省令改正にゆだねるな
デジタル改革推進で高橋氏
衆院地こデジ特委
(写真)質問する高橋千鶴子議員=23日、衆院地こデジ特委 |
デジタル完結、官民連携、共通基盤利用原則など五つの「デジタル原則」に適合させる規制緩和と行政改革、デジタル改革を推進するデジタル社会形成基本法案が25日、衆院本会議で日本共産党、れいわを除く賛成で可決されました。
日本共産党の高橋千鶴子議員は23日、衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、「アナログ規制」の一つの公示送達について質問。公示送達は、処分の名宛て人の住所が不明の場合、限定された場所に期限を区切り掲示することで送達したとみなす制度をインターネットで公開します。プライバシー侵害になるのではとの高橋氏の問いに、村上敬亮デジタル庁統括官は「氏名や公示送達の対象者であるなどの情報が容易に拡散される側面がある」と認め、プライバシーに配慮して具体的な運用を検討していくと答えました。
「アナログ規制」の一つの目視規制について、斉藤鉄夫国土交通相は、安全性の担保を目的としている場合は引き続き確実に担保されることが大前提だと答弁しています。河野太郎デジタル相は高橋氏に、「現在の技術では目視と同等の安全性や実効性の確保ができない規制の見直しは困難だ」と述べました。
高橋氏は、法令の新規制定・改正時に「デジタル原則」に適合しているか審査する「デジタル法制局」は、規制改革、行政改革を強力に推進し、地方公共団体をもコントロールすると指摘。国会にはからず省令改正にゆだねるべきでないと主張しました。
(「しんぶん赤旗」2023年5月31日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨日、たまたまテレ朝のニュースで、またもマイナ保険証のトラブルという報道がありました。医療機関の窓口でマイナ保険証をカードリーダーにかざすと、登録がありませんとなって、瞬間的に無保険になっていたというものでした。大阪府守口市の女性で、社会保険から国保に資格が移ったということで届出は済ませていたのですが、自治体の方で手続が追いついていなかったといいます。この案件は今後も起こり得る、最初に懸念していたことが現実に起こったことだと思いました。
また、今朝は、大臣、既に会見をされているようですが、公金受取口座のひもづけで、別人の口座を誤って登録されていたという案件がございました。四件あったということでありますけれども、この間も、マイナ保険証で他人の履歴がひもづいたことや、コンビニでの誤交付、相次ぎました。医療履歴や戸籍情報、そして今の受取口座の問題も、いずれも最も機微な個人情報であります。デジタル推進を掲げている大臣として、この事態の重大性についてどう受け止めるのか、伺います。
○河野国務大臣 いろいろな事案が発生をいたしまして、個人情報の保護に関する国民の皆様の信頼を傷つけることになりまして、大変申し訳なく思っているところでございます。
システムの問題というのは、これは本来起こしてはいけないもので、富士通Japanについて徹底的に再点検を行う、必要ならシステムを止めて再点検を行うように要請を行ったところでございます。
委員からお話のありました登録の問題は、これは保険者がデータの登録をしなければ、現行の保険証も発行できません。ですから、これはマイナンバーカードの問題というよりは、保険者の登録の時間の問題で、これは厚労省の方で、事業者から保険者までの申請の時間、あるいは保険者がそれを受け取ってからデータを登録するまでの時間、これはもう一定期間内にやるようにということで厚労省から通知が出ると伺っておりますので、こうした問題については対応ができるようになるだろうと思っております。
また、公金受取口座につきましては、共用端末で、本来、御本人に操作をしていただくところ、マニュアルを逸脱して支援員が操作を行ったということでございますが、御本人がなかなか操作をしづらいから支援を受けに来られるということで、例外的に、御本人がシステムの操作ができない場合には支援員に操作をお願いしますが、ログアウトができていなかったということがはっきりしておりますので、ログアウトを御本人と支援員とお互い確認をするということをマニュアルに明記をして、例外的には支援員が対応することも認めるということにいたしました。
誤入力というのは、これは起こり得ることでございますので、公金受取口座についても、これまでの登録を全件チェックをし、今後も定期的にチェックをしてまいります。
