――議事録――
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、生活保護法の一部を改正する法律案及び生活困窮者自立支援法案に反対の討論を行います。
法の目的に憲法二十五条の理念を規定した生活保護法は、今、一九五〇年制定以来の大幅改正がされようとしています。既に、生活扶助基準は、最大一〇%の引き下げが始まっています。国は、憲法が保障する最低限度の生活の水準を下げたのであり、広範な国民にこの影響は及びます。水際作戦を合法化するという本法案と相まって、社会保障を個人と家族の責任だとする、社会保障の解体の象徴であり、断じて認められません。まして、わずか三時間の審議で採決するなど、到底許されません。
両案は、前国会で廃案となった政府案に、本院において可決された、自民、公明、民主、みんなの党の四会派共同修正案を組み入れて提出し直したものであります。保護の申請を、申請書の提出を必要な行為と義務づけた規定は、さまざまな条件をつけて申請を受理しない、いわゆる水際作戦を合法化するものです。政府は、繰り返し、現行の運用と変わらないと答弁をしましたが、変わらないなら条文は削除をするべきです。
次に、福祉事務所の扶養義務者に対する調査権限の付与、また、義務を果たしていないと判断した場合の扶養義務者に対する通知の義務づけは、保護開始の要件とされていない扶養義務の履行を事実上強いるものになります。
参議院の審議で、親族の援助が保護受給の要件であるとした書類を送りつけて申請を締め出している実態が明らかになりました。厚労省のその後の調査で、同様の文言を使用していた福祉事務所は三割強に及ぶことが判明しています。扶養義務を要件とする申請拒否は全国で横行しており、この現状を改めることこそ急務であります。
なお、不正受給を厳正に対処することは当然です。しかし、不正受給とされる事案のほとんどは、アルバイト代の申告漏れなど、ささいなミスによるものです。生活保護費との相殺や不正徴収金の懲罰的上乗せは行うべきではありません。
生活困窮者自立支援法には、評価できる点もありますが、最低賃金を下回る中間的就労によって、生活保護からの追い出し、あるいは水際作戦のツールになるおそれがあり、反対であります。
今、全国で、一万を超える生活扶助基準の引き下げに対する不服審査請求が起こっています。これ以上、生活を切り詰めることはできないという悲痛な叫びにほかなりません。政府はこうした叫びに耳を傾けるべきです。
憲法二十五条の理念に基づくとされた生活保護法の原則を侵す本法案に断固反対することを表明し、討論を終わります。(拍手)