国会質問

質問日:2023年 4月 12日 第211国会 国土交通委員会

海上運送法改正案(知床遊覧船事故、安全統括管理者と運航管理者の役割、船舶の目視検査の重要性など)

知床事故 国は無反省

海上運送法改正案 衆院で全会一致

国交委で高橋氏指摘

(写真)質問する高橋千鶴子議員=12日、衆院国交委

 北海道の知床遊覧船事故(昨年4月)を受け、事業者への規制強化などの再発防止策を盛り込んだ海上運送法一部改正案が13日、衆院本会議で全会一致で可決し参院に送られました。

 同事故の背景には、ずさんな事業者の参入を許してきた規制緩和と監督行政があります。日本共産党の高橋千鶴子議員は12日の衆院国土交通委員会で、国には反省がないと指摘。斉藤鉄夫国交相は「緊張感を持って事業者の監督を行っていく」と弁明しました。

 高橋氏は昨年4月の同委で、事故当時、運航管理者(補助者)だった船長が乗船中で、運行管理者としての役割を果たせなかった問題点を指摘。これをうけ、法案には「運行管理者が職務を行っている間、船舶に乗り込ませてはならない」との規定が入りました。

 高橋氏は、旅客船業者は中小零細企業が多く、事故やコロナ禍の影響で事業継続が厳しくなっているとして支援の必要性を主張。斉藤国交相は「2022年度の補正予算で、事業者による救命設備、無線設備の導入への補助を措置した」と答えました。

 高橋氏は、政府のデジタル規制改革で目視検査などを廃止しようとする動きに言及し、船舶の検査には「目視でなければならない分野もあるのではないか」と質問。斉藤国交相は「技術者が目で見て判断し、高度な技術を使うのが効率がよい」と答えました。

(「しんぶん赤旗」2023年4月16日付)

 

