国会質問

質問日:2023年 3月 29日 第211国会 国土交通委員会

宮城県の県営住宅廃止と立ち退き問題について

公営住宅の整備こそ

高橋氏 生存権の保障と主張

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=29日、衆院国交委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は29日の衆院国土交通委員会で、公営住宅の在り方について質問し、宮城県営住宅の集約問題を取り上げました。

 公営住宅法は、国と地方公共団体は「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備」し、低額所得者に低廉な家賃で賃貸することを目的としています。高橋氏は、同法の目的規定が憲法25条で定める生存権の保障の趣旨にのっとっていることを質疑を通じて明らかにしました。

 宮城県の県営住宅ストック総合活用計画は「新たな建設及び建て替えは行わず」と明記。耐用年数を迎える県営住宅の「集約(廃止)に伴う移転支援の方針」を3月に策定。方針案は1月に突然住民に通知されました。高橋氏は「ついの住み家と思っていたのに」と住民が困惑していると指摘。公営住宅法には地方公共団体が住宅を供給する責務があるとして、「県もその責務に沿って仙台市と話し合うべきだ」と主張しました。斉藤鉄夫国交相は「居住の安定確保のため、相互に連携、調整していくべき」だと答えました。

 高橋氏は宮城県営の一般公営住宅では、浴室は全戸設置されているが、浴槽や給湯設備の設置率は約3割だとして、「健康で文化的な生活を営むに足りるか」と質問。斉藤国交相は、浴槽などの設置は「地方公共団体の判断」だとの認識を示しました。

(「しんぶん赤旗」2023年4月1日付)

-議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、公営住宅問題について質問します。
 まず、公営住宅法第一条には、「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」とあります。このことは、憲法二十五条、生存権の保障の趣旨にのっとり、住宅に困窮する人がないよう国と地方の役割を明記したものと思いますが、大臣に確認させてください。
○斉藤(鉄)国務大臣 公営住宅法第一条は、日本国憲法第二十五条の趣旨にのっとり、法の目的を明らかにしたものであると考えております。
 ここでは、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として、公営住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸するという、国と地方公共団体の役割について規定しているものと認識しております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 よく私たち、住まいは人権と主張しておりますが、まさにこの公営住宅法そのものが憲法二十五条に基づいているものだということを改めて確認をさせていただきました。
 ここで言っている地方公共団体というのは、都道府県並びに市町村という意味でよろしいでしょうか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 公営住宅法二条の一号によりますと、地方公共団体という用語の意義は、「市町村及び都道府県をいう。」というふうにされておりますので、この市町村及び都道府県は、公営住宅法三条の規定によりまして、低額所得者の住宅不足を緩和するために必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならないということになります。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。確認しました。
 そこで、資料の一枚目を見てください。
 三月五日付の河北新報です。「老朽県営住宅の廃止検討」と見出しが躍っております。今年一月六日、突如、宮城県内の該当する世帯に県から一枚の文書が届きました。県営住宅等の集約に伴う移転支援の方針なるもので、受け取った住民は寝耳に水だと不安の声を上げております。
 宮城県が管理する県営住宅は百一団地、記事の中にかなり書いてありますが、五百四十八棟、九千四十八戸です。その大半が昭和四十年代後半から昭和六十年代までの二十年間に供給されており、耐用年数を超える住宅は順次廃止していくというものです。
 資料の二枚目に「「県営住宅の集約に伴う移転支援の方針」の概要」というものがありますが、真ん中ら辺に書いていますが、用途廃止住宅の検討ということで、耐火構造七十年、準耐火構造五十五年、木造が五十年というように期限をまず明記をして、その下、一年目に入居者説明会、意向調査、二年目に移転支援の実施などを行って、おおむね十年で移転完了とあります。
 今年度に説明会対象になる予定団地は六団地、五百七十一戸あり、二〇三〇年度までに二割以上の県営住宅で移転説明会が始まることになります。記事の中にありますが、村井知事は二月二十七日の会見で、老朽化が進行し、安全上の問題が発生する前に、十分な期間を設け、より居住環境の整った住宅への移転を円滑に進める、一人一人の事情が違うので、一方的に追い出すのではなく、よく話を聞きながら移ってもらう形にしたいと述べたと報じております。
 国交省は、まずこの事案を承知しているでしょうか。また、県からはどんな相談を受けていたのでしょうか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねの、県営住宅等の集約に伴う移転支援の方針、中間案でございますが、これにつきましては、令和四年の十二月に、宮城県から私どもの東北地方整備局に報告があったと聞いておりまして、その際、宮城県の方からは御相談はなかったというふうに報告を受けてございます。
 国土交通省としては、そういう承知状況でございます。
○高橋(千)委員 今のはどういう意味でしょうか。地方整備局に報告があったけれども、相談ではないという意味ですか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 御報告をいただきましたが、県からの御相談はなかったというふうに報告を受けています。
○高橋(千)委員 なかなか衝撃の答弁でありました。
 そもそも、住宅を造るとか、それぞれの供給戸数そのものについては、当然、国の補助がありますので、協議があると思います。そういう意味でも相談があるのかなと思っていましたら、なかったという答弁でありました。
 それで、背景として、少子化による人口減少と、三・一一の大震災を受けて災害公営住宅が建設されたことで、県内の公営住宅数が震災前の一・四倍となったんだと、需要を供給が上回っていると説明をしています。
 令和二年八月の宮城県県営住宅ストック総合活用計画において、公営住宅の供給は、市町村が地域ニーズに基づき主体的に取り組むことを基本とし、県は県営住宅の新たな建設及び建て替えは行わずと書いてあるんですね。
 それで、ちょっとびっくりするんですが、まず、公営住宅の供給は市町村が主体的に取り組むことを基本というこの県の方針は、一番最初に聞いたように、地方公共団体というのは県と市町村が両方のはずであって、互いに責任を持つものと思いますが、確認させてください。
 また、新たな建設及び建て替えは行わないというのは、将来的には県営住宅を全廃するという意味にしか取れません。こうした方針を持つ地方公共団体はほかにあるでしょうか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、都道府県と市町村の関係でございますが、それぞれに、公営住宅法の三条の規定に基づきまして、必要と認めるときは公営住宅の供給義務があるという関係にございます。
 それから、お尋ねでございます、県のストック総合活用計画に、新しい建設や建て替えを行わないという点についてでございますけれども、これは令和二年度に改定をされました計画でございまして、今後十年間におきます県営住宅の維持管理や修繕、性能向上、あるいは用途廃止などの取組方針を定めたものでございます。
 ここの中では、御指摘のとおり、新たな建設及び建て替えについては行わず、既存ストックの長期活用を図るとされておりますところでございますが、これは、先生の先ほどのお話もございますように、県内の公営住宅をめぐる諸事情を勘案しまして、この計画の期間でございます令和十一年度までの当面の方針として定められたというものであり、また、計画期間中も五年ごとの見直しを行われるというふうに承知をしてございます。
 このため、御指摘の計画は、宮城県が公営住宅を今後必ずしも全廃するということまで決めたものではないというふうに理解してございますし、県も同様の説明をされているというふうに承知してございます。
 ほかの公共団体ではというお尋ねでございましたが、今後十年間の同じような計画、方針の中で、同様に新しい建設や建て替えを行わないというふうに定めているところもあるというふうに承知をしてございますが、将来的な全廃まで決めたという自治体については把握をしてございません。
○高橋(千)委員 今の、あるというのはどこか、お答えできますか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 県あるいは市町村が作成されておりますストック活用総合計画、全てについてつぶさに確認をしたわけではございませんけれども、手元で私どもが把握できている範囲で申し上げさせていただきますと、岩手県、富山県、それから岐阜県、香川県においては、この同様の計画において、今後十年間、建設や建て替えについては行わないという内容になっていると承知をしてございます。
○高橋(千)委員 十年間建て替えをしないということと、将来的にもしないということでは大分意味が違ってくると思いますので、もし局長がおっしゃるように、将来的には全廃という意味ではないんだとはっきり言えるのであれば、それはそうかもしれないんですが、今、住民は、では、どうしたらいいのかということで、非常に迷って、困っているわけなんですね。
 元々、県は災害公営住宅を一棟も造っておりません。岩手県は二千数百も造っていますから、全く違うわけなんですね。それでいて、仙台市が建設した災害公営住宅や市営住宅に将来的に空きが増えるだろうと、それを当てにしているということなんです。私は虫がよ過ぎると思います。
 仙台市当局は、この問題を市議会で問われて、この方針案につきましては昨年十二月に初めて県の担当課から概要について説明があったと答えて、移転先の中に市町村営の住宅などが入っているんだけれども、仙台市の市営住宅の高い応募倍率を踏まえると、現状では移転先としての住戸を確保することは困難と答えているんですね。仙台市の持っている市営住宅は一万一千九百三十戸、うち災害公営が三千百七十九戸です。将来人口が推計の都度、ピークが後年度に変化している、つまり、若い世代がまだまだいるということだし、生活保護受給者数も増加しているということで、需要が減っていくというふうにはまだ見極められない、こう答えているんですね。
 今も、市営住宅に応募しても抽せんで当たらず、何年も待っているという希望者がいます。そうした事情を飛び越えて、県営が老朽化で廃止するから優先入居というふうにはならないはずなんですね。
 それで、大臣に伺います。これは一般論でよろしいですので。
 県と市町村が近隣の住宅同士で集約をしたり、あるいは市営から県営など管理者が替わるなど、様々な工夫を行って、移転が入居者の精神的、経済的な負担にならないこと、現在、市営住宅への入居を待機している方がいるわけですから、そういう方に不利益にならないように、よく市と県が話し合って方針を決めていくことが重要だと思いますが、いかがでしょうか。
○斉藤(鉄)国務大臣 委員御指摘のとおり、一般論として、公営住宅の集約などにより居住者が移転を余儀なくされる場合においては、対象となる方の居住の安定の確保を図ることが極めて重要です。
 このためには、居住者の御負担が少なくなるよう、関係する事業主体が相互に十分連携することが必要と考えます。
 御指摘の宮城県の計画においても、市町村と協議の上で、市町村と調整しながら進める旨が明記されている、このように承知しております。
○高橋(千)委員 そうなんです。調整しながら進めていくと書いているんだけれども、それ、調整する前に出ちゃったんですよ、利用者に対して。だから、市の方だって聞いていませんよという話になっちゃった。これは非常にまずいことだなと。だけれども、そうはいっても、これからどう解決していくかというときに、絶対調整や話合いは必要だなと思ってお話をさせていただきました。
 共産党の県議団が行ったアンケートには、お知らせをもらった方たちが、内容は分かったけれども、突然、集約、移転のチラシが入り、驚いています、ついの住みかと思っていました、高齢で年金暮らし、低い家賃だからこそ支払いできているのに、環境も変わり、家賃の補助、支援もしないで、ここを出ていけというのは言語道断だと、三年前に引っ越ししてまた引っ越すのはつらいです、年も年なので、八十五歳、引っ越しできない、ずっと住み続けたい、出ていけとはひどい、様々あるんですね。もちろん出ていけと言われたわけではないんですが、余りの突然の通知にそういう印象を受けた方が多いのはやむを得ないことだと思うんですね。
 今年二月一日現在で、県営住宅の六十五歳以上の高齢者世帯、三千七百四十六、五一・七%にもなります。うち高齢者の単身世帯は二六・三%です。しかし、十年後は、六十五歳は七十五歳になって、八十から九十歳になって引っ越ししなければならないのか、そこに途方に暮れているわけですよね。
 また、議員団との懇談の中で、十年前になって初めて移転準備するということで、自分のところの説明会は六年後になると。六年後に十年後の話が初めて聞かされる。どうせ引っ越すんだったら、少しでも若くて動けるうちがいいのにという声がありました。もっともな話だと思うんですね。
 宮城県も、移転支援の方針として、高齢者を始め、低所得者世帯、障害者等、配慮の必要な方への対応、通院、通学などの移転先への希望などを支援していくと書いてあります。やってもらわなきゃいけません。
 それで、一般論で、入居者自身の都合ではない移転をさせられる場合、引っ越し費用への支援はあるか、また、家賃を現状維持とする必要があると思うんですが、家賃補助、どうなっているか、お願いします。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 入居者の方々の不安への対応ということでございますが、事業主体の都合で公営住宅を集約する、その際に、居住者の方に移転をいただく際には、居住の安定が図られるようにする、また、御心配、御負担ができるだけ小さくなるようにする、そうなるように丁寧な対応をすることが重要だと認識しております。
 その上ででございますけれども、公営住宅の除却に伴って移転が必要となる入居者に対しまして、地方公共団体の方で移転に必要な費用を支払うという場合に、国の方におきましても、その費用に対しまして、社会資本整備総合交付金等によりまして支援を行うこととしてございます。
 また、公営住宅の除却に伴いまして、新たに入居をしていただく他の公営住宅の家賃が従前の公営住宅の家賃を超えて、居住の安定の確保のために必要な場合におきましては、地方公共団体の方で、入居者の急激な家賃上昇を避けるために、家賃を減額するということにしておりまして、国におきましては、こういった減額措置に対しましても、社会資本整備総合交付金等によりまして支援を行うこととしているところでございます。
 引き続き、移転が必要となる入居者の居住の安定が図られますような取組を着実に進めてまいります。
○高橋(千)委員 どちらも社総交で対応できるというお話でした。
 激変緩和だと、さっき言ったように、年齢を重ねていくわけですから、収入が増えるというわけではないわけですよね。なので、今の公営住宅の仕組みに近いもの、同じものになっていくように支援が必要だと思いますが、そうなっているでしょうか。
○塩見政府参考人 お答え申し上げます。
 御移転をいただく際の移転先の公営住宅として、どのような住戸にお入りいただくかについては、事業主体の方でできるだけ多くの選択肢を御用意をし、移転をされる方にできるだけ多くの選択肢を与えて、選んでいただくということが大事だと思います。
 その際に、現在の、従前の住戸よりも家賃が上がるもの、同じようなもの、様々な選択肢を提供する中で、従前家賃と同じような家賃の住戸に入りました場合には、従前の家賃をそのままという御負担になりますけれども、より高い家賃の住戸を選ばれるという場合におきましては、急激な家賃上昇を避けるための減額措置を講じる、こういう考え方かと存じます。
○高橋(千)委員 ちょっと、同じ答弁だったような気がしますけれども。
 それで、ちょっと時間の関係で一つ飛ばしまして、用途廃止の計画が出てしまったことで、新規の募集がされないのでしょうか。そうすると、困るわけですよね。既に入居者から、廃止が決まったからと、修繕を頼んでもやってもらえないという声が聞こえています。
 しかし、さっき言ったように、全て廃止ということが決まっているわけじゃないわけです。また、私は、必要な分は、同じ数ではないかもしれないけれども、やはり建て替えもやっていくべきだと思っています。そういう点でも、新規の募集というのは必要だと思います。積極的に募集や修繕も行っていくべきだと思います。その点で意見を聞きたい。
 それで、資料の三番を見ていただきたいんですが、県営住宅の一般公営住宅は、浴室は一〇〇%あるんですけれども、浴槽が設置済みなのは二九・八%、三割を切っているんですね。お風呂給湯設備も二七・五%になっています。
 大臣は、風呂なし公営住宅がこんなにあるのを御存じでしょうか。決して宮城だけの話じゃないんです、実は。健康で文化的な生活を営むに足りるという公営住宅法第一条に照らしても、このままでよいのかということも踏まえて御答弁をいただきたい。
○斉藤(鉄)国務大臣 最初の御質問でございますが、建て替えについては先ほど局長が答弁したとおりでございますけれども、住宅の質のレベルを維持していく、そのための修繕、これは当然必要だ、このように思っております。
 用途廃止を予定している公営住宅において、入居者募集や修繕を行うかは、地方公共団体が、地域の公営住宅ニーズや用途廃止の時期など地域の実情を踏まえ、判断するものと考えております。
 浴室の問題でございますが、公営住宅法制定当初は、その整備の基準に規定が置かれておりませんでした。その後の生活レベルの向上を踏まえ、昭和五十年の改正により、浴室を設置しなければならないことといたしました。浴室は、健康で文化的な生活を営むに足る住宅のために必要であると考えております。
 浴槽等の設置を地方公共団体が行うか入居者が行うかは、事業主体である地方公共団体が判断しており、入居者が浴室に浴槽等を設置して自宅で入浴できる環境にあるケースも少なくないと思われます。
 国土交通省としては、浴槽を含めた浴室の設置に対して社会資本整備総合交付金等により支援してまいります。
○高橋(千)委員 浴室は必要ですとまで言ってくれたのに、浴槽は自治体に任せると言われるのはちょっと残念な気がいたしました。やはり、一条の精神に照らして、また、時代が変わってきているということもあるんですから、これはもう一声、やはり見直しをしていただきたいと思います。
 今、本当に、災害時の問題や困窮者の対策や、そして子育て支援という点でも公営住宅の役割は見直されてきていると思います。ニーズはどんどん増えてきていると思うんですね。そういう意味で、廃止だけが前に出るということではない見直しを求めていきたいし、是非国も相談に乗っていただきたい、このことを求めて、終わりたいと思います。

2023年3月29日 衆議院国土交通委員会 提出資料

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