国会質問

質問日:2023年 2月 9日 第211国会 予算委員会

「異次元の少子化対策」について(児童扶養手当、出産育児一時金など)

分断生まない子育て策を

衆院予算委 高橋議員が迫る

写真

(写真)質問する高橋千鶴子議員=9日、衆院予算委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は9日の衆院予算委員会で、「異次元の少子化対策」について政府の姿勢をただしました。

 民主党政権下の2010~12年に子ども手当をめぐり激しい論争が行われ、当時野党だった自民党は、所得制限なしの子ども手当を「ばらまき」だと批判。子育ては第一義的に家庭の責任と、条文改定までさせました。

 高橋氏は、自民党が子育てを自己責任の社会に押し込め、先行して実施した年少扶養控除の廃止などで同じ子育て世帯に負担増という最悪の結果を招いたと指摘。「この事実を認め、率直な反省なしに、異次元どころか子育て支援など語る資格はない」と批判しました。

 今国会では、自民党からも児童手当の所得制限の撤廃が取り沙汰され、そこだけが注目されています。高橋氏は、一人親家庭に支給する児童扶養手当(グラフ)の所得制限について説明。今年度は満額で月額約4万3000円で、しかも、母1人子1人の場合、年収が160万円を少しでも超えると一部減額されます。高橋氏は「小刻みな基準額があって、それを超えるたびに減額される」などと指摘し、所得制限の見直しこそ急がれると主張しました。

 さらに、政府は出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げることを決めましたが、その財源には後期高齢者医療制度からも拠出することになります。高橋氏は、後期高齢者の保険料負担が増えるとして「(2年間の経過措置の)先は倍くらいの負担になるのか」と追及。加藤勝信厚生労働相は「倍額になる」と認めました。

 高橋氏は、自民党は「『全世代が支える』ということで、後期高齢者から子育て支援へと予算を移し替えているだけだ」と批判。「世代間の分断や子どもの中に格差を生まないためにこそ、予算を振り向けるべきだ」と迫りました。

(「しんぶん赤旗」2023年2月10日付)

-議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。持ち時間が十五分しかないので、答弁は簡潔にお願いします。
 岸田総理が述べた異次元の少子化対策が焦点になっています。過去最少だった二〇二一年の出生数、八十一万一千六百二十二人から、昨年は七十七万人まで急減する見込みと聞いています。
 自民党の茂木幹事長が、子供は社会が育てるとの認識の下、児童手当の所得制限の撤廃を提案しました。
 思い出すのは、民主党政権の二〇一〇年から二〇一二年までの丸二年間、子ども手当をめぐって激しい論争がやられたことです。継ぎはぎだらけの法改正が四回も繰り返された挙げ句、民自公による三党合意で、結局、子ども手当は幻となり、児童手当に戻ったのでした。資料の一にあるとおりであります。
 日本共産党は、一貫して、財源確保に努めながら、現金給付と保育所増設などの現物給付を車の両輪で進めるべきだと主張してきました。
 当時野党だった自民党は、所得制限なしの子ども手当をばらまきだと叫び、子供は社会が育てるという理念自体を否定し、家族の責任を放棄するものとまでなじったのです。
 資料の二にありますように、この理念、第一条、目的規定に、上が書き込んだところですが、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、」と、わざわざ書き込ませ、子育ては自己責任の社会に押し込めてきたのであります。
 事実、先行して実施した年少扶養控除の廃止などで、子育てを応援するはずが、同じ子育て世帯を狙い撃ちにした増税で、差引き負担増という最悪の結果を招きました。このことは、当時の与党だった民主党さんにもしっかりと受け止めていただきたいと思います。
 この事実を認め、率直な反省なしに、異次元どころか子育て支援など語る資格はないと思いますが、官房長官、伺います。

○松野博一官房長官 高橋先生にお答えをさせていただきます。
 子育て支援については、安定財源を確保しながら、これまで、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じて必要とされる支援を進めてきたところであります。
 この結果、少子化対策関係の予算額は大きく増加し、例えば、いわゆる保育所待機児童は、平成二十九年の約二・六万人から、昨年は三千人まで減少するなど、一定の成果があったと考えています。
 一方で、少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の、子供を産み育てたいという希望の実現には至っていないと認識をしています。
 少子化が更に進展するなど、社会経済情勢は大きく変わるとともに、これまで取り組んできた政策強化の方向性から、今後、重点的、抜本的に取り組むべき子育て支援政策の内容も変化しています。
 子供、子育て政策は、最も有効な未来への投資であります。個々の政策の内容や規模面はもちろんでありますが、これまで関与が薄いと指摘されてきた企業や男性、さらには地域社会、高齢者や独身も含めて、社会全体の意識を変え、子供、子育てを応援するような、次元の異なる少子化対策を実現していきたいと考えています。
 これに向けて、まずは、こども政策担当大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化してまいります。

○高橋(千)委員 まず、反省の一言がないんじゃないですか。

○松野官房長官 先ほど申し上げましたとおり、少子化が更に進展するなど、社会経済情勢は大きく変わるとともに、これまで取り組んできた政策強化の方向性から、今後、重点的、抜本的に取り組むべき子育ての支援政策の内容も変化をしてきていると考えております。

○高橋(千)委員 総理の答弁ほども反省の言葉が一言もなかった。まるで人ごとのような話で、世の中が変わったからみたいな話でありました。
 自民党さんが、当時、野党の時代に、ちゃんと現物給付を我々はやっていくんだということで、学校給食の無料化だとか保育士の処遇改善とかを言っていた、それを全然やっていないということを改めて指摘をさせていただきたい、このように思います。
 資料の三は、岸田総理が小倉大臣に示した総理指示のポイントであります。
 三つありますけれども、その一つ目に、児童手当を中心とした経済的支援の強化とあります。七日の関係府省会議で具体的な議論がされたと思いますが、児童手当の所得制限の撤廃や十八歳までの拡充、これは期待されているところです。今日聞くのはそこではありません。
 資料の四です。
 一人親家庭に支給する児童扶養手当、これは満額で約四万三千円なんですが、ただし、細かい所得制限があって、母一人子一人の場合だと、年収が百六十万円を少しでも超えてしまうと一部減額されます。二百万、二百五十万、三百万と小刻みな基準額があって、それを超えるたびに減額される。厳し過ぎるんじゃないですか。これを撤廃すべきではありませんか。

○加藤勝信厚労大臣 児童扶養手当のお話がありましたが、一人親世帯への支援については、児童扶養手当などの経済的支援に加えて、就業支援、子育て生活支援などを含めて、一人親世帯の生活全体を総合的に支えていくことがまず必要だと考えております。
 児童扶養手当でありますけれども、一人親世帯の家計の状況に応じて給付の重点化を図る観点から、所得に応じた支給制限を設けており、平成三十年に手当を全額支給する所得の限度額を引き上げたところであります。
 見直しを行う場合には、一人親世帯等の家庭の生活の安定と自立の促進という制度の趣旨、これを踏まえて見直しをしていく必要があると考えています。

○高橋(千)委員 見直しは、もちろん順次やってきたのはよく承知している、そのテンポが遅過ぎますので、追いついていませんので、これは言っておかなきゃいけないと思います。
 失礼しました、官房長官、ここで退席していただいて結構であります。
 民主党政権が誕生したときに、初めて子供の貧困率が公表されて、七人に一人が貧困家庭である、そのうち一人親家庭は二人に一人という実態が分かりました。
 ところが、あれから十年たっても、この数字はほとんど変わっていないのです。むしろ、コロナ禍で可視化されたとも言える。政治が家族の責任に追いやってきたことの証左でもあります。一人親家庭は、コロナ禍で休業や仕事を失うと、たちまち食べていけなくなる。これは、全国でフードバンクや子供食堂が七千三百か所以上にも広がっていることからも明らかであります。
 厚労大臣にも、それから小倉大臣にも問題意識を持っていただきたい。ここは時間の関係で、要望にとどめます。
 それで、異次元のとか予算倍増という言葉だけ、イメージだけが先行していますが、まだその大枠が決まっていません。まして、財源はどうなるのかという問題です。
 先行して、出産育児一時金を四十二万円から五十万円に引き上げることが決まっています。
 資料の五を見てください。その財源は、出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みの導入。どういうことか。
 これまで出産育児一時金は、それぞれが加入している健康保険の保険者が負担していました。それに、後期高齢者医療制度からも参加するということを決めたわけです。そうすると、六にあるように、その分、後期高齢者の保険料負担が増えるということですね。このことを厚労大臣に確認をしたい。
 例えば年収二百万円だったら、今年は八万二千百円だけれども、令和六年度は八万六千八百円、その翌年は九万七百円と上がっていく。しかも、これは経過措置なので、その先は倍くらいの負担になるんでしょうか。簡潔に。

○加藤厚労大臣 まず、出産育児一時金の負担に関してですけれども、従前は、高齢者世代も含めて子供医療費の負担をしていた。そうした中で、生産年齢人口が急激に減少していく、更にこうした対応をしていく必要があるということで、今回、後期高齢者医療制度が出産育児一時金に要する費用の一部を支援する仕組みを導入したところであります。
 今委員御指摘のように、令和六年、七年度は費用の二分の一ということでございますので、仮にこの二分の一でなければ、当然その倍額になるので、約百円程度ということであります。
 ただ、これは平均してということでありまして、今回の見直しでも、高齢者、いわゆる負担能力に応じてということが考え方の基本でありますから、高齢者全員に一律の負担をお願いするのではなくて、低所得者層に関しては、制度改正に伴う負担の増加が生じないように配慮し、賦課限度額や一定以上の所得のある方の保険料率を引き上げる形で、今申し上げた負担能力に応じた負担、この考え方に沿って進め、そして出産に係る現役世代の負担の軽減も図っていくということで、必要な対応というふうに考えております。

○高橋(千)委員 今大臣がお認めになったように、私がここに示した資料は、プラスと負担増を書いていますけれども、いずれ、激変緩和措置が過ぎれば倍になるんだということだと思います。
 もちろん、低所得者には軽減をするよと言ってはいるんですが……(発言する者あり)分からぬと言っています、倍はあれだということですが、単純計算すればそうなっちゃうということなんです。しかも、四割の方には確実に負担増になるであろうと。
 激変緩和といっても、年金生活者というのは年金は増えないんですから。年金を増やしての上だったらまだ分かりますよ。年を重ねていけば収入が減ってしまう中で、これが負担増になるんだ、そういうことなんです。
 これは、子供を社会が育てるという理念は共有されたと思いますが、それを何かいいように使っちゃっているというか、全世代が支えるということで、後期高齢者から子育て支援へと予算を移し替えているだけなんです。
 社会保障制度審議会医療保険部会の中でも、弱者が弱者をお互いに助け合うという構造だと指摘をされ、公助が撤退していいのか、高齢者も苦しい、現役世代も苦しい中で、乏しいものを分かち合って、何か足の引っ張り合いをしているような構図で、日本社会はこれからやっていかれるのかと発言がありました。国が五十万円にしますと言ったのに、その財源は各保険者に丸投げなんです。それで高齢者にも出せと。これは国が関与するべきではないか、国が決めたことだから当然だろうという意見もあったわけです。
 世代間の対立、分断政策ではないでしょうか。そうではないというなら、子育て支援の倍増予算、どこから持ってくるんですか。

○小倉將信こども政策担当大臣 子供予算の財源の議論についてであります。その議論自体は大変重要と考えておりますが、財源を考えていくに当たっても、まずは政策をしっかりと整理する必要があると考えております。
 現在、総理の指示を踏まえまして、私の下で関係府省会議を開催をし、総理から示された基本的方向性、三つに沿って議論を進め、まずは三月末を目途として子供、子育て政策として充実する内容を具体化します。
 財源については、これも繰り返し申し上げていますが、充実する政策の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えていくことになろうかと思います。

○高橋(千)委員 その関係府省会議が二月六日に行われました。そのときに、専門家からヒアリングをやっていますけれども、東京大学経済学研究科の山口慎太郎氏は、再分配は累進課税でとおっしゃって、大事なことだと思うんですが、子供がいない人、子育てが終わった人も含めて社会全体で支えるべきだ、社会保険料は一つの可能性と、今の後期高齢者と同じ考え方、ただし、主に現役世代が負担することに注意といって、消費税はそうした問題を回避できるという提案をされております。
 結局そこなのかなと。消費税は所得の低い人ほど負担が重い、逆格差があるということが指摘をされている、そうしたことを、結局、社会が育てるという言葉だけで、財源の中でそれがはっきりとなってくるんじゃないか、それでは本当の意味の少子化対策、異次元のということではないんだと言わなきゃいけません。
 総理は、防衛費の倍増も、子育て予算倍増も、国民の命や暮らしを守る、共に日本の未来の懸かった重要な課題であると答えております。未来を奪うかもしれない大軍拡予算と一緒にするべきではありません。
 本当に未来のためには、世代間の分断や子供の中に格差を生まないためにこそ予算を振り向けるべきだと述べて、質問を終わります。

2023年2月9日 衆議院予算委員会 提出資料

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