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 あの乗客乗員二十六名が死亡、行方不明になった知床の遊覧船事故から間もなく一年になろうとしております。改めて、被害に遭われた皆様に心から哀悼の意を表するとともに、御遺族の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 今回の海上運送法改正案は、昨年十二月に公表された知床遊覧船事故対策検討委員会による最終報告を踏まえた法改正であり、当然の措置と思います。
 ただ、国土交通行政というのは、こうした重大な事故、犠牲や悪質な業者の登場があって法改正につながるという繰り返しであります。やむを得ないとは言いたくない、何とかこれ以上の犠牲を生まないようにできないか、そういう思いで質問したいと思います。
 まず、昨年の質問の際、私は、安全統括管理者と運航管理者は兼任すべきでないとただしました。そもそも、桂田社長は許可を与えるべき人物ではなかったわけでありますが、社長が安全統括管理者と運航管理者を兼ねていた。しかも、運航管理補助者は船長であって、船に乗っているわけです。補助できるはずもないわけですよね。なのに、答弁では、兼務することが直ちに安全管理上の問題となるとは考えていないというところにとどまっておりました。
 今回の法案では、この点、どのように整理されたのでしょうか。
○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘のように、この事故を起こしました事業者、桂田元社長、自らが運航管理者であることをしっかりと意識せず、運航管理者としての職務を果たさなかったことが今回の事故の大きな要因になっていると思ってございます。
 御指摘の、まず、安全統括管理者と運航管理者の関係でございます。
 安全統括管理者は、輸送の安全確保のための運営方針を定めて体制を整備する役割を、また、運航管理者は、現場において日々の船舶の運航を適切に管理し、定められた運営方針を実行する役割を担ってございます。
 これらの両管理者の責務は互いに相反するものではないと考えてございます。
 仮に、安全統括管理者と運航管理者、この二役が兼任されたとしても、輸送の安全確保に関する業務に支障を生ずるものではないと考えてございまして、今般の改正法案では、安全統括管理者と運航管理者の兼務は認めてございます。
 ただしながら、他方、先ほどの委員の御指摘にもございましたが、船長と運航管理者との関係はまた別でございまして、船長は、海上において適切に運航判断を行い、旅客の安全を確保することが、また、運航管理者には、特に、船長と独立した立場で、陸上において適切に運航判断を行うこと、例を申し上げれば、気象、海象の悪化が予想される場合に、船長に対して陸上から運航の中止を指示することが求められてございます。
 このように、それぞれがそれぞれの役割を求められているところでございますため、職務中の運航管理者が船長として船舶に乗船する場合には、それぞれに期待される職務を全うできず、輸送の安全に支障を生ずるおそれがありますことから、職務中の運航管理者については、今回の改正により、船舶への乗組みを禁止をさせていただくところでございます。
○高橋(千)委員 安全統括と運航管理者が一人二役である場合もあるということは残念ではありますけれども、今、後段でお話しされたように、船長と運航管理者は別であると。ですから、乗っている人が管理者よということはあり得ないということが確認をされたと思います。
 でも、それは本来当然のことだと思うんですね。法律上は違法じゃなかったわけです。だから、特別監査をやっていても、運航管理補助者も不在であったと。不在なのが当たり前なんです、船長なんだから、乗っているんだから。それを分かっていて淡々と書いてあった、そのこと自体が納得できなかったわけであります。
 次に、安全統括管理者と運航管理者、それから一般旅客定期航路事業者、これが経営トップになるかと思うんですけれども、その三者の関係性がどのようになるのかということなんです。
 改正案は、国はが主語の部分が増えました。許認可権などが明確にされたと思います。一方、それ以外の責務については主語が様々ですので、この部分に関する最終的な責任は誰にあるのか、それが主語で整理されていると思うんですが、確認をしたいと思うんです。
 例えば、カズワンの場合、当日天候が荒れていて、船長は船を出すべきではないと考えたわけですが、安全統括であり運航管理者である社長が出せと言った。これはやはり、関係性を考えると、社長の命令だから断れないという、そういうことがあってはならないということが今回の反省だと思うんですね。
 そこを確認しつつ、例えば、旅客の保護、船舶の安全管理、運航の判断、訓練の実施、それぞれ責任を持つのは誰か、簡潔にお答えください。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、委員最初に御指摘の運航の可否判断、これは、船長が出航前に気象、海象情報を収集し、運航基準に照らして出航可否の判断を行うこととなっておりますが、これに加え、運航管理者が運航を中止すべきと判断した場合には船長に中止を指示することとされておりまして、その場合、船長はこの指示に従う必要がございます。
 簡潔にということでございましたので、これを含め、私どもとしては、海上運送法に基づき事業者が定めることとされております安全管理規程で具体的な責務が規定されておりますので、以降、簡潔にお答え申し上げます。
 委員御指摘の二点目、旅客の保護でございますが、基本的には事業者の責務ではございますが、乗船中は船長が人命の安全確保のために必要な措置を講ずることとなってございます。
 また、船舶の日頃の点検等の管理につきましては、船長が定期的に船体等の点検を実施することになってございます。
