国会質問

質問日:2023年 3月 14日 第211国会 本会議

地域公共交通活性化再生法改定案

赤字鉄路 国が存続を

高橋氏 地域再生の責任訴え

衆院本会議

(写真)質問する高橋千鶴子議員=14日、衆院本会議

 切り捨てが進む赤字ローカル鉄道の再編にむけて話し合う「再構築協議会」の設置等を盛り込んだ「地域公共交通活性化再生法改定案」が14日、衆院本会議で審議入りしました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は「赤字ローカル鉄道の問題は、ひとり鉄道の責任ではない。問われるのは地域の再生そのものであり、政治の責任も免れない」と述べ、国の責任で「鉄路」を存続させるよう主張しました。

 高橋氏は「政府自身が東京一極集中を進め、整備新幹線や高規格道路等の開発を進めた一方、ローカル鉄道はその役割を縮小させてきた」と指摘。1987年の国鉄分割・民営化時に、政府・自民党はローカル線を「維持存続する」と国民に約束したはずだと述べ、「国が分割・民営化を反省し鉄道を維持、活性化していくため責任を果たすべきだ」と迫りました。

 斉藤鉄夫国交相は「一部のローカル線は大量輸送特性が発揮できず、こうした問題への対応が急務」などと、反省なく法案の趣旨を説明しました。

 高橋氏は、欧州連合(EU)で採用されている上下分離方式のように、運行を事業者、線路等の公共インフラは国が保有すべきだと提案しました。

 国が再構築協議会を組織する際、「地方自治体は必ず参加しなければいけないか」との質問に、国交相は「正当な理由がある場合を除き応じなければならない」と答弁。同氏が地方紙で「(ローカル線は)半分以上残る」と述べた趣旨について「一定数は存続」と説明し、それ以外は廃止という廃止中心の国の姿勢が浮き彫りになりました。

(「しんぶん赤旗」2023年3月15日付)

 

