国会質問

質問日:2013年 11月 12日 第185国会 災害対策特別委員会

首都直下地震対策特別措置法案

防災名で大開発優先 / 首都直下地震特措法成立 高橋氏反対

(写真)高橋ちづ子議員=12日、衆院災害対策特別委員会

(写真)高橋ちづ子議員=12日、衆院災害対策特別委員会

 衆院災害対策特別委員会で12日、「首都直下地震対策特措法案」が賛成多数で可決されました。

 日本共産党の高橋ちづ子議員は▽首都直下地震対策の名目で新たな大型開発に根拠を与える▽住民が生活している市街地の対策は地方自治体まかせになっている―との理由で反対しました。

 高橋氏は、首都機能維持のための「基盤整備等計画」を、都市開発を促進する都市再生特措法の「都市再生安全確保計画」とみなして適用する規定があると指摘。国や自治体、鉄道事業者、大規模ビル所有者などでつくる協議会が大規模地震の発生に備え、避難対策ついて定めたこの事業計画の協議会に、地域住民が参加できるのかと質問しました。法案提出者の高木陽介議員(公明党)は「地域住民は、事業の実施計画に密接な関係を有する者であり、協議会の構成員として加えることは可能」と答えました。

 高橋氏は、大手ゼネコンなどが事業への参加を申し出た場合、「正当な理由がない限り応じなければならない」と規定されているとして、「地震対策が地域の住環境を破壊し災害リスクを拡大する都市再生計画(開発計画)に置き換えられる」と批判しました。

(しんぶん赤旗 2013年11月17日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 昨日来、フィリピンでの台風被害、本当に甚大な被害が伝えられています。一万人以上の死者ということで、心からお見舞いを申し上げたいと思うとともに、日本でも必ず来ると言われる大災害に備えるために、本当に、あらゆる知恵を尽くし、また協力をし合っていきたい、このように思っております。
 首都直下の対策法について伺いますけれども、まず、本法案の第三条では、内閣総理大臣が、首都直下地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、緊急に地震防災対策を推進する必要がある地域として、首都直下地震緊急対策区域を指定するとしています。また、その首都直下地震とはということでは、東京圏、東京、埼玉、千葉及び神奈川県の区域及び茨城県の区域のうち政令で定める区域、また、その周辺の地域で発生する大規模地震と定められております。
 それで、首都直下地震については、これまでも、二〇〇四年、二〇〇五年ということで被害想定が出されてきましたけれども、東日本大震災を踏まえて、現在、最新の被害想定や対策が見直し作業中であります。
 そういう中で、この区域の指定の仕方、どのようにやっていくのか、また、今進行形の被害想定の見直しとの関係がどうなるのか、提案者に伺います。

○土屋(正)議員 ただいまの高橋委員の御質問にお答え申し上げます。
 本案の第三条において、今御指摘のように、首都直下地震、東京圏という表現を使っているわけであります。この東京圏という表現については、文言にありますように、東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県及び茨城県の区域のうち政令で定めるもの、こういうことになっているわけであります。
 茨城県を除いては、皆行政区単位に自治体全体を対象にしているわけでございますが、茨城県の区域を政令で指定して、内閣総理大臣が指定するということの意味は、最新の地震研究によって、恐らく茨城県の一部の区域も相当な範囲に影響が及ぶとされておることと、もう一つは、東京圏として一体の、さまざまな経済活動あるいは国民生活が連なっている、こういうことを前提にしてこのような規定にいたしたものでございます。
 では、一体、茨城県のどこを指定するかについては、これはいわゆるこれからの科学的知見を踏まえながら慎重に政府で対応するもの、このように考えているところでございます。

○高橋(千)委員 済みません、事前にちょっと聞いていたときと理解が違っていたなと思ったんですが、首都直下地震緊急対策区域というのは、茨城県の中はどこを指定するかがこれから絞られるけれども、それ以外の東京圏については全部入るという意味でしょうか。

