国会質問

質問日:2022年 11月 2日 第210国会 国土交通委員会

脱炭素 目標さえない

高橋氏が港湾法改定案批判

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=2日、衆院国交委

 港湾法改定案が2日の衆院国土交通委員会で、自民、公明などの賛成で可決されました。日本共産党の高橋千鶴子議員は採決前の質疑で、二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占める港湾の脱炭素化に関し目標数値もないなどの問題点をあげ政府の姿勢をただしました。

 高橋議員は、政府が脱炭素電源として重視する水素・燃料アンモニアの「輸入等の環境整備と港湾の脱炭素化はどうリンクしているか」と質問しました。

 資源エネルギー庁の小沢典明次長は「水素等を供給する国際サプライチェーンは不可欠」と答弁。高橋氏は、エネルギー基本計画の2030年電源構成で「水素アンモニアはわずか1%」として、政府の主張と現実は「タイムラグ」があると批判しました。

 「港湾全体の脱炭素化数値目標」を尋ねた高橋氏に対し、斉藤鉄夫国交相は、30年までに水素等の取扱貨物量を100万トンにすると答弁。高橋氏は、化石燃料由来の200万トンと合わせた300万トンが目標だとして、政府の掲げる「30年までの排出量46%削減」さえ実現する意思がみえないと強調しました。

 改定案は、港湾緑地等を民間業者に最大30年貸し付けその収益で緑地再整備を担わせるPFI方式を導入します。高橋氏は討論で、大阪築港地区の埋め立て計画も該当するとして、「共有財産である港湾緑地本来の機能を損なう」と反対しました。

(「しんぶん赤旗」2022年11月4日付)

-議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は港湾法の一部改正案についてでありますが、国際物流の結節点かつ産業拠点であり、発電所や鉄鋼、化学工場などが集中し、CO2の排出量が約六割を占める港湾地域の脱炭素化は喫緊の課題と考えています。
 既に全国六地域、七港湾の先行例を始め、今現在、各地で三十九の港湾地域だと聞いていますが、カーボンニュートラルポートの検討会が始まっております。そのカーボンニュートラルポートの形成に向けた検討会報告書、昨年十二月では、カーボンニュートラルポートの役割について、水素、燃料アンモニア等の大量、安定、安価な輸入、貯蔵等を可能とする受入れ環境の整備が真っ先に書かれております、先ほど来議論がされていたと思いますが。
 政府全体として、脱炭素電源として水素、アンモニア等を重視していることは承知しておりますけれども、水素などの輸入受入れ環境整備と港湾そのものの脱炭素化がどうリンクするのでしょうか。つまり、輸入だけ受け入れていることで、港湾そのものが脱炭素化が進むわけではないと思いますので、大臣並びに資源エネルギー庁に伺います。

○斉藤鉄夫大臣 水素、アンモニアの貯蔵と港湾の脱炭素化がどうリンクするのかという御質問でございます。
 港湾は、サプライチェーンの拠点であり、その周辺地域を含めれば、我が国の二酸化炭素排出量の約六割を占める産業の多くが集積する地域です。港湾は産業の集積地域であるということ、そして、このため、港湾において水素や燃料アンモニア等の受入れ環境を整備することにより、サプライチェーンを構成する船舶に、荷役機械等における水素や燃料アンモニア等の利用だけでなく、産業集積地である港湾・臨海部に立地する企業が連携して広く利用することを促進し、港湾・臨海部における脱炭素化を進めることができる、このように考えております。

○小澤典明政府参考人 お答えいたします。
 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けましては、今斉藤大臣からもございましたが、カーボンニュートラルポートの形成と並行いたしまして、隣接する発電所や工場などの施設におきます水素、アンモニアの活用を進めていくこと、これが重要でございます。したがって、このために、安定的かつ低コストな供給を実現する水素、アンモニアの国際サプライチェーンの構築が不可欠でございます。
 このため、経済産業省では、液化水素運搬船や陸上タンクといった輸送、貯蔵設備の整備やその大型化、そして、CO2排出低減に資する水素の利用やアンモニア製造方法などの技術開発、実証等を推進しているところでございます。
 引き続き、国交省と連携し、こうした輸送、貯蔵設備の整備や、関連する技術開発、実証を着実に進めながら、大規模な水素、アンモニアの国際サプライチェーンの構築に向けて取り組んでまいります。

○高橋(千)委員 エネ庁にもう一言伺いますけれども、エネルギー基本計画においては、水素等の電源構成、二〇三〇年はまだ一%にとどまるということであります。ですから、何か、輸入をしてきたことでそれがサプライチェーン全体に行き渡るというのも、タイムラグがかなりあるという理解でよろしいですよね。

○小澤政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、二〇三〇年におけるエネルギーミックスの中、この中での電源構成におきましては、水素、アンモニアで一%程度ということを示してございます。
 一%と申しますけれども、相当の水素、アンモニアの量が必要になりますので、そのためには、今から供給量の確保のためのサプライチェーンの構築、それが極めて重要かというように考えてございます。
    
○高橋(千)委員 相当な量、それはもちろんそうなんですよ、圧縮もしなきゃいけないし。だけれども、それが全体として間に合っているというか、要するに、カーボンニュートラルの話をしているわけですから、それとの関係ではタイムラグがあるよねということを指摘したかったわけです。それは大臣に対してもお分かりいただけると思うんですね。
 具体の議論に入りたいと思うんですが、停泊中の船舶のアイドリングストップ、これを可能にする陸上電力供給施設の導入というのが、これはまた全体のCO2排出量の中でかなり大きな、六割くらいですかね、占めるという点では、法改正の重点だと思います。
 それで、固定資産税に対する補助というような形で後押しをするのか。それで、じゃ、この陸上電力供給施設、実証作業とかは進んでいるのは承知しています。それで、何を電源に、いつ頃までに、どのくらいといった見通しがあるでしょうか。

○堀田治政府参考人 お答え申し上げます。
 停泊中の船舶に陸上から電力を供給することを可能とする陸上電力供給設備は、船舶のアイドリングをストップさせることができまして、港湾における脱炭素社会の実現に貢献する取組の一つでございます。
 陸上電力供給設備については、これまでフェリーやタグボート、官公庁船など、小型船に対して導入が進んでいる状況でございまして、今後も導入が進んでいくものと考えております。
 一方、陸電の導入促進に当たりましては、船舶側の対応見通しなど不透明なこともありまして、現時点でいつまでにどれくらいといった見通しをお示しすることはできかねますけれども、港湾の重要度、それから、船舶の陸上電力設備に対する対応状況等を踏まえまして、港湾管理者や利用者と連携をして導入を進めてまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 小型のフェリーなどにはもう実用化が進んでいるけれどもということで、やはりこの点でもちょっと時間がかかるであろうということが分かったと思います。
 そういう意味で、数値目標を港湾全体でどう具体化するかというのが第一歩だと思うんですね。さっきから言っているのは、二〇三〇年の一つの節目にはかなり間に合わないんじゃないのかなと正直思うわけですね。そういう意味で、港湾全体における脱炭素化の数値目標、どのように示していくのか、大臣に伺います。

○斉藤鉄夫大臣 大きく二つございます。
 一つは、水素、燃料アンモニア等を安定的に供給するための環境整備を進めることで港湾・臨海部に立地する製造業等の脱炭素化に貢献すること、それから二つ目としては、港湾施設の脱炭素化を通じて荷主や船社から選ばれる競争力のある港湾を形成すること、この二つでございます。
 具体的には、水素等の供給に関しては、港湾における水素、燃料アンモニアの取扱貨物量を二〇三〇年に水素換算で百万トンとする目標を定めております。
 それから、港湾施設の脱炭素化に関しましては、コンテナを取り扱う低炭素化荷役機械の導入割合を二〇三〇年度に七五%とする目標を定めております。

○高橋(千)委員 脱炭素化に対する数値目標、つまり政府の四六%減に直接リンクしている目標とは言えないですよね。

○斉藤大臣 そことは直接リンクをしておりませんけれども、最終的にはそこにリンクさせる必要があろうかと思いますけれども、現時点で、二〇三〇年時点の目標を明確にしているところでございます。

○高橋(千)委員 そこをどう示していくかというのが課題だと思うんですね。
 例えば、大臣おっしゃった、水素の百万トンというのは二〇三〇年。それは、トータルで三百万トンですよね。二百万トンは化石燃料からできたグレー水素がそのまま維持されて、プラス百ですから、そういうレベルだということが、まず認識をしなければならないなと思うんですね。
 それで、次に行きますけれども、CNP形成計画策定マニュアルには、対象港湾及び周辺地域におけるCO2排出量を推計するとされています。各港湾におけるCNPにおいては、排出量を示した上で、どのくらい減らしていけるかを示す必要があります。
 そこで資料の1ですが、仙台塩釜港カーボンニュートラルポート協議会の資料であります。もちろん、政府のマニュアルに沿っていますから考え方は一緒でありますが、関係する事業者からのアンケートやヒアリングで、エネルギーの使用量を足し上げて、それにCO2の排出係数を乗じることで算出すると。非エネルギーの温室効果ガスなどもあるとすれば、それもヒアリングで足し上げていくということなんですね。
 二枚目を見ていただいて、その足し上げていく範囲なんですけれども、ターミナル内の出入りする船舶、これは青い矢印、船舶の移動があります。船舶あるいは車両などの移動が分かります。それから、ターミナル外だけれども、工場及び附帯する港湾施設、倉庫、物流施設ということで、その範囲を色分けして地図に落としていると。こう見ると、かなりの広さなんですよね。
 零細な事業者など、エネルギー使用量の情報が得られない企業などからどれだけ協力を得るかが鍵になると思いますが、どのようにやっていくのでしょうか。

○堀田治政府参考人 お答え申し上げます。
 港湾における脱炭素化の推進に当たっての数値目標として、港湾及びその周辺地域におけるCO2排出量が重要な指標の一つであると考えております。
 昨年公表いたしましたCNPの形成計画策定マニュアルにおきましては、このCO2の排出量の算定方法についてお示しをしているところでございまして、これを把握するためには、委員御指摘のとおり、民間事業者の協力が必要不可欠であるというふうに考えております。
 国土交通省としては、民間事業者の協力が得られるように、港湾管理者が設置する協議会に参画いたしまして、民間事業者に対して情報提供を行ったりしてカーボンニュートラルの取組の支援を行って、民間事業者の協力が得やすい環境の整備、これを行っております。
 また、マニュアルでは、ヒアリング調査などからエネルギー使用量が得られなかった企業等に対しまして、生産量であったり、あるいは貨物量等の活動量、これからCO2排出量を推計する方法も紹介しております。
 国土交通省としましては、港湾管理者がCO2排出量を推計いたしまして、脱炭素化推進計画をスムーズに策定できるように、引き続き支援してまいりたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 先ほど来、協議会に参加する企業に対してのインセンティブなどの議論もありました。私、それも必要なことだと思うんですね。
 今、活動量云々というお話がありましたけれども、いずれにしても負担なんだと思うんですよ、そういう、今まで出していなかったデータを出さなければならないということ。だけれども、それができなければ、本当に中途半端なデータになって、計画になってしまうということで、やはりその協力が得られるような努力というのが本当に必要だと思いますので、インセンティブも含めて、しっかりと対応していただきたい、このように思います。
 そうしたことが背景にあるのかなということもあるんですが、第五十条の二に、港湾脱炭素推進計画の作成について、港湾管理者ができる規定にとどまっているのはなぜなんでしょうか。
 やはり、目標とプロセスを明確にしなければ、カーボンニュートラルは現実性がないと思うんですね。せめて努力義務ということにすべきではなかったかと思いますが、いかがでしょうか。

○堀田政府参考人 お答え申し上げます。
 港湾における脱炭素化の取組は、各港湾の機能や利用状況に応じて異なるとともに、関係する多岐にわたる民間事業者それぞれの事情を踏まえて対応することが重要だと考えております。
 また、港湾法の基本原則である地方自治を尊重する観点を踏まえまして、港湾管理者が脱炭素化推進計画を作成することができるという規定にしております。
 国土交通省としましては、各港湾において脱炭素化推進計画の作成に取り組んでいただけるように、港湾管理者と連携しながら、しっかりと取組を進めてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 やはり、その目標が明確にならないことと併せて、本当にそこをやっていくのかという政府の思いが伝わらないですよね。だから、競争力には勝つんだとなっているけれども、そもそもカーボンニュートラルという、その姿勢自体が諸外国から見ても遅れているわけですから、そこからいったら、遅れたところから出発するんだったら、本気でやるんだというところがないといけないと思うんですが、もう一声、大臣、どうですかね。

○斉藤鉄夫大臣 先ほどの御質問は、できるという表現が弱いということでございますが、あくまでも地方自治を尊重する観点、あくまでも、港湾の主体者は港湾管理者、地方自治体であるということから、しかしながら、だからといって、我々国として、このカーボンニュートラルポートに関しての姿勢が弱いということではございません。断固たる決意で進めていきたいと思っております。

○高橋(千)委員 失礼しました。
 都合のいいときだけ言わないように、地方自治を言わないようにしていただきたいなと思うんです。しっかりとお願いしたい。
 そこで、カーボンニュートラルポートとは直接関係のない改正も幾つか入っております。
 港湾緑地についてなんですが、Park―PFIの手法を取り入れるということで、資料の3、昨年の財政審の建議で、「地域のにぎわい創出を図りつつ、民間資金を活用したインフラの維持・更新」ということが書かれました。
 今年六月三日のPPP/PFI推進アクションプランで、「河川、港湾等、他のインフラ分野においても」と例示をされました。
 そのイメージが、これは都市公園法のPark―PFIのイメージ図が、次の4の資料ですけれども、特例措置として、管理許可の期限を最長十年から二十年まで延長して、建蔽率は二%から一二%まで引き上げて、絵にあるように、カフェなどの収益を使って公園を整備してもらう、そういう仕組みだったわけですが、今回はParkを参考にというけれども、貸付期間が最大三十年になっている、それはなぜかということと、建蔽率が、じゃ、どうなるのか、お答えください。

○堀田治政府参考人 お答え申し上げます。
 都市公園法に基づく公募設置管理制度、いわゆるPark―PFI制度における事業期間は最大二十年とされておりますが、今回、制度を創設いたします緑地等の行政財産の貸付けにおける貸付期間につきましては、基本的に、国有財産の場合は最大三十年、地方自治法の行政財産の場合は特に期間の制限はないということでございます。
 これは、民間事業者が安定的に事業を行う環境を整備する観点から、基本的に、国有財産法及び地方自治法の行政財産の貸付期間の規定を準用して設定しているものでございます。
 また、都市公園法においては、都市公園内の収益施設の建蔽率や占用物件に係る制限が規定されておりまして、Park―PFI制度において、その特例措置が設けられておりますけれども、港湾法においては、港湾施設内の建蔽率等を制限する規定はなく、必要に応じて港湾管理者が条例により規制しているところでございます。

○高橋(千)委員 国有財産と強調しましたが、に準じてでありますので、都道府県などが管理するところも三十年なんですよ。つまり、それだけ、ペイするためには三十年もかかるという、大型のものを検討しているということが念頭にあると思うんです。
 港湾法において緑地とは、港湾の環境の整備のための施設と定義をされています。労働者や一般市民の憩い、スポーツの場であるとともに、防災拠点としても重要な役割を本来持っているんですね。民間資金によって老朽化とか陳腐化した緑地のリニューアルを図ると一般的には説明されていますが。
 ただ、例えば、大阪市港区の築港地区で埋立てを含む緑地整備と民間施設の開発を組み合わせたPFIを検討しております、緑地五・一ヘクタール。採算性が見込めないので今埋立てを中止していると昨年報道されていますが、今年三月に導入可能性検討調査業務委託報告書が出されていて、ホテル、マンションなどが視野に入っているということや、背後地の再開発とセットで採算性を図る、近県からのアクセスも考えているので、夢洲のIRを見通したホテル建設などが可能性として提案をされている。
 ということは、そもそも自治体が港湾計画に盛っているわけですから、だったら、今後の計画の中で、緑地が位置づけられれば、必ずしも老朽化しているとかではなくても、埋立計画と一体でやるということもあり得るということですよね。いかがですか。

○堀田政府参考人 お答え申し上げます。
 本制度を活用する場合には、民間活力を最大限に生かす観点から、港湾管理者による公募が行われることを想定しておりまして、新たに整備される収益施設については、民間事業者の提案を踏まえて港湾管理者が判断するというふうに考えております。
 本制度におきまして、民間事業者が作成した港湾環境整備計画を港湾管理者が認定する際には、港湾計画との整合性に加えて、当該港湾の環境への向上への寄与であったり、利用等に支障がないかなど、事業者が整備する収益施設等も含めて計画の内容を審査することとしておりまして、港湾の機能に著しく支障を来すおそれがあるものが整備されることは想定してはおりません。

○高橋(千)委員 否定しなかったと思います。だって、大阪市がそういう計画を持っているんですから整合性が取れていると判断するに決まっているじゃないですか。そこをきちっと言わなければ駄目なんです。緑地の本来の役割とは全く違うということを指摘をしておきたいと思います。
 最後のやつ、時間がなくて行けませんでしたが、サイバーポートの問題も一言言いたかったんですが、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

2022年11月2日 衆議院国土交通委員会提出資料

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI