国会質問

質問日:2022年 5月 10日 第208国会 東日本大震災復興特別委員会

研究の体制が不明確

復興特措法改定案 高橋氏が批判

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=10日、衆院復興特委

 福島県浜通りに国際研究教育機構を設立する福島復興再生特措法改定案が衆院本会議で12日、自民党、公明党などの賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は10日の衆院復興特別委員会で、人材が地元に定着することが福島県の希望であり、当初の有識者会議の報告では教育機能を重視していたはずだが、「なぜ名称が変わったのか」と質問。西銘恒三郎復興相は「最初は国際教育研究拠点だったが、研究重視になった」としか答えられませんでした。

 高橋氏は、同機構で世界トップレベルの研究を行うとしているが、「人材が本当に集まるのか。どんな体制をどうつくるか明らかになっていない」と批判。由良英雄復興庁統括官は「数百名の研究者が参画する想定だ」と答弁しました。

 高橋氏は何人福島に居住するかもわからないのに、「自治体に居住環境を整備と言われても困ってしまう」と指摘。原子力災害を経験した福島沿岸部の人々が地域で生活を取り戻せることが本来の目的であり、「廃炉やトリチウムの分離技術の確立などに、国が責任をもって研究に取り組むことが最大の課題だ」と主張しました。

 また、高橋氏は福島第1原発事故に伴う避難者訴訟の最高裁判決が命じた賠償額が、国の賠償額基準となる「中間指針」を上回ったとして、同指針の見直しを要求。田中英之文科副大臣は「中間指針を上回る判決が示されることは、当初から想定されていた」と強弁しました。

(「しんぶん赤旗」2022年5月13日付)

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 原子力損害賠償紛争審査会が四月二十七日に会合を開き、避難者訴訟の最高裁決定を受け、中間指針との整合性について分析を開始したというところであります。確定判決がいずれも中間指針を上回ったことによると思われますが、見直し議論を始めた趣旨と結論を得る時期などについて伺います。

○田中英之副大臣 お答えいたします。
 東電福島原発事故に伴う七件の集団訴訟に関し、最高裁判所は東京電力の上訴を認めず、これによって、東京電力の損害賠償額に関わる部分の判決が確定したと承知をいたしております。これらの確定した判決においては、賠償すべき損害の範囲、項目、また金額等が七件集団訴訟それぞれの考え方で異なっているところであります。
 こうした状況を踏まえ、四月二十七日に第五十六回原子力損害賠償紛争審査会を開催し、判決確定を踏まえた今後の対応について議論が行われ、中間指針の見直し等も含めた対応の要否の検討に当たり、今後、専門委員を任命し、一定程度の時間をかけて、各判決の詳細な調査、分析を行うこととされました。
 このため、中間指針の見直し等も含めた対応の要否については、今後任命される専門委員による各判決等の詳細な調査、分析の結果を踏まえ、引き続き審査会において御議論いただくものと考えております。

○高橋(千)委員 報道では、判決の中でどこが地元の人の思いを酌み取った部分なのかを調べる必要がある、それが地元に沿った指針見直しにつながるなどの意見があったとされています。
 審査会に出された裁判の判決の概要は、ふるさと喪失や日常の生活が奪われたこと、あるいは避難生活の苦労など、それぞれに寄り添った判決の部分を、委員の皆さんたちがそれを確認をされたと思うんですね。そして、弁護団や福島県の対策協議会などの要望、早期に見直しをしてくれという要望もありました。私たちも、これまでも繰り返し求めてまいりました。見直しは待ったなしだと思います。
 少なくとも、要否を含めということですけれども、見直しが全然ないということはあり得ないと思うんですね。判決で示されたように、賠償額と実態が合わないものを検証し、やはり適切な見直しにつなげていただきたい。もう一言いただきます。

○田中副大臣 中間指針等は、東電福島原発事故による被害の規模や範囲が未曽有のものであることを踏まえ、可能な限り早期に被害者救済を図る観点から、類型化が可能で一律に賠償すべき損害の範囲や損害の項目の目安を示したものであります。
 中間指針等に明記されていない損害についても、個別具体的な事情に応じて賠償の対象となり得ることが指針の中で示されております。現にそのような前例も存在していることから、指針の目安を上回る判決が示されることは、指針策定当初から想定されていたものと考えております。
 ここからは繰り返しになりますけれども、今般確定した判決において、賠償すべき損害の範囲、項目、また金額がそれぞれの考え方で異なっており、四月二十七日に開催された審査において、中間指針の見直し等も含めた対応の要否の検討に当たり、今後、専門委員を任命し、一定程度の時間をかけて、各判決の詳細な調査、分析を行うこととしております。
 このため、中間指針の見直し等も含めた対応の要否については、その判断の時期も含め、引き続き審査会において御議論いただくものと考えております。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 当初から想定されていたものという答弁がありました。とても大事なことだと思うんですね。やはり長期化するということは当然予想されながらも、一定の目安として急いでいたと。当然、その中で、相当程度因果関係があればという一言があったわけですよ。その一言のために、東電が、むしろ、相当程度因果関係がなければ賠償できませんと、そういう東電の言い訳に使われてしまったということがあって、本当に悔しい思いをたくさん重ねてきたんです。
 だけれども、重ねてきたことが、本当に、三十もの訴訟が今行われていますけれども、それが積み重なって、少なくとも東電の責任は確定したということでありますので、そこをしっかりと受け止めた対応をお願いしたい。ここは要望にとどめます。副大臣、ありがとうございました。
 次にですが、最高裁は夏にも、国の責任の有無について初の司法判断を下すと聞いております。群馬訴訟の原告団長丹治杉江さんの意見陳述が最高裁で四月二十二日に行われました。丹治さんはいわき市から避難された方ですが、なぜ避難せざるを得なかったのか、また、法廷には来られない他の原告の方の深刻な実態も語られておりますので、本当は全部紹介したいところですが、国の責任について、今日はこの部分だけを紹介します。
 我が国の原発政策は、最初から国策民営です。国が原子炉立地審査指針を作り、一つ、周辺に大都市がないこと、二つ、人口密度が低い地域であること、三つ、産業水準は低い地域であることなどの条件を決めて建設を許可したのです。一九八六年のチェルノブイリ原発事故発生後、国会内外でも度々、日本の原発の安全性が議論されました。地震大国日本における原発事故の危険性も追及されましたが、五重の壁に守られている、絶対に事故は起きないと答弁を繰り返していたのも国です。
 独り東電だけの問題ではないと思うんですね。東電の責任が確定した以上、国策として推進し、安全審査を与えてきた国の責任は免れないと思うが、どうでしょうか、経産。

○細田健一副大臣 ありがとうございます。
 今お話がございました福島第一原発事故における国の法的責任の有無については、現在係争中であることから、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、当省といたしましては、引き続き、被害者の方々に寄り添った公平かつ適切な賠償を行うよう東京電力をしっかりと指導していくとともに、福島の復興と福島第一原発の廃炉について、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 賠償を行うために指導するのは当然なんです。だけれども、あくまでもそれは、国は自分の責任はないよと言っているように聞こえますので、そうではないということをやはり改めて指摘をさせていただきたいと思うんですね。
 資料の一枚目を見てください。
 これは、ちょっと字が潰れて読めないけれども、こういうものだというので紹介をさせていただきました。注釈がちょっと上に書いてあります。昭和四十三年、一九六八年元旦号の福島民報です。当時の東電の木川田一隆社長と当時の木村守江知事の対談です。
 読めないところを私が読みます。「日本一の“原子力基地”へ」という大きな見出し、これは見られると思います。実は三段落のところに書いているんですが、木村知事いわく、双葉地区はいわき市と相馬市の中間で原野や田んぼが多く浜通りのチベット地帯と言われた。産業開発はおぼつかない地域だったが、幸いなことに木川田社長に目をつけてもらい、日本では最初で最大の原子力発電所が建設されることになったと感謝をしています。赤丸をつけたところです、左。司会が、科学は日進月歩でもう原子力の安全性は確実でしょうと向けると、社長は、絶対安全ですと答えて、技術的に最も高水準のアメリカ方式で二重三重の設備がある云々の後、危険物は全部水で消してしまう、向こうでは、多分外国のことを言っているんだと思いますが、町の真ん中でやってますよと答えます。司会者は更に、右下の赤丸の方、木川田社長には県民も感謝しています、知事さん、名誉県民の十字架でも上げたらどうですか。それはいい考え、名誉県民に値する偉大な人ですよと。
 これは多分、司会者は本当は勲章とでも言うべきところを間違ってというか十字架と言っちゃったんでしょうが、皮肉にも、今にして思えば当たっているのかという記事なんですね。丹治さんが指摘したことは大げさでも何でもないと、当事者が語っているということが分かると思います。
 大臣、今聞いてもらったと思いますけれども、今度の国際研究教育機構は、基本構想において、「福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとする」とあります。かつて、原子力は福島にとっては夢であり希望だったんです。それが大きく裏切られ、傷つけられました。本当に、今度こそ、そういう夢や希望なんだと自信を持って言えますか。

○西銘恒三郎大臣 高橋委員御指摘のとおり、福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとすることとしております。このため、機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国の内外に誇れる研究開発を推進することとしております。
 こうしたことを通じて、福島浜通り地域等が原子力災害を乗り越える一助となること、そして、同地域に国の内外から優秀な人材が結集し、我が国全体の科学技術力の強化に貢献することを目指し、私自身が司令塔となり、政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 予定した原稿を読んだと思いますけれども、やはりそういう思いを福島の方たちがして、今また皆さんは夢や希望と言っているわけです。そこに本当に責任を持ってほしいということを重ねて指摘をさせていただきたいと思います。
 十五回にもわたって熱心に議論された福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議では、令和二年の六月八日に報告書が出ていますが、その名のとおり、教育が前に来ていますので、教育機能について、まずは研究所方式で機能を発揮していく、二つ目は、国内外からの大学院生に対する教育や人材育成、三つ目は、地元人材に対する教育、人材育成を行うと明記をしています。
 ただ、その後の復興推進会議決定、令和二年の十二月十八日、さらに「国際教育研究拠点の法人形態等について」令和三年十一月二十六日、こう二回、三回と決定がある中で、教育機能という叙述はなくなりまして、人材育成機能に一本化され、そして三月末の基本構想では、名前が国際研究教育機構と逆転してしまう。なぜなんでしょう。

○西銘大臣 委員御指摘の点は、私も最初に就任して、最初の、研究と教育が逆ということをずっと頭にたたき込んでおりましたら、変わったなということを内部でも話をしたことがあります。
 有識者会議の報告書においては、拠点の教育機能について、国の内外から大学院生等及び高校生、企業人材等の地元人材に対する教育、人材育成を行うこととしていたところ、基本構想においても、機構の人材育成機能として、先端的な研究開発の実施に不可欠な研究人材の育成、確保を図る観点から、連携大学院制度を活用した大学院生への研究指導、人材育成を進め、また、地域の未来を担う若者世代や企業の専門人材等を主な対象とした人材育成の取組を進めることとしております。
 法人の名称としましては、研究開発、研究開発成果の産業化、そしてこれらを担う人材の育成の、それぞれ各機能を有する法人として設立するものであることから、福島復興再生特別措置法の改正案において福島国際研究教育機構と規定したところであります。
 私自身が当初拠点と言っていたときには、研究と教育が逆だったのを強く頭にたたき込んでいたものですから。今回、こういう経緯で、福島国際研究教育機構という新しい名称に規定をしたところであります。

○高橋(千)委員 頭にたたき込んでいらっしゃったという答弁がありましたけれども、それは、ですから、福島の皆さんにとっては、やはり教育機能が大事なんだという希望だったと思うんですね。最初は、だから、イノベーション・コースト構想の課題から議論が始まって、やはりそれを担っていく、まさに福島の、福島に定着して担っていく人材を育成するために教育機能が必要なんだという議論から始まっているわけですよね。
 大臣、最終的に、頭にたたき込んだけれども今は研究なのでと説明するということは、それで納得したということなんですかね。

○西銘大臣 私は、この機構につきましては、とにかく地元に喜ばれるものじゃないといけないよということを強く意識をしておりまして、また、福島の内堀知事さんと面会したときにも、対応する中で、私が、地元が喜んで、地元の夢や希望となるという発言をしたら、知事さんがすぐ、そこですよ、大臣、夢や希望になるところですよと。
 それと同時に、地元の人材育成、あるいは産業の人材育成、あるいはこの組織の中に県知事さんが加わっていくという点が、人材育成、教育という部分に、名前はちょっと逆転しましたけれども、趣旨は十二分に生かされているんじゃないかなというふうに考えておりますし、人材育成の機能は重要だと強く認識をしておるところでございます。