○土屋(正)議員 この法律のたてつけは、基本的には地方自治体が実行部隊となるわけでございますので、したがってこのような指定の仕方をしているわけでありますから、将来どういうふうな運用をするかは別にして、このような規定の仕方をしているわけであります。
 なお、先ほど統括官がお答えいたしましたように、茨城を除く一都三県におきましては、東京、神奈川、千葉、埼玉の四都県に、さらに、その中における政令市、五つの政令市がございますが、横浜、川崎、千葉、さいたま、そして相模原という五つの政令市が連携して、九都県市会議というものを持っております。この九都県市会議の主たるテーマの一つが防災対策でありますので、これらの機能を生かしつつ、全体として意思統一をしていくということになるだろう、このように想定をいたしております。

○高橋(千)委員 東京圏の中からさらに、指定するのはもっと絞られるというふうに聞いていたものですから、私はそうじゃない方がいいと思うので、別にこれはこれで、そうだというんだったらそれでよろしいです。
 それで、提出者に続けて聞きますが、法案の第五条では、国の行政に関する機能のうち中枢的なものの維持に係る緊急対策の実施に関する計画をつくるということになっていますが、どのようなものでしょうか。簡潔にお願いします。

○土屋(正)議員 簡潔にお答えを申し上げます。
 お尋ねの緊急対策実施計画は、政府として首都直下地震が発生した場合に優先して継続すべき業務の内容など、いわゆる政府の業務の継続に関する事項、それから、そのためには人が要るわけですから、必要な職員の確保、非常用食料等の備蓄に関すること、そしてまた、仮に機能できなくなったときの代替に関すること、この三つを想定いたしております。

○高橋(千)委員 そこで、大臣に伺いますけれども、二〇一二年七月の首都直下地震対策検討ワーキンググループの中間報告では、首都直下地震発生時に優先して実施すべき業務が必ずしも明確ではないと指摘をして、各府省が首都直下地震発生時に継続すべき必須の機能を明らかにし、非常時優先業務を選定するための政府業務継続方針や政府業務継続計画の策定など、具体的にこうすべきだということを示しております。また、被害想定を待たずとも取り組むべき対策という表現をされていますね。
 そこで、政府全体としてのいわゆる業務継続の取り組みがどのようになっているのかということと、また、これは他の大規模地震を想定した法案とは違って、首都中枢機能維持を前提とした法案という性格上、閣法で提出すべきではなかったのかなとも思うんですが、大臣の見解を伺いたいと思います。

○古屋国務大臣 委員御指摘の政府全体のBCPですね、業務継続計画。BCPはビジネスですから、むしろ、ACP、アドミニストレーティブ・コンティニュアス・プランという方が正しいのかもしれません。
 委員御指摘のように、二〇一二年七月に中間報告が出ておりますけれども、今そのフォローアップをしておりまして、大体、めどとしては、年内をめどに取りまとめをしていきたいというふうに思っておりまして、大規模災害のときに行政の中枢機能が麻痺することなく、その継続性が確保できるように、業務継続計画に取り組んでいきたいと思っております。
 なお、議員立法じゃなくて政府提案にすべきだということでございますが、こういった種類の法案でも、例えば、いつも委員が御指摘をされている被災者生活再建支援法も議員立法でございますし、また、地震防災対策特措法も議員立法でやっておりますので、必ずしも、議員立法でやるのがおかしいのではないかという委員の御指摘は当たらないというふうに思います。速やかに法律をつくるという視点から議員立法で提案をされた。我々は、その議員立法にしっかり従って対応していくというのが政府の役割だと思っています。

○高橋(千)委員 当たらないとまで言う必要はないと思うんですよ。さっき言ったように、これまでの地震に関する立法というのは、確かに議員立法でやってきました。でも、最初にお話をしたように、これは政府の業務継続計画をつくるわけですよね。本当は、待たずともやれと中間報告で言っているわけですから、逆に言うと、法案がなくてもやるべきことだし、やっていること、各市町では既に進めていることなんですよね。でも、それを政府としてやれということをあえて書いて、そのために必要な、いろいろな規制緩和ですとか特例をやるということを言っているわけですから、中央防災会議でこれだけの被害想定を行って、それに基づいてやるときに、政府としての法案でよかったのではないかと言っているだけでありますので、当たらないとまで言う必要はないと思います、済みませんが。そこで論争するつもりはありません。
 提出者に続けて質問しますけれども、第七条は、首都直下地震緊急対策区域のうち、首都直下地震が発生した場合における首都中枢機能の維持を図るために必要な基盤の整備を緊急に行う必要がある地区を首都中枢機能維持基盤整備等地区として指定するとしております。永田町や霞が関が想定されるというふうに言われているんですけれども、首都中枢機能とは何かというのは、第二条第二項に、東京圏における政治、行政、経済等の中枢機能となっています。ですから、政治、行政となると永田町と霞が関というのはすぐわかるわけですが、経済の中枢機能、これはどこを考えているんでしょうか。

○土屋(正)議員 先ほど私が答弁したことについて一部訂正をさせていただきますが、先ほど御質問の中に首都直下地震緊急対策区域のお話が出されたのを、協議会のお話と若干混同して御答弁いたしましたが、第三条で言うところの区域は、実際に被害が甚大になるというところを想定しておりますので、より具体的な地域の指定ということになるだろう、このように考えております。そのように訂正をさせていただきます。
 ただいま御質問のありました経済の中枢機能とは一体何かということにつきましては、基盤整備が必要な地域については、主に中央銀行や主要な金融機関等による決済機能、企業本社機能等を有する地域を想定しておりますけれども、本案成立後に緊急対策推進基本計画の作成を通じて政府内において適切に処理されるもの、このように考えている次第でございます。

○高橋(千)委員 中央銀行等というのは、なるほどと思いました。
 そこで、法案の第二十条には、首都中枢機能維持基盤整備等地区内で認定を受けた基盤整備等計画に対し、都市再生特別措置法に定める都市再生安全確保計画とみなして適用する規定がある。こうした規定が必要とされる理由は何でしょうか。

○高木(陽)議員 本法案の第八条に定める首都中枢機能維持基盤整備等計画は、基盤整備等地区における、首都直下地震が発生した場合の首都中枢機能の維持を図るために必要な基盤の整備のほかに、滞在者等の安全の確保を図るために必要な退避のために移動する経路、また、一定期間退避するための施設、備蓄倉庫そのほかの施設の整備等に関し定めるものでございます。
 この計画によって整備を促進する施設等が都市再生特別措置法に定める都市再生安全確保計画と共通することから、当該計画を都市再生安全確保計画とみなして都市再生特別措置法に定める特例措置を適用させ、これらの施設の整備の促進を図ることとしたものでございます。
 ちなみに、都市再生安全確保計画に係る法律上の特例というのは、建築確認の特例、建築物の耐震改修の計画の認定の特例、備蓄倉庫等の容積率の特例、都市公園の占用の許可の特例等が規定をされております。

○高橋(千)委員 現在、全国六十二地域に都市再生緊急整備地域が指定されておって、東京圏だけで二十三地域あるわけですね。この都市再生計画というのは、地域の住環境破壊ではないかとか、いろいろな形で地域住民との意見の違いなどもある。ただ、今回、地震対策ということでそれが置きかえられるということになっては困るというのが、指摘されなければならないことだと思うんですね。
 これは、例えば事業の実施に密接な関係を有する者が計画の策定や実施について協議する協議会の構成員となれるという規定がございます。同時に、これらの者が構成員に加えるよう申し出た場合、正当な理由がない限り、申し出に応じなければならないと書かれているわけですね。そうすると、当然、開発の業者が手を挙げたときに、なかなか、よほどのことがなければ断れないということもあります。
 実際には、住民も含まれるんでしょうか。

○高木(陽)議員 委員が御心配されているように、地域住民との関係だと思うんですね。
 その中におきまして、協議会、御指摘の二つの協議会については、いずれも、協議会を組織する関係地方公共団体が必要があると認めるとき、計画及びその実施に関し密接な関係を有する者を協議会の構成員として加えることができることとしておりますので、この地域住民は、密接に関係を有する方々であれば、関係地方公共団体が協議会の構成員として加えることは法律上可能である、このように考えております。