また、保険証につきましても、マイナンバーカードとのひもづけのところ、今回、遡って全て総点検をすると同時に、今後も何らかの形で点検をしていこうということでございますので、仮に誤入力、誤記その他があったとしても、きちんとそれを発見して対応ができるように体制を組んで、国民の皆様に安心してデジタル化の恩恵を受けていただけるようにしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ログアウトしないうちにまた入れちゃったとか、起こり得ると大臣はおっしゃいましたけれども、起こり過ぎているんです。これは一つ一つ、何かあったら原因は富士通Japanだとか、そういうので済ませるわけにはいかない。織り込み済みの問題だと言わなきゃ、そこできちっと体制ができていると言わなければ、最初に私が指摘したように、機微な情報なんだということで、このまま済ませるわけにはいかないと思うんですね。やはり急ぎ過ぎたんじゃないかと言わなきゃいけないと思います。
改めて大臣に確認したいと思うんですが、大臣自身は、マイナカードは義務づけるべきと思っていらっしゃるのかということなんです。
というのは、本法案の背景となったデジタル臨調の第一回、二〇二一年十一月十六日ですが、当時の萩生田経産大臣が、デジタル庁を設置して、デジタル大臣をきちんと国民に見せた上で選挙を行って、国民の信任をいただいた以上は、今までのように、マイナンバーカードは作りたい人で是非作ってくださいねという世の中ではなくて、マイナンバーカードを作って、使ってこういう世の中に変えていくのだということをきちんと説明して、これは勇気を持って国民皆ナンバー制度にしていかないと、目指すデジタル社会というのはできないと思いますと言い切っているんですね。
河野大臣も、そのように思っていらっしゃるんでしょうか。
○河野国務大臣 これまでも答弁しておりますが、マイナンバーカードにつきましては、対面による厳格な本人確認をし、また、顔写真を必要とするというふうにしておりますので、取得を義務化せず、申請によることとしております。現段階で、カードの義務化は難しいと考えております。
○高橋(千)委員 大臣個人の意見を聞いたつもりですが、今、大臣としても個人としても同じということでよろしいですね。
○河野国務大臣 答弁のとおりでございます。
○高橋(千)委員 では、厚労省に伺います。
先ほど少し大臣の答弁の中にあったわけですが、二〇二一年十二月二十三日の社保審第百四十九回医療保険部会で報告されたのは、マイナ保険証に異なる個人番号が登録された事案、二〇二一年十月から十一月までの間に三十三件。二〇二一年十二月から翌年の十一月までの間に七千二百七十九件あったと報告されています。驚く数字です。
厚労省は、再発防止策として、雇用主が社会保険の届出時に雇用者の個人番号を記載するよう、六月一日から、来月の話ですが、省令改正をしました。
マイナンバーカードを持たない人は、個人番号の記載を拒否する人が多いです。これまでも、雇用主が明記することは義務ではありました。しかし、雇用者が拒否した場合は、それを届け出れば手続上は受け取れた、問題なかったはずなんですね。これからは必ず番号を聞かなければならないことになる。これは事実上の強制にならないんですか。
○日原政府参考人 お答え申し上げます。
健康保険の資格取得届につきましては、現在も様式に個人番号の記載欄がございまして、現在も事業主に対して、被保険者の個人番号を記載して保険者に提出いただくということを求めてございます。
オンライン資格確認等システムへの迅速かつ正確なデータ登録を徹底するため、今般、事業主には被保険者のマイナンバー等を資格取得届に記載する義務があるということを法令上明確化することとしておりまして、あわせて、事業主は被保険者に対してマイナンバーの提出を求めることができる旨を規定することとしております。
被保険者の方から個人番号の提出を受けられない場合につきましては、被保険者の方に対して、資格取得届等へのマイナンバーの記載が義務とされていることを丁寧に伝え、その提供を促していただくことが重要というふうに考えてございまして、こうした考え方を事業主に対して、しっかりと周知させていただきたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 最初に私、質問で言いましたよね、元々義務になっていると。でも、それをあえてまた通知を出したわけですよね、六月一日からということで。それは、これまでは、拒否した場合に、無理やりそれを聞くことはできなかったからでしょう。それを義務だとあえて法令上明記したということは、結局、雇用主から、あなた個人番号を届け出なさいと言われてしまう。その関係性がこれまでとは違くなってしまう。違いますか。
○日原政府参考人 お答え申し上げます。
この義務という点で申し上げますと、現在も省令で定めます様式には個人番号の記載欄がございまして、こちらは任意ということではございませんので、記載義務があるというふうに解してございます。今回は、それを法令上、明確化したというものでございます。
○高橋(千)委員 全く答えになっていないと思います。雇用主と雇用者の関係を、これはひょっとしたら大きく変えてしまう重大な決定だと指摘をせざるを得ません。
続けますが、昨年六月三日に、デジタル臨調は、デジタル原則に照らした規制の一括見直しプランを発表しました。「アナログ規制が広く社会に浸透していることが、「デジタル化」を阻害し、デジタル技術の活用を阻んでいる」として、構造改革のための五つのデジタル原則を基本方針に据えました。デジタル完結、アジャイルガバナンス原則、機動的で柔軟なガバナンスというそうですが、官民連携、相互運用性確保原則、共通基盤利用原則、この五つです。
大臣に一つ追加で伺いたいんですが、デジタル五原則が、これから議論するアナログ規制問題に大きく影響すると思うんですが、今日配付した資料の1に、デジタル社会を形成するための基本原則があります。これは、二〇二〇年の十二月二十五日閣議決定、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の中で明記されている十の基本原則であります。
これは調査室が簡潔にまとめてくれたものですが、例えば、一番にあるオープン・透明性。二番にある公平・倫理。利用者への説明責任を果たし、自己の情報を主体的にコントロールできるようにする。これらは大変大事な原則だと思います。
一人一人の幸せの実現のためにと最初に重点計画でうたっているわけですが、この原則が、いわゆるこの十の原則は大前提だと思います。大臣の御所見を伺います。
○河野国務大臣 委員にお配りをいただきましたこの資料の、デジタル社会を形成するための基本原則というのは、これは、デジタル改革、規制改革、行政改革を通じて実現すべき価値を示しているというふうに認識をしております。
ここで書かれている内容を実現するために、二〇二一年十二月のデジタル臨時行政調査会において、構造改革のためのデジタル原則、五原則を策定をしたわけでございます。この五つの原則にのっとりまして、政府として、デジタル改革、規制改革、行政改革、これを進めていくということになります。
○高橋(千)委員 今の、価値を示しているという表現は、なかなかいい表現だなと思って聞いておりましたが、そのことと五原則が、デジタル原則をこれから徹底していくんだぞということが、何となく沿わない、沿わないというか、そごがあるのかなという思いがして、これから質問したいと思います。
それで、一括見直しプランのうち、法改正が必要な一つとして出されているのが、書面掲示規制のある六十二の法律の見直しであります。そのうち、公示送達について聞きたいと思います。
例えば民事訴訟法では、裁判の当事者に対して訴状を送達しなければなりません。ただ、住所などが不明で送達できない場合に、裁判所の掲示場に二週間掲示することで送達したものとみなすという制度です。行政手続法においても、許認可の取消しなどの不利益処分を行おうとする場合には、処分の名宛て人に聴聞などにより防御権を行使する機会を与える、これも二週間としています。
このように、現行の公示送達が、限られた人しか見ないであろう掲示板に期間を限定して行っている理由は何か。また、それが今回、一般公衆にインターネットでの閲覧が可能になるのはなぜなのか。
○村上政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、それぞれの制度の中で、各公示送達制度において定められている一定の掲示の期間、本法案で改正をする公示送達制度は全て結果として二週間でございますけれども、これについては、送達を受けるべき者が公示送達が行われた事実を認識し、書面を受け取る機会を保障するための合理的な期間という考え方から設定されているものというふうに承知をしてございます。
また、方法の方でございますけれども、本法案で改正する公示送達制度については、送達を受けるべき者が所定の掲示場所に赴かなければ送達について認識することができない、現状そういうことになってございますが、本改正により、インターネットによる閲覧等を可能とし、いつでもどこでも必要な情報を御本人様が確認できるようにと、これは利便性の向上に資するという観点から今回御提案をさせていただいているところでございます。
○高橋(千)委員 利便性の裏には不利益というものもあるのではないかと思います。
時間の節約で二つを一つにして聞きますが、やはり、送達の受ける側が、防御権を保障するということ。公示送達は最後の手段と言われているのは理解できます。しかし、それでも限定的な手段であったことの理由は、やはりプライバシーの保護であったのではないか。