 また、社員への定期的な訓練の実施につきましては、安全統括管理者と運航管理者が協調して安全教育や事故処理訓練をしっかりと実施することとなってございます。
○高橋(千)委員 乗船中は船長というお話がありましたけれども、船舶の安全管理についてもそうだと。でも、それをさせるのは事業者なんじゃないでしょうか。ちょっとこのお答え、一言でお願いします。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど委員御指摘の旅客の保護について、もちろん乗船中の船長の義務はありますが、基本的には事業者が、事業を行う以上、しっかりと責任を持って遂行していくということでございます。
○高橋(千)委員 そうなんです。条文に船長はという条文は一言もありませんので、ここは確認をしたかったなと思います。
 次に行きますが、船員法で、小型旅客船の乗組員に、船舶が航行する海域の特性等に応じた操船に関する教育訓練、その他安全に関する教育訓練の実施を船舶所有者に義務づけることとなっております。カズワンの船長が、知床の荒い海に対して、穏やかな海での経験しかなかったことから、海域の問題は昨年も指摘があったと思います。
 ただ、実際に訓練を行うには、どのくらいの期間か、訓練をする側の体制があるのか、どのように行うのか、実効性を担保するためには大変心配があります。零細な業者の場合、やはり地域で協力し合うとか様々な工夫が必要かと思いますが、訓練の具体化について伺います。
○高橋政府参考人 今の委員の御指摘を踏まえてお答え申し上げます。
 今回の法改正により創設されます初任教育訓練につきましては、気象、海象の変化など海域の特性等を熟知しているベテランの船長などが初任の船員に教育訓練を行うことを私どもとしては想定してございます。
 ただ一方、新たに当該海域で事業を始める場合など、自分の社内にベテランの船長が存在しない場合も想定されますほか、より高度な内容について教育訓練を行うニーズも想定されます。
 このため、委員の御指摘にもございましたが、自社のベテランの船長による教育のほか、当該海域で運航する他の事業者のベテラン船長等を招き、教育訓練を行いますこととか、あるいは、効率的かつ効果的に実施することができますように、地域の協議会において、他の事業者と共同で外部講師を招いて教育訓練を行うことなども認める方向で検討を進めておるところでございます。
 さらに、中小の事業者であっても船長などの資質向上にしっかり取り組んでいただけますよう、初任教育訓練の具体的な実施方法や留意点、使用する教材の例などをまとめたガイドラインを策定することを予定してございます。
 あらゆる事業者が初任教育訓練を適切に実施できますよう、しっかりと対応してまいります。
○高橋(千)委員 これは、実際にガイドラインが実効あるものになるのかということも大事だと思いますけれども、せっかく大事なことを書いたんだけれども、実効を伴わないと意味がありませんので、そこはよろしくお願いしたいと思います。
 それで、事故から一年がたって、同業者への影響などはどのように把握をされているのかということです。私自身が電話をいただいた業者ですとか、直接お邪魔をした業者、いずれもこれは宮城県でしたけれども、例えば塩竈などは、元々はフェリー航路というか生活の足として、交通の手段として欠かせない役割を果たしていた。それが廃止になって、幾つかの変遷を経て今観光遊覧船をやっているという方でした。ですから、地域経済にとっても重要な役割を果たしているし、そういう経験を積んできているので、社長自ら、当然、船長にもなれるし、安全確保については最も大事にしてきたわけなんです。
 そうした業者の皆さんが今回のことでマイナスの影響があってはならないし、コロナの影響や燃料代などの負担増もあって大変厳しい状況に置かれているのは事実だと思います。こうした同業者への支援も必要かと思いますが、大臣、お願いします。
○斉藤(鉄)国務大臣 高橋委員御指摘のとおり、知床遊覧船事故を受けて利用者の足が遠のく、これは北海道だけでなく全国的に起きた現象でございます。影響が生じたものと承知しております。
 さらに、旅客船業界は、新型コロナウイルス感染症の影響や燃料油価格高騰により、現在も事業者によっては収益状況が回復していないものと承知しておりますが、全国旅行支援の実施や水際対策の緩和により、全国的には回復の兆しも見えてきております。
 こうした中、国土交通省としましては、令和四年度補正予算を活用し、交通事業者による地域への誘客や実証運航等に対して支援を実施するなど、更なる利用促進を図ることとしております。
 さらに、知床遊覧船事故を受けた旅客船の安全対策のため、事業者による救命設備、無線設備の導入に手厚い補助を講じております。
 今後とも、旅客船の安全、安心対策を徹底するとともに、事業者の運航、運営支援に努めてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 最後にお話しされた救命設備への補助などは、絶対必要だということを今回強調されたわけですから、大事なことかなと思って聞いていました。引き続きお願いいたします。
 それで、行政処分、罰則等も強化されました。知床遊覧船事故対策検討委員会の報告書には、起こった事案に照らして一つ一つ対策強化を提案し、また、それを政省令で先行実施も含めて具体化していることは理解します。問題は、規制官庁である国としての反省には触れていない、不十分だと思っています、報告が。
 監督する側とされる側に癒着がなく、緊張感を持った関係性が必要だと思いますが、具体的にどう考えますか。
○斉藤(鉄)国務大臣 昨年十二月に取りまとめられました旅客船の総合的な安全・安心対策には、対策の実効性を確保するため、監査や行政処分の強化が盛り込まれております。
 このうち、監査については、その実効性を確保するため、人命最優先、安全第一で厳格に監査を行うべく、海事局幹部が地方の現場職員との対話を行い、職員の意識改革の徹底に取り組んでおります。
