企業 農地取得可能に
衆院特委 高橋氏、問題ただす
関連法改定案を衆院本会議可決
(写真)質問する高橋千鶴子議員=3月30日、衆院特委 |
企業による農地取得を全国で申請可能にする関連法改定案が4日の衆院本会議で賛成多数で可決されました。日本共産党、立憲民主党などは反対しました。
企業の農地取得は、農業法人などを除き原則認められていませんが、現在、兵庫県養父市の国家戦略特区で時限的に実施。これを、構造改革特区に移管し全国で申請可能にするものです。
日本共産党の高橋千鶴子議員は3月30日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会で、同案の法人農地所有特区の要件「農業の担い手不足や遊休農地の解消」について質問。内閣府の三浦聡地方創生推進事務局審議官は「今回は地域のニーズに寄り添い、地域活性化につなげるもの」と答えました。
高橋氏は、兵庫県養父市では、条件不利地の農地を売却したい農家の希望に応えきれないなど、地元のニーズと農業の規制緩和を叫ぶ政府との間に乖離(かいり)があると指摘しました。
同案は、企業が農地から撤退したり、不適正利用したりした場合、地元自治体が当該農地を買い戻すと定めています。三浦審議官は「(その後)新たな担い手を地方自治体が探すことになる」と発言。高橋氏は、最低でも企業に原状回復の責任を果たさせるべきだと主張し、「(企業は)現行でもリースで営農が可能。農地所有適格法人になれば所有もできる」と指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2023年4月7日付)
-議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
法人農地取得事業について、多くの委員から質問がありました。
改めてになりますが、今回、国家戦略特区から構造改革特区に移る理由は、なぜでしょうか。
これまでは、国家戦略特区の中で、兵庫県養父市が唯一この事業を行っていました。養父市は、二〇一四年五月より国家戦略特区中山間農業改革特区の指定を受け、農業生産法人の要件緩和の特例などを進めてきました。今回の農地の所有は二〇一六年に認定されておりますが、担い手不足、遊休農地が著しく増加するおそれという特定地方公共団体に指定された上で、認定計画を、国、地方公共団体及び事業実施主体となる民間事業者で構成する区域会議が作成することになります。国家戦略特区と違って、地方自治体が主体であること、構造改革特区は税制優遇措置などはないと聞きますが、なぜ構造改革特区に移そうということでしょうか。
○三浦聡政府参考人 お答え申し上げます。
昨年、ニーズと問題点の調査というのを実施いたしました。その中で、国家戦略特別区域以外においても法人農地取得事業を活用したいという御回答をいただいた自治体がございました。同時に、投機的な取得や、撤退後の耕作放棄、地域コミュニティーとの共存など、法人による農地取得に対する懸念や問題点もお示しをいただいたところでございます。
このような法人農地取得事業に対するニーズと懸念や問題点に関する意見の双方を十分に考慮した上で、国家戦略特別区域法に規定されている法人農地取得事業を、対象となる法人や地域に係る要件、区域計画の認定に係る関係行政機関の長による同意の仕組みというのは維持した上で、地方公共団体の発意による構造改革特別区域法に基づく事業に移行することとしたというのが考え方でございます。
それから、後段のお尋ねの手続面でございますけれども、構造改革特区における区域計画については、国家戦略特区の区域計画のように、地方公共団体及び事業実施主体によって構成する区域会議が作成するという仕組みではなくて、地方公共団体が作成して、内閣総理大臣に対して認定申請を行って、要件に合致していれば内閣総理大臣が認定をする、こういう仕組みになります。地方公共団体の発意による構造改革特別区域法に基づく事業に移行することによりまして、各市町村が責任を持って、現場の実態を踏まえ、創意工夫を発揮することができるものと考えてございます。
○高橋(千)委員 なぜ、ではないのかと聞いたのに対して、ではなくてというお答えでしたので、地方公共団体の責任が大きくなるということが一つの答えだったのかな、このように思います。
養父市の国家戦略特区を認めた二〇一六年二月五日の国家戦略特区諮問会議では、二〇一四年一月の安倍元総理のダボス会議での発言、いかなる岩盤も私のドリルに無傷ではいられないなどと述べたわけですが、あれ以来、二年間の集中改革期間を設けてきた。この集中改革期間を受けて多くの岩盤規制が改革が実現したものの、国会等の事情でこの間の特区法の改正が一度だけに終わり、幾つかの極めて重要な改革事項がいまだに実現されないままとなっているとして、アベノミクス第二ステージの目標である戦後最大の経済六百兆円を確実に実現するためにも、二年間の集大成として、改正特区法案に農業生産法人の出資、事業要件の緩和などをしっかり盛り込むべきだということが位置づけられて、安倍元総理がまずは養父市からと言ったものでありました。
