日本共産党の高橋ちづ子議員は19日の衆院災害特別委員会で、「『防災・減災』をいうなら国民生活に密着した対策こそ必要だ」と述べ、与党提出の「国土強靭(きょうじん)化基本法案」と民主提出の「国民生活強靭化基本法案」を批判しました。
高橋氏は、与党案が目的に「国際競争力の向上に資する」との文言を入れた意図について質問。金田勝年議員(自民)は「(国土の)安全性に対する理解と評価を高め、海外からの投資を促進するため」と述べ、「防災・減災」にそぐわない法案の本質が明らかになりました。
高橋氏はまた、「地域間の連携強化」「国土利用のあり方」は何を想定しているのかと質問。高木陽介議員(公明)は「高速道路のミッシングリンク(未整備部分)や代替の輸送路としてリニアが必要との評価がされれば、国土強靭化計画で位置づけられる」と述べ、法案が巨大開発の根拠となりうることを認めました。
高橋氏は、大規模自然災害に限定した民主党案が、自治体の計画を縛り、台風や豪雨など災害対策や医療、消防の体制づくりが軽視されると指摘しました。
(しんぶん赤旗 2013年11月30日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
与党案、民主案、それぞれ順序がさまざま不同になりますけれども、また、通告の順番を少し変えて質問させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
まず、民主党さんに伺いたいと思うんですけれども、法案の名称ですね。国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案と書いているんですけれども、この法案の条文のどこにも国民生活強靱化とは何かという定義がございません。与党案については、国土強靱化については、「という。」という形で定義が明記されているんですけれども、民主案は、私の見落としではないと思うんですが、定義がございません。一体、国民生活強靱化とは何なのか、伺います。
○三日月議員 難しい御質問であり、また大事な質問だと思います。
私どもは、この国民生活強靱化という言葉について定義を置いておりません。特に定性的、定量的に定められるものではないというふうに思っております。
ただ、私たちの案では、国民生活を強靱化するための大規模自然災害に備えた事前の防災及び減災に係る対策を国民生活強靱化対策という形で定義をいたしまして、関連する諸施策を推進することにより、大規模自然災害に強い国土及び地域をつくるとともに、地域住民の力を向上させていくことが国民生活強靱化だと捉えさせていただいているところです。
○高橋(千)委員 やはりこれは、失礼ですけれども、定義をきちんと書くべきではないでしょうか。なぜなら、議員立法でありますので、これから、幾ら重点化ですとか編成方針ということを書いても、どこに重点を置くのかとか、どういう視点でやっていくのかという立法者の意思が入っていなければ、やはりそれは、結局、最終的には政府にお任せということになるわけですね。だから、それはやはり明記されるべきではなかったか。今の説明を聞いても、ちょっとまだ理解しかねるところがあるわけですけれども、そこをちょっと指摘したいと思います。
そこで、国民生活強靱化基本法案における脆弱性評価とは、与党案と、つまり、国民生活ということをあえて言っている点において、どういう違いが出てくるとお考えでしょうか。
○三日月議員 お言葉ですのであえて申し上げますと、私どもは、だから前文を置いて、どのような強靱化対策が必要なのかという理想を掲げさせていただいているところです。そこに思いを表現させていただいています。
また、今御質問の、私どもの法案における脆弱性評価は与党案とどう違うのかということは、大きく三点です。
一つは、脆弱性評価を行う本部、この本部により客観性を持たせるために、国務大臣までとされている与党案と比べて、私たちは、そこに指定公共機関の代表者、経済団体の代表者及び学識経験者、これは国会の同意人事というたがをはめて入れるんですけれども、これを設けさせていただいているということ。
二つ目は、最悪の事態を想定する。何でもかんでも脆弱性の中に入れるのではなくて、最悪の事態を想定し、総合的かつ客観的に評価を行うことを法文上明示させていただいているということ。
最後は、この脆弱性評価から基本計画をつくる段階に入っていくんですが、その間に、これは政令で定めるところにより、脆弱性評価の検証を受ける仕組みというものを設けさせていただき、より公平性、公共性を担保させていただきたいと考えております。
○高橋(千)委員 今の三つのポイントについては、言ってみれば手続論ではないかと思うんですね。私は、脆弱性について、どういう視点、国民生活というからには視点が違うんだろうと。だから聞いているのであります。
政府のレジリエンス検討会は、脆弱性評価についてのさまざまな検討を重ねていますし、起こってはならない事象ということを明記されています。私はどれも大事だと思っています。決して頭から反対するという立場ではございません。どれも大事なことで、やるべきことだと思っております。
ただ、意見を聞いたのは地方と経済団体だけなんですね。そうすると、例えば農業団体、漁業団体あるいは医療、福祉関係の団体ですとか、商工団体、経済団体だけではない、もっといろいろなところから聞かなければ国民生活とは言えないのではないか、そういう問題意識を持っているからこそ聞いているわけなんです。
そこで、次に与党に質問しますので、それを踏まえて、もう一度、民主党に質問していきたいと思います。
与党に質問するのは、まず、第一条の目的に国際競争力の向上に資するという文言を入れた意図は何でしょうか。また、そのために具体的にどのような施策を考えていらっしゃるのでしょうか。
○金田議員 委員御指摘の、第一条の目的に国際競争力の向上に資するという文言を入れた意図でございますが、この国際競争力の向上というのは、さまざまな災害が頻発する我が国においては、国土を強靱なものにするということが、結果として我が国の安全性に対する国際的な理解と評価を高めるのではないか、その結果、諸外国からの投資を呼び込むことにもなる、こういった国際競争力を高めることに資するということを意味しているものであります。
具体的には、この法案の第二十八条に規定しておりますように、諸外国の理解の増進、すなわち、我が国の国土強靱化に対する諸外国の理解を深めるように政府が取り組むということを想定しているものであります。
○高橋(千)委員 そうすると、法案にわざわざ防災、減災ということを書いたこととは趣旨が違ってくると思うんですね。それは、政府として日本再興戦略というものをもともと持っているわけですし、それを何もここでやる必要はないんじゃないか。
この間の参考人質疑の中で、おいでになられた藤井参考人は、レジリエンス検討会の座長でもありますけれども、災害があっても成長戦略、成長できる国土という表現をされておりました。
今の表現は、国土を強靱化することが結果として国際競争力ということで、どこに防災、減災が行ったのかなというふうに、私は、どちらがいいという意味ではなくて、しかし、あえてこういう法案にしていることとの関連性において非常に疑問を持っているわけであります。
そこで、重ねて質問しますが、第八条第四号の地域間の連携の強化、国土の利用のあり方とは具体的に何を想定しているんでしょうか。
百八十国会に提出された国土強靱化基本法案では、第十八条に同じような表現がございます。地域間の交流及び連携の促進という名目で、国は、大規模災害に対処するための強靱な経済社会の構築に資するよう、高速自動車道、新幹線鉄道等の全国的な高速道路網の構築その他の地域間の交流及び連携を促進し、日本海国土軸、太平洋国土軸その他の複数の国土軸が相互に連携することによる多軸型の国土の形成を図るために必要な施策を講ずるものとするとあります。
要するに、新たな全総なのかなという受けとめをいたしたわけです。
これは、今回の法案は同様の趣旨を言っているのかどうか、伺います。
○高木(陽)議員 まず最初に御指摘の、第八条第四号の地域間の連携の強化、国土の利用のあり方の見直しとは、大規模災害等からの迅速な復旧復興を目的とした、例えば、一つ目として、被災地と他の地域との間の情報共有や連携協力が円滑に行われるよう自治体間で協定を結ぶことや、二つ目に、人流、物流の大動脈が自然災害等により分断、機能停止する場合を想定して、広域的な視点からの代替輸送ルートを確保すること、また、三つ目に、社会の諸機能が適切に維持、確保できるような必要なバックアップを同時被災しないような場所に確保すること等を想定しております。
また、百八十国会提出の国土強靱化基本法案の件についてでございますが、今回、私どもが提出している法案では、まず、脆弱性評価をしっかり行い、我が国として重点的、優先的に取り組むべき課題を検討した上で、国土強靱化に関する施策の策定に係る基本的な指針として、国土強靱化基本計画を策定することとしております。
お尋ねの、地域間の連携強化、国土の利用のあり方の見直しについても、同様に、脆弱性の評価を行って、その結果に基づいてその方向性を明らかにしていくこととしておりますので、脆弱性の評価を行った上で、結果的に、高速道路ですとかそのほかのさまざまな社会インフラに対して、必要なものはしっかりと対応していく、こういうふうになると思います。
○金田議員 先ほど高橋委員から、私の答弁の後、お話がございました。理解に資するために補足をさせていただきたいと思います。
例えば、公表されている資料なんですけれども、ドイツのミュンヘン再保険会社の公表資料なんですが、世界の大都市で災害危険度指数というものを出しているんですね。そのときに、世界第一位が東京、横浜になっている。そして、世界第四位が大阪と阪神地区ということになっている。
こういう現状からすると、防災、減災、まさにこの国土強靱化に取り組む姿勢で我が国の安全性に対する国際的な評価、そういうものを高めていかなければいけない、諸外国のそういう理解を深めなければいけないというこの第二十八条に込められた思いを先生にはぜひ理解していただきたい、こういうふうに思っております。
○高橋(千)委員 集中した木密地域や、あるいは行政、経済の中枢機関が集中した地域であるから危険度が非常に高い、世界的に見ても高い、当然だと思います。それが一足飛びに、これまで議論されてきたように、例えば高速道路、東名高速道路ですとかリニアですとか、そういう話に結びつくんでしょうか。
○高木(陽)議員 先ほども申し上げましたように、私どもの法案というのは、まずは脆弱性の評価をして、その上で国土強靱化を図っていこうと。その脆弱性の評価をした段階で、それが、例えば、高速道路はしっかりとミッシングリンクを推進した方がいいであろうとか、または、その老朽化について手を打たなければいけないとか、または、その代替の輸送路として例えばリニアが必要であるとか、そういうような評価がなされたときに、この国土強靱化計画の中でしっかりと位置づけられていく、こういうようなことであると思います。
○高橋(千)委員 代替の輸送路としてリニアが必要な場合も、評価されるということが今指摘をされました。国土交通委員会で、代替性ということでそういう議論がされましたので、何も私の想像で質問したのではなくて、確認をさせていただきました。それがやはり脆弱性の評価と成長戦略を結びつけていることから出てくる議論なのかな、では老朽化対策はどこに行ったのかな、そういう点で非常に疑問を持つわけであります。
ここで、改めて民主党の提案者に伺います。
百八十国会から今の国会の中で、脆弱性評価を踏まえてやっていくんだということでこうした法案を出されている。全く同じではないようですけれども、民主党が考えている脆弱性評価の視点、このような、評価されれば、リニアも高速もやはり同じように必要であるというふうな立場でよろしいでしょうか。
○中川(正)議員 一番最初に御指摘があったように、国民生活ということを基本にしているということは、国土の強靱化ということではなくて、人間の生活の安全性そして安定性といいますか、そういうもののリスクに対してトータルで私たちは評価をしていかなければならない。
そういう意味では、御指摘のように、福祉関連の制度的なものであるとか、あるいは教育関連の部分であるとか、こういう広い分野にわたった評価をしていくということ、その思いを込めて国民生活ということであります。
同時に、もう一つは、脆弱性の中に時間軸を、時間軸とは緊急性というのを入れていかなきゃいけないんだと思うんです。
それぞれの分野で脆弱性は出てきますけれども、優先順位をつけていく中で、どこまで緊急性が問われているかという評価があって初めて効果のある投資ができるということにつながってくるということでありますから、そこの部分を第三者的な目でいろいろな皆さんに参加をしていただいてつくっていくということと同時に、もう一回、再度チェックをして、第三者のチェックシステムをその中に入れながら、この分野で本当の意味で効果のある、一番必要なところに投資が向かっていくような仕組みを入れたということであります。
○高橋(千)委員 そこで、最初の予定していた質問に戻りたいんですけれども、各党が同じ質問をされました。与党案の大規模災害等の「等」とは何を指すかということと、民主案にある大規模自然災害と限定した意図は何かということを質問されておりました。
先ほど三日月提出者の方から、与党案は老朽化なども指しているわけであるということと、民主案はむしろ財政に、優先順位をつけるということに注目をして、大規模自然災害ということでまずは限定をした、そういう趣旨のことをおっしゃったと思うんですね。
ただ、私は、災害からの復興のときは、それは、大規模災害という場合は特例が必要だったり、特別な財政措置が必要だったりということで理解できるんです。だけれども、防災、減災といった場合には、大規模でなければならないとなったら、ちょっと違うんじゃないか。
つまり、国民生活と銘打っている以上は、もっと国民に身近な分野、例えば年じゅう起こっている台風ですとか豪雨ですとか竜巻ですとか、耐震化を図っていったり、東日本大震災でも本当に問われた医療や介護の体制、あるいは消防の体制もそうです、体制そのものをやはりきちっとやっていく。そういうもっと市民に根差したきめ細かな対策がやはり必要なんじゃないか、それは市町村になればなるほど、住民に近くなればなるほど必要なんじゃないかと思うんです。
だから、大規模災害に対して国がやるのは当然です。だけれども、調和をとって、そこに優先順位をつけていくよ、自治体もそれに合わせた方針をとりなさいとなると、そこにお金がつかなくなるんじゃないかという懸念を非常に持っているわけですね。
そういう点に対してどのようにお考えか、与党と民主党にそれぞれ伺いたいと思います。
○福井議員 今回の肝は、先ほど霞が関の常識という話を財政規律の話で申し上げましたけれども、答えのない事態というのは想定しないように建設省も運輸省もしてきたんです。今回は、脆弱性調査ということで、東京湾全体が炎上したり、南海トラフで何百兆円という被害額が出たりという今まで想定してこなかった事態、そして、この前のトンネル事故にありましたように、もう本当に情けないようなチェックの抜け落ち、ありとあらゆることを、脆弱性調査を通じて、私たちは、今まで答えはなかったけれども、自分たちの弱いところを見つけて、そして対策を講じよう。
そういう法案を昨年から出して、そして今、政府の方で担当大臣ができて、内閣官房に推進室ができて、そしてこの法案で予定している、総理大臣が本部長で全ての大臣が本部員という、そういう組織の予備的な組織で今政策を打ち出そうとしておるわけでございます。
まさにそれは今、高橋先生がおっしゃった趣旨に沿うものと考えておりますので、ぜひこの法案に賛成をしていただければというふうに思います。
○三日月議員 先生御指摘のように、国民生活というんだったら、大規模自然災害だけに限定するのはおかしいのじゃないのというのは、私も今伺いながら、そういう面もあるなというふうに思いました。
ただ、私たちは、まずは、国家の存亡にかかわる、地域の存亡にかかわる大規模自然災害に限定をした脆弱性評価を行い、対策を講じること、強靱化すべきは国土ではなくて国民生活だと。
したがって、いろいろな仕組みを入れることによって客観性を保ち、より多くの方々に御理解いただけるような評価を行ったり計画をつくったりという仕組みを提案させていただいているところでありますので、ぜひ、先生におかれましても、賛同の方、よろしくお願いいたします。
○高橋(千)委員 また次の機会をいただきたいと思います。
終わります。