 これに加え、リモートや抜き打ち監査を導入するとともに、外部からの情報を活用するための通報窓口を設置するなど、監査の強化を図っているところです。
 また、行政処分につきましては、処分の客観性を確保するとともに、現場の運航労務監理官がちゅうちょなく行政処分を実施できるようにするため、違反点数制度を導入し、処分基準を公表することとしております。
 国土交通省としましては、このような監査や行政処分の強化を通じて、人命最優先、安全第一との意識の下、緊張感を持って事業者の監督を行ってまいる決意です。
○高橋(千)委員 緊張感を持ってというお答えがありました。
 ただ、検討委員会の報告書には、例えば、特別監査を行うとともに、その後、抜き打ちで改善状況の確認を行ったにもかかわらず、十分に是正するには至らなかった。それから、虚偽の届出が行われたけれども、その真偽について十分な確認ができていなかった。このように、今抜き打ちでやりますと言ったけれども、やっていたわけですよね。やっていても確認できなかった。
 この委員会で、申請書などを様々公開してもらって見た、素人の目から見ても、これはおかしいじゃないかと指摘されるようなことを、見て見ぬふりだったのか、あるいは見ようとしなかったのか、そうしたことの分析が何もないわけなんですよ。だから、やりますと言っただけでは通用しない。そこは、大臣、もう一言ありますか。
○斉藤(鉄)国務大臣 まさにその点についても、我々、深く重く受け止めておりまして、しっかり、今回の検討委員会の報告書も含めまして、我々、緊張感を持ってやっていきたい、このように思います。
○高橋(千)委員 日本小型船舶検査機構、JCIが、今年二月二十日、業務改善計画を発表しました。ここでも「国から提供される監査情報を活用して検査を行う」と強調されているんですけれども、では、これまでどうだったのかということも含めて、改善方向を伺います。簡潔にお願いします。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 従来、JCIと国との間では互いの情報を共有する仕組みが存在せず、国の監査情報をJCIの船舶検査で活用する取組はございませんでした。
 しかしながら、国とJCIとの間で互いの情報を共有し、活用することが事故防止に資すると考えられますことから、昨年九月より、国からJCIに対して監査情報を提供し、機構は当該情報を活用して、注意を要する事業者に対する船舶検査をとりわけ慎重かつ入念に行う取組を開始したところでございます。
 引き続き、国の監査情報を船舶検査において活用すること等により、実効性の向上を図ってまいります。
○高橋(千)委員 これ、本当に読んでびっくりしたんですよね。互いに情報を共有する仕組みは存在せずと。本当であれば国がやるべき検査を、代わってやっているわけですよね。それなのに、情報共有もしないで、国の検査官から指摘をされて、同じ検査じゃなかったなどということを今更書いているということは、本当にゆゆしき事態だと思うんです。
 JCIの理事長などは国交省の指定席になっているわけですよね。元運輸局長が理事長をやっています。そこまで通じていながら、肝腎の監査に必要な情報は全く共有されていない。余りにお粗末な実態だと、これは強く指摘をしていきたいと思います。
 時間がないので、済みません、続けます。
 最後に、一般論で大臣に一つ伺いたいんです。
 昨年十月、政府のデジタル臨調が、人による目視や常駐などを義務づけるアナログ規制の撤廃を広げると決めました。九千二十九件もある条項や政省令を二〇二四年の国会までに改正するということで、九九%のアナログ規制が廃止されるとの報道もありました。今国会にも、その第一弾として、書面掲示規制とフロッピーディスク等の記録媒体に関わる規制についての改正案が提出されております。
 一方、知床遊覧船事故対策検討委員会報告にもリモートによる監視の強化が挙げられているように、目視ではない検査などが取り入れられています。
 人の目の届かない部分をドローンなどで見ることができたり、継続監視にITを活用など、効果的な側面がある一方で、目視でなければならない分野、あるいは組み合わせることで、目視とデジタルを組み合わせることで本来の効果が上がるということもあるのではないかと思いますが、この点について、大臣の考えを伺います。
○斉藤(鉄)国務大臣 デジタル技術の活用は、少子高齢化の進む我が国が生産性の向上や人手不足の解消を図る上で重要な手段の一つです。
 このような考え方から、政府では、昨年十二月に、目視規制や実地監査、常駐専任といったいわゆるアナログ規制について、見直しの方針と見直しに向けた工程表を確定し、国土交通省でも、所管する法令の関係条項について見直し作業を今進めているところです。
 見直しに際しましては、目視規制などが安全性の確保を目的としている場合には、それが引き続き確実に担保されることを大前提とすることとしております。
 このため、例えば、目視という手法が高精度カメラやドローン等による確認で代替できるかどうかについて、必要な場合には予算も活用して、個々に実証実験や検証を行い、安全性が確実に確保されると判断される場合に限り、目視以外の手法も新たに認めることとしています。
 私も、実は、個人的な経験を言いますが、昔、非破壊検査の技術者でございました。非破壊検査は今非常に高度な技術を使って検査をしておりますが、やはり大前提はまず目視です。技術者が目で見てまず判断すること、これが大前提で、その上で高度な技術を使っていくというのが最も効率がいいということを私自身よく分かっておりますので、この点も踏まえて国土交通省で実行していきたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 終わります。

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI