水道行政 移管するな
高橋氏 厚労省に「歴史的意味」
衆院連合審査会
衆院厚生労働・国土交通両委員会の連合審査会は4月26日、厚労省所管の水道行政を国交、環境両省に移管する法案の質疑を行いました。日本共産党の高橋千鶴子議員は、同法案はコロナ感染症対策の強化を理由としているが、「水道と感染症には歴史的にも深いつながりがある」として、感染症対策に集中するのなら、国交省などへの移管ではなく、増員を要求するのが筋だと主張しました。
加藤勝信厚労相は「感染症対応能力の強化の観点から増員を図っている」と答えるだけでした。
高橋氏は、水道法第1条が「清浄にして豊富低廉な水の供給」や「公衆衛生の向上と生活環境の改善」を目的としており、厚生労働省が60年間所管してきた意味がここにあるとして、国交省などに移管後「この条文に責任を持つのはどこか」と質問。加藤厚労相は「水道法第1条は改正せず目的は変わらない」としつつ、国交省が水道整備、管理行政、環境省が水質、衛生業務を分担すると答えました。
高橋氏は「水道行政を厚労省が所管していたゆえんを考えれば、二つに分担すべきではない。『水は生命の源』(水循環基本法)で、低廉さと水質維持は欠かせない。公共事業としてだけでなく命の水としてとらえるべきだ」と主張しました。
(「しんぶん赤旗」2023年5月2日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
二〇一八年の水道法のときは厚労委員として質問しましたが、あのときも加藤大臣でした。私は翌年から国交委員会に移ったんですが、まさかこんな形で戻ってくるとは。本当に驚いております。
昨年九月の新型コロナウイルス感染症対策本部決定により、水道事業が国交省と環境省に移管することとされました。連休明けにも審議される予定の日本版CDCに集中するためといいますが、なぜそれで水道が移る必要があるのか。水道と感染症は歴史的にも深いつながりがあるはずです。
そこで、現在、厚労省で水道事業を担当している職員は何人で、そのうち感染症対策部に移る方がどのくらいか。当然、厚労省から国交省と環境省に出向する職員も出ると思いますが、どうなるのか。お願いします。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
まず、現在の職員数ですが、今月一日現在の定員で申し上げますと、医薬・生活衛生局水道課に所属している三十五名、これが現在の数字になります。
令和六年四月一日時点にどうなるかという点でございますけれども、国土交通省、また環境省に移管されるに当たっては、令和六年度組織・定員要求の過程で具体的に検討、決定されていくことになると考えており、現時点でその見込みをお答えすることは困難ではございますが、必要な体制を確保できるよう関係省庁と取り組んでまいりたいと考えておりますし、また、業務移管が円滑に行われるよう、移管当初から移管先省庁における事務が適切に行われるため、例えば、職員の実配置において、二省から求めがあれば、厚生労働省の職員を出向させることも含めて、必要な方策を二省とともに検討したいと考えております。
なお、感染症対策、感染症対策部についてですが、これは本年度中の発足を予定しております。来年度の定員等につきましても、同様に、来年度の要求過程において具体的に検討、決定されていくものと考えております。
○高橋(千)委員 いずれにしても、三十五名しかいないのを、二つの省庁と、また感染症の方にも振り分けることになるかと思うんです。これは、議論をずっとされてきたスリム化とはやはり違うと思うんですね。
これまでも、部をどこかに移管しても、結局出向しているという状態がございます。やはり、厚労省のスリム化が目的ならば、前から議論されていた厚生と労働を分けるべきであって、感染症対策に集中するならば、きちんと増員要求をするのが筋ではないかと思いますが、厚労大臣に伺います。
○加藤国務大臣 前の厚生労働委員会に戻ってきたような気持ちで、大変うれしく思っております。
その上で、単純にスリム化という、お言葉をどう使っているかあれですけれども、今回は、まずは、生活衛生等関係行政の機能強化、充実を図り、また、それによって厚生労働省また厚労大臣の業務が軽減されることによって、感染症対応により注力することが可能となり、感染症対応能力の強化に資するというふうに考えているところでございます。
委員御指摘のように、厚生部分と労働分野の分割、いろいろなところで御指摘をいただきますが、一緒になったのが平成十三年度でありますから、もう二十年以上の中において、介護、福祉のサービス基盤強化と人材の確保、あるいは障害における福祉サービスと雇用の連携、こういった様々な施策が進んできたところでありますし、また、省内の若手において厚労省改革を御議論していただく中においても、やはり、ここまで積み上げてきた成熟した一体的な連携が分割によって後退し、政策の推進スピードが遅くなってしまう、国民に十分な価値を届けることができない、こういった認識もお示しをしていただいているところでありますので、引き続き、一緒になって、更に付加価値を高くしていく必要があると思います。
一方で、感染症対応能力の強化の観点からは、業務改革を進めながら増員要求を行い、必要な人員の確保を図っておりまして、令和三年度から五年度の中において、厚生労働省本省内部部局においては二百五十一人の増員を図ったところでございます。
引き続き、時代に応じて要請される行政課題に対応するためには厚労省の組織そのものも不断に見直しをしていき、国民生活に密着した行政分野を担っておりますから、それに必要な人員確保にも努力をしていきたいと考えております。
○高橋(千)委員 必要な人員確保というお話がありました。増員は当然であります。そして、それがほかの部署にしわ寄せが来るというだけではやはり駄目ですので、職員の、業務改善という形で増員をしていただきたいとお願いしたいと思います。
それで、先ほど田中委員も触れましたけれども、水道法の第一条には、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することが目的とあります。私は、本当は、この第一条こそが水道法を厚労省が所管する意味そのものだと思っております。
この第一条の意義は変わらないのか、また、どの省がこの条文に責任を持つのか、伺います。
○加藤国務大臣 まず、本法案において水道法第一条を改正するものにはなっておらず、したがって、同条文の意義も変わるものではないと考えております。
その上で、国土交通省と環境省が、それぞれの分担に基づき、協力して水道整備、管理行政を遂行し、清浄にして豊富低廉な水の供給を図るということで、公衆衛生の向上また生活環境の改善に寄与していくものと考えております。
○高橋(千)委員 昨日聞いたときは、一元的には国交省だと聞いたんですが、違うんですかね。
○加藤国務大臣 今回の役割分担は、社会資本整備や災害対応に関する専門的な能力を有する国交省に水道整備、管理行政は移管する。また、水質基準の策定等の水質、衛生に関する業務については、環境中の水質、衛生に関して専門的な能力、知見を有する環境省にそれぞれ移管する。そして、それぞれ移管された省庁においては、今申し上げた水道法第一条を含めた、こうした条文あるいは目的を達成するために、それぞれその分野において担う事業をしっかり行っていただく。こういうことであります。
○高橋(千)委員 やはり第一条というのは物すごく大事なものですので、共管だというのは分かるんですよ、だけれども、その一条の前半はどっちで後半はどっちみたいな、そういうのでは駄目なんだということが言いたかったわけなんです。ですから、やはり、本来、この条文が厚労省にあったゆえんではないかということをあえて指摘をさせていただきました。
そこで、実は、国交省が議論をしてきた水循環基本法の前文には、水は生命の源との規定があります。まさにその精神でこれから頑張っていく必要があるかなと思っておりますが、耐震化とか災害対応とか公共事業という位置づけだけではなくて、命の水としての水質を維持すること、また低廉であることも要求されると思います。
今、各地の地方自治体で、人口減少や管路の経年劣化などにより四割も水道料金を値上げせざるを得なかったなどの自治体もあるようです。現在把握している状況を伺います。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
公益社団法人日本水道協会が発行している水道料金表というのがございます。これに基づきますと、令和四年四月一日までの一年間に値上げを行った水道事業者は五十九事業者、うち、最大の値上げ幅は三五%であったと承知しております。
○高橋(千)委員 国交省が水道事業を所管することで、こうした値上げをやらなきゃいけない、要するに、経年劣化しているということに対して効果があるんでしょうか。公共土木に位置づけられて、補助の仕組みが変わるということも聞いておりますが、どうでしょうか。大臣に伺います。
○斉藤(鉄)国務大臣 本法案には、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の対象事業に水道を加える改正を盛り込んでおり、これにより、災害復旧事業に要する費用については、国庫負担の割合が増えることとなります。
国土交通省としては、水道事業の経営基盤の強化は重要な課題だと認識しておりまして、厚生労働省から水道整備、管理行政の課題を引き継ぎ、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 とはいえ、更新のペースでいいますとあと百年かかって、この間の高速道路の議論と同じくらいになるわけでありますので、しっかりとここは、計画を持ちながら、自治体を励ましながらやっていただきたい、このように思っております。
本当は、この後、先ほどちょっと話題に出たコンセッションの話をしたかったわけでありますが、時間が来ましたので、残念ながら終わりたいと思います。
やはり、さっき、加藤大臣ともお話しした、コンセッションの議論をここでしたことが一定の縛りにはなっていたのかなと。ただ、逆に言うと、水メジャーにとっては余りうまみがない、宮城のやり方は。つまり、県がほとんど維持には責任を持っておりますので。そういう声も聞かれるわけなんです。だから、どちらのもくろみも実は成功していないというのが今の宮城のコンセッションの状態ではないかというふうに思っているんです。だから、これから先の自治体がしきりにそこに入っていくという必要は全くないんだということを指摘をして、今後また議論させていただきたいと思います。
終わります。