2023年4月4日 衆院国交委員会
日本共産党 高橋千鶴子議員
ー議事録―
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の参考人の皆様、御出席いただいて、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
四人の皆様がいずれも、審議会の委員だったり、あるいは二〇一四年の法改正の際に参考人として出席をされたり、この間の法改正の経過をよく御存じと思われます。
そこで、四人に同じ質問をさせていただきたいんですが、二〇一二年の笹子トンネル事故を受けて、四兆円程度の更新事業が必要ということで、債務返済期間を十五年間延長して、二〇六五年までとしました。元々は、四十五年間、二〇五〇年までで確実に債務返済可能なのかということ自体が議論されたことだと思います。
当時の審議では、更新費用の必要性については想定していたと答弁がありました。また、そもそも審議会自身が、二〇〇二年以降、適切な投資を行い、修繕を行うべきだ、そうしなければ近い将来大きな負担が生じるということを繰り返し警告をされていたと思います。
なぜこの警告が無視され、盛り込まれなかったのか。二〇一四年の改正でも十五年延長という、このやり方では、まだ反省が生かされていなかったのではないかというふうに思いますが、御意見を伺います。
○上岡参考人 これは、具体的な真の事情というのは私も推定することはできませんけれども、同じ財布の中から新設も更新も修繕もするということになるとすれば、やはりその配分の偏りがあったのかな、どうしても新設優先という背景があったのではないかというふうに思っております。
○小林参考人 インフラの劣化とか修繕の必要性というのは、抽象的な議論は随分昔からやっておりました。ところが、それが本格的にきちっとデータに基づいてやられるようになった。それは先進国の米国ですら二十一世紀に入ってから、そういうことを先ほど申し上げました。
日本も米国の動きというのを横目で見ながらいろいろな検討を続けてきたんですが、笹子の事故がやはり大きな引き金になって、そこから急ピッチでメンテナンスのサイクルというのを導入してきて今の制度的な基盤ができ上がった、こういうふうに思っています。
二〇一四年の時点でどの程度劣化が予測できたか。その時点で目に見えて悪い箇所、それは日常的な点検を通じて現場は分かっていた、それを積み上げて先般の二〇一四年の更新の需要を算定した、こういうことですが、その後、いろいろデータを蓄積してきまして、やはりインフラ構造物の劣化というのは元に戻らない、どんどんどんどん進んでいくものだろう、そういう認識が出てきて今般の法改正に至ったと。それは私自身としては、学会としても極めてこれは自然の流れだった、そういうふうに理解し、評価しているところです。
以上です。
○朝倉参考人 様々な経験を経て、点検をきちっとやって、それに基づいて更新事業を進めるというこのスキームが採択され、今、その一回目のサイクルが動いているという、そういう状況だろうと思います。ようやくそこまで来たというふうに言えるかもしれません。
ですので、今後は点検の精度を、クオリティーを更に高め、よりよい更新事業、更新の計画というのを、より今度は精度、アキュラシーの高い計画を作っていって運用するということが重要なんじゃないかなというふうに感じます。
以上です。
○石田参考人 そういう議論が行われたということは事実でございます。私自身もそういう議論の輪の中に参画をさせていただいておりました。当時、正確に覚えているかというと余り自信はないんですけれども、抽象的な必要性とかは議論しておったと思います。
ところが、やはり国民の皆さんに負担をお願いするというのは、これは非常に大きなことでございまして、そのことに対して、この箇所をどうする、その危険度はどれぐらいのものであるかという、そういう明白なエビデンスがないということもあって、当時、私は関与しておりませんけれども、そういう最終的な意思決定の場でどういう議論がされたか知りませんけれども、やはり、想像だけですけれども、自信がなかったんじゃないかなというふうに思います。
その自信を持って、どううまく政策決定していくか、そのための基盤条件をどう整えていくかということに関しては、我々もちょっと貢献が少なかったかなという、そういう反省はしておりますけれども、それを今こそやはり逆転させて積極的にやっていく、そういう出発点の一つが今般の法律改正案かなというふうに私自身は考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
二〇一四年のときに更新の費用の見積りというのが四兆円だったと思います。それが諸物価の高騰などで今年一月末では五兆四千億円ということで膨れ上がっているわけですよね。
それが、トータル百年近く延ばしたにもかかわらず、NEXCO三社、首都高、阪神のそれぞれの高速会社の試算した更新費用の合計は、五百四十四キロ、一・五兆円になるわけです。そうすると、年間の維持管理費が全体で一・三兆円と比べても小さいのではないかと思うんですね。
先生方が今御答弁いただいたように、抽象的で全部を見積もるのは難しかったと、もし、おっしゃるのであれば、私はそれでもいいと思うんです。つまり、分かった時点できちっと国会に諮るというふうにして、四十五年です、六十年です、百年ですみたいに、そこで区切って、全部終わりますよというふうな説明の仕方がいかがなのかな、このように思うんです。
ちょっと時間の関係でお二人に、小林参考人と朝倉参考人にこのことを伺います。
○小林参考人 前回の二〇一四年の維持更新費が非常に、四兆円になったという、これは高速道路が建設された当時のいろいろないきさつが多分あったんだろう、こう思います。
