国会質問

質問日:2023年 3月 17日 第211国会 国土交通委員会

地域公共交通活性化再生法改定案(参考人質疑)

国が鉄路インフラを

参考人 欧州は「上下分離」原則

衆院国交委

 衆院国土交通委員会は17日、赤字ローカル線の再編で「再構築協議会」を設置することなどを盛り込んだ地域公共交通活性化再生法改定案について参考人質疑を行いました。

 宇都宮浄人関西大教授は、鉄道路線網が拡大・復活しているヨーロッパでは、線路など公共インフラを国が保有し、運営は事業者が行う「『上下分離方式』が原則だ」と指摘。「公共交通が独立採算制のビジネスでなく公共サービスととらえられている」と紹介しました。その上で「(日本でも)公共交通は公共サービスだというあり方を検討する必要がある」と主張しました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は、昨年12月に発表した党の鉄道提言が、地方自治体ではなく国が公共インフラを保有する「上下分離方式」を打ち出していると紹介。ローカル線を切り出して廃止の議論をするのではなく、JRを全体のネットワークとしてとらえ国がインフラ部分を持つことも考えられるべきだと語りました。

 宇都宮氏は、「全国的なネットワークで国がインフラ部分を持つことは十分ある」と語りました。

 武田泉北海道教育大准教授は、国の予算は、道路には何兆円も費やす一方で、鉄道には数千億円規模で、ほとんどが整備新幹線だと指摘。法案は「もしかすると鉄道だけ自滅に導くものだ」と批判しました。

(「しんぶん赤旗」2023年3月21日付)

-議事録ー

○吉田泉参考人 皆様、おはようございます。福島大学から参りました吉田でございます。
 本日は、こういった場にお招きくださいまして、ありがとうございます。
 私の方から、資料に沿いましてお話しさせていただければというふうに思ってございます。
 まず、今回の地域公共交通活性化再生法、地活化法と略されることもありますが、私は公共交通法と最近呼ぶようにしておりますけれども、これの一部改正案に向けてということで資料を作成してございます。大きくは四点ほどお伝えできればというふうに思っております。
 まず一点目でありますけれども、この地域公共交通に対する公的関与というものは不可欠であるということでございます。
 私も今、福島という地方大学に籍を置いておりますけれども、地方都市あるいは農山村地域を中心として、車の保有、これが前提となっている町の構造、町のつくりになっているという課題があります。そうなりますと、やはり車を運転をできるかできないかということによって活動機会、つまりお出かけの機会ですね、これにやはり大きな差というものが生まれてくるわけです。
 一方で、皆様に図の一というグラフをつけておりますけれども、これは、二〇〇〇年と比較をいたしました、総務省の家計調査から得ました公共交通の運賃に対する支払い額と、それから車の維持、これは購入に関するものは入ってございませんが、それに関わる価格の推移ということになります。支出の推移でございます。そうしますと、車は二十年間で支出三割ほど増えておりますけれども、コロナ禍もあり、公共交通は四割減、コロナ禍がなくても二割減ということになるわけです。
 したがって、もはや、地域公共交通、独自、独立採算、自立採算ということで、いわゆる内部補助を前提としたサービスの維持は限界を迎えておりますし、やはり家計に重くのしかかっているということが、やはり車保有を前提とした生活の中の一つの大きな問題であるというふうに思っております。
 そこで、次に、二番目でございますけれども、地域公共交通、この政策を地域戦略として位置づける、こういうメッセージというものも発していく必要があるだろうというふうに思っております。
 表の一を御覧いただければと思いますけれども、こちらは二〇一九年、コロナの直前の家計調査で得た、同じように公共交通の運賃、それから自家用車の保有や利用、ここに関わる家計支出の比較でございます。
 特別区ですとか政令市ですと、やはり公共交通の運賃、相対的に大きいわけですが、一方で、車の維持、保有に関わるコストが少ないですので、交通分野に関する家計支出というものは少なく済んでいる。ところが、人口五万を割ってくるような小規模自治体ですと、政令市、特別区と比べますと、年六万円大きい。それだけ家計にかかる負担の割合が大きいという構造があります。
 一方で、こうしたことが高齢者の免許の返納というところにも大きく関わってまいります。
 図の二がございますけれども、これは七十五歳から八十四歳、こちらの年齢層を対象にした、縦軸が免許返納の割合であります。これは二〇一九年でございます。横が家計支出比とありますが、これは表の一にございます公共交通の運賃の支払いを自家用車の維持、利用で割ったものということになりますので、横軸、パーセンテージが高くなるほど公共交通の支出が大きい土地柄ということになってまいります。そうすると、公共交通が選ばれる、選ばれやすい地域ほど、やはり車を手放しやすいという構造というものがあるわけであります。
 一方で、東北のような農業が盛んな地域ですと、実は、これとはまた別に、農業の従事者が多いと免許が手放せないという構造があるわけです。
 そういたしますと、一台はあったとしても、二台目、三台目という車の保有から移行できる手段を用意できるかどうかということが住民のウェルビーイングにもつながっていきますし、やはりそうした環境というものを若い世代も求めます。
 私も、福島大学、就職支援の担当もしておりますけれども、やはり学生中心に地元になかなか残りません。それは働き口があってもです。それは、車を中心とした生活で、自分自身が今度は親御さんのように送り迎えをしなければいけない生活というのが非常に負担がかかります。そうしますと、少なくても仙台、あるいは首都圏という形で、交通の利便性が高いところ、ここが就職の糸口になってしまっていますので、実は、地域戦略として、地域公共交通、捉え直していただきたいというところがございます。
 続いて、二ページ目でございます。
 三番目ですけれども、では、その中で、今回改正案として提出されている制度をどう生かしていくのかというところの点でございます。
 私自身、この三番に書いてございます楽しさと信頼性、これが地域公共交通に求められる大切な役割だというふうに思ってございます。
 信頼性という言葉ですけれども、これは市民の皆様、利用者の皆様に信頼されるサービスであるかどうかということになります。私自身、よく、品質、それから性能、これを保証するという言葉を使う場面が実はございます。
 品質保証と書いてありますが、例えば、地方都市のバスであったとしても、運行間隔が平準化され、つまり、最大の待ち時間が短縮され、高い頻度で運行されている区間というものは利用を増やすことができている、そうした成功例というのもあります。私が関わっている中でも、青森の八戸、こちらは二〇〇八年に取り組みましたが、六%乗客を伸ばしておりますし、前橋は昨年の四月から同じような形で実施をしておりますが、こちらは一〇%増ということで伺っています。
 これらは、実は、協議運賃制度であったり、あるいは共同経営であったり、これまでの地域公共交通の関連法に関わるような制度をフル活用して実現できたものということになりますので、こうした取組というものをやはり制度上も後押しをしていく、あるいは予算面でも後押しをしていくということを是非ともお願いしたいというふうに思っております。
 一方で、性能保証という点ですけれども、やはり農山村など密度が低いような地域、そこではやはり自宅から通院できる、通学できる、そういうところを重視していくということが必要になってきますし、そのための財源の確保ということも必要かと思っております。
 一方で、ローカル鉄道の議論というのも今回出ておりますけれども、やはり課題としては、運行頻度が低い、あるいはどんどん整備されていく並行道路と比べるとローカル鉄道の方が遅い、こういうところがあります。今回、社会資本整備総合交付金の基幹事業化等のところがあるわけでありますけれども、それで打ち手が増えていくということを期待したいというふうに思っております。
 例えば、鉄道かバスかというところで、いわゆるバス転換ということがよく表明されるわけでありますけれども、鉄道自体を高度化するという選択肢があってもいいと思いますし、バスに転換をするといっても、やはり遅いバスだと勝負できませんので、できれば高速化というところも、例えば道路側の制度の改正というところも含めて期待したいところです。
 一方で、これは既に行われていることでもありますが、鉄道とバスの共創で事実上増便させている、例えば徳島のような事例というのもあります。こちらも、いわゆる共同経営のような、こちらの活性化再生法の制度などをうまく使いながらやっているということになりますから、こうした取組というものを後押ししていくということも必要かと思っております。
 最後、大きな四番でありますけれども、地域公共交通のリデザインに向けたガバナンス、ファイナンス、コミュニティーと片仮名が三つ並んでございますけれども、この三つというものがやはりこれから実務上でのキーワードになってくるだろうというふうに思っております。
 今回、法改正が仮にかなうといたしましても、やはり現実の私たちの地域交通というものが改善される、活性化される、そして地域のウェルビーイングに結びつく、そこに持っていかなければいけません。
 そのためには、やはりガバナンス、これは法定協議会における意思決定というものが基本になってくるかというふうにも思っておりますけれども、これは何も地方圏に限った話ではなく、大都市圏でも今路線バス等の廃止、減便が進んでございます。全国共通の課題かというふうに思っております。
 一方で、今回の改正案の中にデジタルトランスフォーメーション、DXというキーワードも出てまいります。どちらかといいますと、従来の地域交通の取組というのは勘と経験と度胸という、こういう従来型のKKDに基づくようなものが多かったわけですけれども、それの精度を高める、やはり仮説、検証、データ分析、そういうものが結びついて、そういう人材育成というものも是非ともお願いしたいというふうに思っております。
 それから、ファイナンス、これは運賃負担と公的負担の組合せというものが前提となりますが、そもそも、地域交通、利用者以外にも便益が及びますし、運行内容で決定される費用と利用者の支払い意思額との間に差というものが生じてくるわけです。従来、総括原価方式に基づく価格設定が基本だったわけですが、不採算の地域交通においては、そこを続けていくということが限界。ですから、今回、協議運賃というものが創設されようというふうにしているわけですけれども、どういうふうに運賃、値づけを決めていけばいいかどうか、そういうガイドラインを作っていくということも重要かというふうに思ってございます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○山内樹参考人 山内でございます。
 このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 また、私は、今回の法改正に当たって、法改正に賛成の立場から表明をさせていただこうというふうに思っております。
 お手元の資料、地域公共交通の活性化と再生という一枚の紙がございまして、これに従ってお話を進めてまいります。
 まず、この改正にある考え方、背景にあるもの、これを申し上げたいと思うんですけれども、岸田首相が首相に就任されまして、新しい資本主義という言葉を言われました。そこにありますように、私も言うまでもないですけれども、成長と分配の好循環という形で、労働分配分をふやすこと、まずこれによって成長のエンジンを、こういうことだったと思います。
 私は、この考え方は、こういった地域交通政策、あるいは地域全体の政策、あるいはミクロの産業政策、こういったものにも非常に重要であるというふうに考えておりまして、私なりにそれを翻訳をして今回の法改正の賛成の根拠とさせていただいております。
 私自身も、二〇〇〇年前後に交通関係の事業法の改正が行われまして、その中で競争政策というのが強く打ち出された、そのときにお手伝いをさせていただきました。私はこの方向性は間違っていないというふうに思っておりますが、それが時代の変化とともに、そして、今回コロナという大きなショックを受けて大変環境が変わった、こういうことだと思っております。そういったところで岸田首相も新しい資本主義ということだったと思います。
 基本的には、この考え方に即して言えば、地域とか産業、そういったところで、基本的なインフラとか生活の基盤、これを拡充した上で、しかも、民間活力、マーケットの力、こういうものを発揮していく、こういうことの必要性を感じている次第でありまして、これが、私が申し上げた、新しい資本主義の地域版あるいは産業版、こういうことになろうかというふうに思っております。
 それで、マーケットというのはいつも完全ではございませんで、それによっていろいろな弊害が出る、マーケットのパフォーマンスには限界がある、その補正が必要であるということと、それから、マーケットが一番苦手としているのは分配問題ということでありますので、その必要性ということであります。
 そういった視点から、今回の法改正、地活化法の改正について、幾つかの特徴があるというふうに思っております。
 地域公共交通が惨たんたる状況であるというのは今もお話があったとおりで、これはもう御説明の必要がないというふうに思いますけれども、今回の法案でリデザインという言葉を使われた、これは非常に重要なことだと思っておりますけれども、要するに、交通というのは外部効果を発揮する、それを自ら取り込み、また、その外部効果によって地域がよくなる、こういう性格のものでございまして、そういったものをちゃんと見ていくというためには、今のある状況よりももっと効率化しなければいけない。そのためには、リデザインという形で統合とか、あるいは外部の効果を内部に取り込むということであります。
 これは私は非常に気に入っているので使わせていただきますけれども、参考図表の右下に一というのがございますけれども、これはお役所が作られた資料でございますけれども、ここに交通、他分野の共創という言葉が使われている。考えてみれば、今申し上げた外部効果とかそういったものというのはこの共創というものの上に成り立っているわけですね。ですから、それを取り込むことによって、交通自体のポジションを上げるということ、それからもう一つは、それによって効率化を図るということであります。
 例えば、今、地域に行くと、いろいろな交通手段が実は走っている。バスだけではないですね。スクールバスも走っているし、それから患者の輸送も走っているし、場合によっては、民間が買物のためにバスを走らせるなんというのもありますけれども、そういったところで公共交通がなかなか成り立たないというのであれば、一番簡単な例は、そういうものを統合して効率化する、こんなようなことがあろうかと思います。今のは一例ですけれども、そういった形のリデザイン、統合というものの必要性があると思っております。
 特に、最近非常に重要な政策でありますGX、脱炭素化という大きな流れがあるわけでありますけれども、脱炭素の中で交通をどう位置づけるかというのは実は非常に大きなポイントであります。これを共創という形でつくり出していく、それによって公共交通自体も維持、そして更に発展していくというようなこともあり得るというふうに思っております。
 それから、今もありましたローカル鉄道の再構築というのがもう一つの大きな柱であると思いますけれども、ローカル鉄道をどうするのかということで、今回の法律は国の関与を一定程度入れるということだったというふうに思います。
 それで、これも資料の方の右下の二というところにありますけれども、再構築の協議会をつくるということであります。
 これは今までも、地域の協議会という形で、再構築といいますか、どちらかというと、これは円満に廃止するかという、そういうことだったわけですけれども、ここでも再構築ということが非常に重要になる。要するに、新しいものをつくり出していくことによって地域の全体のモビリティーを確保していく、こういうことだというふうに思っております。
 よく、内部補助の問題というのがありますけれども、実は、私は若いときに内部補助の研究というのをやっておりまして、内部補助は、なかなか内部補助自体を定義するのも難しいし、それから、経済学的に言うと、これは配分上の効率とそれから所得再分配の問題なんですね。基本的には、今、再分配の問題になっていて、どこまでどういうふうに内部補助が許されるかということだと思います。
 そういった意味でいうと、社会的な合意の下に内部補助が許されるのでありますが、それを超えたところについては、今申し上げたように、リデザインというような形で新しいサービスをつくり出していく、これが必要であるというふうに思っております。
 それから、今回の法改正の一つの特徴、エリア一括というのがございますけれども、これはエリアを決めてそれを民間に任せる、それも一括ですから一者に任せる、こういうことでありますけれども、ある意味ではこれは公共的なサービス調達ということになるわけでして、そういった意味でいうとPPPという考え方があります。PFI法というのは九九年にできましたけれども、それから十年以上たって、こういった民間でもそういう考え方、これを適用できるんじゃないかというふうに思っております。
 競争性については、そこへ書きましたけれども、フォー・ザ・マーケットとイン・ザ・マーケットという言い方をします。マーケットの中で競争するということ。これは恐らく需要の小さいところでは無理でありますので、一括してやらせる。その中のフォー・ザ・マーケット、マーケットに対する競争というのを取り込んでくるという考え方であるというふうに思っております。
 それで、時間がなくなりましたが、最後のところでありますけれども、申し上げたいことは、効率的でサステーナブルな移動サービスを確保していく、こういうことだと思います。そのためにリデザインで再構築をするということでありますが、それは地域によって非常に大きな違いがある。それに対して地域がこれを意思決定するということではありますが、その中で、国の関与というものも恒常的にこれはやらなければならないことだというふうに思っております。
 予算の問題もありますし、それから、地域に応じてどういうふうにしたらいいのかということですね。これはなかなか、地域独自で判断というのは難しいところがある。それを、例えば運輸局なのか何なのか分かりませんけれども、いろいろな形でアドバイスを出すとかコンサルティングするとか、そんなようなことも必要になってくるかと思います。今、観光の基本計画を作っているんですが、観光の基本計画の中では、完全に国がアドバイザリー的な役目を果たしていくことがありました。ただ、やるのは地域、こういうことであります。
 それから、民間活力の話は、最初に申し上げたように、これは新しい資本主義ということでありますので、何か公共が全部やるという話ではない。民間がまた活力を用いることによって、リデザインで新しいサービスをつくり出していく、この体制が必要であります。
 事業の連携というのは先ほど申し上げました。それから外部効果の話もありましたけれども、GX、DXをどう取り込むか。
 MaaSという言葉があって、いろいろな実験をやられていますけれども、あれがうまくいくようにしていく、これも一つのあれですし、それから、GXでいうと、ちょっともう時間がないのでお話ししませんけれども、GXを取り込むことによって、鉄道事業者が新しいサービスを提供しようなんて動きが今非常にたくさん出てきています。こういったことを支援するということであります。
 いずれにしましても、国と自治体の長期的なコミットメント、それによって新しいものを生み出していく、時代にそぐうものを生み出していく、こういうための法律であるというふうに考えております。
 私からの陳述は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

○宇都宮浄人参考人 関西大学の宇都宮でございます。
 このような場をいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、資料に沿って説明したいと思います。
 本日は、私は、地域づくり、まちづくり、あるいは統合的政策という観点から課題を申し上げたい。
 今までお話がありましたとおり、資料の二、三ですけれども、地域交通の衰退、これが、地域の衰退、そして自家用車の過度な依存、こういう悪循環の中で、非常に厳しい。そういう中で、公共交通は公共財であり、かつ外部不経済を削減する、そういう意味がある。だから、国交省の資料でも、公的支援が必要なんだよとこれまで言われてきた。そういう意味で、今回の法改正というのは一つの大きな方向性だと思うのです。
 少し課題を申し上げますと、めくっていただきまして四ページ、五ページですけれども、現在の地域公共交通計画等の手引を見ますと、結局、じゃ、どうしろというかというと、公共交通をいかに効率よくといいますか、とにかく事業の収支率を上げて公的資金を使わないようにやってくれ、これが手引の最重要三ポイントであって、例えば、外部不経済を削減するという、右の五ページの自家用車分担率の縮小というところは、交通施策との関連性の高さすらマークが入ってなく、推奨にもなっていない、こういう形の手引になっている。やはり、これではなかなか地方が動けないんだろうな、この辺の改善は今後も求められる話だろうなと思います。
 次に、めくっていただきましたら、小山市のように、生活支援だけではなくて都市経営のツールだよということで、領域区分をして、しっかり支援をして、その結果、何と、コロナ禍にもかかわらず、四・九倍に定期券保有者が増える。これはやはり、年間定期券を七割引きにしたということですけれども、小山市の考え方は、もう都市経営のツールで公共サービスなんだ、だから、収支率ではなくて、効率性というのは、いかに政策目的を効率的に実現できるか、こういう姿勢を取っている、こういうのが重要なんだと思うんですね。
 もちろん、これはバスですけれども、鉄道になると、そうはいってももう少しお金がかかるとか、議論があると思う。そのときに費用と便益ということを考えることになるわけですが、この右のページを見ていただくと、交通投資の効果のうちの費用便益の範囲というのは非常に狭いわけです。それがまず一つ。
 それで、経済学者なんかは最近、幅広い経済効果、ワイダーベネフィッツというところを注目しているんですが、今日は、オプション価値アンド非利用価値、赤枠をつけたところを御説明します。
 めくっていただきますと、これも国土交通省のマニュアルにしっかり書いてあるわけですね、オプション効果というものがあるんだと。これは何か。いつでも利用できる安心感。つまり、運賃収入だけで賄うというのは、今、利用しているかどうかで決まる。けれども、そうではないと。交通というのは、ひょっとすると将来自分が使うかもしれない、あるいは自分の子供が使うかもしれない、そうやって家を買ったりする。つまり、そこにオプション価値というのがあるんだということですね。
 こういったものが本来あるんだけれども、残念ながら、費用便益分析上の便益では出てこない。したがって、費用の安い何とかになってしまうんですが、便益マニュアルに、国交省のマニュアルに書いてあるんですね。BバイCが一以下とかいう誤った評価をしちゃいけないよ、ちゃんとこれは限定されているんだから総合的に判断しなさいよということが書いてあるんだ、こういうことがまずあるんだということを申し上げておこうと思います。
 次に、政策の統合性ということで、海外の事例を少しお示ししたいと思いますが、これは、見てのとおりですけれども、日本はあしたから値上げとかありますが、オーストリア、ドイツ、こういったところは、燃料費は上がっているんですけれども、一年間住んでいる人には非常に安いチケットを出す。一日三ユーロ。年間十五万円最初に払っちゃうと、北海道の広さのオーストリア全土、新幹線も含んで乗れちゃう、こんな切符を出して、今こそ公共交通にシフトしてグリーン化するんだと。イギリスはグリーン産業革命ということで、鉄道路線の拡大、復活ということも言っているわけですね。
 なぜ、じゃ、ヨーロッパがそういうことができるかというと、これは、先ほどあったように、公共サービスなども、地域公共交通は独立採算のビジネスじゃない、地域公共サービスなんだということで、事業者はパブリック・サービス・オブリゲーションというPSOは課されるわけですが、しっかりそこに資金提供する、こういう仕組みができ上がっています。
 今回のは、法改正のエリア一括というのは、その第一歩だとは思うんですけれども、そこにちゃんと資金をあてがう、あるいは、鉄道については、欧州の場合、上下分離が原則ですから、インフラを支えた上で、サービス部門について、契約をベースにしてしっかり公的資金で支えながら、その上で民間が実力を発揮できるような仕組みになっている、こういうことですね。
 そういうことをやるために、次のページですけれども、モビリティー計画というのを各都市が作っているわけです。グラーツ、小さな地方都市です、オーストリア、二十九万人。交通手段分担率、今でも公共交通がそれでも二割ある。日本の地方都市の公共交通分担率五%と比べると四倍乗っているわけで、非常ににぎわっているんですが、それでもまだこれからもっと自動車の分担率を低くしていくんだよというこの目標が一丁目一番地なんです、世界の交通計画における一丁目一番地。日本と大分違う。
 例えば、ここの州なんかは、そもそも、商業開発、郊外にショッピングセンターはあるんです、開発のためには、三百メーター以内に三十分に一本以上の公共交通がなければ開発許可は下りない、そういう土地利用政策ともリンクしている。もちろん、サブスクのチケットは、市民であれば安く乗れる、こんな仕組みですね。
 この計画というのは、SUMPと呼ばれる、今日のタイトルに、サステーナブル・アーバン・モビリティー・プラン、十二ページですけれども、こういうEUが出した計画にのっとっていますが、実はもうこれ、EUだけではなくて全世界千都市が、今SUMPに基づいて地域公共交通計画を立てています。
 これは何がいいかというと、人に焦点というのはもちろんなんですが、やはりバックキャスティング、要するに、制約条件というのは、予算制約の前に環境や社会制約条件があるカーボンニュートラルだと。そこからバックキャストしていく、SDGsと同じですけれども。何が必要なんですかということになると、今こそ、公共交通、グリーンイノベーションが必要ですよということになってくるから、先ほどのオーストリアやドイツの政策、あるいはグラーツのような政策が取れるんだということです。
 次をめくっていただきますと十三ページ、ちょっとややこしい図ですけれども、これを、何も整合性を取らないと何が起こるか。これは、理論的に、二地点間の移動を道路と公共交通があるということで仮定して、道路は左側の原点から量を、公共交通は右側の原点で、この一定の量をシェアするんですけれども、実を言うと、ここで公共交通を改善せずに道路投資だけ起こって渋滞を解消させようとすると、一見、道路の費用曲線、費用というのは、これは時間コストも含めるんですけれども、下がって、みんな、ああ、道路が便利になったねと乗るんだけれども、その結果、公共交通側の時間コスト、費用、公共交通は平均費用が上がってしまう、人が減ると。
 結果的に、最終的に何が起こるかというと、道路投資をして公共交通は改善しない。むしろ最終的に渋滞が増えて悪化する、社会全体が損する仕組みなんだというのが、これは理論的には分かっているわけです。日本では、こういうことが実際に起きているのではないか。その意味でも、道路政策と公共交通の整合性も必要だろうということです。
 その際のお金ですけれども、公共交通を支える公的支援、次のページ、十四ページを見ていただくと、ヨーロッパはそもそも、インフラのみならず運営費でも、運賃カバー率というのは五割くらいです。とんでもないねと思うかもしれませんけれども、例えば、日本の地方自治体でも、市民プール、市民会館、どうですか。大体、行政、書いていますよね、運営費の五割は料金負担していただきますよ、そういう仕組みなんですね。それと同じだと考えれば、公共サービスだと考えれば、別にとてつもないことをやっているわけではない。
 その財源は何ですか。これは、確かにいろいろなケースがありますが、オーストリアですと、一般会計の再配分とか、あるいは日本と同じ地方交付税措置ですね。やはり地方というのは税収に偏りがありますので、そこを配分していく。そういう形でしっかり公共交通、公共サービスは支えるんだということです。ドイツなんかは、鉄道を五五%増やしましたよというのが、連邦交通省のホームページにばあんと出るわけですね。
 あと、教育との整合性というのも問われる。現在、例えば、事業者は、通学定期割引とか障害者割引とかやっています。この価格政策を事業者負担でやっているということはどういうことかというと、間接的には、それは利用者負担ですから、実を言うと、地方でいえば八割の車を運転している人、俺は関係ねえよ。要するに、地方で通学定期割引を支えている人は誰かというと、公共交通に乗っている老人と高校生が、そのお金で高校生の通学割引を支えている、障害者の割引を支えている。こういう受益と負担が全く一致しない制度が、たまたま明治時代の国鉄の社会政策に基づいた仕組みから残っている。こういうことは、本当にはっきり変えていかなければいけない。バリアフリーも同じです。みんなが社会参加するためにバリアフリー化しているのに、費用負担しているのは公共交通を利用する人だけ、これはおかしい、広く社会負担の仕組みが必要だろう、こういうことです。
 最後、まとめてありますけれども、本当に外部不経済が生じる市場メカニズムではいけないわけですから、しっかり公が関与するんだけれども、その際には、しっかりお金の部分も含めて関与していく、そして、しっかりとしたバックキャスティングのSUMPによる計画を立てて、整合的な政策を取る教育も含めて、本当に教育助成等の社会政策を民間事業がやっているという仕組みは、これは日本だけですから、こういうことは改善が必要であろう。
 あとは、長い目で見る、あるいは、支出という社会的便益の幅広い考え方、分野横断的なクロスセクターの考え方、こういったものに基づいて、今回の法改正に基づいた新しい交通政策というのは課題があるのではないかなというふうに思う次第で、地方交付税の活用とか、あるいは、今後、事業法が、今、独立採算をベースとした事業というのが前提になっていますけれども、その辺りも含めて、公共交通というのは公共サービスなんだという在り方をもう少し検討していく必要があるんじゃないかなということを課題として考えております。
 ということで、私からの陳述は以上にさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○武田泉参考人 武田でございます。お招きいただきまして、ありがとうございました。
 資料を基に説明していきたいと思います。
 まず一枚目ですけれども、本日御説明する内容ですけれども、今回の法案は、モビリティーについては触れられているんですけれども、インフラについては全く触れられていないということで、特に道路と鉄道の話、国交省内の道路局と鉄道局ということで、縦割りの構造が諸悪の根源である。二番目に、道路と鉄道の予算、財源の在り方、北海道開発予算とかを見るとよく分かるということです。三点目に、北海道内の現状、様々な協議会やバス転換、これが特に道内では反面教師となっているということを御説明します。それから四点目、打開策として、軌道法とか上中下分離とか、こういうものを使うということはいかがなのかということで、私案でございます。五点目、北海道で覚悟と気概を持って取り組めば、逆に全国へと展開できるんではないかということでございます。
 一枚めくっていただきまして、二枚目に行きます。今回の改正論議の率直な印象ですけれども、今回の法案は、母屋に手をつけないで、屋上のプレハブを増築していく、そういうものではないかということです。それで、鉄道事業法とか大臣指針とか、そういったものはほぼ温存されたままで、交通税とか特定協議運賃とか、そういったものばかり出ておりまして、その中で、あとは道路局側の支援施策というのが全く見受けられないということで、国交省全体を挙げた対応とは到底思えない、やれることが非常に限られているんじゃないかということが初年度の予算でも見られます。
 それから、社会資本整備総合交付金についても、今までにない踏み込んだ内容ではあるけれども、実際どこまでできるのか非常に不透明で、運用面が読めない。
 歴代の大臣答弁も、結局、各局の局ごとの局益答弁に終始していて、例えば、JR等の鉄道事業者を指導する、そういう言い方をされていますけれども、では、その鉄道に対してどのような国として予算を出すのかということはほとんど語られないということであります。
 それから、交通分野では、河川とか環境分野と比べて、デモクラシーの導入が著しく遅れているんじゃないかというふうに言えます。
 三ページ目に参ります。
 道路と鉄道の関係でありますけれども、これは昔から、もう戦前からありますけれども、戦前の内務省と鉄道省から、建設省、運輸省。それから、交通か運輸か、公共か民営か、公共事業か公益事業か、国が直接事業をするか規制して民間にやらせるかとか、インフラかモビリティーかということで、似て非なる分野なのに、施策は全く別になっています。
 予算規模の圧倒的な違いということで、道路予算は何兆円の世界ですけれども、港湾、鉄道、空港等は何千億円の世界で、その中の鉄道は数千億円の世界で、その中で整備新幹線がかなりの部分を占めている。初年度五十億円というような数字が示されておりますけれども、これは、地方におきます高規格道路一キロメートル当たりの建設費で、例えば、山間部のトンネル部分の暫定二車線なんというのは大体四、五十億円と言われていますけれども、そういう額でしかないということですね。だから、道路の受皿としてできることということであれば、軌道法ということが考えられるんじゃないかということがあります。
 次のページに行きます。
 例えば、写真が出ていますが、左側の二枚が、広島県と岡山県にまたがる芸備線のところで、上の側の写真は、裏側に高規格道路を造っているところで、直接競合しないとはいえ、造っているところですね。その下側のところは、芸備線の踏切がある先に、これは、重点道の駅ということで、かなり全国的にも有名になっていて、日経新聞にも取り上げられたような、道の駅が線路に背を向けて建っている状況でございます。
 右側に行きますと、これは、山形県の陸羽西線、ここは、高規格道路を造るということで、そのトンネル工事で、かなり支障するということで、二年間にわたって鉄道を止めて、道路の工事の犠牲になっているというところでございますけれども、こういうことも行われております。
 次のページ、お願いします。
 鉄道存廃の協議会ですけれども、私は、四つの協議会や住民説明会があると思います。
 一つ目が任意の協議会でございまして、これが鉄道存廃を自主的に決めているところでございまして、ここは任意なので、非常に密室性が高くて、拙速な議論をしたり、専門知識が欠けたりするところで、報道のぶら下がり取材によって、ようやく、沿線住民は結果のみ後から知らされるというところでございます。
 二番目が、鉄道事業法における廃止手続代替交通確保協議会ですけれども、これは、廃止を半年間繰り上げてもいいかどうかだけやっていまして、事実上、追認の場になっています。
 それ以外に、三と四が今後の、現行と改正の協議会の在り方ですけれども、これも運用次第になっているところでございます。
 次のページをめくっていただきますと、左側が二番目の代替交通確保協議会ですけれども、背広を着た自治体関係者だけで、住民も非常に少数しか傍聴に来ておりませんけれども、右側は、これとは別の、鉄道廃止が決まってからの住民説明会でございまして、これは、要するにバス転換をどうするということしか議論の対象にならない、こういうことが特に道内では行われているところでございます。
 次に行きますと、バス転換の問題点としては、自治体ごとにぶつ切りで運行しているということで、広域運行が非常に消極的なので、鉄道が有していた広域性とかネットワーク性が大きく損なわれるということで、乗り継ぎとか運賃、ダイヤとか、そういったものが非常に困難になっておりまして、数年のうちに溶けて消え去るように、衰退の一途になっているところでございます。
 次のページに行きます。
 それで、これは北海道の日高線の場合でございますけれども、左側の上が、拠点駅の静内駅の廃止後の状況でございまして、高校生とかがわざわざ旧駅のところまで来て、バスターミナルに、乗ろうとしています。それで、右側ですが、苫小牧行きの道南バスで、静内を出て直後の非常に混雑している状況ですけれども、次の町の新冠を過ぎますと、このようにがらんとした状況になってしまいまして、広域的な鉄道輸送だったものが、バスになって非常に短距離しか乗らなくなってしまうという状況でございます。
 それで、突破口としての軌道法の活用でございますけれども、やはり、鉄道局と道路局が別々にやっているということで、軌道法は、道路と鉄道局が共管であるから、これは路面電車の法律でありますけれども、これを持ってきますと、国が上下分離の下を持つということができるようになるんじゃないかということで、かなりの路線を残して、全国的な在来線のネットワークが維持可能になるのではないかということでございます。
 次のページを見ていただきますと、これは、左側の方が鉄道の法制、右側の方が鉄道局と道路局の共管の法制でございまして、共管の方に行きますと、インフラとして下を持つことができるということで、国がもっと積極的に予算を出す根拠になるんじゃないか。
 次に、上中下分離ですけれども、上下分離は盛んに言われていますけれども、私は、道内の事例を見ていますと、中というもので、その次のページを御覧ください、これですね。要するに、上の部分を上と中、つまり、車両運行とか運営と、車両の保有というものにもう少し分けて、下は下で線路の保有ということで、このようにもっと細分化して、地元の自治体がもうちょっと取り組みやすいような、そういうものがもっとできないかということで、鉄道だけが全部一体になっているところでございます。
 次のページを見ていただきますと、これはちょっと恐縮ですけれども、二〇一七年の北海道開発予算のところで、毎年シェア比はほぼ同じでございますけれども、港湾空港鉄道等というのがありまして、うち港湾と空港を足しますと、二七七五〇になりまして、鉄道は毎年ゼロでございまして、それで道路整備はこの額になっているということで、こういう状況が、鉄道はゼロということがずっと続いているということでございます。
 最後のページを見ていただきますと、まずは北海道で仕切り直しをして、新たな再構築モデルをつくって全国展開ということができるんじゃないかということで、北海道はバス転換先進事例の反面教師ではないということで、刷新検討会とか国交省の鉄道局は都合のよい側面しか見ていないということで、並行在来線とか貨物調整金がございますし、無用な議論や赤字の押しつけ合いでは不毛でしかないということで、制度設計とか運用が改善されないと機能しないということで、特に、道内のような、行政だけ、首長だけの議論では、矮小化して、負担割合とか経費の削減だけにしかいかないということで、だから、まだできることはあるのではないかということで、創意工夫とか有意義で柔軟な発想が必要ということで、鉄道とまちづくりの実効的な、施策的な一体化、特に、道内では、北海道開発予算というものをもっと積極活用して、北海道開発局は是非この鉄道の存廃問題に、議論に加わるべきということで、例えば、道の駅とかシーニックバイウェイとか、そういったものを鉄道駅に隣接させるとか、鉄道も含めてシーニックレールウェイにするとか、そういったものもできるんじゃないかということで、そういうことでありますと、やはり、もし法改正が行われるのであれば、国交省の鉄道局と道路局の在り方についての行動計画やロードマップを示すことが条件になるのではないかと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、四人の先生方、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。
 私からは、まず宇都宮参考人に伺いたいと思います。
 先生が日経新聞に連載された「暮らしを支える交通政策」、大変共感して読みました。先生は、欧州の鉄道について、基本は、インフラ部分は公的な管理とする上下分離方式になっていることを紹介しております。日本共産党が昨年末に出した提言においても、上下分離方式と政府が言うのは自治体がインフラを持つという意味でありますので、私たちは、やはり公共インフラとして、国がインフラ部分は保有するべきだというふうに提案をしております。
 大臣の答弁は、やはり欧州の話をしても国によって違うとおっしゃいますし、日本は自治体が持つのが一般的だと、こういう答えでとどまっているわけですけれども、ただ一方では、整備新幹線においては、鉄道運輸機構が保有する、いわば上下分離方式になっていると答弁があったわけで、だったら、赤字ローカル線だけを切り出しして転換という必要がないんじゃないのかなと、JR全体のネットワークを維持して、国がインフラ部分を持つということが考えられないのかなと思っているんですが、改めて御意見を伺います。