-議事録ー

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、地域公共交通活性化再生法改正案について質問します。(拍手)
 長引くコロナの影響で、ローカル鉄道の存続が危機的状況に置かれています。昨年、JR各社が輸送密度二千人未満の線区を公表し、百円の収益を上げるために一万円かかるなどとセンセーショナルに報じました。
 危機の背景について、政府は、人口減少やマイカーへの転換、都市構造やライフスタイルなど、環境の変化を挙げています。その政府自身が東京一極集中を進め、整備新幹線や高規格道路などの開発を進めてきた一方、地方の生活の足としてのローカル鉄道はその役割を縮小させてきたのです。
 赤字ローカル鉄道の問題は、独り鉄道の責任ではありません。問われるのは地域の再生そのものであり、政治の責任も免れないと思いますが、見解を伺います。
 大臣は民間事業者では限界があると答弁しましたが、分かり切っていたことです。一九八七年の国鉄分割・民営化では、採算の取れない八十三の特定地方交通線を廃止、移管対象にして、四十五路線が廃止されました。JRに引き継いだローカル鉄道は、内部補助制度で維持存続させるというのが国民との約束でした。自民党は、ローカル線もなくなりませんと公約を掲げていたではありませんか。
 JR各社は、スリム化と称して、減便、特急、急行の廃止、駅の無人化、駅トイレの撤去など、サービスの切捨てを進めてきました。結果、利用者を遠ざけ、維持困難になる負のスパイラルに陥っています。コロナは単なる口実にすぎません。既に本州のJR三社などは黒字に転換しているのではないですか。
 国自身が正面から国鉄分割・民営化を反省し、鉄道を維持、活性化していくために責任を果たすべきです。
 輸送密度が千人未満でも、貨物路線は再協議の対象外とするのはなぜですか。
 また、脱炭素社会に向けて鉄道の利用拡大は重要だと考えますが、お答えください。
 鉄道路線廃止については、二〇〇〇年、届出制に緩和されましたが、これを許可制に戻すべきです。
 一九八〇年代当時、EUでも鉄道の民営化が進みました。インフラ部分は国等が保有し、運行部門のみを民営化する上下分離方式が採用されています。線路などのインフラは道路と同じ公共施設であり、自動車と同じレベルで競争できるようにするためだと聞いています。日本の鉄道に対しても同じことが言えるはずです。
 日本でも、整備新幹線はインフラ部分を鉄道・運輸機構が保有する上下分離方式になっています。赤字路線だけを切り取るのではなく、全体のネットワークを維持する、そのために国がインフラ部分を保有すべきと考えますが、見解を伺います。
 法案について伺います。
 国が再構築協議会を組織しなければならないのはどのようなときか、また、国が協議会を組織する際に地方公共団体は必ず参加をしなければならないのか、伺います。
 再構築協議会が行う実証事業や再構築方針には、ローカル鉄道をそのまま存続する道も含まれますか。斉藤大臣は、地方紙の取材に答えて、半分以上は残るのではと述べていますが、その真意を伺います。
 交通手段再構築事業では、バスや乗り合いタクシーへの転換を規定しています。三大都市圏以外の路線バスの赤字事業者の割合は、鉄道よりも多い、九九・六%。運転手のなり手がいないなどとして、バス路線の廃止も増えています。この現状をどう認識しているのか、本当にバス転換が鉄道の代替策になり得るのか、見解を伺います。
 鉄道の協議運賃制度について伺います。鉄道運賃を原則一律で運行距離によって定めている理由は、運賃の地域間格差を生まないためではなかったか、確認させてください。地域ごとの協議運賃になれば、運賃が値上げされるか、あるいは、値上げが鉄道を維持する条件にされるという懸念があります。お答えください。
 終わりに、昨年で鉄道開業百五十年を迎えました。鉄道ファンを魅了してやまない美しい橋梁や渓谷、駅舎など、ローカル鉄道の魅力を生かし、まちづくりや地域再生につなげていきたいと決意を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 高橋千鶴子議員から御質問いただきました。
 まず、ローカル鉄道の問題に対する政治の責任についてお尋ねがありました。
 ローカル鉄道の利用者の大幅な減少については、人口減少や少子化、マイカー利用の普及やライフスタイルの変化など、鉄道事業者の経営努力のみでは避けられない事情が背景にあると考えております。
 そのため、鉄道事業者任せにすることなく、自治体が主体的に関わりながら、どのような地域の将来像を実現していこうとしているのか、その中でどのような地域公共交通が必要なのかというビジョンを持った上で、地域公共交通の機能の回復に共に取り組んでいくことが急務となっていると承知しております。
 今般の改正法案は、そうした事業者と沿線自治体の連携、協働を国として積極的に促していく観点から提案させていただいているものですが、この中では、人口減少や少子化への対策、国土の在り方等に関する国の政策の方向性との整合性を確保していく必要もあります。
 こうした取組の推進に当たっては、当然ながら、政治のリーダーシップも重要になってくると考えております。
 次に、JR本州三社などが黒字に転換している点や、国鉄分割・民営化についてお尋ねがありました。
 JR本州三社及び九州につきましては、コロナ禍の影響により大幅な赤字を計上いたしましたが、利用状況は改善傾向にあり、令和四年度においては、令和元年度までの水準には及ばないものの、黒字決算を予想しております。
 今般の改正法案においても、上場後のJR各社については、JR会社法に基づく大臣指針を遵守し、内部補助も活用して路線を適切に維持することが大前提であり、この考え方に変更はありません。
 他方、一部のローカル線については、人口減少やマイカー利用の普及等を背景に、輸送需要の大幅な減少等により、大量輸送機関としての鉄道特性が十分に発揮できない状況が出てきています。
 国土交通省としましては、国鉄改革が目的とした鉄道の再生は着実に図られているものと評価しておりますが、その一方で、こうした問題への対応が急務と考え、関係者との連携と協働により、地域公共交通の利便性と持続可能性の向上を図る観点から、今般の法改正を提案させていただいているところです。
 次に、貨物路線の取扱い及び脱炭素社会に向けての鉄道利用拡大についてお尋ねがありました。
 貨物鉄道輸送は、CO2排出量が営業用トラックに比べて十分の一といった地球環境に優しい大量輸送機関であり、カーボンニュートラルの実現やトラックドライバー不足に対応する観点からも、ますます大きな役割を担っていくことが期待されます。
 昨年、国土交通省において開催した地域モビリティー検討会でも、貨物列車が現に走行している線区、災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区においては、引き続き、鉄道の維持を図っていくことが強く期待されることが提言されています。
 今後、こうした考え方を地域公共交通活性化再生法に基づく基本方針に盛り込み、新たな制度を適切に運用していきたいと考えております。
 次に、鉄道路線の廃止についてお尋ねがありました。
 鉄道路線の廃止については、鉄道事業法上、一年前までの届出制になっておりますが、これは、平成十一年の鉄道事業法の改正において、需給調整規制を廃止する観点から、鉄道事業の参入について免許制から許可制とされたことに合わせ、退出についても許可制から届出制とされたものです。
 他方、先ほど申し上げましたとおり、JR会社法に基づく大臣指針により、上場後のJR各社については、路線の適切な維持のほか、路線を廃止しようとするときは、輸送需要の動向等を関係自治体等に対して十分に説明することが求められており、現に、地域との十分な対話と理解なくして鉄道の廃止の届出が行われた事例はありません。
 このように、鉄道事業者が地域と真摯にかつ丁寧に向き合うことが基本であると考えており、引き続き、現行制度を適切に運用してまいりたいと考えております。
 欧州における事例と併せ、鉄道のインフラ部分の保有についてお尋ねがありました。
 鉄道の運営の形態については、国によって、人口密度や都市構造、国と地方政府の関係等が異なることから、様々な形態が選択されております。
 我が国においては、御指摘のとおり、全国的な高速鉄道ネットワークを形成する整備新幹線は鉄道・運輸機構が建設、保有する一方で、地域公共交通を担うローカル鉄道については、上下分離方式を採用する場合、鉄道施設を自治体等が保有する形態が一般的です。
 この場合においても、国からの安全対策を始めとする補助金について、補助率のかさ上げにより地方負担の軽減を図っておりますが、今般、社会資本整備総合交付金を活用するとともに、地方交付税措置を拡充するなど、地方負担の更なる軽減を図ってまいりたいと考えております。
 次に、国が再構築協議会を組織するに当たっての条件についてお尋ねがありました。
 再構築協議会は、沿線自治体又は事業者からの要請に基づき組織するものとしており、沿線自治体又は事業者から要請があった場合、国は、当該要請に係る区間が大量輸送機関としての鉄道の特性を生かした運送サービスの持続可能な提供が困難な状況にあるか、当該区間に係る交通手段再構築を実施するために関係者相互間の連携と協働の促進が特に必要であるかのいずれにも該当すると認める場合、協議会を組織することとしております。
 また、協議会設置の通知を受けた者は、沿線自治体を含め、正当な理由がある場合を除き、協議に応じなければならないとしております。
 他方、国は、協議会の設置に際しては、沿線自治体の意見を聞かなければならないこととしており、沿線自治体の理解なく協議会が設置され再構築の方針が協議されることは、基本的に想定されません。
 いずれにせよ、国としては、協議会を設置する場合には、こうした制度の趣旨を沿線自治体に対してしっかりと説明し、協議会への参加を粘り強く要請してまいります。
 次に、再構築協議会での実証事業の実施や再構築方針策定に当たっての鉄道存続の可能性についてお尋ねがありました。
 再構築協議会での協議に当たっては、廃止ありき、存続ありきという前提を置かずに議論するものであり、実証事業の実施や再構築方針の策定において、鉄道輸送の利便性向上により輸送需要を回復する内容とすることはあり得ると考えております。
 なお、御指摘の私の発言は、協議会の関係者による議論の結果、鉄道として存続する線区が一定数出てくる可能性があるのではないかという趣旨で述べたものでございます。
 次に、バス転換が本当に鉄道の代替策になり得るかについてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、地方部における路線バスの経営状況は極めて厳しく、国及び自治体の支援によってサービスを維持している状況であり、また、バスの運転手不足についても喫緊の課題と認識しています。
 このため、協議の場においてバスに転換する選択肢が検討される場合には、その運行ルートのほか、国及び自治体、鉄道事業者による持続可能な費用負担の在り方について協議することとなります。また、あわせて、担い手となるバス事業者の経営状況、車両や運転手の確保の見込み等を確認する必要があると考えています。
 なお、今般の改正法案では、エリア一括協定運行事業の創設を盛り込んだほか、令和五年度予算案では、社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加するなど、バス事業者に対しても、実効性ある支援策を講じることとしています。
 こうした対策も踏まえ、あくまで、当該地域と利用者にとってより利便性と持続可能性の高い公共交通の在り方という観点から協議が行われるべきものと考えております。
 最後に、協議運賃制度についてお尋ねがありました。
 まず、鉄道事業者の運賃については、例えば、JRにおいては、幹線、地方交通線及び電車特定区間などの区分に応じた上限運賃を設定しており、その上限の範囲内において、各社の届出により割引運賃の設定が可能となっております。
 今回の協議運賃制度は、地域の関係者の連携と協働の一層の推進を促し、例えば、並行するバスとの共通運賃化を通じて地域公共交通サービスの高度化を実現する等、地域の実情に応じた柔軟な運賃設定を可能にするよう、新たに導入するものでございます。
 以上でございます。

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI