気象庁の人員増やせ
衆院国交委 高橋議員が主張
気象業務法改正 本会議で可決
(写真)質問する高橋千鶴子議員=19日、衆院国交委 |
自然災害が頻発・激甚化するもとで、官民による気象予報の高度化を図る気象業務法・水防法両改正案が23日の衆院本会議で可決、成立しました。日本共産党は賛成しました。
日本共産党の高橋千鶴子議員は19日の衆院国土交通委員会で、気象業務への民間参入が拡大してきたもとで、気象観測データ品質の確保とともに、人命にかかわる警報は気象庁だけが発出するシングルボイスを原則としているが、「改正でこの原則は変わらないか」と質問。斉藤鉄夫国交相は「観測制度は気象観測の品質を確保することで社会的混乱を防ぎ国民の生命財産を災害から守るためのもの。観測の原則、警報のシングルボイスの原則も改正によって変わらない」と答えました。
土砂崩れや洪水の予報業務について高橋氏は、今回の改正で気象予報士を配置しなくても業者を許可できるようにすると判断した理由を質問。大林正典気象庁長官は「高精度な予測が可能となり最新の技術基準で許可することが適切だと判断した」と答えました。
高橋氏は、気象庁の定員は半世紀近くで24%も削減されたと指摘し、人員、予算、権限を増やすべきだと主張。斉藤国交相は「必要な体制強化等に取り組み、予算や人員を確保する。業務推進へしっかり指導する」と答えました。
(「しんぶん赤旗」2023年5月26日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに水防法ですが、第十一条で、国は都道府県の求めがあったときに水位等に関する情報を提供するとなっています。全国百九ある一級水系の河川全てに、国が管理する河川と都道府県が管理する洪水予報河川がありますが、国はそもそも、本川、支川が一体となった水位予測に取り組んでいると承知しています。
そうであれば、都道府県の求めがなくても国が情報提供することができないのでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 水防法では、洪水予報について、国と都道府県で河川の規模などに応じて役割分担を行っております。国、都道府県がそれぞれ指定した河川において、それぞれの責務で実施するわけでございます。
このため、今般の改正では、国が都道府県の意思にかかわらず情報を提供するのではなく、責務を有する都道府県が情報の必要性を判断する仕組みとしておりまして、都道府県知事は、国土交通大臣に対し、情報の提供を求めることができるという規定となっております。
国土交通省としては、都道府県指定の河川においても洪水予報の早期化が実現し、本川、支川が一体となって、災害に対する備えの充実が速やかに図られるよう、都道府県との連携、これはしっかりと進めてまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 役割分担とおっしゃったんですけれども、やはり大きな災害が来るおそれがあるということが分かっているときに、やはりそれは、たてつけ上は求めがあったらというふうなことをしなくてもいいのじゃないかと改めて伺いたいと思うんですね。
気象業務法に基づき、気象庁は、都道府県と共同で会見、予報を行っています。避難勧告を出す首長さんの負担は本当に大きく、災害があるたびに、もっと早くといった議論が繰り返されてきました。
二〇一四年、広島の土砂災害のときは、大雨警報や洪水警報は気象庁が夕方から出していましたが、実際に豪雨になったのは夜中の一時過ぎで、避難勧告を出したのは明け方の四時過ぎでした。
二〇一六年の岩手県岩泉町のグループホームを襲った台風十号は、朝のうちに隣の老健施設に避難していればというのは後で言えることなんだけれども、そこまで判断できる情報が得られていないわけです。
分かりやすい警報の出し方というのは、この間、気象庁も見直しをしてきたのは分かります。だけれども、もっとできないかということで、洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会では、警報のタイミングについて、一日前とか、明るいうちに、暗くなる前になどということが議論されてきましたが、具体化されるでしょうか。
○大林政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、令和三年に開催された洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会でも提言されているように、より早期の避難等に資する情報提供のためには、予測技術の高度化が重要な課題となっております。
このため、気象庁では、特に近年、毎年のように甚大な被害をもたらす線状降水帯について、予測精度を向上すべく、観測、予測技術の高度化に関する取組を強化、加速化しているところです。
これにより、昨年には、それまで予測が困難であった線状降水帯による大雨について、その可能性が高いことが予想された場合、関東甲信地方といった地方単位で半日程度前から呼びかけることを開始いたしました。
今後、令和六年にはこれを県単位で、さらに令和十一年には市町村単位で半日前からの情報提供を目指してまいります。
引き続き、予測技術の高度化により、早期の避難等に資する情報の改善に努め、防災・減災の取組を推進してまいります。
○高橋(千)委員 予測の高度化と避難勧告を出す首長の決断というのは、また違うわけです。そこに迷いが生じないように国の支援が必要だと思いますが、大臣、もう一度、さっきの質問についてお願いします。
○斉藤(鉄)国務大臣 その点、しっかり進めていきたいと思います。
○高橋(千)委員 一九九五年から気象業務への民間参入の対象が順次解禁されてきました。現在、気象及び波浪に関する予報業務の許可事業者は八十九と聞いています。
気象観測のデータについては、その品質を確保することにより、誤った観測値がもたらす社会的混乱を防ぐとして、一つに、一定の技術基準に従う、二つに、観測施設の届出や気象測器の設置の届出、三つ、検定に合格した気象測器を使うことが義務づけられているということです。また、人命や財産の安全に関わる警報については、世界的にもシングルボイスが原則とされ、気象庁以外の者による警報が制限されてきました。
今回の改正においてもこれらの原則は変わらないという理解でよろしいでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 委員御指摘のこうした観測に関する制度は、気象観測の品質を担保することによりまして、誤った観測値がもたらす社会的混乱を防ぎ、国民の生命財産を災害から守るためのものでございます。
今般の改正は、予報業務許可事業者が、検定済みの測器による観測の補完として行う観測であると気象庁長官から確認を受けた場合に限り、検定を受けていない測器も利用できるようにするものです。また、それ以外の観測については従前の原則を維持いたします。
また、いわゆるシングルボイスに関しては、気象業務法第二十三条において、気象庁以外の者が警報をしてはならない旨が定められていますが、この原則についても今般の改正によって変わることはございません。
○高橋(千)委員 確認できました。
それで、先ほど一谷委員の方から、予報業務許可事業者について、土砂崩れや洪水については許可された業者はなかったけれども、土砂崩れ十者、洪水三十者というKPIが掲げられているという質問がありまして、答弁として、参入希望があったということと、当時は技術がなかったけれども、その精度が上がってきたという答弁だったと思うんですね。
要件としては、気象予報士の設置がこれまでは要件としてあったと。検討会の中でも、気象予報士には土砂崩れや洪水についての経験値というんでしょうかね、予報を出すための、まだ技術的にはないということを気象庁自身が答えているわけなんですよね。
そのことと、今回、気象予報士を設置しなくても許可できると判断した、その間はどういうふうに埋めていくんでしょうか。
○大林政府参考人 お答え申し上げます。
近年は、従来のように、気象と洪水等の予測を一体的に行う手法ではなく、気象の予測結果を入力値として洪水等の精緻なシミュレーション計算を行うような、気象と洪水等の予測を分割して行う手法が主流となってきており、これにより、従来よりも高精度な予測を行うことが可能となってきております。
このため、本法案では、洪水等の予測については、気象予報士に行わせるのではなく、最新の予測技術を踏まえたシミュレーション計算等に関する技術上の基準により予報業務許可を行うことが適切であると判断したところです。
なお、洪水等のシミュレーション計算の入力値となる気象予報も自ら行う許可事業者は、引き続き気象予報士を設置する必要があります。
○高橋(千)委員 最後のところは、自ら行う事業者はということであったんですけれども、情報が高度になっていくことと人の力というのですか、そこはやはり合わせていかなきゃ駄目なんじゃないかということを常々考えているところであります。
それで、検討会の中で民間予報業務許可事業者からのヒアリングを行っていますが、例えば、ウェザーニューズは、公助として、公式な防災情報は国が担うべきと言った上で、加えて、民間事業者が出す情報も活用することで、一般の住民の自助が促進するとあります。これはやはり、警報などにもっと民間事業者が関わりたいという趣旨ではないかと。それと、一般の一個人に対しての情報の出し方ということを述べているんだと思うんですね。
それから、株式会社建設技術研究所、民間の予測情報を自治体等の住民へ提供したい場合、予測情報の利用が許可されるかどうか、避難判断への利用を認めるかどうか、こうした問題提起をしております。
さっき大臣からシングルボイスは変わりませんということをはっきりとおっしゃっていただいたんですけれども、やはり個人に対してそれができるようになってしまうと更に混乱を招くという点では、やはりできないよということをはっきり言っていただきたいのと、それから、自治体が、問合せが来て、自治体自身が情報がないというふうなことがないように、むしろ自治体自身がこの予報業務許可業者をうまく契約して、使って、出せる、つまりお互いに補完できるような形に国がもっと支援していくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 委員御指摘のとおり、国民の防災活動に必要となる防災気象情報は、社会的な混乱を防止するため、国の機関から一元的に発表される必要がある、このように考えております。
今回の改正によりまして、洪水や土砂崩れ等の予報について、許可事業者が個別の契約に基づき利用者に提供できる環境整備を進めることとしておりますが、防災気象情報について国が責任を持って提供していくことに変わりはございません。
特に、重大な災害の起こるおそれを警告する警報につきましては、引き続き、気象庁以外の者から発信することを制限し、責任の一元化と情報の一貫性を持たせることとしております。
今後とも、国民の命を守る防災気象情報を適時的確に提供してまいる所存でございます。
○高橋(千)委員 ここは指摘にとどめたいと思うんですが、先ほどの長官の答弁を聞いていますと、やはり民間の参入というのに物すごく力を入れてきているわけですよね。気象業務支援センターなどの出す情報の提供、これは許可業者だけじゃない人たちが九割を占めているという形で、いろいろな形で利用されていくと。
だけれども、それ自体が、今言ったような、個人にもピンポイントで分かっちゃうみたいなことになっていくと、一方では、シングルボイスです、国は制限していますと言うんだけれども、業者じゃなくても手に入っているわけですよ、いろいろな情報が。その境目がなくなってくるということが何をもたらすのかということは、やはりちょっと緊張を持って見ていきたい、このように指摘をしたいと思います。
私は、二〇〇六年十一月に測候所の全廃方針が閣議決定されて以来、繰り返し、人による観測にこだわって質問してきました。青森県の深浦測候所、岩手の大船渡測候所などを直接訪ねて聞いた現場の職員、そして漁協の皆さんなど、測候所の情報を頼りにしている人たちの声、あるいは国会に寄せられた意見書などに基づくものでした。
直近では、二〇二〇年の十一月、半世紀以上続けてきた生物季節観察の縮小について取り上げました。しかも、このときは、気象庁のホームページの広告掲載問題も指摘したわけですが、当時も気象庁は予算が足りないと言っていたわけであります。だからこそ、もっと拡充する必要があると思うんですね。
定員を見ますと、それこそ半世紀近く、一九七七年は六千五百八十九人だった定員が、今や五千二十五人と二四%も減っています。デジタル化で更に減らすつもりなんでしょうか。
ある民間気象業関係の方から、気象庁は気象省に昇格して、予算も権限も強めるべきだと御意見をいただきました。本来、それだけの存在なんじゃないか、私はこう思うんですね。
気象と戦争は切っても切れない関係とよく言われますし、太平洋戦争のときには、敵に軍事目的で利用されるのを防ぐために天気予報が発表されなかった時代がありました。
これほど天気というのは国民の命と財産に関わる重大な情報である、そういう認識に立って、もっと格上げを目指して、人員も予算も増やしていくべきだと思いますが、大臣、一言。
○斉藤(鉄)国務大臣 最近、気象庁、本当に、自然災害が発生したときにはJETTがすぐ駆けつけ、また、地方気象台の役割というのも地域の活動に本当に重要になってきておりまして、期待も大きくなっている。また、線状降水帯による予測精度向上等も求められております。
こういう状況を踏まえまして、気象庁におきましても、防災対策の強化や技術開発に必要な体制強化に取り組んでおり、それらに必要な予算や人員を確保しております。令和五年度におきましても、気象庁予算を大きく伸ばしていただきました。
気象省にしたらどうかという御提案も紹介されたところでございますが、気象庁につきましては、引き続き、国土交通省の一員として、省内各局とも幅広く連携しつつ、業務を推進していくよう、私からもしっかり指導していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 終わります。よろしくお願いします。