衆議院地域・こども・デジタル特委
マイナンバー法の参考人質疑で参考人の皆さんに質問しました。
ー議事録ー
○橋本委員長 次に、高橋千鶴子君。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の参考人の皆様、御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴いたしました。ありがとうございました。
早速質問させていただきたいと思います。
まず、長島参考人に伺います。
今度の国会ではマイナ保険証が最大の争点になっているかなと思うんですけれども、マイナンバーカードによるオンライン資格確認は医療DXのインフラということが最もおっしゃりたいことではなかったかなというふうに思っております。
ただ、私、昨日も質疑をしておりまして、メリットというのは必ずデメリットもあるわけで、メリットイコールそうしなきゃいけないということの理由にはならない、そういう意味では、納得できる答弁が政府からは得られなかったというのがあります。
それで、先生が、医療の専門化、分化、あるいは一層の連携が必要だという御発言をされました。
確かに、高度な医療の発展というのは、もうどんどん細分化されておりますし、ただ、圧倒的に多くの国民は、そうした高度な専門的医療にアクセスできずに、私も地方の出身だからというのもあるんですが、医師不足で地域医療が、病床削減ですとか、どんどん縮小していく、そもそもアクセスできない。あるいは、地域包括ケアがあるじゃないかとなると、介護も人材不足でそもそも選択できない、そういう状況があるわけですよね。
こうした状況を踏まえて、医療DXを進めていくことが、本当にそういう立場の国民にとってメリットにつながるんだろうかということを率直に伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○長島参考人 医療DXは、目的ではなくて、手段、方法だと思っています。したがって、目的が最も重要ですが、日本医師会としては、何よりも、国民、患者の皆様に安心、安全で、より質の高い医療が提供できること、これにつながることが最も重要かと思います。さらに、医療現場の負担が非常に増大していることも踏まえると、医療現場の負担軽減、これも結果的に国民への医療提供につながるものと思っております。したがって、そこに本当につながるものかどうかという観点で見ていくということかと思います。
では、実際に、例えばオンライン資格確認によるシステムが有効かといいますと、実際に有効だと実感している例がございます。
というのは、その患者さんがほかのところでどんなお薬をいただいていますかということをお聞きするのは、非常に今まで大変だったんです。お薬手帳を持っていらっしゃらない方も非常に多いし、お薬手帳でも全部の情報が書いてあるわけではない。記憶をたどってお答えいただくというのは、事実上、極めて困難です。ところが、今回のオン資のシステムを使うと、ほかの医療機関でいただいている薬剤情報が正確に、網羅的に、迅速に、医療機関の負担が余りなく入手可能になりました。これは極めて患者さんにとっても大きな意義かと思います。
また、今年一月から始まりました電子処方箋のシステムにおいては、重複投薬、ほかの医療機関と重なっている投薬とか、特に重要なのが併用禁忌、一緒に使うと悪影響がありますよというような処方をしようとした場合には、そこのところは注意喚起してくれます。デジタルでなければできないことです。紙ではできません。これはまさに、患者さんの命の安全につながるものと思っております。
そのように、本来の目的にしっかり従って使っていく、また、医療機関も含めて誰一人取り残さないということが最も重要と思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 今はお薬手帳もアプリになっておりまして、手帳、冊子であると、とてもじゃないが書き切れないじゃないかという実態があって、それがきちっと徹底されていけば非常に効果的なんだとおっしゃるのはよく分かるんです。ただ、それは今のマイナンバーカードによるマイナ保険証でなくてもできることではないかと思っております。
それで、やはり検討会の中でも随分議論されたパーソナル・ヘルス・レコードの問題ですが、ずっと議論されてきたのは、やはり利活用の側ではなかったかと。つまり、個人にとって、ずっと統一した、生まれてから死ぬまでの情報が必要なのかというのは、必要な方はあると思うんですが、それが、なければならないということになるのかということが非常に疑問なわけです。
それで、データは医療の発展にとってなくてはならないものだと思います。そしてそれが、今そのデータを提供している患者にとって、直接治すよという、自分の役に立たないものであっても、将来の医療に役に立つという考え方というのは、それは大事なことだと思っております。
ただ、そうであっても、やはり医療のデータというのは最も機微な情報であって、個人の尊厳や同意を必要とするし、特に、弱者に対しては最も配慮をしなければならない、それは、ヘルシンキ宣言ですとか国際医療綱領ですとか、繰り返し確認されてきたことだと思うんですよね。
それとの関係で一言伺いたいと思います。
○長島参考人 医療DXにおける医療データの活用は、何よりも御本人のために役立てるというのが大原則であります。そうすべきだと思っております。まずは、先ほどお話ししました地域の医療連携が必ず必要になるので、連携するためにも、紙の紹介状では十分にはできないということで、御本人のために連携に使うということかと思っております。
また、生涯にわたる医療、保健データというのも、残念ながら、今までは制度の縦割りのために、例えば、母子の状況、あるいは学校に上がる前の状況、あるいは学校、あるいは職域健診等、これがばらばらになっていましたけれども、やはりこれがしっかりとつながって御本人が把握できるということは極めて、御本人が健康増進、健康寿命延伸の主役になるということで、非常に重要なことかと思っております。
そのような形で、まずは、何よりも御本人に役立てるということ、これをしっかり進めるべきだと思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 直接お答えいただけなかったんですが、やはり個人の尊厳の問題、役に立ちたい、役に立つものだという先生の御発言は本当にそのとおりだと思っておりますが、そこに至る、やはり医療資源の問題ですとか、様々課題はまだあるのではないか、このように思って伺いました。
次に、冨田参考人に伺いたいと思うんですが、せっかく、連合は労働者の団体でありますので、労働の問題で伺いたいと思います。
この間、やはり住基ネットの初期の頃から、いわゆる個人情報の流出という問題は絶えず問題になってきました。あるいは年金情報、やはり基礎年金番号を統一するというその瞬間から、もう様々な問題が起こってきたということがあると思うんですね。再委託をして、派遣社員が個人のパソコンにデータを持ち帰って、流出してしまったというのを二〇〇七年に私は質問していますが、愛媛県の愛南町、そして秋田県の北秋田市、全く同じ会社だったんですね、そのデータを扱う会社が。
そうしたことがあったんですけれども、やはり今の行政の窓口、ハロワもそうですが、窓口が非正規になったり、あるいは、圧倒的に行革の中で人が足りない。そこを埋めるのが外部委託であり、再委託であり、派遣社員でありと、そういうふうな関係になっている。ここがやはり非常に、いろいろ守秘義務とかいってもできない事情があったり、あるいは国民の不信感につながる問題だったと思うんですが、その点について、是非御意見いただければ。
○冨田参考人 御質問いただきましてありがとうございます。
どういう形でその職場に入ったとしても、働く皆さんは、やはりその職場において、自分の働きを、様々なサービスや提供するものに自分の労働の価値をしっかりとつけていきたいと思い、職場に入られる方が多いかというふうに思います。
こうした状況が起きる状況には、恐らく複合的に様々な状況があって、もしかしたら働き方に不満があるのか、若しくは職場のコミュニケーションに問題があるのか、若しくはそうした、これは自治体に限らず一般の民間企業でも同じだというふうに思いますが、自分の仕事に対する評価が適切なのか、様々な状況が複合的に多分重なり合ってこうした状況が生まれてくるのではないかというふうに思います。
したがいまして、私ども労働組合は、そうした状況に対しては様々な相談機能でしっかりとサポートしてまいりたいというふうに思いますし、何がよくて何が駄目なのかということに対しては、労働者だけでなく、それを、ちょっと使用者側という言い方が正しいかどうか分かりませんが、雇用されている側にも責任があるかというふうに思いますので、労使が互いにそういったことにしっかりと認識を持った上で、そうしたことが起きない状況をいかにしっかりとつくっていくのかということが大事だというふうに思います。
あと、起きてしまったことは仕方のないことですが、二度と起きないような体制をどのようにつくっていくのかというのが大変大事だというふうに考えてございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
本当に一言で言うのは難しいことを聞いてしまいまして、申し訳ありません。
今日も先生方から、あるいは質問者の方からも、デジタルの先進国として、スウェーデンの様子ですとか北欧の話などが出されていたと思うんですよね。そういう国というのは、例えば保育ですとかに参入するのがとても厳しい、公務の方がむしろ厳しいと。なぜかというと、民間は国が作った厳しい基準をちゃんとクリアしているからなんだというお話をされたことがとても印象に残っているんですね。
やはり、そういう公共的な労働に対する価値というんでしょうか、あるいはガバナンスというんでしょうか、そこがしっかりできているところにまず学ぶということが必要なんじゃないかなということを常々考えていたということであります。済みません。
それから、次に、森信参考人に伺います。
デジタルセーフティーネットというお話がございました。
給付つき税額控除というのは、民主党政権のときに提案されて、なかなか理のある話だと思っておりますけれども、ただ、今回、給付の話ばかり強調されるわけですけれども、給付ばかりではないと思うんですね。つまり、正しく税金を取る、正しく利用料を、確実に取るという狙いが当然あるんだろうと。つまり、余計な給付はしない、所得制限をかっちりやっていく、それが、給付とはまた逆の、表と裏の関係というのかな、狙いではないかと思いますが、伺います。
○森信参考人 お答え申し上げます。
マイナンバーをつくりました趣旨は、大綱に書いてありますように、やはり、まず、正確な所得を効率的に把握するということが、一つ明確に入っていると思います。それと、適切な社会保障ということですので、適切に社会保障を給付していく前提としては、やはり適正に所得が把握されていないと社会保障自体がめちゃくちゃになると私は思いますので、そこはもう大前提だということを考えております。
そのためには、やはりこういうデジタル社会におきましては、いろいろな働き方で、プラットフォーマーを経由して働くギグワーカーとかフリーランスとか、いろいろ増えてきましたので、これまでの、会社を中心に情報を把握するというだけでなくて、番号を活用して、そういった新しい分野にも正確な所得の把握をしていくことが必要ではないかというふうに考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 済みません、もう少し詳しくお話ししたいと思うんですが、やはり、この発端は、税と社会保障の一体改革の中で議論されたことだと思います。そのときに、確かに、給付つき税額控除のように、必要な方に給付をするという議論と同時にされた議論は、やはり保険なんだから払わない人にサービスは提供しないということが、今の与党の皆さんから随分出された意見でございます。だけれども、社会保障の改革をしているわけですから、社会保険というのは単純な民間保険ではなくて、社会保障と保険の合体した価値というものがあるわけですよね。そういうことをちゃんと踏まえないと駄目だと思うんです。
だけれども、今のオンライン資格システムですとか、かっちりと所得が把握されて、そして、本人の事情をよく考慮するとか、そういう余地がない社会になっていくということは一つ疑問でもあるんですけれども、そういう趣旨で質問させていただきました。もう一言あれば。
○森信参考人 お答え申し上げます。
その余地という意味が、例えば、少し税金を適切に申告しなくても大丈夫だというふうな意味での余地であれば、私は非常にそれは問題だというふうに思っております。やはり、みんな納税者が一人一人、公共サービスの提供のための財源を提供するためには、公平でみんながきちんと納税しているというのが大前提だと思いますので、そういう面においては、余地というよりも、やはりきちっとした適切な納税というふうなことが必要だと私は考えております。
○高橋(千)委員 例えば生活保護であれば、今でも全部資産は明らかになっておりますし、扶養者までも照会をされる、そういうふうなことになっていますので、ある人の税金をちゃんとやっていないというのは、むしろ、うんとある人の話だと思って、私が議論しているのは、やはり、厳密にその所得が分かって、それで所得制限がかかる、だけれども、そこに払えない事情だとか様々なものを考慮する余地があるのかということが一つ言いたかったわけであります。
申し訳ないが、適切な答弁というか、そこに関わる方がちょっと今日はいらっしゃらなかったのかなと思って、御意見を聞いていただければよかったと思っております。
それで、太田参考人に伺いたいのですが、今回、戸籍法の改正が入っていて、振り仮名が盛り込まれているというのは、デジタルネットワークで確実につなぐためのツールとして振り仮名が必須であるということも理由なのかなというふうに思うんですが、そこをまず確認したいと思います。
○太田参考人 お答えします。
振り仮名を今回きちっと扱うということが必須かどうかという御質問なんですけれども、さっきお話しさせていただいたように、金融機関では振り仮名というのが口座の管理に使われておりまして、御記憶のように、コロナ禍での定額給付金に関しては、自分でそれを入力しないと口座が確認できない、間違って入力してしまうと給付金が受け取れないというようなことが起こっておりましたので、そういった給付の滞るようなことがないために、やはり道具として振り仮名というのは必須であるというふうに思います。
ただ、ちょっと拡張して申し上げると、議論の中には、振り仮名、読み仮名というのは文化であるというような議論もあったかと思いますけれども、今回に関しては、やはり道具として、ツールとして読み仮名を使えるようにしましょうということですので、命名の在り方ですとか個人の考え方ですとか、そういう文化的な面に関しては全く別の話だというふうに思います。
目的として、円滑に行政サービスが行われるように、ツールとして、これまであやふやだったので使えなかった、使えないので、国民に教えてくださいというふうに、データはあるのに聞いていたというところが現状でしたので、そこからきちんと円滑にサービスが進むということで、必要な今の改正だというふうに理解をしております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
そうだと思うんですよね。振り仮名がなぜ今回一緒に盛り込まれているのかという理由は、はっきりしたのかなと思っております。
それで、太田参考人と冨田参考人にこの問題でもう一言伺いたいのですが、文化ではなく道具なんだとお話をされました。そうはいっても、氏名というのは最も個人のアイデンティティーに関わる問題ですので、私は、生まれたときに出生届と一緒に振り仮名をやる、そういうふうにしていけばいいのだろうと思うんですけれども、今、日常的に使っている振り仮名をまず行政が一旦つけてしまうということで、じゃ、違うんだったら自分で言えよという仕組みというのはなかなか難しい、いささか一方的ではないかという思いがどうしてもあるんですよね。
大阪でマイナンバーカードの申請書に振り仮名をつけて出したら数千件も問合せがあったと。それほどやはり振り仮名というのは難しい問題だと思いますので、一言ずつ伺います。
○太田参考人 私が先ほど申し上げた、非常に、文化的な面ですとか個人の考え方というのは大変大事だと思います。
それと、今回の法改正による、移行期間というのはやはりあるとは思うんですね。ですので、その間、関連するところ、窓口には大変たくさん問合せがあるということはもう当然だと思いますので、それに対応する移行措置というのも念頭に置きながらやはり進めていくのが大事だというふうに思います。
とはいえ、国民的には、やはり日本というのは、残念ながらというか、現実として、例えば、災害とかがどんどん起きていますので、何らかの形の給付が行われるというのは、もう来月にでも起こるかもしれないという、大型のそういう災害も起こる可能性もあって、そのときにまた、全部国が持っているにもかかわらず書かせるの、それで、書き損じるともらえないのということが繰り返されるというのは多分かなり厳しい状況だと思いますので、そこをどう見合いながら、やはり移行期間というのをいかに短くしていくかというのを関係組織がしっかり頑張るというような現状認識かというふうに思っております。
大事なのは、定額給付は結構うまくいかなかった面が多かったんですね。その一つの原因がやはり読み仮名なので、今度起こったときに同じことをしたときの失望感というのはやはり非常に大きいというふうに思いますので、そこを念頭に置きながら移行期間をできるだけ円滑にしていくということだと思います。
○冨田参考人 御質問をいただきましてありがとうございます。
二点あるかというふうに思っておりまして、目的が何なのかということです。
冒頭に申し上げましたが、やはりデータ、レジストリーとしてしっかりと集めていく必要性が今高まっているということを国民の皆さんに御理解いただくことと、今回、戸籍に仮名表記をつけるのは、自己を正しく認識していただくための、本人のためなんだということをしっかりと御認識をいただいて、今回、自ら届出をいただくことがまず第一になっておりますので、届出の期間中に全ての国民の皆さんが自ら届けていただけるような、そうした御理解が進むような周知の方法なども併せて御検討いただけるとありがたいと思います。
ありがとうございます。
○高橋(千)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。