そこで、質問は、かねてから、農業の分野は岩盤規制と言われてきました。国際競争力の強化やその拠点形成、いわゆる世界で一番ビジネスがしやすい国づくりという国家戦略特区の目標と、養父市で行ってきた担い手不足、遊休農地がこのままじゃ増えちゃう、この目的がどうリンクするんでしょうかね。これから更に、国家戦略特区ではなかった市町村の中山間地にも広げると言っている。それと、この世界で一番ビジネスしやすいと、どうリンクするんですか。
○岡田直樹大臣 お答え申し上げます。
国家戦略特区は、大胆な規制・制度改革を通じ、産業の国際競争力の強化と国際的な経済活動の拠点の形成を図り、先ほどもお話に出ました、世界で一番ビジネスをしやすい環境を整備し、経済成長につなげることを目的とするものであり、これまで、国際ビジネス、イノベーションの拠点、東京圏、創業のための雇用改革拠点、これは福岡県、また、大規模農業の改革拠点、新潟市、などを指定してまいりました。
そこで、兵庫県養父市は、中山間地農業の改革拠点として平成二十六年に国家戦略特区に指定されたものでありまして、担い手不足や遊休農地の増大等の課題を抱える中山間地域において農業の構造改革を進めることにより、革新的農業を実践し、輸出も可能となる新たな農業のモデルを構築することで、産業の国際競争力強化などを目指すものであります。
養父市において法人農地取得事業を始めとする取組を推進する中で、昨年実施したニーズと問題点調査では、国家戦略特区外の地域からも、担い手不足や遊休農地の解消等の地域の課題を解決するという観点から、法人農地取得事業へのニーズが示されたところであります。
この結果を踏まえて、今回の改正で、法人農地取得事業については構造改革特別区域法に基づく事業に移行することとして、今後、本事業は、地域の担い手不足や遊休農地の解消への貢献を通じて、構造改革特区の目的である経済社会の構造改革の推進と地域の活性化のための事業として推進していくことにいたしたものでございます。
○高橋(千)委員 答えになっていませんよ。これは趣旨説明と同じじゃないですか、今の答弁は。何でリンクするのかと言っているんです。
企業が参入したいというのは、スケールメリットでしょう、本来なら。それを、条件不利地の多い中山間地で、担い手不足だ、このままじゃ遊休農地が増えちゃうというところとリンクさせるというのが、何で世界で一番ビジネスというふうになるんですか。これは、これがあくまでも一穴だからでしょう。そこをはっきり言わないと駄目なんですよ。違いますか。
この養父市の実態について、神戸大学の研究がありますけれども、やはり、圃場条件が悪いとか、会社も、受けたところから遠くて、買い取ってくれとか、借りてくれとか農家の方から言われたけれども、それには応えられなかった、そういう声が出ていますよ。当然じゃないですか。お答えください。
○三浦聡政府参考人 お答え申し上げます。
まず、最初おっしゃった、世界で一番ビジネスがしやすい場所ということと、担い手不足、遊休農地や養父ということがどういうリンクだったのかということについては、これは最初、養父でやはりこの特例をつくり、特区をつくったときは、農業というものの国際競争力をどう高めるかというイシューがあり、その中で、まさに法人が農地を取得できるという、かなり思い切った規制を初めてつくったというのがそのときだったと思います。
今回で、現にそうした形でいろいろな法人の方が入られて、そして、養父はこの特例だけではないんですね。幾つか国家戦略特区の方を使っていますが、その中で、いろいろな企業が入って、新しい農業をやったということでございます。そういう形で、当時、結びついたということでございます。
なお、今回やろうとしているのは、このニーズ調査をして、やはり養父以外でも、地域の担い手問題でお悩みのところがいらっしゃる、そういったニーズに寄り添いたい、ひいては地域の活性化を実現したい、そういうことが今大事になっているということが、このニーズ調査というのが示したというのが私どもの理解でございまして、そして、こういった提案をさせていただいております。
○高橋(千)委員 農地所有じゃなくてもできることを示したという意味にもなると思うんですね。
資料の三枚目につけておりますが、当時、国家戦略特区の農地所有に参入したときの養父市のプレゼンですが、地元経済団体の動きということで、住友電気、阪急電鉄、神戸製鋼所、この人たちが農業をやるわけじゃないわけですよね。養父市の農業に企業が参入しやすくし、その力を活用すべきという要望があったと。そして上に、三つの会社が既にやっているよという報告がありますが、そのうちの一番代表格だったオリックスは、今年三月末で撤退するということも聞いております。
ですから、言っていることと、養父市が頑張っているのは分かっていますよ。それは、いろいろな取組をしているのは分かっているし、そういう中で入っている企業を否定するつもりはありません。地域と連携しながらやっている、それは分かっているけれども、しかし、本当の狙いは何なのかということをやはりちゃんと言わなきゃ駄目だということを言っているんです。
