知床事故 高橋氏に国交省答弁
(写真)高橋千鶴子議員 |
25日の衆院国土交通委員会で、遊覧船等の旅客不定期航路事業者が、1995年の需給調整廃止で2021年までに105増加していることが明らかになりました。日本共産党の高橋千鶴子議員の質問に国交省が認めました。
高橋氏は、事故の背景に規制緩和があると指摘し、遊覧船等の需給調整規制が廃止された時期と事業者数の推移を質問しました。国交省の高橋一郎海事局長は、旅客定期航路事業者と合わせた数を示し、当時と現在の事業者数は変わらないと答弁。高橋氏が不定期航路事業者の数字を重ねて問うと、95年が455事業者、2021年が560事業者と答え、事業者数が増加していることを認めました。
高橋氏は、需給調整規制を廃止し参入事業者が増えれば悪質事業者も参入し、過当競争になり安全が脅かされることから、運輸政策審議会で「需給調整規制廃止後も安全の確保が最も重要」「安全の確保は、市場による自律的調整の機能に任せきることはできず」と行政関与の理由を指摘していたことを紹介。斉藤鉄夫国交相は「その通り書かれている」と認めました。
(「しんぶん赤旗」2022年5月27日付)
-議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨日、知床遊覧船沈没事故の特別監査を受け、海上運送法違反による事業許可の取消しを行うと発表がありました。当然ではあると思いますが、まず、処分の理由は何か、簡潔にお答えください。
○斉藤鉄夫大臣 有限会社知床遊覧船は、今回の事故を受けて実施した特別監査により、海上運送法の違反事項を多数重ねていたことが確認されました。
具体的な違反事項としては、一つ、安全統括管理者及び運航管理者である社長は、両ポストに求められる職務を理解せず、会社への常駐義務を果たさないなど、当該事業者の安全管理体制が欠如していたこと。二つ目に、会社は、社長が運航管理の実務経験がほとんどなかったにもかかわらず、社長を運航管理者に選任する虚偽の届出を行っていたこと。三つ目として、事故当日の気象、海象が発航を中止すべき条件に達する状況であったにもかかわらず、船長は発航中止を行わず、社長も発航中止の指示を行わなかったこと。四つ目でございますが、社長は、船舶と陸側の連絡方法が設備の故障等により不十分な状態であるにもかかわらず、船舶との通信が可能か、十分な確認を行わなかったこと。五つ目として、船長から社長への定点連絡が全く行われず、社長は、事務所を不在にして、船舶の動静の把握を怠ったこと等、安全管理規程により構築されるべき複層的なセーフティーネットが機能せず、輸送の安全確保の仕組みを破綻させました。
これらの違反行為が、今回の乗員乗客二十六名を巻き込んだ重大な事故の発生と被害の拡大の大きな要因となっており、昨年六月の特別監査において指摘された事項の違反を繰り返すなど、安全管理体制の改善意識が見られないことが今回の特別監査において確認されました。
当該事業者にこのまま事業を継続させることは、再び重大な事故を起こす蓋然性が高いことから、事業許可の取消しという最も重い行政処分が適当であると判断いたしました。
○高橋(千)委員 再び重大な事故を起こす蓋然性が高いことから、最も重い取消しという処分を行ったという最後のまとめでありましたけれども、私は、本来許可を与えてはいけない人物ではなかったのか、これだけの大きな犠牲を出さなければここまで至らなかったということは、本当に国自身が国自身の責任として認めるべきではないか、このように指摘をしたいと思うんですね。
特別監査の中には、今お話がありました安全管理体制の欠如と指摘がありまして、安全統括責任者及び運航管理者に求められる責務は重大であるにもかかわらず、安全統括責任者と運航管理者を兼任する社長は、両ポストに求められる職務を理解せず云々というくだりがあります。
そもそも、なぜ兼任が認められるのか、このことを伺いたいと思うんですね。経営トップと安全統括と運航管理者が同じ人物だといえば、その届出の時点でガバナンスが全く利かないのは明らかなんです。書類の時点で、もうそういうことが認められないという仕組みにするべきではなかったんでしょうか。
○高橋一郎政府参考人 お答えを申し上げます。
御指摘の安全統括管理者は、会社全体の安全マネジメント体制の確立などを図る責任者でございます。海上運送法第十条の三によりまして、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任されることとされております。この役割を社長の地位にある者が務めること自体に問題はないものと、制度としては認識してございます。
また、運航管理者につきましては、船舶の運航管理に特化して統括を行います責任者でございまして、通常、より実務レベルでの役割を担うものでございますが、実務経験など海上運送法第十条の三に規定する要件を満たす者でありますれば、社長の地位にある者がこの役割を担うことも可能であると認識しております。