○宇都宮浄人参考人 御質問ありがとうございます。とともに、私の記事を読んでいただきましてありがとうございます。
 おっしゃるとおり、欧州、上下分離で、もっと言えば、世界的にも、インフラ部分を公共が支えるというのはほぼほぼグローバルスタンダードであるわけであります。そういう意味において、日本でも今後ということなんですが、それを誰が持つかという話については、議員御指摘のとおり、全国的なネットワークということになりますと、やはり国家的な議論になってまいりますので、国がインフラを持つという考え方は十分あるかと思いますが、欧州でも国によって違いますし、私自身は、いわゆる所有権を全て国が持つ必要があるかというと、そこについては、私は地方が持つべきところは持っていいと思っています。
 といいますのも、やはり公共交通、地域公共交通、交通インフラを、ちゃんと地域のイニシアチブでもって設計していくということを考える、その上では、地域というのが一番その地域をよく知っているわけですので、全国ネットワークに組み込まれたところはともかくとして、そうでない地域の地域公共交通として生かすところは地域が持つという判断はあり得るかなと思います。
 もう一点、ただ、さはさりながら、地域というのは、残念ながら地方は、日本の場合も海外もそうですけれども、収入という意味では偏りがあります。地域が持つといっても、税収は、例えば首都圏に比べれば税収はございません。そういった意味での資金的な配分については、そこは、国は余り口は出さなくても、しっかりお金の面で支えていただく、そういう意味での国の関与というのも必要になってくるのではないかなというふうに思っております。
 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 三セクで頑張っている自治体もたくさんありますし、私、地元は青森ですので、在来線を持っているんですが、ただ、そういう頑張っているところもある一方、長大な今のJRがもし切り離されたときに大変だなという声をおっしゃったのは実は道庁だったんですね。
 やはり、私がこだわっているのはネットワークであると。全体で見るときには、やはり国が持ったら、本来はそうすべきじゃないかな、自治体にそこまで負担をさせるのではなくて、自治体は独自のこともやっているからという思いでお話しさせていただきました。
 それで、続きまして、武田参考人に伺いたいんですけれども、先生はJR北海道の関係で、函館本線や日高線など、住民の会にも関わってこられたとのことであります。私も先月小樽に行ったものですから、蘭越でも住民の皆さんとお目にかかったり、札沼線や留萌線の沿線自治体の首長さんとも懇談をしてきました。
 今回の法案の先取りというような形になるかなと思うんですが、六年前にもう既にJR北海道は単独では維持困難な路線というのを指定をして協議を重ねてきたことや、国が監督命令という形で指示をしていたこと、これは先週の委員会でやり取りしたことなのでありますけれども。
 先生が紹介されているように、観光やまちづくり、どこの自治体でも私は努力されていると思うんですね。頑張っても、ただ、それで数百人の密度のところが数千人と元に戻るという、単純ではないと思うし、また、正直言って、その必要があるのかな、そこまでいかなきゃいけないのかなというのは率直に思うんですが、いかがでしょうか。

○武田泉参考人 御質問ありがとうございます。
 ちょうど一週間前に、先生の質疑をすぐ横のそこで聞かせていただきました。そのときに、大臣の答弁は何かすごくすり抜けるような感じで、非常にがっかりしたようなところでございますけれども、ちょうど一週間後に私にこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 先生おっしゃるとおり、北海道はそういう観光とかまちづくりで是非鉄道を活用していきたいというふうな、いろいろな声が道民のあちこちから上がっているわけでございますけれども、ただし、やはり現在の道庁とか北海道運輸局でございますけれども、鉄道の相談に行っても非常に冷淡でございまして、私と何かほかの団体の方が運輸局の鉄道部長のところに前行きましたら、名刺交換だけで、すぐに何か追い返されるように、立ち話で終わってしまったということもございました。
 何か、北海道の鉄道がいろいろな存続策、どのようにしたらいいかという、その議論について、赤線区と黄色線区ということで分けて、何か、国というか運輸局の方は、運輸局を通じてですけれども、地元の方に何か最後通告のような言い方をして、債務処理法の対象外だとか、そういう話をしたので、富良野―新得間とか留萌線とかが今回断念に至っているということで、それで、私もちょっといろいろ調べてみたんですけれども、国が監督命令の中で、赤線区を対象外にしたという、その根拠は何かということで、それはどこを見てもちょっと不明確なんですよ。それで、たしか鉄道局が作ったパワーポイントの一枚の紙のごく小さいところにちょっと触れてある、それだけが根拠で、何か根拠が曖昧なんですよ。要するに、赤線区を債務処理法の対象外にするという。
 その辺が、確かに二百人以下という、そういう輸送密度で、ほとんど住民が使っていないじゃないかと言われればそのとおりなのかもしれないけれども、そのうちの一部の路線は、並行在来線もありますけれども、ネットワークを形成するとか、歴史的にかつてからつながっていて、圏域をつなぐ役割をしていた、そういう路線があって、今回のこの法案の中でも、北海道は特例として、旧支庁、振興局をまたぐようなものは内地府県の県に相当するものというような言い方をしているんですけれども、それが何か実効性が余り施策の中には出てきていないんじゃないか。
 それで、例えば北海道でいろいろ協議会を立ち上げた場合に、やはり道庁の本庁の意向とか、運輸局であれば本省の意向が余りにも強くて、自由な議論ができず、かつ、どのような仕組みがあるかというか、いわゆる、津軽海峡がありまして、本州の方でいかに工夫しているかという話が、全然北海道の方に届いていないわけでございます。
 そうしたことも踏まえますと、やはり協議会の在り方というか、あと、北海道では今ちょうど改正法案を審議しているんですけれども、審議に先立って、存廃を決めてしまって、廃止、断念というようなことが、ここ数か月でどんどん続いております。
 そういったことで、せっかくこういう新しい制度、法案を準備しているのに、北海道では場違いのような状況になっている。この辺が北海道ではどうなっているということで、やはり道庁、それから鉄道局、そういったものが北海道に果たしてどのような鉄道網の将来ビジョンというか、それを描いているのか、その辺がいまだもって不明確でございますので、是非、そういったものが提示されるべきではないかというふうに考えています。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 いろいろ聞きたいことがあるんですが、時間もありますので、次は吉田参考人に伺いたいと思います。
 高齢者が安心してお出かけできる地域社会と題した先生の評論、大変興味深く読みました。
 高齢化率が年々高まって、そのために、高齢者による深刻な運転事故も顕在化しております。これは、高齢者の事故が増えているわけじゃなくて、高齢者が増えているから割合が高く見えるというだけだと思うんですけれども、いずれにしても、公共交通網が行き届いている都市部ほど免許返納率が高く、その逆の地方では低いというのは、なるほどなと思うし、何とも、どうしたらいいものかということがとても悩むわけですよね。
 私は青森市の出身ですので、一家に二台というのはむしろ普通という、そういう生活をみんなしていますので、免許返納をしなきゃいけないのか、どうしようかと悩んでいる方はたくさんお話を聞くわけです。
 財政力も弱く非効率にもなる地方が地域公共交通網で住民の足を守るためには、やはりそのギャップを埋める支援がかなり必要だと思うんですけれども、伺いたいと思います。

○吉田樹参考人 ありがとうございます。
 先ほど私もお話ししましたけれども、やはり公共交通をよく使っていただけているような土地柄であるほど免許返納が進んでいるということは本当に事実かというふうに思っています。
 確かに、地方ですと、やはり財政力が弱い。そこを、例えば、特別交付税なんかも使いながら補っているというような状況に現実はあるわけですけれども、それ以上に、やはり運転できる人の担い手自体が地方の場合には更に足りていなくて、それが原因で路線を減便する、あるいは路線を縮小するということが起きているんですよね。
 一方で、なかなかやはり免許が手放せないというふうにおっしゃる方も、東北の場合、特に多いんです。先生も御案内のとおりに、農業が盛んな土地柄ですから、そのためにやはり運転はしたい。でも、そこで運転をしていると、実は、ふだんの買物に行く、病院に行くというところでも引き続き運転をしてしまう、そういう構造があるんですよね。
 ポイントになるのは、やはり無理に運転しなくてもいい、その辺りのサービスというものをどれだけ提供できるかというところなんだと思います。
 その意味でいえば、残念ながら、では、それを実現するためにはどのくらいのコストというものが、例えば一自治体、青森市であったら青森市でかかってくるのかというところが、十分に公共交通政策を立案する中で検討されているわけではないんですよね。
 一回そういう具体的な理想像というのを見て、そこにどのくらいやはり財源が必要になってくるのかということを見て、そこを、皆さんからいただく運賃と、それから公的負担をどういうバランスを持ってやっていくのか、実はそういう議論というものを各地の協議会でやっていかなければいけないというふうに思っております。
 以上です。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 今の吉田参考人に対する質問とも関連しながら、山内参考人に最後に伺いたいと思うんです。
 政府も、リデザインですとか共創ですとか、様々な多方面の検討会を重ねてまいりましたし、また、鉄道ということでは、貨物との兼ね合いもあって、物流の検討会などもあったと思います。そういう中で方向性を最終的に目指していくというのは非常に難しいなと思いつつ、ただ、自治体でも様々な努力をやはりされていて、バスといっても、町営バスもあれば、路線バスもあれば、民間バスもあり、乗り合いタクシーもあり、それをうまく組み合わせてやっているというのは、実はもう既に始まっていることだと思うんですね。
 私は、その中に、やはりバスがラストワンマイルと言われるように、鉄道も位置づけるべきだと思いますし、やはりその中での国の支援、町の頑張りに対しての国の支援、関与というのは更に必要かなと思っているんですが、最後に一言お願いします。

○山内弘隆参考人 先生おっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、私自身もいろいろ議論で、政策立案で携わらせていただいておりますけれども、今おっしゃるような方向で進めていくための法案といいますか、法改正が今回のものだったというふうに考えております。鉄道のコミットメントもそうですし、それからバスの長期的な維持のためのコミットメントもそうだというふうに思っております。
 一つだけ地域交通について申し上げたいことがあって、私、五十年近く前に群馬県の利根村というところで、利根村というのは当時も過疎地域だったんですけれども、過疎地域でどういう交通手段があるかということを調査したことがあったんですね。
 それで、そのときにバスが廃止になって、全く交通手段がない。そういうところに、高齢者の方はどう移動しているんだといったときに、その集落で長がいて、おばあさんはそこに電話して、あしたどこかに行きたいから何とかできないかと言うと、その長がいろいろ手配をする。それで、誰かの車に便乗して町まで行って、それで用を足して帰ってくる。おばあさんはそのお礼として大根を上げる。大根を上げちゃうと、これは道路運送法違反。だけれども、そういうことだと思うんですよ、やはり最終的には、そういうところをあれするのは。
 この話はちょっと落ちがあって、それを、当時運輸省ですけれども、運輸省が、非常に面白いと言うと変ですけれども、考えられて、一度実証実験をやろうと思ったことがあるんですけれども、実証実験をやろうと思ったら、各方面から反対が入ってこれはできなかったという、そういうことがあります。
 それはどこかというのは、皆さん大体想像つくと思うんですけれども、今やそういう時代ではなくて、それを実現する世の中であって、それが今回の地活化法の改正であり、それから、これからそういったバス、タクシーよりももうちょっと個人単位の交通をうまく使えないかという、そういうような議論も今しておりますので、そういう方向で、先生おっしゃるようなことだというふうに思っています。
 以上でございます。

○高橋(千)委員 大変興味深く聞かせていただきました。
 ありがとうございました。

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