○高橋(千)委員 そこはまず確認しました。
 ちょっと時間がないので、次の質問をして、最後に言いたいことを言わせていただきますが、今、中枢部の話をしてきましたけれども、一方で、実際に住民が生活している市街地の対策というのは、地方自治体任せになっていると言えないでしょうか。
 法案第一条では、「首都直下地震が発生した場合において首都中枢機能の維持を図るとともに、首都直下地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、」というふうに規定をされているわけです。しかし、そのための具体的な手当て、何をするかということでは、法案第二十一条の地方緊急実施計画で定めるとされている事項、これはできる規定になっているんですね。
 これはなぜなのか。

○林(幹)議員 地域防災計画は、首都直下地震等特定の災害に限りませんで、当該地域の防災に関し、関係機関が処理すべき事務の大綱を定める総合的かつ基本的な計画でございます。地方公共団体に対して作成が義務づけられているところであります。
 地方緊急対策実施計画は、首都直下地震対策のために緊急に実施すべき施設整備、木造密集地域対策、帰宅困難者対策等の対策を円滑に推進するために重要な計画であることから法律で規定したものでありますけれども、地方みずからの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにする観点から、作成の義務づけは行わなかったものでございます。
 義務づけされていないものの、積極的な活用を期待したいし、政府においても、法第二十二条の規定に基づいて、計画の実施に必要な援助を行っていただきたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 援助ということで、先日も参考人質疑の中で、木造密集地域の問題でいろいろ要望も荒川区長さんから出された、そういうことがございました。
 それで、やはり実際に市街地、住宅地、そういうところでは、燃えないようにすることや耐震化とか避難道の確保とか、さまざまな対策が求められるわけであります。
 そういうときに、できる規定にした、だけれども援助はしていくといったときに、多分、百八十国会、つまり昨年出されたときは、一定そういうことも担保するものを考えていたのではないかと思うんですね。
 というのは、昨年提出された首都直下地震対策特別措置法案では、交付金制度を設けて財政的にも支援する、あるいは、地方の計画に対して補助するというふうなことが要綱にありました。そして、予算も一千億円必要とされていたんですけれども、当初は何を予定していたのか、また、本法案でなぜそれをなくしたのか、伺いたいと思います。

○林(幹)議員 先生御指摘のとおり、第百八十国会に提出した法案においては、補助率のかさ上げ等の当該法案に係る経費として、耐震化あるいは不燃化等の対策について約一千億円を想定したところでございます。
 しかしながら、政府からは、首都直下地震に係る新たな被害想定が年内にも出されると聞いておりまして、財政措置のあり方についても適切な検討がなされるものと考えているところでございます。
 本法案においては、第三十九条に、財政上の措置等に関する国に対する努力義務規定を置くにとどめているものでございます。

○高橋(千)委員 被害想定が発表されれば、今後、一定の措置がされるという意味でおっしゃっていたのかなと思っています。
 本当に、国がもちろんリーダーシップを果たしていくと同時に、東京都ももちろん被害想定を出しておりますし、対策をやると言っています。ただ、本当に地に足のついた、住民の暮らしの身近なところでの対策をどうするかという点では、まだなかなか具体化をされていないわけですね。
 そういう中で、さっき言ったように、都市再生計画がすごく進められていて、超高層ビルによる再開発を柱とした都市再生が進められ、繁華街や地下鉄などへ広がって、一極集中の是正どころか、新たな投資と開発が集中的に行われてきたというのが首都圏の実態ではないかと思っているんです。その点では、首都直下地震対策の名目で新たな大規模開発を進める根拠になりかねないということをあえて指摘しなければならないと思います。
 住民の生命財産に直接かかわる部分については、地方自治体任せにしないということでしていただきたいということを強く求めて、そういう立場からこの法案については賛成できないということを述べて、終わりたいと思います。

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