加えまして、安全統括管理者と運航管理者の責務は互いに相反するものではございませんので、小規模な事業者などにおいて、これを兼務することが直ちに安全管理上の問題となると考えてはございません。
しかしながら、有限会社知床遊覧船につきましては、安全統括管理者と運航管理者を兼ねる桂田社長が、両ポストに求められる職務を理解せず、会社への常駐義務を果たさないなど、当該事業者の安全管理体制が欠如する結果となっておりましたこと、また、社長が運航管理の実務経験がほとんどなかったにもかかわらず、社長を運航管理者に選任する虚偽の届出を行っていたことなどが特別監査の結果明らかとなっておりまして、このような実態となったことは大変重大な問題だと考えてございます。
運航管理者及び安全統括管理者の資質の確保につきまして、関係者への聞き取りや更なる書類の提出要請など、届出書類の裏取り調査も含めた対策を進め、輸送の安全の中核であります安全管理規程の実効性の確保を図ってまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 経営トップだから、ほかに安全統括をやる人がいなかったから兼務はやむを得ないというか、認めず、あり得るという答弁だったと思います。
しかし、それが、運航管理者も同じ人だと、三者が同じ人でガバナンスが利かないというのは事実じゃありませんか。
○高橋政府参考人 当該会社の社長が、社長と安全統括管理者と運航管理者を兼ねる以上は、法律で求められる責務を適切に果たすべきであったと考えてございますが、当該社長がこの責務を果たしておりませんでしたことが特別監査における処分の大きな要因となってございます。
○高橋(千)委員 私が国の責任だと言っているのは、そういうことなんです。そういう基準が間違いだということを認めないから、兼務でもいいんだと言っていたら、同じことが起こるんですよ。何にも学んでいないじゃないですか。そこを言わなきゃいけないと思うんです。
しかも、これは本当は、運航管理補助者がありますよね。補助者が、それが船長だったということはもうみんな知っていること、答弁もあったことです。それに対して、この違反の事項の説明はこう書いてあります。「運航管理補助者も不在という状態であった。」と当たり前に書いているわけです、安全管理規程第十五条第一項違反。当たり前じゃないですか、船長なんですもの、船に乗っているんですよ。それを「不在という状態であった。」ということで単純に書いています。
しかも、その後、第十六条違反、「運航管理補助者は、事故当日の運航において、船舶の運航中、営業所に不在であった。」と。だから、当たり前でしょう、船を出しているんですから不在に決まっているんですよ。それが分かっていて、なぜ認められるのかということを聞いています。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘の事故発生当日の事案におきましては、運航管理者である桂田社長が事務所を離れます場合には、事前に運航管理補助者を指定して、運航管理補助者が事務所において船舶側と常時連絡を取る体制にしなければならなかった。このことを行ったということが大変問題であったと思います。
今後、監査の在り方などを厳しく徹底をして、適正化を図ってまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 ちょっと、今、大臣に聞きたいです。
この答弁、どう思いますか。私は、運航管理補助者はいないのが当たり前でしょう、船に乗っているんですからと。それを、平気で今のお答えですよ。だから、そういうことが起こらないように基準を見直すべきじゃないかと言っています。
○斉藤鉄夫大臣 今回、監査をしっかり行いまして、今回、どこが、我々国として監査を行う立場から、どういうところに不備があったかということも含めて、しっかりこれを見て、また今後の新しい体制、しっかり考えていきたいと思っています。
○高橋(千)委員 今、検討委員会の中で、運航管理者の資格とか免許だとか、いろいろなことを検討していますよね、資質を高めると。どんなに資質を高めたって、同じ人が全部やっているんじゃ意味ないんですよ。なぜそこを直そうとしないのか、そのことを指摘をしておきたい。絶対それは見直してほしいと大臣に強く求めたいと思います。
次に、業務用無線が壊れていて、携帯電話があるから大丈夫というのを真に受けて認めてしまった、実際には船長の携帯は使えない区域が多かったということが当初から話題になっておりました。それで、衛星携帯電話は昨シーズン末頃から故障して使用できない状態である、業務用無線は業務用の使用が元々認められていなかった、それを使うと書いてあったし、しかもアンテナも破損している、三日前の中間検査においてau携帯が航路全域で通じるよという申告だけで認めてしまった。
これは本当に、チェックの不十分さは既に認めていることだと思うんですけれども、伺いたいのは、そもそも知床は世界遺産地域であるわけですよね。携帯の基地局をむやみに建てることができないわけなんです。北海道の、やはり地元の方からは、知床を、世界遺産、せっかく観光客が来るので、携帯を使えるようにしてほしいという観光客の要望も多かったと聞いています。だけれども、だからといって、むやみに基地局を建てられるわけじゃないわけですよね。
auは全国の世界遺産で携帯電話が使えるというPRをして、ホームページでやっていました。また、KDDIが、二〇一五年の真冬の中に、知床五湖に向けて十キロ先から電波を飛ばす携帯基地局を建設したというルポを載せていて、大変な作業だなと思いました。だけれども、そうやってそれぞれの携帯会社が努力をしていて、使えるところもあるよという、あるよという程度なんですよね。
だから、通じなくて当たり前なんだと。携帯各社によって範囲が広がってきたというのがまず前提にすべき認識であって、常時通信可能な通信手段に携帯電話は入れるべきではないと思う。あくまでも補助的なものだという位置づけにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
小型旅客船につきましては、船舶安全法において、陸上との間で常時通信できる無線設備の搭載を義務づけているところでございます。
この無線設備としては、業務用無線や船舶衛星電話のほか、陸上との間で常時通信できることを条件に、携帯電話についても現行制度では認められております。
しかしながら、今回の事故においては、カズワンの携帯電話では実際には通信できなかったと推測されております。今回の事故の発生を真摯に受け止めて、国土交通省といたしましては、知床遊覧船事故対策検討委員会におきまして、無線設備として携帯電話を認めることの妥当性、また御指摘の業務用無線などを含めまして、船舶にどのような無線設備の搭載を義務づけるべきかについてしっかり議論をし、必要な対策を講じてまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 携帯電話を認めることの妥当性を今検討していくというお答えがありました。大事な答弁だと思います。やはり認めてはいけない、あくまでも補助的なものだということを指摘をしたいと思います。
次に、運航の管理について監査を行う運航労務監理官は、全国に何人いて、年間どのくらいの監査を行っているのか、一人平均ではどのくらいになるのか、伺います。
○高橋政府参考人 運航労務監理官についてお尋ねがございました。
運航労務監理官におきましては、全国に百八十名おりまして、監査件数につきましては、コロナ禍の影響を受けた令和二年度は約五千件でございましたが、それ以前は年間七千から八千件程度の監査を行ってございました。
監査は通常二名体制で行いますところ、年間の監査件数といたしましては、各人八十から九十件程度となってございます。
○高橋(千)委員 今、約五千件とお話ししていただいたと思うんですが、海上運送法に基づく検査と船員法に基づく検査と、結局それは同じ人たちがやっているということで、合わせての数字だと思うんですよね。だから、そういう中での、一人当たりにすると八十件から九十件というのがまずかなりハードではないか。そういう中で手抜きがあってはならないということを、今考えなきゃいけないわけです。
一九九五年の規制緩和推進五か年計画を受け、同年、海上運送法の改正により、遊覧船などの需給調整が廃止されました。当時と今とで事業者数の増減がどうなっているか、また、参入を促す以上、監査の体制がその頃から見てどうなったのか、伺います。
○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
全国の旅客船事業者の数は、遊覧船を需給調整の対象外といたしました一九九五年度におきましては八百八十八事業者でございます。その後、二〇〇〇年度まで大きな変化はございませんでした。
引き続きまして、二〇〇〇年度に遊覧船以外の旅客船の需給調整を廃止したことに伴います事業者の参入によりまして、二〇〇二年度におきましては九百六十八事業者と若干の増加が見られましたが、以降、約二十年間横ばいで推移しておりまして、二〇二一年度におきましては九百五十三事業者となってございます。
一方、その旅客船事業者に対します監査を担う国の人員体制につきましては、地方運輸局全体で人員の合理化が図られる中、その人員数を維持してございまして、二〇二一年度におきましては百八十名となってございます。
私ども、抜き打ち、リモートによる監視の強化、あるいは船舶検査情報の監査での活用、労務監理官の専門性向上などによりまして、効率的、効果的な監査を進めてまいりたいと存じております。
○高橋(千)委員 やはり足し算しましたね。私は遊覧船などのと聞きました。一般旅客不定期航路と定期航路では数字が違うと思うんですね。定期航路の方は、いわゆる海峡大橋ができたりとか、明石海峡とか、様々な中で、当然、廃止になったところもあるんですから、一時期は増えたけれども、減っているわけですよ。だけれども、不定期航路という意味でいえば、九五年四百五十五から二〇一九年五百七十五と、百十増えています。そうじゃありませんか。
○高橋政府参考人 お答えを申し上げます。
旅客不定期航路事業者数につきましては、一九九五年には四百五十五事業者数であったところ、二〇一九年には五百七十五、二〇二〇年には五百六十五、二〇二一年には五百六十ということで、増加をしておるところでございます。
○高橋(千)委員 お認めになったと思います。そういう質問をしているのに、あえて足し算をして、いかにも横ばいだとか増えていないと言う。そういうところが不誠実なんですよ。
規制緩和五か年計画の目的は、国会答弁などでも、国民生活の向上、経済の活性化及び国際的調和等を図る、一般に企業活動はできるだけ自由にすることが消費者の利益につながる、こういうことが繰り返し説明をされておりました。
だけれども、九八年の運輸政策審議会海上交通部会答申においても、そうはいっても、安全の確保が最も重要な課題であり、安全確保のための方策は、基本的に需給調整規則を廃止した後も講じていくことが適当として、行政の関与の重要性や参入の在り方などを指摘していたはずだと思いますが、大臣、いかがですか。
○斉藤鉄夫大臣 平成十年の運輸政策審議会海上交通部会の答申においては、それまでの需給調整規制を前提とした免許制を改め、一定の資格要件を満たせば参入が認められる許可制とすべきとしながらも、運輸分野においては安全の確保が最も重要な課題であり、安全確保のための方策については、基本的に需給調整を廃止した後も講じていくことが適当であるとしております。
輸送を行う事業にとっては安全の確保が最も重要であることは、今も全く変わっておりません。
国土交通省では、事故対策検討委員会を設置いたしまして、小型船舶を使用する旅客輸送の安全対策について、法的規制の在り方も含めて、総合的に検討することとしております。
この委員会で精力的に議論を行い、具体の施策にしっかりと反映させ、輸送の安全性を高めてまいります。
○高橋(千)委員 その安全確保の考え方は変わっていないという答弁だったと思います。
この答申の中に、事業者は、その責任による事故を発生させた場合、被害者に対して損害賠償責任を負うが、保険や司法制度による救済はあくまでも人命の喪失等に対する事後的な補償手段にすぎないということを書いて、これらのことから、安全の確保については、市場による自律的調整の機能に任せ切ることはできないということでやっている。このことは、まさに徹底されなければならない、今の事故の教訓、最大の教訓ではないか、このように指摘をしたいと思います。
ちょっと時間がなくなったので、最後の方の質問を一つ行います。
例えば、出航が可能かどうかとか、無線での情報交換とか、航路が互いの営業を邪魔しないようになどという点でも、同業他社や、あと、漁業者との日常的な調整は必要だと思います。立派な安全管理規程を作ったとしても、実際に運用が正しく行われるかどうかは、相互チェックの仕組みが必要であります。
こうした、協議会というような形の、加盟していることを何らかの許可の条件にするなど、そういうことを徹底していく必要があると思いますが、大臣、最後お願いします。
○斉藤大臣 相互チェックの必要性ということの御質問でございます。
運航基準の遵守についてですが、何よりまず、危険なときには絶対に運航しないという大原則を徹底していくことが重要だと考えています。
この危険なときには絶対に運航しないという大原則を徹底するべく、現在行っている緊急安全点検において、海象条件の厳しい航路を皮切りに、小型船舶を利用した全国の旅客船事業者に対し、特に、出航可否の判断における運航基準の遵守を指導しております。
委員御指摘の協議会を含め、地域の関係者が連携して安全意識を高めたり、知見を共有する取組は、地域全体の安全レベルの向上が期待できることから、意義のあるものであると考えます。
今、現在行っております事故対策検討委員会におきまして、例えば、港に黄色い旗を揚げたら、一律にその港の全事業者が運航しないこととしてはどうかとのアイデアもこの検討委員会で出ているところでございます。
国土交通省としましても、地域により事情が異なることを踏まえつつ、この検討委員会での議論を踏まえて、どんな仕組みが適切か、検討を進めてまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
海をよく知っている人から言われたアドバイスですので、是非これは実行していただきたいと思います。
終わります。