例えば、犯罪者ではないのに、自らの訴訟記録、在留資格とか土地の筆界特定とか多種多様でありますが、ネットというのは、二週間で削除されたとしても、拡散された後では完全に消滅できません。しかも世界中に広がります。プライバシーの侵害になると思います。
そこで、質問は、ヤフーやグーグルのような一般のネットでも検索が可能なのか。ネットである場合、名前を書かなくても、当事者にしか分からないようなやり方で出すということもあると思うんですね。昨年の民事訴訟法の改正を参考にしたと聞いていますが、掲示内容については、プライバシーに配慮する観点から検討することとされたはずです。いかがでしょうか。
○村上政府参考人 お答え申し上げます。
本法案による本制度の見直しは、公示送達制度をデジタル原則に適合するものとするためにデジタル技術を導入するものでありますが、ある意味、御指摘のとおり、氏名とともに公示送達の対象である旨の情報が容易に拡散され得る側面もあるという意味では、当該者のプライバシーの保護に配慮を要する必要もあるというふうに考えてございます。
その具体的な運用の在り方でございますけれども、法制審においても、送達を受けるべき者等のプライバシーに十分配慮する必要があるといった議論があったことを踏まえ、御指摘のありました昨年の民事訴訟法の改正によりましても、デジタル技術を導入するその規定及びこれに基づき策定される最高裁判所規則の内容等も参考にしつつ、今後これらを具体的に決めていくとされているところでございますが、私どもの今回の改正の行政法の世界でも、これを参考にしつつ、各制度の趣旨、目的に照らして、各府省とそれぞれやり方をよく検討してまいりたいというふうに考えてございます。
御指摘のありました、ヤフーのような一般のネットでも検索可能となるのかという点につきまして、まだ結論は出てございませんけれども、そういったようなものを回避する技術があるのかどうかも含めて、よくよく制度を所管する各省と検討の上、具体的な方法論について答えを出してまいりたいと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 まず、容易に拡散するおそれもあるとお認めになったと思います。
一般のネットでも検索が可能なのかということについては、そうしないというふうな明確な否定ではなかったと思いますので、ただ、回避する方法があるかということで検討されているということなので、やはり一般の検索というのは避けるべきだと重ねて指摘をしたい、このように思います。
次に、デジタル法制局について伺います。
資料の2を見てください。これ、上段はデジタル臨調の目的。デジタル原則を、デジタル改革だけではなく、規制改革、行政改革、三つの改革に貫くための必要な見直しを提案するとあります。
そして、下段は、デジタル法制審査の視点です。これは、昨年秋の臨時国会の提出法案から既に始まっておりますが、本法案はこれに法的根拠を与えるものです。
質問は、各省庁が点検するのではなく、あえて法制局という一括したシステムにしてチェックしなければならない理由はなぜでしょうか。また、チェックするポイントは何でしょうか。地方の条例に対しても影響するのか、伺います。
○村上政府参考人 お答え申し上げます。
一義的には各省に、もちろんそれぞれ検討いただくということだと思いますが、各省庁が自らフォローするのが難しいと。
例えば、デジタル原則の解釈が、それぞれの省庁でばらばらに行われてしまうといったような事態も考えられますし、ベストプラクティスについての必要な知見が必ずしも各府省共通に共有されているという保証もございません。そういう意味では、デジタル庁が各府省と連携をして着実にベストプラクティスを反映させ、あるべきデジタル原則の完遂につきまして、統一的な解釈の下、進めていくという意味で、デジタル法制局をかませた形で進めていくということには意味があると考えてございます。
チェックするポイントは何かという御指摘でございました。
代表的には、七項目のアナログ規制に該当する、アナログ行為を求める場合があると解される規定、これは先ほど、技術中立性の検証といったようなところもございますが、この原則を具体的に当てはめていくときに、どこまでかとか、技術中立的なのかとか、やはり各府省、自分で判断しろと言われても、逆に言うと解釈に困るような側面もございます。そういったところ、それから、フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規定、その他、デジタル原則に適合した運用を阻害するおそれがあると判断される規定がないかといったようなところを主として見てまいります。
また、今後につきましては、テクノロジーマップや技術カタログをしっかりと活用していただいているかどうかというところも見てまいります。
最後に、条例に対して影響があるのかという点でございます。
今回の法案においては、自治体については、地方自治の観点から努力義務ということになってございます。必ずしも国は、こうした形での規制の見直しを強制することはできませんが、これについて前向きに取り組んでいただけるように努力を促すこと及びそれを努めてやろうとする自治体に対する適切な支援を行っていくことは、国の責務であるというふうに考えてございます。
以上でございます。
○高橋(千)委員 各省庁に必要な知見がない場合もあるので、ベストプラクティスを出すためには意味があるという答弁でありました。
ちょっと今聞いていて思ったんですけれども、地方公共団体、これは、努力義務ということ自体が私はかなり重いと思っています。
それで、本来であれば、各省庁が法律を作れば、それに準じて条例というのを作りますよね。ですから、そういう道筋なのかなと思っていたんですけれども、今のように、やはりデジタル法制局をかませてということは、結局、地方に対してもそういう流れになる、つまり、各省庁の上に法制局があって、地方にも浸透するように、そういう流れになるということでしょうか。
○村上政府参考人 お答え申し上げます。
あくまでも地方自治の原則がございますので、デジタル法制局があることによって国と地方自治の関係が変わるということはないというふうには考えてございます。
ただ、実際に、どの程度デジタル技術を採用するか、どこまでデジタル技術に置き換えていいか、これは本当に技術中立的に安全性と効率性を両立しているものなのかといったようなところ、これはむしろ、規制当局がそれぞれ個別に判断する方が難しいという側面もございます。
そういう意味では、横断的に共通に取り組ませていただいて、このところまではいけるんじゃないかというところをよく関係省庁間で議論した上で国としての対応方針を決め、それをあくまでも参考としていただきつつ、それぞれの自治体においてここまではいけるんじゃないかという判断をする、それをやるという判断をなされた自治体の方にはデジ田交付金等を通じて財政的支援も行う、こういったような形で、アナログ規制の見直しを全体としてうまく進められるように取り組んでまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 あくまでもないというお答えでありました。地方分権の時代ですから、そうだというふうには答えられないんだろうと思うんですね。
資料の三枚目にあるように、今対象となるのが四万件以上だ。法律、政省令で約一万、通知で約二万、告示で約一万と。その下に、独立行政法人も書かれているのはちょっと気になりますが、上記を踏まえ、地方公共団体の取組を後押しと。後押しという表現で書いているんだけれども、しかし、先ほど来指摘をしているように、努力義務であり、デジ田交付金で後押しという表現もできるけれども、逆に言うと、そうしなければ交付金をもらえないという問題がございますので、非常に力が強くなっているのではないか、このように指摘をしたい。あくまでも地方の自主性を守るんだという立場でお願いしたいと思います。
最後に、目視について伺いたいと思うんですが、四月十二日の国交委員会で、私は国交委員でありますので、このときは、知床遊覧船の事故から一年ということで、再発防止のための法改正の審議がございました。リモートによる監視の強化ということが事故対策検討委員会の報告に盛り込まれたことを受けて、斉藤国土交通大臣に、目視でなければならない分野があるのではないか、このように伺いました。
斉藤大臣は、国交省としても、アナログ規制の見直し、工程表に沿って検討を進めているとした上で、見直しに対しましては、目視規制などが安全性の担保を目的としている場合には、それが引き続き確実に担保されることが大前提と答弁されました。斉藤大臣自身が非破壊検査の技術者だったこともあって、目視を大前提としながら高度な技術を使っていくのが最も効率がよいと、実感を込めておっしゃっておりました。大事なことだなと思っているんですね。
デジタル庁としても、目視が必要とする分野は残るという考えか、それとも、時間がかかってもなくしていくという立場なのか、大臣に伺います。
○河野国務大臣 今回のアナログ規制の見直しに当たりましては、デジタル技術を活用した場合でも、安全性や実効性が、規制の趣旨、目的に照らして必要な水準を確保できているというのを前提にしております。
現在の技術では目視と同等の安全性や実効性の確保ができない規制は見直しは困難だと思っておりまして、例えば、不正の疑いがあるときに検査員が現地において能動的に資料を調べなければいけない立入検査ですとか、食用の鳥、検査員が目で見て触って異常の有無を確認する、こういう検査がございまして、これは現時点ではなかなか難しいと思っております。
ただ、このような規制も、将来的な見直しの必要までを否定しているわけではございません。技術の進展に応じて、安全性などの検証を行いながら、不断の見直しを行っていくというのが必要だと思っております。
○高橋(千)委員 今、実例として挙げていただいた、不正の場合の能動的な検査とおっしゃったのは、すごく大事なことだと思います。残念ながら、繰り返し、こうした問題が起こっておりますので、今例に挙げました知床もまさにそうなわけですよね、届け出た文書を改ざんしていたわけなのですから、やはりこれは、出てきた数字だけではなくて、能動的な検査が必要だということが最大の教訓ではなかったかと思っております。
将来的に否定しないということは、必ずやるという意味ではないということでそれは受け止めたいと思うんですが、問題は、最後に、要望を込めた質問なんですが、そうはいっても、これが分からないうちに省令改正でいつの間にか変わっていますよということではなくて、やはり各省庁の判断を尊重し、必要な場合は法改正を行う、こういうふうにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、安全性とか実効性、これが規制の趣旨、目的に照らして必要な水準を確保できている、これが前提で将来的な見直しというのはやっていかなければいかぬと思っております。
○高橋(千)委員 お答えではなかったと思いますが、まだ結論が出ていないということだと思うんですよね。
一遍に省令改正を残りのものはしてしまうという意味ではないということでよろしいですか。統括官でもいいです。
○河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、安全性や実効性が趣旨、目的に照らして確保されているということが、いろいろなことをやるときの前提ですよということを申し上げております。
○高橋(千)委員 残念ですが、そこに懸念があるということを表明して、終わります。
○橋本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○橋本委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、デジタル社会形成基本法改正案に対する反対討論を行います。
昨年六月七日に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画では、デジタルの活用で一人一人の幸せを実現するためにとあります。デジタル情報社会の進展の中にあって、デジタルと無縁で暮らすことはできません。だからこそ、デジタルを上手に使いこなすことによって人々が豊かに暮らせることは重要です。ですが、いつの間にか、国際的にも遅れているとか、更なる規制緩和で官民連携など、手段が目的になってしまっている懸念が拭えません。
反対する第一の理由は、デジタル法制局の創設です。
昨年の臨時国会提出法案から既に実施されたデジタル法制審査に法的根拠を与えるもので、今後、各府省の法令の新規制定、改正の際には、デジタル原則への適合性を審査することにより、規制改革、行政改革を強力に推進しようとするものだからです。
また、各府省を通じて地方公共団体をもコントロールするもので、賛成できません。
反対する第二の理由は、目視や定期検査・点検規制、実地監査規制、書面掲示規制など七つの規制をアナログ規制と断じ、強引に規制緩和する点です。
これらの規制は、医療、介護、福祉、輸送、交通、インフラ、製造、環境など多くの分野で、国民生活の安全、安心を守るために設けられたものです。多くの保育関係者の反対を押し切って、保育施設の実地監査をリモートでよしとする緩和をしました。また、目視で点検している河川やダムなどインフラの維持修繕を、ドローンや水中ロボット、常時監視、画像解析を活用するといいます。人手不足解消ともいいますが、そもそも、人手不足の原因は、長年にわたる公務員削減であって、デジタルと現場を知る職員を組み合わせてこそインフラの維持が可能となります。
国民生活に関わる規制を一方的に規制緩和することは容認できません。このような重大な緩和を、本法案にある個別法を除いては国会にも諮らず、省令改正などで済ませようとすることは認められません。
最後に、関係六十二法律を一括して改正する書面掲示規制については、インターネットを通じて広く知らしめることが利便性を高める点もありますが、公示送達を広く公衆一般にインターネットで閲覧を可能にすることは、極めてセンシティブな個人情報の漏えい、プライバシー侵害になることは否定できません。個別に慎重な検討を行うべきであり、三年後の実施は賛成できません。
以上述べて、討論とします。