空家等対策特措法改正案衆院委可決
区域外意見も聞いて
高橋議員が質問
(写真)質問する高橋千鶴子議員=10日、衆院国交委 |
「空き家」の適切な管理や処分、活用を促進する空家等対策特別措置法改正案が、10日の衆院国土交通委員会で全会一致で可決しました。
現在、349万戸にのぼる居住目的のないいわゆる「空き家」は、2030年には470万戸に増える見込み。放置による近隣への悪影響などが深刻な課題となっています。法案は、市町村の代執行などの権限を強化し、空き家対策を推進します。
日本共産党の高橋千鶴子議員は同日の質疑で、新たに「空家等活用促進区域」を設け接道規制などを緩和する特例規定に言及。建築基準法による同規制は安全確保のためのもので、現行の基準法でも緩和の規定があり「特例は必要ない」と主張。国交省の塩見英之住宅局長は「現行法でも可能だが、その都度個別の審査が必要だとして緩和の要望がある」と答えました。
高橋氏は「管理不全の空き家が(活用促進)区域内にない場合も、街づくりや観光資源などに積極活用していくか」と質問。斉藤鉄夫国交相は「管理不全の空き家の有無にかかわらずさまざまなニーズに応じ活用してもらう」と答えました。
高橋氏は、市町村が区域を定める際「区域内の住民の意見を反映させるための措置を講ずる」としているが、「区域外の意見も聞くべきだ」と指摘。斉藤国交相は「区域の周辺住民を意見聴取の対象とすることも考えられる」と答弁しました。
(「しんぶん赤旗」2023年5月18日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨年の三月は所有者不明土地の法改正があり、二〇二〇年の三月には三十年ぶりの土地基本法の改正がありました。関係はずっとあると思いますが、関係閣僚会議による、空き家対策と所有者不明土地等対策の一体的・総合的推進、政策パッケージが決定されたのが今年二月です。私有財産と公共の福祉のぶつかり合いという重要な課題だと考えています。
そもそも、二〇一四年の空き家法附則第二項では、五年後の見直し条項がありました。検討の上、ガイドラインの改正などで足りると当時判断した経緯があったと承知しておりますが、今回改正に至った最大の動機は何でしょうか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
空き家法が制定されました当時の附則では、先生御指摘のとおり、法律の施行後五年を経過した場合における検討規定というものが設けられております。
これを踏まえまして、国土交通省におきましては、空き家法施行から五年を経過したことを受けて、令和三年度に、まずは、市町村の御要望を踏まえまして、基本指針やガイドラインを改正しまして、所有者の特定に当たって想定される調査方法の具体例、こういうものを示すなど、運用上の改善をまず行ったところでございます。
他方、市町村からは、空き家を活用するときの接道規制の合理化でありますとか、管理不全空き家に係ります住宅用地特例の解除でありますとか、特定空き家に対する緊急時の代執行制度の創設でありますとか、制度的な手当てが必要になりますものにつきましての御要望もいただいておりまして、事務的には様々な検討を続けてまいったところでございます。
この検討が進捗いたしますとともに、今後もまだ空き家の増加がなお見込まれるということも踏まえまして、今回、制度を含めた総合的な対策の強化を図る必要があると考え、法改正の提案をさせていただいたところでございます。
○高橋(千)委員 済みません、もう一回聞きますけれども、今、要望をもらって、継続して検討と、それは市町村の要望ですか。
○塩見政府参考人 空き家対策の最前線を担っておられるのは市町村であられまして、その市町村の現場から、先ほど申し上げました、接道規制の問題、住宅用地特例の解除の問題、代執行の問題、こういった御要望をいただいているということでございます。
○高橋(千)委員 この間、空き家法を二〇一四年に改正してから、特定空き家に指定され、除却や修繕などがされた空き家等が一万九千五百九十九戸、特定空き家ではないが管理不全として市町村の取組で除却や修繕がされた空き家が十二万二千九百二十九戸というのは、市町村が、当初、法律ができたときは、非常にハードルが高いよということが議論されていたと思うんですが、その中で非常に頑張ったと私は思っております。そういう中で要望があったというお話だったと思うんですが、市町村だけではなかったんじゃないかと思うんですね。
ちょっと話を進めていきたいと思うんですが、住生活基本計画に明記した成果目標、これは居住目的のない空き家数を令和十二年時点で四百万戸程度に抑えるというものであります。
これは資料の一にある、居住目的のない空き家は二〇一八年現在で三百四十九万戸、二十年間で約二倍になり、令和十二年度には四百七十万戸程度に増加するおそれがある、これはさんざん言われていることです。
それで、空き家対策の小委員会で、では、この四百七十万戸の差額を減らすのが目的ですかという質問が委員からあって、減らすということ自体、何だろうかみたいな話になって、でも住生活基本計画に書いているから、これが取りまとめに収まった経過だと思うんですね。
では、この目標を四百万戸とした意味と、法案との関係はどういうことでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 住宅・土地統計調査で、そのトレンドでいけば、令和十二年には四百七十万戸と増えるという見通しが示されました。
これに対して、令和三年三月の住生活基本計画では、これを七十万戸ぐっと抑えて四百万戸程度に抑えるという目標を掲げたところでございます。
御質問は、その意味、根拠は何なんだということかと思いますけれども、意欲的かつ簡明な目標値を掲げることによりまして、一つは、空き家問題の重要性を広く訴えかけるということ、それから二番目に、国土交通省の政策努力はもとより、他の行政機関、国民の皆様、事業者など幅広い関係者の御理解と御協力の下で空き家対策を推進しよう、こういう意味で、分かりやすい簡明な目標としたものでございます。
ということで、この法案は、予算や税制、本法案以外の様々な措置などと並んで、四百万戸という目標の実現に向けた様々な政策努力の一翼を担うものである。いろいろな施策を総動員して四百万戸を達成する、今回の法案はその一翼を担うものである、こういう位置づけでございます。
○高橋(千)委員 簡単に言えば、分かりやすい数字ということではなかったのかなと思います。
何でこういう質問をしたかといいますと、数字がいっぱい出てくるんですよ。八百四十九万戸とよくおっしゃるけれども、賃貸なり売却なり目的があるんだったら、それ自体が問題なわけじゃないわけで、どこにターゲットを指しているのかというのが分からないから何度も聞いていました。
たくさんの数字が出てくるので、どこになのかというのを一言でおっしゃることはできますか。局長、お願いします。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、空き家の数字に関しましては、住宅・土地統計調査の中でも、八百四十九万戸という数字もあれば、居住目的のない空き家ということで三百四十九万戸という数字もございます。
私どもが常に注目をしております数字は、空き家の全体の数というよりは、居住目的のない空き家の数字の三百四十九万戸でございます。その理由は、居住の目的がないということは、適正な管理がされないおそれが非常に高い。そして、最終的には空き家の所有者の責任になるとは思うものの、近隣に御迷惑をおかけするような、そういう状態になるおそれがある。
そういう空き家の発生は極力抑制するべきであるし、政策的に対応も必要である、こういう観点から、空き家の中でも、居住目的のない空き家というものを注視するようにしているということでございます。
○高橋(千)委員 まず確認しました。
そこで、空家等活用促進区域を創設し、建築基準法の接道規制や用途規制を合理化するといいます。そもそも、建築物の敷地は幅四メートル以上の道路に二メートル以上接していなければならない。この規定は火災などの避難とか安全確保などのために設けられたものだと思いますが、それを確認したいのが一つ。
それから、現行基準法でも緩和できる規定があって、今回、特例を設ける必要はないと考えますが、伺います。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
まず、一点目の建築基準法の接道規制の趣旨でございますけれども、建築基準法におきまして、建築物の敷地が幅四メートル以上の道路と接道していることを求めておりますのは、災害時の避難、消防活動の場の確保などの市街地の安全性を確保するためということで求めているものでございます。
二点目のお尋ねでございます現行の制度との関係でございますけれども、これまでも、建築基準法に基づきまして、特定行政庁の個別の審査を経て特例の許可を受ければ、安全性等の確保を図りながら、接道義務を満たさない空き家というものの建て替えは可能ではございました。
しかしながら、現行の仕組みでは、許可要件が明らかでなく、個別に審査を受ける必要がありますために、事前には、許可を受けられるかどうかということの予見可能性が低いという問題がございます。また、建築審査会の同意が必要ということで、数か月の期間を要する、こういう課題も現行の仕組みにはございます。
そこで、今回の法案で創設いたします空家等活用促進区域におきましては、市町村がその区域を設定いたします際に、特例を受けられるか否かの見通しを持てるようにする、こういう考え方に立ちまして、あらかじめ安全確保のための要件を明示し、この要件に適合すれば建築審査会の同意を要せずに特例を受けられる、こういう仕組みにしているところでございます。
これによりまして、安全性等の確保を前提に接道規制の合理化をいたしまして、空き家の活用を促進してまいります。
○高橋(千)委員 最初の質問にも関係するんですけれども、第三回の小委員会、昨年の十二月二十二日、ここで委員長代理がぽっと、空き家で使えない理由の中に、接道していない空き家が結構あると思うので、こういった問題をどういうふうに解決していくかと発言をされたんですね。
