国会質問

質問日:2023年 5月 12日 第211国会 国土交通委員会

水道法(宮城型コンセッション方式など)

水道 情報公開が後退

高橋氏、民間に運営権方式で

衆院国交委

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=12日、衆院国交

 日本共産党の高橋千鶴子議員は12日の衆院国土交通委員会で、水道行政を厚生労働省から国土交通省と環境省に移管する法案に関連して、水道事業のコンセッション(公共施設等運営)事業について質問しました。

 コンセッション事業とは、利用料金の徴収を行う公共施設などで、所有権を公共主体が有したまま運営権を民間事業者に設定する方式です。

 現在、宮城県のみが同事業を実施。高橋氏は「みずむすびサービスみやぎ」など「民間企業が運営権者となった場合、情報公開を後退させてもやむを得ないとの立場か」と質問。「水道用水の原価、下水道負担金の算定根拠が公表されなければ、市町村は住民に責任ある説明をできず、議会も判断できない」と指摘しました。

 厚労省の佐々木昌弘生活衛生・食品安全審議官は「水道法で、事業運営に関する情報を積極的に公開する必要があることを規定しており、自治体にも情報公開の必要性を求めている」「水道料金の改定に当たっては、事業費用や給水量の将来見通し等の根拠を議会に示し、条例によって料金を決定している」と答えました。

 高橋氏は、水道管交換事業のコンセッション方式を検討したものの参入業者が採算が合わないと撤退し断念した大阪市の事例を紹介。「宮城県は管路の更新等は県がもつとして事業者を呼び込んでいるが、これでは県の負担は軽くならない」と批判しました。

(「しんぶん赤旗」2023年5月19日付)


ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 先月、水道法改正で厚生労働委員会との連合審査がありました。来年四月から、水道事業が厚労省から環境省と国交省に移管されるというものであります。当時、そのときに十分しかなかったので、今日はその続きをやりたいと思います。
 高度経済成長期に整備された水道施設の老朽化が進行し、耐震性の不足等から、大規模な災害の発生時に断水が長期化するリスクに直面していること、人口減や水需要の減少に伴う水道事業の経営環境の悪化、さらに、水道事業を担う人材の減少や高齢化が進むなど、深刻な課題に直面していることなどを背景に、民間事業者の技術力や経営に関する知識を活用する官民連携や広域連携を進めることを中心とした、二〇一八年水道法改正がありました。
 これを受け、水道の基盤を強化するための基本的な方針が二〇一九年九月三十日に決定されております。そこで、政府が進める官民連携の形として、自治体が施設の所有権を持ったまま運営権を民間企業に売却する、コンセッション方式を水道事業でも推進することが明記されたわけですが、実際にコンセッションを実施あるいは検討している自治体はどこか、その進捗状況、実施状況についてどのように評価しているのか、伺います。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 まず、実施についてでございます。
 宮城県における仙南・仙塩広域水道用水供給事業と大崎広域水道用水供給事業のこの二事業が令和四年四月から実施しています。
 次に、検討でございます。
 現時点で具体的に検討が進んでいるというものは、現時点ではございません。
 次の、進捗状況、実施状況でございます。
 宮城県におけるコンセッション事業の経営状況については、これはちょっと三点申し上げます。運営権者によるセルフモニタリング、二つ目が県によるモニタリング、三つ目が第三者機関である経営審査委員会によるモニタリング、この三段階でモニタリングを実施することとされています。
 このうち、三つ目の経営審査委員会では、そのモニタリング結果を運営権者にフィードバックして、必要に応じて運営方針の見直しを求める、こういった体制を構築しているところでございます。
 本事業における運営権者の令和四年度上半期の経営状況については、当初の計画値から大きな乖離はなく、初年度、令和四年度全体の決算においても計画値と同程度になる見込みであることを確認したと聞いております。
 こうしたことを考えると、現時点では事業は適切に実施されているものと考えております。
○高橋(千)委員 済みません、昨日ちゃんとやり取りしたつもりですが、答弁が、趣旨がちょっと違っているわけですね。
 実施あるいは検討している自治体はどこかといったときに、宮城県以外は今はもうないわけですよね。大阪は上水道のコンセッションを途中で断念をした経緯があります。
 ですから、宮城の話を聞いているんじゃなくて、国は鳴り物入りで官民連携をやると言ったわけです。それが、今こういう状態になっていることをどう評価していますかと聞いたんです。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 まず、今委員から御指摘いただいた点で申し上げますと、過去には大阪市が御指摘のとおりになった。加えて申し上げますと、浜松市では現在検討が中断状況となっています。
 私ども厚生労働省としては、まず第一にあるのは、水道法の心でありますところの、清浄な水がきっちり供給される、その中の一方法として、どのような供給、その経営、運営基盤があるのか、それの強化をどうするのかということが、先ほど御紹介いただいた令和元年九月三十日の方針でございますので、その意味では、それぞれの運営者において協議の結果が今ですので、それについて、二だからよい、二だから悪いというよりは、それはそれぞれにおいて適切に経営の、運営の仕方について検討は行われていると考えております。
○高橋(千)委員 逆に言うと、大いに進めようと思ったものが、余りそうではない、あるいは水道法の本来の目的に立てばコンセッションはふさわしくない、そういうことが実は多くの自治体が気づいているというあかしなのかなと、かえって私はそのように受け取りました。
 それで、資料の一が、みやぎ型管理運営方式の事業区域です。私、ちょっと、あれっと思ったんですが、厚労省なものだから、水道の話しかしなくて、二つの、この上の、大崎と仙南・仙塩広域水道事業の二つしか今おっしゃいませんでした。宮城は全国初の、上水と工業用水と流域下水道、この三つを一体型でコンセッションをやるというやり方で、九つの事業になるわけであります。
 それで、下段にその運営権者の構成員が示されておりますが、水処理大手のメタウォーターを代表企業とし、水メジャー、ヴェオリアなど十社が出資した特別目的会社、SPCといいますが、みずむすびマネジメントみやぎと契約を結びました。契約は二十年間、十億円と聞いております。
 昨年四月十二日、みずむすびマネジメントみやぎの酒井社長は、悪い情報もきちんと発信し、隠し事をしない会社を目指す、約束した水質と水量を安定的に提供し続けていくと記者団に語りました。ところが、一年目に当たり、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎが声明を出しておりますが、民営化後、情報公開が大幅に後退したと指摘をしています。
 先ほどの企業名の並んだ資料の中にある、みずむすびサービスみやぎ、これは出資は一緒ですけれども、サービスみやぎの方が浄水場や下水処理場の維持管理を担当しているわけなんです。これは設立をしたわけなんです。ところが、県とは直接の契約関係にないために、財務数値などがほとんど開示されていないという指摘であります。
 このように、民間企業が運営権者となった場合、情報公開については、地方自治体や公営企業で運営していたときとは違って仕方がない、やむを得ないという立場でしょうか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 水道法では、これは二十四条の二というところで規定されているんですが、水道事業者は、水道の利用者に対し、水質検査の結果や水道事業の実施体制に関する事項等の情報を提供しなければならない、こういう規定がございます。
 これを受けて、厚生労働省が定めております水道事業における官民連携に関する手引きでは、コンセッション事業において、民間の運営権者が運営を行う場合であっても、水道事業の透明性の向上のため、事業運営に関する情報を積極的に公開していく必要があり、適切に情報公開が行われるよう実施契約書に必要な規定を盛り込むことが望ましい旨をお示ししているところでございます。
 よって、委員の御指摘の、情報公開において公開されなくてもやむを得ないという立場、考えかというと、厚生労働省は、そんなことではございません。
○岡村政府参考人 下水道分野についてお答えを申し上げます。
 下水道につきましては、日常生活を支える重要なインフラでございまして、官民連携の導入の有無にかかわらず、情報が住民等に適切に公開される必要があると考えております。
 このため、国土交通省が策定をいたしました下水道事業における公共施設等運営事業の実施に関するガイドラインにおきまして、透明性確保の観点から、積極的な情報公開を行うことが望ましい旨を記載し、周知をしているところでございます。
○高橋(千)委員 今、厚労省と、下水道に関わって国交省に答弁をいただきましたが、国交省の方はガイドラインにとどまっているんですね。法律に書かれているわけではない。ここはきちっと今後検討していただきたいと思うんです。
 ただ、厚労省も、水道法二十四条を御紹介いただきました。事業者はということは、これ、事業者は県になるわけですよね。県が民間事業者に対して、さっき言ったように、契約の相手方ではない、つまり再委託になりますので、それに対してもきちっと情報提供させる責任がある、このような理解でよろしいでしょうか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 この法の趣旨から鑑みれば、まず、少なくとも、先ほど御指摘いただいた条文のところでそう規定していて、それを受けてと先ほど御答弁差し上げたところですが、それを受けて、私どもは水道事業における官民連携に関する手引きを定めておりますので、そのような考え方は、当然ながら、この事業そのものについての情報公開の必要性を私どもは求めているということでございます。
○高橋(千)委員 これが確実に浸透するように御指導をお願いしたいと思います。
 昨年三月三十一日の河北新報によると、二〇一七年度の地方公営企業年鑑を基に、宮城県の水道料金、一立方当たり百四十六・五円ということで、広域水道行政を手がける二十二府県で最も高いんですね。最も安い長野県の三倍超に達すると指摘されています。村井知事がその三日前の定例記者会見で、県民に少しでも安価な水道を供給するための施策である、日本のモデルになると自信を見せたと報じています。果たしてそうでしょうか。
 市民ネットワーク・みやぎは、年間契約水量の八割に相当する料金を、給水量が仮にそこまで満たなくても市町村は必ず支払う責任水量制の見直しをしてほしいと求めています。
 これまでは、事業別にそれぞれの用水の原価が公表され、市町村の受水料金もそれに基づいて算定をされてきました。同じように、水道用水原価、下水道負担金の算定根拠が公表されなければ、首長は住民に責任ある説明ができないし、議会も判断ができません。この点は民営化前と変わらずということでよろしいでしょうか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 まずは、水道法上の根拠ですが、十四条の第二項において、水道料金は、能率的な経営の下における適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること、これが法律が求めているところです。
 同じ法律、水道法の二十四条の二、これは先ほど申し上げましたが、水道事業者は、水道の利用者に対し、水道料金や利用者の負担に関する事業の情報を提供しなければならないとされています。
 こうした水道法上の規定に基づきますと、地方公共団体が水道事業を実施する場合、料金の改定を行うに当たっては、事業に要する費用や給水量についての将来の見通し等、こういったことも含めた根拠を議会に示した上で、それぞれの地方公共団体の条例によって水道料金を決定されている、このような仕組みだと承知しております。
 御指摘のみやぎ型管理運営方式においても、水道料金の改定を行う際は、その十八か月前には宮城県から市町村に対し、収支見通しや料金の改定案等を提案し、宮城県と市町村の間で料金の交渉を行った上で、宮城県議会において条例により料金の改定を行う、こういう仕組みになっているものと、まだ初回の改定はありませんが、規定上はそのような定めになっているものと承知しております。
○高橋(千)委員 確認ですが、十八か月前に原価をちゃんと議会に示すことになっていると。当然、そこには、民間会社ですので、配当もきちっと示されるのかというのが確認と、それから、通告していなくて申し訳なかったんですが、今、最初にお話しした責任水量制、これについてはどのようにお考えですか。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 まず、前者の十八か月前には示すものというところですが、もちろん、これは市町村等に対して、判断いただくのに必要な収支見通し、ちょっと例示的に申しますと料金の改定案等でございますし、宮城県と市町村間の料金の交渉、これを踏まえた上で宮城県議会で御審議いただくに際しては、それに必要な情報を当然お示しした上での御審議をいただくことになると思います。
 二点目のところでございますけれども、これはどこの部分を御答弁差し上げればよろしいでしょうか。委員長、どうしましょうか。責任水量制のその部分を……(高橋(千)委員「についてどう考えますか」と呼ぶ)承知しました。
