国会質問

質問日:2023年 4月 27日 第211国会 東日本大震災復興特別委員会

宮城県の広域防災拠点について

防災拠点の移転なぜ

高橋氏、宮城県の計画追及

衆院復興特委

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=4月27日、衆院復興特委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は4月27日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、宮城県の広域防災拠点について質問しました。

 現在、各地域で広域防災拠点整備が進められていますが、同拠点の定義や根拠法はありません。宮城県は仙台市宮城野区のJR貨物ターミナル駅を同区内の別の場所に移転し、同駅跡地に拠点を整備するとしています。

 しかし、貨物ターミナルは移転先での工事などが必要なため、完成が3度延期され、事業費も増大。拠点整備地に活断層があり、液状化の危険なども指摘されています。

 高橋氏は「移転させてまで整備する必要があるのか」と質問。国土交通省の石原大審議官は、基本構想前からJR貨物が移転を考えていたと答えました。

 宮城県の拠点整備では、国の交付金(復興枠を含む)が充てられています。高橋氏は交付金の面積要件が50ヘクタール以上だと確認させた上で、拠点の面積は17ヘクタールだと追及。国交省の五十嵐康之審議官は、拠点の面積と宮城野原総合運動公園の15・4ヘクタールを合わせた33ヘクタールで申請されており、50ヘクタール未満だと認める一方、「拠点に必要な機能を備えている」との認識を示しました。

 高橋氏は、拠点の近隣で計画されている仙台東道路が国により重要物流道路に指定されているとして、「国が一体となって進めている。市民の声が置き去りにされているのではないか」と指摘しました。

