青森県被害 国交相「取り組む」
高橋氏が要請
(写真)質問する高橋千鶴子議員=28日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は28日の衆院国土交通委員会で、8月豪雨で冠水した青森県岩木川中流部のリンゴ園救済を要請しました。
豪雨で641ヘクタールが冠水したリンゴ園地は、岩木川の河川敷にあります。高橋氏は、復旧や今後の被害対策等を質問。斉藤鉄夫国交相は「岩木川中流部はもともとリンゴ園地が存在していた背後に堤防をつくった。住宅は守られたが、リンゴ園は冠水した。管理用通路の本復旧や河道掘削に取り組む」と答えました。高橋氏は生産者と連携、相談して進めるよう要請しました。
角田秀穂農林水産政務官は「生産者が営農継続できるよう樹木の剪定(せんてい)や園地の清掃、改植などを支援する」と答弁しました。
高橋氏は、堤防を整備する際の管理者による河川敷内民地の買い取りが国会で議論された経緯を示し、河川敷にあるリンゴ園は、国など河川管理者が買い取るべきだったと指摘。国交省の岡村次郎水管理・国土保全局長は「財政的な制約もあって整備に必要な土地を優先している。岩木川流域では10年間で約29ヘクタール買収した」と答えました。
高橋氏は、生産者の廃業などでリンゴ園が管理されずに放棄地になれば、堤防破損や下流の被害を誘発するなど災害リスクが増大すると指摘。「本来リンゴ園には洪水被害を軽減する『洪水を遊水する機能』があると認めてきたはずだ。流域治水にふさわしい対策をすべきだ」と主張しました。
斉藤国交相は「流域治水を進める上でも、生産者等関係者と連携して水害に強い地域づくりに全力で取り組む」と答弁しました。
(「しんぶん赤旗」2022年11月1日付)
-議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、今年八月三日、九日と連続して東北地方を襲った大雨被害、とりわけ青森県のリンゴ園地の冠水被害について質問をします。
資料の一枚目を見ていただきたいと思います。
岩木川は、その源を世界遺産、白神山地に発し、津軽平野を貫いて、十三湖、そして日本海に注ぐ流域面積二千五百四十平方キロメートルの一級河川であります。この度の豪雨では、この左側にあるリンゴ園地、赤いところ、それのかなりの部分が被災をいたしました。右側に青森県の作った被災の地図があるわけですけれども、河川敷にあるリンゴ園のほとんどが泥をかぶり、倒木や腐敗果実も目立ちました。
せめて一回目だけであればまだしも、九日からの大雨が更に被害を広げ、リンゴの木は頭まで水をかぶり、もうここではやれないと、二回目に私が訪ねたときの生産者たちの顔は鬼気迫るものがありました。来年の春に咲くはずのリンゴの花が既に咲いている木も多く、来年もこれでは難しいかもと不安を抱えております。
岩木川中流部の河川敷の八割を占めるリンゴ園地は、これまでも度々冠水被害に見舞われてきました。国交省は二〇一二年、一三年をかけて管理用通路などを整備してきたことは承知をしておりますが、国交省はリンゴ園地の復旧と今後の被害対策についてどのように取り組んでいくのでしょうか。
○斉藤鉄夫国土交通大臣 川沿いにリンゴ園が広がっていた岩木川では、住宅等の浸水被害を防止するため、リンゴ園の背後に堤防を整備するとともに、リンゴ園の冠水頻度を低下させるため、周辺よりも少し高い管理用通路を整備してきたところでございます。
今年八月の豪雨では、岩木川において計画高水位を上回る洪水となりましたが、これまでの堤防整備により、堤防からの氾濫を防ぐことができ、甚大な被害を回避することができました。
一方で、河川区域内のリンゴ園が水没したほか、管理用通路が被災したことから、九月中旬までに管理用通路の応急復旧を実施したところでございます。
今後、速やかに管理用通路の本復旧を実施するとともに、リンゴ園の冠水頻度の低下にも資する河道掘削を推進し、地域の安全確保に努めてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
二枚目の写真を見ていただきたいと思うんですが、今大臣、分かりやすい表現をしてくださいました。背後に堤防ができたということで、堤防によって住宅は守られたんです。今回も住宅の被害はありませんでした。しかし、結局、河川敷になってしまうリンゴ園地、これはS字に川が流れております。そして、黄色い線が今大臣のおっしゃった管理用通路というものです。左下にその図が書いてありますけれども、堤防の中に造るわけですから、堤防ではなくて管理用通路と呼ぶ。ですので、堤防のような高さもなければ強度もない。それが今回崩れて園地に土砂が流入したということでありました。
まず、ここでちょっと国交省に確認しますけれども、この管理用通路を復旧というお話がありました。それについては、強度、かさ上げも含め、被災者の皆さんとよく協議をしながら進めていくということでよろしいですね。
○岡村次郎政府参考人 お答え申し上げます。
管理用通路の復旧に当たりましても、地域の皆様方、リンゴ園の方々としっかり話をしながら進めていくものだというふうに心得ております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
生産者と話をしながら進めていくというお答えがありました。
本当に、この図を見ていただければ分かるように、ここは非常に低い地域なんですね。ですから、堤防があって、下手をすれば園地がプールのようになってしまう、こういう構造になっています。
そこで、二〇一九年の台風十九号で、長野県の千曲川が決壊し、リンゴ園なども冠水被害がありました。あのとき現地に行って、灰をかぶったリンゴの木を見て息をのんでしまったわけですが、ここでも同じ状況なんですね。灰をかぶったリンゴというのは同じ状況。三割は岩木川と同じように堤外地、つまり堤防より川の側にリンゴ園があるということです。市や県の単独事業、国の改植支援の活用もされました。しかし、そうした中で、やはり廃業も多いと聞いています。
台風十九号を契機に廃業に追い込まれたリンゴ生産者がどのくらいいるのか、把握していたら教えていただきたい。また、今年の水害で被害に遭った岩木川のリンゴ生産者が営農を続けられるために、やはり同じことにならないように、支援策を簡潔にお答えください。
○角田秀穂農林水産大臣政務官 まず、三年前の台風十九号の影響についての御質問ですが、果樹農家は、高齢化及び担い手不足等の理由により、年々減少傾向にあり、台風被害に原因を特定して廃業した農家の数をお示しすることは困難でございます。
なお、長野県庁によると、二〇一九年の千曲川流域の台風被害については、確認している範囲では、被害により廃園、離農した農家は三名で、若い農家に引き継いだケースや別の場所に新植して営農している農家も含め、多くでリンゴ生産が継続をされていると聞いております。
次に、本年八月の大雨による被害ですが、八月三日からの大雨による青森県の岩木川の氾濫により、六百ヘクタール以上のリンゴ園地が冠水等の被害を受けたところです。
農林水産省では、来年のリンゴ生産に大きな影響が生じないように、季節外れの出芽の冬季剪定など、リンゴの樹体の回復等に向けた取組への支援、土壌の通気性確保のため、小型管理機等により行う耕うん作業など、堆積土砂の影響防止に向けた取組への支援、さらに、泥水被害を受け改植が必要な園地については、改植等への支援などを行っています。
農家の方が営農を継続できるよう、青森県等と連携しながらしっかり支援してまいります。
○高橋(千)委員 ここは要望にとどめますが、この決壊したところの一番大きかった長沼地域の農業経営体数、二〇一五年から二〇二〇年までで二百五十九件から百二十九件ということで、百件以上減っているんですね。その前の五年間でいうと三十件であるということから見ても、かなりの方が廃業になっているおそれがある。
昨年の八月も豪雨災害がありました。やはり、私が今日問題にしている堤防の内側、川側のところだけが被害を受けておりますので、こうした問題というのはこれからも各地で起こってくるということで、しっかりと議論していきたい、このように思っております。
そこで、弘前に戻りますが、弘前市大川地区、藤崎町白子地区などの生産者の声を聞いてきました。今度ばかりは移転が必要だ、買い取ってほしいとの声が多く、板柳町の成田誠町長も、農水大臣の同席する場で移転補償を求めておりました。町長に対しては、生産者から園地の買上げを求める要望書を出したと地元紙が報じています。何年も前から言ってきたけれども、なぜうまくいかないのか、様々に話し合ってもきました。生産者と私がという意味です。
まず、国交省に確認しますが、そもそも河川敷は、河川法の二十四条、河川管理者による土地の占用許可が必要な公共用地だと思いますが、違うでしょうか。また、本来は、畑、園地などは占用許可の対象外であって、リンゴ園地がそこにあるという理由は、やはり、旧河川法の時代から、青森県管理から引き継ぐ形で経過措置が認められてきた、そういう理解でよろしいでしょうか。
○岡村次郎政府参考人 お答え申し上げます。
河川内の、通常、水が流れている土地と堤防との間にございます河川敷は、洪水を安全に流下させるための土地でございます。
この河川敷を占用する場合、国有地については、先生御指摘のとおり、河川法第二十四条の規定に基づき、河川管理者による土地の占用の許可が必要でございますが、民地については占用許可を受ける必要はないということでございます。
また、一般的には、個人によるリンゴ園の占用というのは認められておりませんが、先生御指摘のように、岩木川の河川敷の国有地の部分にあるリンゴ園は、昭和三十九年制定の現在の河川法の施行前から占用が認められていたものであることから、経過措置として現在も認められているものでございます。
○高橋(千)委員 昭和四十年の、旧河川法から新河川法になるときに青森県から引き継いだということで、今分かっているだけで、当時は、畑、果樹園が千六十四件、土地の占用ということであったんですが、現在、一番新しい数字で、リンゴの土地の占用が四十二件あるということでありました。
やはり、いろいろな、何かまるで勝手に占用しているみたいな表現を周りから言われたり、生産者の皆さんはすごく傷ついていたんです。だけれども、歴史的経緯があるんだということを今お認めいただいたと思います。ありがとうございます。
そこで、岩木川の河川敷のリンゴ園は四割が民地であります。千曲川も同様に民地が多いと聞きました。
古い話で恐縮ですが、昭和四十年、一九六五年三月二十三日の参議院の建設委員会で、田中一参議院議員が、堤外地、堤防から見て川のある側にある民地の問題を取り上げております。田中議員は日本社会党から全国区で出た参議院議員ですが、青森県出身の方であります。
質疑は、治山治水緊急措置法の改正案で、今のように五か年計画というのがあったわけですね。それで、民地を五年以内に買取りするのかと聞いています。河川局長の答弁は、工事をやる分は購入し、それに関連をする区域については買取りをする。まあ、いずれにしても買うということですよね。でも、東北地方のような広大な部分は五年では無理だ、十五年から二十年の計画を今立てているという答弁でした。
ということは、この答弁で十五年から二十年の計画と言われた堤外地にある民地の買取りは実際にやられてきたんでしょうか。
○岡村政府参考人 お答え申し上げます。
河川整備に伴う用地買収につきましては、財政制約の下で整備に必要な土地を優先して買収することとしております。
具体的には、堤防を造る築堤、あるいは河道掘削等の河川工事を施工するために必要な土地、あるいは河川管理上必要な土地から買収しております。
岩木川における用地取得の状況を取り急ぎ過去十年分調べましたところ、河川工事に必要な土地として約二十九ヘクタールの買収を行っておりますが、そのうち、堤外民地の部分につきましては、河川掘削に必要な一部の箇所に限って買収をしているという状況でございます。
○高橋(千)委員 今冒頭おっしゃいました、財政制約の下でと、これを、このときの質疑では結構率直にお話をされているんですよね。そうはいってもお金が足りない、堤防を造るか、買取りするか、両方はできないというようなお話があった。それを分かった上で、それだけの年数がたっているんだから、改めて原点に返ってもいいんじゃないかという趣旨で聞いております。
岩木川中流部のリンゴ園は、この図にあるように、両岸に堤防ができています。一番直近でできた堤防は、三世寺、大川地区、私が通ったところですが、の堤防で、二〇一六年度に完成をしています。
この整備に当たって開催された住民説明会では、おおむね賛成とあるものの、堤防内の園地は買取り対象にならないのかという意見がやはり出たそうであります。これは二〇一四年三月二十五日の東奥日報。
堤防が直接かかる用地は、当然、そこに堤防を造るわけですから、説明会でちゃんとあなたのところよと説明されて、買収もされています。だけれども、そうではない、河川敷にあるリンゴ園地の生産者にとっては、堤防が背後にできて、堤防の中にされてしまったということで、後から来たんだよとみんなおっしゃっている。なので、リンゴ園地も本来は買取りすべきだったのではないでしょうか。大臣にこれは伺います。
○斉藤鉄夫大臣 岩木川の河川整備に当たっては、地域の意向も伺いながら、財政制約の下で早期に堤防整備を進めるため、整備に必要な土地を優先して買収するという方向で進めてまいりました。
委員御指摘の、二〇一六年度に堤防が完成した大川、三世寺地区においては、堤防整備に当たって、住民説明会を通じて丁寧な対応に努め、用地買収範囲の御了解をいただいたところでございます。
その際、地域の意向も踏まえ、リンゴ園の冠水頻度を低下させるため、周辺よりも少し高い管理用通路の整備を行うことといたしました。
今後も、できる限り早期に事業効果を発揮できるよう、地域の意向を丁寧に伺いながら治水対策を進めてまいります。
○高橋(千)委員 当然、園地がある人は、その堤防に一部かかる人もいるわけで、その方がその説明会のときにお話をされたせりふは、あの水を見たら反対するわけにはいかないと。つまり、当時は八百五十戸くらいの住居が床上、床下浸水をしておりまして、それだけの被害を目の当たりにして、自分たちも冠水しているんですよ、だけれども、やはり命を守らなくちゃということで、堤防を造ることに誰も反対はできなかったわけですよ。それをよく酌んでいただきたいと思うのと、そこからまた年数がたって、管理用通路で、これで当分安心だと思っていたら、思っていたら、また今回、頭まで来る水が来たんだ、今度ばかりは買い取ってほしいと言っている、そういう生産者の気持ちを考えていただきたい。命を守るのは当然なんだけれども、そのためにずっと我慢をしなきゃいけないのかということは、やはり違うんじゃないかと思うんですね。
それで、もし今後、リンゴ生産者が、もう諦めて廃業して、園地が放置されてしまうと、それ自体が洪水の原因となるのではないかと思うんです。平成十九年三月の岩木川水系河川整備計画にはこう書いてあります。河道内の樹木が繁茂すると、洪水時の流水の流下を阻害したり、樹木と堤防の間に高速流を発生させて堤防を浸食し構造物を破壊するおそれがあると明記をしていたわけですね。
最初にお話ししたように、下流には十三湖があって、シジミなど、日本一だと言っているシジミの漁が行われている、そうした下流への影響も大きいわけですよ。つまり、園地をやめてしまえば廃木がどんどんできてしまうことになるわけですから、そこは、事実としてそういうおそれがあるということはお認めいただけますよね。
○岡村次郎政府参考人 お答え申し上げます。
一般的には、河道内で樹木が著しく繁茂いたしますと河川管理の支障となります。このため、定期的な調査に基づき、必要に応じ、樹木の伐採、これを計画的に行っているところでございます。
また、河道内の民地に繁茂した樹木につきましては、土地所有者に伐採の協力を求めたり、場合によっては、承諾を得た上で河川管理者が伐採するという場合もございます。
この岩木川においても、リンゴ園を含めた河川敷の樹木の状況、これをしっかりと把握して、適切な河道管理に努めていくというのが基本的な考え方でございます。
○高橋(千)委員 まず、一般的にはということでお認めいただいたと思います。あと、民地の場合は土地所有者が伐採するんだよというお話だったんですが、そういう形でリンゴ園を整備してきた民地の生産者が、それが結果として環境を守ってきたということにもなるわけですよね。
確かに、遊水地として買取りできないかと生産者が要望しています。それに対して、両岸にもう堤防があるんだから、守るべきものがないんだから、答えはノーだと国交省は言うわけです。でも、リンゴ園は、住宅ではないけれども、生産者にとっては生活の糧であり、住居と同じかそれ以上に大事だということを分かっていただきたいんです。
二〇〇七年に、河川整備計画の策定に当たって、住民説明会で、環境保全の観点から、リンゴというのは農薬を使っているから下流に流れてしまう、そういう意見もあったんです、一部には。それに対して、国交省が、リンゴ園は、地域の産業との関連もあり、単純に川から追い出すことは考えていません、現在の広い河川敷には新しい生態系もつくられており、洪水を遊水する機能も持っていますので、現状の環境を生かした川づくりを行う方針ですと答えているんですね。
非常に大事な答弁だと思うんです。本来は、リンゴ園そのものが、要するにきちんと管理をされているリンゴ園が、やはり洪水を、国交省の表現をすると、遊水する機能を持っていると考えていたのではないでしょうか。
今、異常気象がどんどん強まる下で、流域治水の考え方を生かして、生産者が参加できる、そして理解しながら、ハード、ソフト両面での洪水対策を進めていくべきだと思いますが、大臣に伺います。
○斉藤鉄夫大臣 岩木川の中流部は、地域との合意形成を図りつつ、元々リンゴ園が存在していたところに堤防を整備してきた地域でございます。広い川幅を生かした河道の遊水機能を維持しながら河道掘削等の治水対策を実施しているところです。
流域治水の推進に当たっても、河道内でリンゴ園を営む地域の方々を始め、あらゆる関係者の御協力が不可欠であり、引き続きしっかりと連携して水害に強い地域づくりに全力で取り組んでまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
大臣がとても強調してくださった、元々リンゴ園があったところにと、そういうことなんですよね。河川敷の中でリンゴ園をやってきた、その中にその頃は堤防がなかったわけで、様々、冠水被害もあったけれども、河道掘削したりしながら、しかし、河川整備計画の表現をかりますと、白神山地があり、津軽平野があって、岩木川とリンゴがある、その美しい景観そのものが大事なものなんだということでやってきたわけで、背後から堤防が来て、それで、これから先は我慢をしなさいではなくて、これまで協力してきた生産者の皆さんがしっかりと主役になって話を聞いていただいて、必要な支援をやっていただきたい。
最初の願いはかなえられないかもしれないけれども、だけれども、そうした経過を踏まえた対応をしっかりやっていただきたい、ここを要望にとどめて、終わりたいと思います。ありがとうございました。