要否の判断に影響を与えるものではないということでございます。
○高橋(千)委員 影響を与えるものではない、最後のところは確認させていただきました。
とはいえ、可能な限りということで調査を求める、ここが今大変な世界になっているわけなんですよ。
先般も、大臣の代理として審議官に会っていただきまして、いろいろな実情を聞いていただきました。資料もお渡ししました。宮城県では、例えば、別れた夫の両親の収入まで出せと言われて、もうそれだけで諦めてしまった件がございます。
あるいは福島で、身内で援助できる人は誰もいないと思って申請していなかったら、援助ではなくて、一番交流できる人は誰かと聞かれたので、姉ですと答えたら、その姉に電話が行って、万一死んだら骨を引き取ってもらえるのかという電話が行ったそうです。もうそれだけでつらい思いをしたわけですけれども、その後、姉に、給与明細書を強制ではないが送ってくれと言われて、渋々、一月分の給与明細書を送ったということが言われています。
だから、現場では、このように、調査という名でありとあらゆることがやられているわけです。
ですから、要件ではないと幾ら言ったとしても、優先調査をやるわけですよね。そして、このように、これに対して、さらに通知とか、報告とか、できない、なぜできませんかという報告をすることになるので、もうその過程で保護を断念することにつながりませんか。大臣に伺います。
○田村国務大臣 生活保護制度というものは、今いろいろ、るる我々御説明させていただきましたとおり、保護よりも扶養が優先するのは間違いないわけでありまして、その扶養義務者を、誰であるかということの中において扶養照会を行うわけであります。親、兄弟等々が中心であります。
ほぼそういうような間柄の方々でありますけれども、ただ、そのときに、やはり御本人と人間関係が壊れていて、実際問題、本人からお話をお聞かせいただいて、これは自立を阻害するなというような方の場合には、あえて扶養照会をかけないというふうなことであるわけでございまして、そこは御本人からいろいろな事情を聞きながら、対応をそれぞれの現場でしていただいているというふうに思います。
もちろん、その中において、今委員が言われたようないろいろな事例があるのかもわかりません。それに関しては、そのようなことが起こらないように、我々としては、しっかりと周知をしていくということであろうと思います。
○高橋(千)委員 残念ながらもう時間になってしまいまして、本当は、この後、稼働能力の話をしたかったんですけれども、ちょっと残念ながら時間になりました。
この参議院の辰已議員の質問の中で、大阪の、求職活動を要件としている問題が指摘をされているわけですけれども、申請の段階で、やり過ぎではないかということだったんだけれども、結果としては、求職活動報告書というのを出すことはいいんだという答弁をしているわけですね。そうすると、申請した時点で、ハローワークに行ってきなさい、求職活動したことを証明しなさいということがやられている。今回、それが、求職活動報告というのが、二十四条の「書類」の中にも書かれているわけですね。
だから、岸和田の事件もそうでしたけれども、仕事を切られて、食べるものも食べられないというぎりぎりのところで駆け込んでくる人たちにそれをやるのかということが本当に問われていると思うので、本当は質問したかったんですが、ここは本当に指摘をして、まだまだ審議をするべきだということで、終わりたいと思います。