(「しんぶん赤旗」2023年5月11日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、広域防災拠点について質問します。
 まず、南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画が二〇一五年三月に出されておりますが、ここに盛り込まれた大規模な広域防災拠点とはどのようなものなのか、日本海溝・千島海溝型地震についても同様の検討がされているのか、伺いたいと思います。
○五味政府参考人 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画における大規模な広域防災拠点につきましては、南海トラフ地震が発生した場合に、都道府県が全国の防災関係機関から災害応急対策活動に係る広域応援を受けるために設置する防災拠点のうち、救助、救急、消火活動等、医療活動、物資の受入れ、集積、分配を総合的かつ広域的に行うものをいいます。
 また、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震につきましては、現在、具体的な応急対策活動に関する計画の策定に向けて検討を進めており、同計画に大規模な広域防災拠点について記載する予定でございます。
○高橋(千)委員 まず、検討中だということが分かりました。
 広域防災拠点とは何かという国の定義や根拠法はないと言われております。二〇〇三年三月の、消防庁の広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会の報告書にその考え方が示されています。今質問した南海トラフのような大規模地震等に対する基幹的広域防災拠点は複数の都道府県にまたがるので、広域防災拠点の一つというふうに説明されています。
 そこで、東日本大震災を受けて、東北の各地で地域防災拠点とか防災拠点公園などが整備されてきたと思います。本委員会の視察でも、例えば岩手県久慈市の総合防災公園に行ったことがあります。ふだんは、サッカー場など、日常的に市民の憩いの場として利用されて、災害時は、一時避難所にもなるし、各地の応援隊が集積される、そういう場になっていると思います。広域防災拠点の必要性や整備の現状についてどのように認識しているのか、大臣に伺います。
○渡辺国務大臣 お答えいたします。
 東日本大震災からの復興に当たりまして、インフラ等の復旧のみならず、災害に強い地域づくりとして、復興交付金等を活用いたしまして、防災機能を有する公園や緑地の整備が進められてきたところでございます。
 これらの公園等については、平常時における公園や緑地としての機能のみならず、発災時においては、樹林による津波エネルギーの減衰、要するにエネルギーを減衰させること、また、津波による避難地、さらには救援、救護活動の拠点や、資材置場などの復旧復興支援の場であることなど、様々な機能を有する公園として整備が進められてきたところでありまして、これらの地域の防災性の向上に寄与するものと考えているところでございます。
○高橋(千)委員 質問すれば時間がなくなるので要望にしておきますけれども、広域防災拠点の定義というのを、今回ここで質問するまでに所管がはっきりしないし定義もないと言われましたので、是非、内閣府防災の方で位置づけていただきたいということを要望したいと思います。
 資料の一を見てください。今年二月二十五日付の河北新報です。「広域防災拠点 完成三二年度」とあります。仙台市宮城野区にあるJR貨物ターミナル駅を移転した上で整備する宮城県の広域防災拠点構想というのがあります。当初は二〇二〇年度完成の予定が三回延期され、二〇二九年度に移転が完了して二〇三二年度に整備完了の予定だと宮城県議会で村井知事が明らかにしたものであります。延期のたびに事業費も膨らみ、当初は二百九十五億円だったものが現在は総事業費三百二十四億円とされていますが、今後更に増えるのではないかと言われております。
 宮城県の広域防災拠点基本構想・計画が発表されたのは二〇一四年二月です。東日本大震災時の医療救援活動などの教訓を生かして検討してきたとしています。また、予算においても、社会資本整備総合交付金が充てられていますが、その中に復興枠がプラスされているのと、県費に対しても復興特別交付税が更に補填されております。
 宮城県の進める広域防災拠点について、復興庁の認識を伺います。
○岡本政府参考人 お答え申し上げます。
 今御指摘いただきました宮城県で整備が進められております広域防災拠点につきましては、大規模災害時に広域支援部隊の集結や全国からの支援物資輸送の中継あるいは災害医療活動の拠点等の役割を果たす目的で宮城県において整備を進めているものでありまして、二〇一四年度から、御指摘がありましたとおり、社会資本整備総合交付金の復興枠、それから、国土交通省所管でございますが、防災・安全交付金により支援を行ってきたところと承知してございます。
 現在は防災・安全交付金により引き続き支援が継続されており、今後、事業主体であります宮城県により適切に事業管理がなされるものというふうに承知しております。
○高橋(千)委員 もちろん、党としては反対をしています。ただ、結局十年以上遅れてしまって、まだ貨物は一個も移っておりません、そういう中で、いつ大きな地震が来るかも分からない。このやり方がどうなのかということが本当に問われると思うんです。県議会では、我が党のみならず与党会派からも意見が出るなど、問題が様々指摘されております。そもそも予定地に長町―利府線断層帯があり、震度六強の揺れや液状化の危険があるなど、多くの論点が出されておりますが、私は、JR貨物ターミナルを移転させてまで予定地に整備する理由について疑問があるわけです。
 資料の二枚目に地図をつけておりますが、下が今のJR貨物ターミナルで十七ヘクタール、広域防災拠点の予定地です。上が貨物ターミナルの移転先で宮城野区岩切地区、二十三ヘクタールと、今より広いところに貨物が移転することになります。この広域防災拠点の候補地となる前に元々JR貨物が移転を検討していたと聞きますが、事実関係を伺いたいと思います。
○石原政府参考人 お答えを申し上げます。
 仙台貨物ターミナル駅の具体的な移転計画につきましては、あくまでも宮城県の進める広域防災拠点整備事業を受けて検討されたもの、このように承知しております。
○高橋(千)委員 貨物のことを聞いています。予定候補地になる前に移転の話があったよ、でも断念したよということを聞いていますので、事実関係を伺ったということです。
○石原政府参考人 お答え申し上げます。
 現在の仙台貨物ターミナル駅といいますのが、構造上、短い荷役線にコンテナ車両を引き込んで、分割、併合して荷役をする、このような非効率な作業を強いられているということで、JR貨物としては、抜本的な機能強化を図りたい、こういう思いはありつつも、現在の立地のままではそれは困難だ、こういう認識は持っていたというふうに理解しておりますけれども、岩切への移転を具体的に検討していた、こういう事実はございません。
○高橋(千)委員 そんなことを聞いていません。岩切への移転なんて、ずっと後に決まったことです。この計画が起こってから聞いた。
 だから、貨物をどこかに移転したいなという思いがあったということは今おっしゃったので、事実ですね。
○石原政府参考人 お答え申し上げます。
 現在の立地のままでは機能強化を図ることは困難であったということについては認識を持っていた、そして、機能を抜本的に強化するにはどこかに移転するしかないというようなことは、これは、どこまでの検討というところを、検討の意味にもよりますけれども、JR貨物の中でも恐らくそのような一つの考えは出ていたということは、それは事実かと思います。
○高橋(千)委員 お認めになったと思います。
 宮城県の整備検討会の中で、県の後藤震災・企画部理事兼次長がはっきり言っているんですよ。第一回の検討会のときに、東日本大震災後、JR貨物でも移転を再度検討してみようという声があったと受け止め、この機会が宮城野原地区を広域防災拠点として整備していくタイミングだというふうにおっしゃっている。
 第三回のときには、現実的には、JR貨物用地の土地利用については過去二十年間に何回か浮上し、投資的な課題、都市的な制約などから実現できずに来た、貨物の移転がスムーズに進むのであれば、東日本大震災を踏まえながら、県、仙台市にとって貴重な使い方は広域防災拠点であろうと。
 つまり、順番が逆なんですよ、後づけなんですね。貨物を何とかしたいという要望が元々あって、そこに、あら、ちょうどいいわという話じゃないですか。第五回の検討会の中でも、宮城野原ありきではないかというのが委員の中からも上がっているんですよ、そういうことだと思います。今お認めになったので、ここは指摘だけにとどめます。
 JR貨物ターミナル駅の土地売買契約は、二〇一四年八月に百三十七億八千万円で契約済みです。うち九十六億四千万円は支払い済みであります。同年に県が行った大規模事業評価を見ると、用地費等だけで二百七十億円と見込んでおります。
 このJR貨物のターミナル駅は公共施設に当たるということで、公共補償であると県は説明しています。この公共補償が民間の財産に対する補償とどう違うのか、一般論で伺います。簡潔にお願いします。
○川野政府参考人 お答え申し上げます。
 公共事業における施設の用地移転補償につきましては、当該施設が、公共事業、すなわち土地収用法等により土地等を収用できる事業の用に供する施設である場合には、公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱に定めるところによりまして公共補償が行われるということでございます。鉄道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設につきましては土地収用法の収用適格事業とされておりますので、JR貨物の用地移転補償は一般的には公共補償が適用されるものと考えられます。
 委員御指摘の、民間の財産に対する補償と公共補償の違いについてでございますけれども、民間の財産に対する補償につきましては、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づきまして財産権に対する補償を行うものでございます。財産価値の正常な取引価格を評価し、補償することになります。一方、公共補償は、公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱に基づきまして、公共施設等の機能を現実に回復させることを目的として、そのために必要な費用を補償することになります。
○高橋(千)委員 機能を現実に回復すること、だから余計なものをつけちゃいけないとか、いわゆる災害でいうところの原形復旧に近いものだと思いますし、一定の時間による償却も控除してということが要綱には書かれていたかと思っております。今後の、時間が延びたことによって貨物の補填が今後追加されるのかどうかといったときに大事な基準になるのかなと思って伺いました。
 宮城県の広域防災拠点構想は、国交省の防災・安全交付金の広域防災拠点の機能を有する都市公園事業として採択されたと承知しています。
 社会資本総合交付金の都市公園事業だけであれば、二ヘクタール以上、事業費五億円以上といった要件にすぎません。広域防災拠点の機能を有するといった場合の要件はどのようになるのか、伺います。
 また、広域防災拠点となる貨物ターミナルの敷地は十七ヘクタールですが、隣接する楽天スタジアム、宮城野原公園総合運動場、国立病院機構仙台医療センターなどが一体として交付申請されていると聞いていますが、それで面積要件をクリアしたという理解でよろしいでしょうか。