次回の第四回、一月三十一日、最後の取りまとめがされた小委員会で、取りまとめ案にぽっと接道、用途規制の合理化と入っていた。これを見た委員が、これはどう見たって法律事項だろうと発言されて、事務局が、基本的には法改正を視野に入れながらと答えたわけです。それから最終的な詰めをしますと。
つまり、今年の一月の時点で、法律改正するということが念頭にまだなくて議論していたのかと正直思ったわけなんですよね。つまり、こういう経過があるので、合理化を求めた発言だったわけではないと思うんです。委員会として、接道規制などの緩和が必要だという共通認識の下に出てきたわけではないと私は思うんですね。
実際に、このとき委員長代理が例として挙げたのは、つるおかランド・バンクの取組に学んだらいいんじゃないかということをおっしゃっている。だけれども、このつるおかランド・バンクは、それこそ所有者不明土地のときにも参考になったんですけれども、空き家の持ち主の相談に乗りながら、用地の取得と売却を通して、結局、セットバックとか道路を拡幅する方向で活用している事例なんですよね。だから、要するに、狭くていいという議論ではないはずなんですよ。
ですから、今回の取りまとめに事務局として入れて、結果として法案として出てきたんですが、ちょっと前のめりじゃありませんか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
接道規制の合理化に関する御議論は、先ほども御答弁申し上げましたとおり、地方公共団体の空き家対策の現場において非常にネックになっているというお声が以前からあったところでございます。その現場からのお声は、空き家対策に取り組んでおられる市町村の団体である協議会などを通じまして、私どもとしては承ってきたところでございます。
そういった公共団体の御意見も参考にさせていただきながら、また、先生今御指摘の審議会の委員の先生方の御意見も踏まえて、最終的に、今後の対策としては重要な取組ではないかということで、審議会、検討会の答申の中に盛り込まれたということでございます。
それを踏まえて、今回、法制化が可能なものにつきまして今回の法案に盛り込ませていただき、御提案をさせていただいているという経緯でございます。
○高橋(千)委員 ですから、委員長代理が、そういう意見があるのでと言っているわけでしょう。言っていて、結局、議論が煮詰まっていないわけですよ。詳しく検討しますといって法律を出しちゃっているわけですから。それは自治体にしてみれば、そういう要望は出たかもしれません。だけれども、それをどうしたらできるのかということを、いきなり合理化ということに持っていってしまったというやり方は前のめりじゃないかということは重ねて指摘をしたいと思うんです。
結局、このことを考えると、管理不全空き家があって、このままでは特定空き家になってしまうから早めに対応をしようということで、そのために代執行がしやすい権限、費用徴収の仕組みを設けるのは私は必要だと思うんです。その話をしていると思ったら、活用の話と入り組んでいるわけですね。
空家等活用促進区域は、こういう管理不全の空き家や特定空き家が、極端に言えば、その中にない場合であっても、空き家だけれども持ち主がいて、売ってもいいよとか、そういう程度の話のときに、まちづくりや観光資源など、積極活用していきましょう、こういうことが可能だという理解でよろしいですね。
○斉藤(鉄)国務大臣 空家等活用促進区域は、市町村が空き家の活用を重点的に行おうとする場合に、これを支援するための仕組みであります。管理不全空き家や所有者不明の空き家などがあるかどうかにかかわらず、空き家やその跡地の活用が必要と認められる一定の区域について設定できることとしております。
それぞれの地域には、まちづくりや観光を始め、移住、定住、二地域居住、それから福祉増進、コミュニティー維持など様々な空き家活用ニーズがございます。こうしたニーズに応じて空き家を積極的に活用するため、空家等活用促進区域を活用いただきたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 はっきりお答えいただいたと思います。このままでは外部不経済、周りに影響を与えるよという管理不全空き家と、今の空き家をうまく活用しようというまちづくりの問題と、別のこと、それぞれのことを提起しているんだと思っております。
もちろん、まちづくりの中で、例えば子育て支援センターですとか、まちの駅ですとか、いろいろな取組をしているのを承知をしております。それ自体を否定しているわけではないんです。
問題は、市町村は、空家等活用促進区域に関する事項を定めるときは、あらかじめ区域内の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずると条文にあります。これはどのような仕組みを考えているんでしょうか。ただその区域の代表に了解を取ったり、それでいいよというわけにはいかないと思うんです。
それから、区域内というのは、まちづくりの一端なわけですから、区域の隣の人とか、その町の人たちとかは関係ないというわけにはいかないと思うんですね。区域外からも意見を聞くべきと思いますが、いかがでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 住民の意見を反映させるために必要な措置の具体的な内容ですけれども、各市町村がそれぞれの実情に応じて講ずることとなりますけれども、例えば、公聴会の開催やホームページなどにおける意見募集などを想定しております。
空家等活用促進区域を設定した場合、区域内においては、空き家の活用を促進するための用途規制の合理化など、現行法令とは一部異なるルールが適用され、区域内の住民の方々が影響を懸念される場合もあることから、区域内の住民を対象として意見を聞くこととしています。
ただ、これは、必要に応じて区域外の住民を対象に意見を聞くことを妨げるものではなく、市町村の判断で、例えば、区域設定予定の地域の周辺の地域の住民を意見聴取の対象とすることなども考えられるところです。
国土交通省としては、市町村が円滑に空家等活用促進区域を設定できるよう、住民の意見を反映させるために必要な措置の例などを手引などでお示ししたいと考えております。
○高橋(千)委員 妨げるものではないという答弁でありました。もう少し頑張って言ってくれればありがたいかなと。
やはり、用途規制という意味での影響というのはおっしゃるとおりだと思うんです。だけれども、それが開発につながった場合に、当然、周辺の住民に意見を聞かなかったら駄目なわけですから、そのことを、今の大臣答弁を生かして、しっかりお願いしたいと思います。
そこで、資料の二は今年一月二十日付の朝日新聞です。
「民泊業者の登録要件緩和へ」とあります。旅館業法の規制の対象外として宿泊を業として認める民泊は、家主が不在又は近くにいない場合も多くて、これを補うものとして、宅建やマンション業者の資格あるいは実務経験を必要とする管理業者に委託をする、そういうことをしてきたわけですが、今回、記事にもあるように、これを要件を緩和するんだと。しかも、当然、空き家対策としても民泊は期待されていると思うんですね。
そこで、質問は、空き家を民泊に活用という取組は既に進んでいると思いますが、認識を伺います。また、登録要件の緩和については、規制改革会議で議論してきていると思うんですが、実施が決まっているということでしょうか。
○秡川政府参考人 民泊法に基づく届出住宅の件数なんですけれども、本年の三月の時点で約一万九千件となっています。
このうち、いわゆる空き家を含みます随時居住の用に供される家屋につきましては約四千四百件ということでございます。
○長橋政府参考人 登録要件の緩和に関してお答え申し上げます。
空き家を民泊として活用するような場合は、家主不在型となりますので、住宅の管理を住宅宿泊管理業者に委託する必要がございますが、現在、運用としては、住宅宿泊管理業者には、例えば、契約の実務に二年以上従事したという経験とか、又は宅建、宅地建物取引士の資格を持っているということを求めて運用しておりますけれども、そうした要件だけでは地方において住宅宿泊管理業者の確保が難しいという、関係の業界から要望がございました。
空き家をこれから民泊として活用するときに、ちょっと管理業者がなかなかいないという要望がございまして、政府内で検討し、昨年六月に閣議決定された規制改革実施計画におきまして、所定の講習の受講修了者も新たに要件として認めるなどの具体的な方策の検討を行うということとされたところでございます。
このため、国土交通省としては、所定の講習の受講を修了した者も要件を満たしているとして追加するための関係省令等の改正を今検討しているところでございまして、現在、そのパブリックコメントを実施しているところでございます。
今後の予定としては、夏頃までには、講習実施に向けた省令改正の公布、施行を行って、講習実施機関の公募を行っていきたいというふうに考えてございます。
○高橋(千)委員 夏頃にはもう要件緩和が決まるということなわけですよね。私はさっき市町村からですかと言ったんですが、やはり業界団体から緩和の要望があったわけですよね。
活用したいということで、対象となる人がいないんだから要件緩和だって、どこまでも、民泊自体が、旅館業法から飛び出して、要件緩和をして認めてやってきたわけですから、先ほどの接道規制と同じように、やはり安全ということや、なぜそこに規制があるのかということに立ち返らなければ、要望があるから何でもいいというわけにはやはりいかないと。できる限りそこはとどめていただきたいと思うんですね。ですから、私はここについては緩和することには反対であります。
市町村の要望に応えていろいろやってきたということもあるんですが、今回の法案で市町村の権限がすごく高まって、そのことで、高まっていい場合と、しかし、それに応えるだけのマンパワーがないという、大変な苦労、苦悩、不安というのはあるわけです。そこに対してのしっかり支援をお願いをして、残念ですが、時間がないのでこれで終わります。