やはり、最初の東京オリンピック、それに合わせて非常に急いで造った、そういうところもありますし、いろいろな技術基準、技術標準もなかった時代のインフラですから、やはり更新とか維持補修には相当費用がかかった、こういうことです。
その後、いろいろな地震とか災害の経験を踏まえて、いろいろな構造物の技術基準も進歩してきましたし、先ほど申しました予防保全というのか、予防的に直すという話を導入すれば、かなりの程度、維持補修、修繕費を低減させることができる。そういう不断の努力を続けていくことによって、先ほどから出ている、やはり料金の負担を下げる努力をしていく、そういうモードに入ってきたんだろう、そういうふうに思います。
○朝倉参考人 提案されている枠組みというのは、五十年を一つの期間として、その中で点検をやったもの、それで明確になったもの、それを更新事業の計画に反映して、そしてそれを進めていく。それは、更に十年ぐらいたてば、それを更にまた見直すといいますか、新たに追加するものをその中に加えてやっていくという、そういうスキームで動いているというふうに思います。
もちろん、点検するものについては、日々のメンテナンスの中で発見される非常に重大な欠陥もあるかもしれないし、また、数年に一回、五年に一回程度と思いますけれども、詳細な点検をして、その計画、場合によってはそこで発見されたものを更新事業に反映していく、それが十年に一回、新たに計画に追加されて運用されていくという、そういうスキームであろうというふうに認識しておりまして、それはおおむね適切な枠組みなのではないかというふうに理解しております。
以上です。
○高橋(千)委員 問題は、その更新事業が五年、十年でその都度見直して、それが適切であるかどうかを判断するのが、国会できちっと議論できればいいんですが、裁量が任されているんじゃないか、そのことが非常に疑問に思うわけなんです。
そのことを朝倉先生にお答えいただきたいのと、石田先生と上岡先生に、ちょっと一緒に聞いてしまいますけれども、やはり、さっき私が更新の費用が前回よりも少ないけれどもと言いました。それと併せて、今回は更新、進化が入っておりますので、この進化の中で、新規の道路建設も含めて、かなり幅広いものを含んでいるんじゃないか。そうすると、なおさら見えなくなってしまう、それが裁量を任されてしまうんじゃないかというふうに思うから聞いております。これについてどう思うのか。
上岡先生は先ほども、新設も更新も修繕も一つの財布の中で、やはり新設が優先されてきたと御指摘されたのは、本当に私もそのとおりだと思っています。
そういう意味で、きちっとそこが分からないままになっているというのが気になるんですけれども、お答えをお願いします。
○朝倉参考人 十年に、新たに見つかったといいますか、点検の結果、明らかになった大規模な修繕が必要な箇所を次の計画にどういうふうに反映していくかということについては、これは非常に慎重にそのことを判断して計画に反映していくべきというふうに思うところであります。
また、それはしかるべき議論を経てそのことがなされるということは、あってもいいことなのではなかろうか。それがどの場で議論すべきかということについては、ちょっと私はそこまで言及する立場ではございません。
以上です。
○石田参考人 石田でございます。
情報公開とか公の場でどう議論を進めるかということだと思っておりまして、残念ながら、最近、国土交通省だけではないかも分かりませんけれども、そういうのが少し衰えているといいますか、陰ってきているなというふうに思わなくはないです。
非常に具体的に申し上げますと、道路公団の民営化のときにオープンにされていた情報を道路局にリクエストしますと、いや、これは非公開ですというようなことが私の身にもございましたので、そういうオープンネスということをやはりきちんと、こういう大きな負担を国民の皆さんにお願いするわけですから、そこはきっちりしないといかぬのかな。
そういう努力がまだまだ足らぬのじゃないかなというふうに思っている次第でございます。
○上岡参考人 先ほど、例えば更新費用五・四兆とかいう数字がありましたが、恐らく担当省の方にしてみれば、もっとやればやりたいというところもあるんじゃないかと思いますが、これは更新、修繕にしても、やはり優先度があると思うんですね。
まず、人命に関わるようなこと、それから、やればその便益が高まるようなこと、それから、これはやればやるにこしたことはないというようなレベルがあると思います。その辺の評価をどうやってオープンに公正にできるかということだと思います。
個別の箇所ごとに国会で審議するわけにいかないですから、それはちゃんとオープン、公正な機関を整備して、それから、先ほどありましたように、情報公開というような点、それをオープンにした上で公正中立に評価するというような枠組みを設けるということが必要ではないかと思います。
○高橋(千)委員 それぞれ貴重な御意見をありがとうございました。
石田先生の情報公開の問題点や、上岡先生は最後に、評価をどれだけオープンにしていくかということ、まさにそのとおりだなと思って聞きました。国土審議会の部会のホームページなども、最近のものはほとんど議事録も載っておりませんし、そういう意味では初歩的な情報公開がそもそもされていないじゃないかということを非常に思うわけです。
そういう意味で、やはり長いスキームを取ったら、その間、あと何を入れ込んでいくのかというのが逆にかなり自由度が広がって、かつ我々は分かっていないということはやはり避けるべきだと思いますので、これは次に政府に対しても質疑していきたいと思います。
ありがとうございました。