○五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。
 宮城県の広域防災拠点に関する宮城野原公園については、防災・安全交付金の都市公園事業により支援を行っております。
 広域防災拠点の機能を有する都市公園の要件としては、災害が発生した場合において、災害復旧活動の支援拠点、復旧のための資機材や生活物資の中継拠点など、広域防災拠点の機能を発揮するもので、面積がおおむね五十ヘクタール以上のものとしております。
 なお、平成二十六年二月に作成された宮城県広域防災拠点基本構想・計画における広域防災拠点の区域には楽天スタジアム、仙台医療センターが含まれますけれども、都市公園としての採択要件の中では、仙台医療センターは含まない形で、都市公園の中の面積として評価をさせていただいております。
 以上です。
○高橋(千)委員 今の答弁、皆さんはお分かりになったでしょうか。おおむね五十ヘクタールとおっしゃったんですよね。だから、その要件を、十七ヘクタールでは余りにも遠い、単なる都市公園にはなるかもしれないけれども、そうじゃなくて、これを全部足したら四十三ヘクタールだと聞いておりますが、それでおおむね五十ヘクタールにしちゃった、そういうことじゃないですか。
○五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。
 宮城県では、宮城県広域防災拠点基本構想・計画において、東日本大震災を踏まえた防災性向上の必要性や広域支援の実態を踏まえ展開が想定される防災活動を基に、宮城野原公園で必要とされる面積を算定したものと承知しております。宮城野原公園としては全体で三十三ヘクタールでございまして、都市公園としての広域性、広域防災拠点に必要な機能を備えている計画であるというふうに認識しており、加えて、隣接する仙台医療センターと連携して広域的な防災性を向上させるものであると承知しております。
○高橋(千)委員 ですから、広域防災拠点としては、医療センターとは連携をするかもしれないけれども、それで都市公園の広域防災拠点ですというふうなやり方自体がおかしいと言っているんです。でも、さっき言ったように規定がないものだから、国交省の予算の交付金としては入っていくからいいんですという話になっているんですよ。そんな曖昧なことで国費の支出がよろしいのかということを指摘したい。これは改めて明らかにしていきたいなと思うんです、もう一つ聞きたいものですから。
 宮城県の広域防災拠点整備検討会議で、二〇一三年十一月二十日、五回目の会議において唐突に、つまり、五回分を読みましたけれども、一度も出てこない言葉が唐突に出てきた。それが仙台東道路です。細かい話にそのときはなっていて、アンダーパスが高さが足りないから消防車は通れないねとか、防災拠点の中を走る道路をどうしようかとか、そういう議論をしていたときに、事務局が、仙台東道路の関係もあるのでこれを含めて検討すると述べたわけなんです。
 仙台東道路というのは今も調査中で、ルートは決まっておりません。だけれども、国交省は、国際海上コンテナ車両向けの特別に許可する重要物流道路に既に指定しているんですね。おかしくないでしょうか。
 広域防災拠点と仙台東道路の関係について伺います。
○丹羽政府参考人 お答え申し上げます。
 仙台東道路でございますけれども、仙台市中心部と沿岸部を結ぶ高規格道路の調査中の路線でございます。仙台市東部地域の渋滞緩和、また仙台駅と高速道路網とのアクセスの向上を期待している道路でございます。
 仙台東道路につきましては、平成三十年より計画段階評価の手続に着手しておりまして、現在、地域の現状、課題、この道路が有すべき機能などの検討を進めているところでございます。委員御指摘の広域防災拠点とのアクセス機能につきましては、非常時における広域防災力の機能確保を図る観点から、計画段階評価における政策目標の一つに位置づけまして検討を行っているところでございます。
 国土交通省といたしましては、引き続き関係自治体と連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 宮城県が決めるものとかいいながら、国交省が、セットで取り組んでいることだと。さっき言ったようにルートは決まっていないわけですよ、だけれども一体でやるんだということですよね。
○丹羽政府参考人 お答え申し上げます。
 今まさに調査中でございまして、アクセスするポイントとして広域防災拠点が一つ考えられるというところでございまして、どういうことになるのかは今後の展開によるかと思います。
○高橋(千)委員 続きは国交委員会でやります。
 宮城県出身の中野正志元参議院議員が二〇一八年四月十日の国交委員会で、仙台東道路が物流、観光、復興に必要だということを言って、新規事業化はいつかと質問しています。それに対して当時の石川道路局長は、仙台東部地区におきましては、仙台貨物ターミナルの移転跡地に広域防災拠点の整備が形成されるなど、沿岸部の高速道路利用を念頭に置いた新たな開発計画や地域づくりが進められていますと、聞かれてもいないのに防災拠点があるのでと答弁しているんです。
 翌年の二月三日、仙台市内で仙台都市圏の将来を考えるシンポジウムが開催されて知事や市長も出ていますが、仙台東道路の実現へ共に歩むとプレゼンをしたのは国交省の当時事務次官だった森昌文氏です。森氏は、地方整備局のときに仙台西道路を手がけ、それからNEXCO東日本に出向して、現在は総理補佐官であります。こういう経歴を持つ方が一緒になって進めている。
 国会で質問され、やりますと言って、国交省も肝煎りで進めている、こういう中で市民の声が置き去りにされているのではないか、このことを指摘して、今日は終わります。

2023年4月27日 東日本大震災復興特別委員会 提出資料

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