それで、続けますが、養父市では農地保全条例を制定し、企業から積立金を拠出させています。不適正利用があった際に地方公共団体に買戻しをさせることで契約するというスキームでありますけれども、確実に企業に原状回復の責任を果たさせるように、あらかじめ条件にしなければならないと思いますが、いかがですか。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。
まず、事実関係について申し上げると、養父市なんですが、そこでは、法人農地取得事業を実施する法人に関しては、今御指摘いただいた条例だと思いますが、この条例によって法人から積立金を拠出されるという形ではなくて、農地売買契約によって原状回復義務を法人に課すことで、責任を果たすことを担保していると承知をしております。
なお、原状回復についてはこのような形で担保した上で、あともう一つ必要なのが、不適正利用があった場合の買戻し代金でございますけれども、こちらについては、債務負担行為として議会の同意を得て予算措置をしている。こうして、全体として買戻し措置の実効性を担保しているという形でございます。
いずれにいたしましても、農地の不適正利用があった場合の自治体による買戻し措置に実効性を持たせることが重要、これはもう委員御指摘のとおりだと思います。したがって、今後、新たな制度の下で事業に取り組む自治体においても同様の対応を講じるように求めて、自治体が農地を確実に買い戻せるように措置をしたい、こう考えております。
○高橋(千)委員 買戻しをしたその先はどうするんですか。結局、また耕作放棄地に戻っては意味がないわけですよね。どう考えますか。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。
市町村が買い戻した農地については、もちろん市町村が自分で耕作をするということは余り現実的ではないでしょうから、地域計画に即して、新しい受け手を探す必要があると考えております。
その際の地域計画における受け手については、認定農業者等の担い手のほか、多面的機能支払交付金あるいは中山間地域等直接支払交付金、こういった助成措置を受けていらっしゃる活動組織さんもいらっしゃいます。それから、あと、JA等のサービス事業体等もいらっしゃいます。こういったところは、地域の実情に応じて、新しい受け手に貸付けが行われるのであろうと考えております。
○高橋(千)委員 新しい受け手がいるんだったら、最初から参入しなくてもいいわけですよね。受け手がいないから企業に参入してもらいたいということをやっているわけじゃないですか。これはこれで大変なハードルなわけですよね。
それで、最初に言ったように、構造改革特区はやはり地方に大きな責任があって、買戻しの費用もそうですし、また、その先どうするかということも重大なんだ、だから、ヒアリングの中でも、やはり自治体からも、その先どうなるか心配だと。
だけれども、最初から心配してその分お金を積んでおくというのも、自治体財政としてはやはり問題があるわけですよね。財政規律としても問題があると思う。そこをちゃんと明確にして、企業に責任を果たさせなきゃいけないと思います。
同時に、農水省の責任というのがやはり一番大きいと思うんですけれども、農水省自身がこの問題をどう考えるのかということと、私は、やはり食料主権の基盤である農地をどうするか、元々は農業だけでは食べていけないという農政に一番大きな要因があると思うんですね。農水省としては今後どう取り組んでいくんですか。
○野中厚副大臣 まず、構造改革特区法の移行ですが、それぞれ市町村、担い手の状況とか耕作放棄地の状況が地域ごとに異なっておりますので、この移行をすることによって、各市町村ごとで独自の農業振興を図っていただくことが可能になります。
一方、企業による農地所有の懸念というのがありますから、構造改革特区法では、国家戦略特区法である地域や法人に関する要件、区域計画の認定に係る農水大臣の同意という仕組みは維持することにしております。
この農水大臣の同意でありますけれども、地域計画との整合性などの農地法制に照らし判断することとしており、これらの懸念払拭措置をしっかり講ずることにより、引き続き農地の適正利用を確保していきたいというふうに思っております。
また、農地をどういうふうに、有効にまず活用していくことが大切だというふうに思っておりますので、本年四月から施行されます改正農業経営基盤強化促進法、これをもって着実に農地の有効利用を図ってまいりたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 第五十五回の国家戦略特区諮問会議のときは、やはりニーズ調査を見て慎重に対応する必要があるという発言をされた大臣が、これを決めるときの五十六回のときは、まあ、それでよしという発言をされているので、同意の仕組みってその程度になっちゃうのかなということを指摘をさせていただきますので、農水省は農水省らしく、きちっと対応していただきたいと思います。
最後に一つだけ、JAXAのことで質問します。