 もちろん、この水道法が求めている趣旨からすると、当然ながら、その水道事業者はという、これは二十四条の二のところで申し上げましたけれども、まず、そこで、事業者が利用者に対して開示をしながらするんだ、そして、その上で、その料金の設定においては、十四条の二項で定められている、能率的な経営の下で、そういったものの健全な経営を確保することができる公正妥当なものであること、これをちゃんと担保するんだ、こういうような法律のたてつけになっております。
○高橋(千)委員 広域化と、それから三つの水道を一遍にコンセッションにしていますので、どうしてもその矛盾が出てくると思うんですよね。
 今言った責任水量制というのは、やはり、実際は使わなかったけれども、ここまでは払わなきゃいけないという問題が出てくるということは、市町村長が問題だと言っているのは是非受け止めていただきたいと思うし、はっきりおっしゃらなかったんですが、必要な情報は出さなきゃいけないとお話しだったので、民間企業である以上は配当についてもお示しをするということでよろしいですね。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
 まず、後段の今の御指摘については、民間企業がちゃんとそういう情報を出すのかということかと思います。
 当然ながら、まずこれは、議会で承認、また、県と市町村の間で交渉する、その際に必要な情報が必要ですし、また、その情報を提供するに際しては、契約関係において、民間企業との間でしかるべきそれを担保するような措置があって、その上で御審議いただくという当然これは流れになると思いますので、その意味では、その民間企業に必要な情報というところは、それで担保できるものと考えております。
○高橋(千)委員 確認しました。時間が非常に過ぎてしまって申し訳ありません。
 昨年十二月九日、仙南・仙塩広域水道事業において、今年四月八日は大崎広域水道で濁度上昇事故が起きております。施設等の維持管理を担当している会社と受託業者の間で十分な確認作業をしていなかったということが問題だと聞いております。まず、この事案を承知しているかということと、水質管理は、水道法の一条、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与するという水道法の目的そのものであり、大変重要なわけです。
 資料の二枚目に、この水質検査体制のフロー図と、県と運営権者の分担があります。モニタリングは県がやるということになっているわけですが、実際には、この下にあるように、運営権者と分け合って、減らないんだ、これまで以上にやるんだということを県は強調しているわけなんですね。これを、やはり最終的にチェックはどうあるべきだとお考えですか。
○佐々木政府参考人 簡潔にお答えいたします。
 まず、この事案については、厚生労働省においては、宮城県から話を聞いて、当然ながら承知しております。
 その上で、これをどういう形でマニュアル的なものにし、かつ、それをチェックしていくかについてでございます。
 今回、宮城県が運営権者に対して改善命令を通知しました。それで、再発防止策として、運営権者によるこれまでの施工要領書に代わり、より詳細な手順書、これがマニュアルに相当するものかと思いますが、この手順書を作成の上、この手順書を用いた点検作業を宮城県も確認したというところです。
 このチェックの部分ですけれども、厚生労働省としては、水道事業の適切な運営に向けて、今後も引き続き宮城県及び運営権者に対して、適切なモニタリング、先ほどモニタリングの仕組みを御説明しましたが、これを継続するよう指導してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 資料の二の上段にあるように、民間の力の最大活用というんですけれども、実際は、モニタリング、管路の維持管理、更新などは県が引き続き持っているわけなんです。
 先ほど、大阪がコンセッションを検討して途中で断念ということをお話ししましたが、政令市の中でも水道管の老朽化が最も進んでいるということで、水道管の交換事業を民間移譲しようと考え、公募に応じた二グループが採算が取れないということで断ったというのが大阪のてんまつだったと思っています。
 村井知事はそういうことが分かっているから、これでは民間事業者がもうからないと参入してこないから、管路の更新は県が持ちますと宣言して、こういうふうに呼び込んでいるわけです。
 でも、それだったら、何のためのコンセッションなのかとつくづく思うんですよ。ちっとも負担は軽くならないし、安くもならないじゃないかということで、それだったら、やるんだったら、元々、県がそのままやればいいんじゃないか、このように思うんですね。
 ちょっと、これで時間になりますので、大臣に一言。
 新水道ビジョンでもうたわれて、本当に小さい自治体だと専門の技術職員が一人もいないとか、そういう議論の中で作った法律なんですよ。本当にこれで進める必要は特にないと思うし、こういう中で、やはり人材不足を本気でやっていかなければまずいと思うんですが、いかがでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 いよいよ水道事業が国土交通省所管になりまして、下水道、上水道一体として、国土交通省、管理事業を推進してまいります。
 そのときに、上水道、下水道共に地方自治体にお願いしているところもたくさんございまして、ここは国と地方自治体、しっかり連携してやっていかなくてはいけない。そのときのいわゆる自治体での技術者不足というお話も聞いております。そこはしっかりと、人材育成も含めて、そして予算面も含めて、我々国土交通省として頑張りたい、このように思っています。
○高橋(千)委員 また時間が足りなくなりました。次にやりたいと思います。
 ありがとうございます。

2023年5月12日 国土交通委員会 提出資料

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