年末に閣議決定された安保三文書の中で、「経済・社会活動にとって不可欠な宇宙空間の安全かつ安定した利用等を確保するため、宇宙の安全保障の分野での対応能力を強化する。」国家安全保障戦略、と強調されました。
かつ、国家防衛戦略においては、JAXAを含めた関係機関や民間事業者との間で、研究開発を含めた協力、連携を強化し、「その際、民生技術の防衛分野への一層の活用を図る」とあります。こうした決定に基づく民間事業者との連携は、JAXA法から見ますと、航空宇宙分野ということで目的内の活動になる。
つまり、今回の法案は目的外ですから、目的内の活動になるという理解でよいか。もしそうだとすれば、これまで目的内だよということで利用していた現在の実績と、今後の拡充方向についてどう考えているのか、伺います。
○原克彦政府参考人 お答えいたします。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法第十八条第七号には、機構の業務として、「機構の施設及び設備を学術研究、科学技術に関する研究開発並びに宇宙の開発及び利用を行う者の利用に供すること。」と定められてございまして、安全保障分野か否かではなく、補助金交付規則に定める目的、例えば、宇宙科学に関する学術研究の発展、宇宙科学技術及び航空科学技術の水準の向上及び宇宙の開発及び利用の促進に供することに合致するものでありましたら、民間事業者は当該補助金で整備された施設や設備を利用することが可能となってございます。
JAXAに対する補助金の、目的内での民間事業者によるJAXAの施設等の利用実績といたしましては、二〇二一年度までの過去五年間で百四件となっているところでございます。
引き続き、民間事業者の要望等を踏まえ、JAXAの施設及び設備の適切な利用に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 百四件というお答えでありました。
今の安保三文書との関係では一切触れていらっしゃらなかったわけですけれども、当然、宇宙が大きく位置づけられたということで、JAXAの関係というのは、ますます役割が大きくなるのではないか、このように思うんですね。
本当に、今、それこそ朝ドラではありませんが、空飛ぶ車などが、幅広く、これは目的内利用ということで読めることになるんですよね。それから、宇宙を目指す民間企業も多いです。
同時に、目的の中なんだからよいというだけで民間との共同利用が進むことが本当によいのかどうか、今の安保政策の大転換の中でやはりこれは問われてくることではないか、ましてや目的外についてはもっと慎重であるべきだということを指摘をいたしまして、発言を終わります。
ー討論ー
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、国家戦略特区法及び構造改革特区法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対する主な理由は、法人農地取得事業についてです。法人による農地所有は、安倍元総理を始め政府や民間有識者が岩盤規制と呼んで改革を進めてきた中でも、本丸と呼べるものです。今回、国家戦略特区から構造改革特区に同事業を移行するのは、全国展開への通過点にすぎず、認められません。
企業による農地取得には、農地の不適正利用や撤退という懸念があります。政府は、その際は自治体が農地を買い戻す契約を結んでいることをもって防げると説明しますが、担い手不足や遊休農地が動機だったはずなのに、その後処理まで自治体任せでは負担が大き過ぎます。少なくとも、買戻しの費用は、養父市のようにあらかじめ参入企業に拠出させ、原状回復の責任を果たさせることを条件にするべきです。
本事業を実施している養父市では、六社の企業が合計三十五ヘクタールで営農しているものの、そのうち所有する農地は合計一・六五ヘクタールにすぎず、それ以外はリースによるものです。現行でもリースでの営農は可能なのです。所有したいなら農地所有適格法人になればよいのであって、特区で解禁する必要はありません。農地の所有をこれまで厳格に規制してきたのは、農地が食料生産の基盤であり、国民の食料を安定供給する保障でもあるからです。世界最低クラスの食料自給率を引き上げることにこそ、政府が役割を果たすべきです。
補助金等交付財産の目的外使用について、承認のスピードアップや企業にとっての予見性を高めるための要件緩和となります。特定の企業を優遇することになりかねず、今後同様の手続を行えば、国の様々な研究施設、設備で目的外使用等が可能となります。公正であるべき補助金適正化法で禁じられている補助金等交付財産の目的外使用等の在り方をゆがめるものであり、本特例は必要ありません。
スーパーシティの根幹であるデータ連携基盤に対する国の援助を追加するとしています。地図、交通、防災などの政府、地方公共団体が保有するデータを民間活用など、安全確保や国民の利益に資する場合もありますが、財界が求めているのは、ここにとどまらず、あらゆる領域を超えたデータ連携であって、政府がその基盤整備に更なる援助を行うことは、データの利活用を進めたい民間事業に便宜を図るものであり、賛成できません。
以上指摘して、討論とします。