○高橋(千)委員 正直言って、具体的にこれからのことが余り決まっていないというのもあって、期待に応えるだろうという推測的な答弁になっちゃうと思うんですよ。やはりそれをこの審議の中で明らかにしていかないと、本当の意味で応えることにはならないというふうに言わなきゃいけないと思いますね。資料の二枚目につけておきましたけれども、「物足りない基本構想」、それが福島の評価ではないかなと思いますので。後でこれは取り上げますけれども。
 それで、続けます。同じように、有識者会議では、原子力災害に見舞われた福島浜通り地域の復興再生が真っ先に来ているわけです。「マイナスをプラスにする社会的発火点とすべきであり、「創造的復興の中核拠点」として原子力災害に見舞われた福島の特殊性を背景として、政府の強いイニシアチブにより推進していく必要がある。」と明記をしています。
 イメージとしては、米国ハンフォード・サイトをお手本に、イノベーション・コースト構想が取り組んできた廃炉を前面に、原発事故対応、環境回復などに取り組むものと思っておりましたが、基本構想では、この部分はデータや知見の集積、発信にとどまっているのはなぜでしょうか。

○由良英雄政府参考人 廃炉を着実に進めるためには、人に代わって精密かつタフな作業ができるロボットの開発といった技術、それから総合的な放射線科学の研究、こういったこれからの分野に通じる人材育成等が必要不可欠であるというふうに認識をしております。
 そこで、具体的には、例えば次世代高速通信やバーチャルリアリティーといった技術、そういった高い専門性、信頼性を必要とする作業を遠隔で実現するロボットの開発などを通じて、福島の復興の着実な推進に資する研究開発を進めていくということとしておるところでございます。

○高橋(千)委員 ちょっと質問と答えが違うような気がしますけれども。
 原子力災害に見舞われた福島の特殊性を背景として、廃炉、原発事故対応、原状回復などをきちっと取り組んでいく。データの蓄積は大事です、だけれども、それだけじゃないよねということを確認したかったんです。

○由良政府参考人 お答え申し上げます。
 今回、福島、新しい機構では、五つの技術分野、研究分野を指摘をしておりますけれども、いずれも福島の地域の特性に応じた、福島の復興に資する研究だというふうに考えております。
 廃炉を着実に進めていくということのために必要な技術も、そういった福島の復興に必要な取組ということで研究内容に含んでいるというふうに考えておるところでございます。

○高橋(千)委員 最初に紹介したように、有識者会議の最初の段階では、政府の強いイニシアチブにより推進していくと書いているわけなんです。だから、五十のテーマがあって、グループがあって、幾つかある中に入ればいいねという話じゃないんですよ。政府として責任を持って取り組んでいただきたい、そう言っているんです。
 最大の悩みは廃炉なわけですよね。デブリの取り出しも、まだこれでいけると決まってはいないわけです。ALPS処理水、トリチウムの分離、圧縮など、最大の課題に取り組む研究教育機構であることが期待されるんじゃないでしょうか。そういう考えはないのか。
 また、廃炉の最終形が示されないままに、同じこの双葉地域に、国内外の研究者を、さあ来てくださいというのには無理があるんじゃないか。大臣と経産に伺います。

○西銘恒三郎大臣 御指摘のトリチウムの分離技術につきましては、現時点で実用化できる段階にある技術が確認されなかったとの評価がされているものと承知をしておりますが、引き続き、経済産業省とも協議をしつつ、最新の技術の動向等を踏まえて精査してまいりたいと考えております。
 そういう新しい技術が確認されたのであれば、それはしっかりとトリチウムの除去に取り組んでいかなければならないと基本的には考えております。

○細田健一副大臣 ありがとうございます。
 今先生から御指摘ございました、いわゆる廃炉の最終形でございますけれども、福島第一原発の廃止措置を終了した状態については、事故を起こした原子炉の内部の状況や廃棄物の性状など、まだ明らかになっていない要素が多いため、現段階では具体的な絵姿をお示しできる状況にはないと考えております。
 他方で、政府が定めた中長期ロードマップにおいては、廃炉の工程上の重要な方針として、燃料デブリの取り出しを行うこと、あるいは廃棄物を安全に保管することなどの具体的な個別の対応方策をお示ししているところでございます。
 当省としては、このような中長期ロードマップの方針を踏まえて廃炉に必要となる研究開発を進めているところでございまして、福島国際研究教育機構においても、中長期ロードマップを参考に、廃炉の課題に挑戦する前向きな研究者の皆様を集めることができるように、廃炉技術へのニーズを共有してまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 だからこそ、やはり切り離しちゃいけないと思うんですね。公募しているけれども今の時点では見つからなかったよとか、そういう話ではなくて、やはり廃炉を避けては通れない。本当に、福島の未来、描けないわけですから、そのこと自体に、もうトップレベルの研究をやるんだというところに向かっていく必要があるし、そういう議論をしていたはずなんですよね。そこが非常に疑問に思っています。実際に、言うほどの世界トップレベルの人材は本当に集まるのか、それだけの体制をどうつくるのかというのは、ずっと明らかになっていないと思います。
 資料の三ですけれども、ちょっと見ていただきたいと思いますが、大西康夫さん、これは三月二十日の福島民報ですが、先ほど話題になったハンフォード・サイト周辺地域の復興に関わった経験を持つ方であります。
 ずっと有識者会議の中でも議論されていたハンフォード・サイトの問題、四段目に書いてありますけれども、まさにプルトニウムを生産するための、マンハッタン計画で一九四三年、ワシントン州東部に設立された原子炉発祥の地である、もう何度も、三回も経済破綻、ゴーストタウンになりかけた、それを救ったのは何かということを指摘をしているわけですよね。
 そこには、下から二番目に書いてある、エネルギー省のパシフィック・ノースウエスト国立研究所、職員五千三百人、年間研究費は千四百億円、さらに、職員七万五千人を有するエネルギー省の十七の総合国立研究所中、民間に最も多く技術移転をして、その研究結果、技術を土台に持つ会社は百五十社を超える、こういうことをるる述べられて、やはり福島にそういう拠点を設けるべきだということを指摘をしているわけなんですよね、期待もしている。
 でも、一桁違うなと。目指す話をしてきたんだけれども、日本でやろうとしているのは全然桁が違うんじゃないかと思うんです。有識者はこういう熱心な議論をしてきたけれども、その中身が法案からも答弁からもうかがえない。
 そもそも、機構は単なる事務所なんでしょうか。それとも、大学のような施設を建設するんでしょうか。まず伺います。

○林俊行政府参考人 お答えをいたします。
 福島国際研究教育機構につきましては、国の内外から優秀な研究者を確保することが必要でございまして、そのためにも、研究環境や処遇・人事制度、生活環境などについて、総合的に整備していくことが重要であると考えております。
 このため、同機構につきましては、単なる事務所にとどまることなく、世界水準の研究を実施するために必要な固有の施設設備等の整備に加え、それらの設備の管理をサポートいたします機能等を十分に確保すること、また、国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性を考慮いたしまして、成果や能力に応じた柔軟な給与設定を可能にする、そういった処遇の基準を設けること、また、研究者やその家族に向けた生活環境の整備のために、福島県や地元市町村が取り組むまちづくりと緊密に連携をしながら、機構の施設整備などに取り組むこととしております。
 世界最先端の研究開発の実現を目指すためには、やはり優秀な研究者の方々の参画が必要不可欠であると考えておりまして、研究者にとって魅力的な研究環境の実現に向けて、復興庁が中心となって、政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 この委員会でも何度も出されたわけですが、沖縄科学技術大学院大学、いわゆるOISTの場合は、学長が沖縄に常勤していると聞いております。今回の機構については、それは条文にもないし、どうなるか分からない。どれだけの研究者、職員を常駐できると考えているんでしょうか。
 地方公共団体には、生活インフラ、居住環境などを求めています。でも、そもそもそこが曖昧なら、動きようがないわけです。実際にどれだけの居住人口を考えているのか、先行するイノベーション・コースト構想の実績も踏まえてお答えください。

○由良英雄政府参考人 お答え申し上げます。
 これまでの福島イノベーション・コースト構想に基づく取組を通じて、例えば、企業立地補助金などの新事業支援により、企業立地件数約四百件、それから、御質問の移住人口ということではございませんけれども、雇用創出数として約四千五百人といった実績により、産業集積の芽が出始めているところでございます。
 この新しい機構は、福島の復興に貢献することを目的として、世界水準の研究を実施するための施設の整備等の環境整備などにより、多くの方々に浜通り地域で活動し、居住、滞在いただけるように取り組んでいく所存でございます。
 具体的には、まず、数百名の国内外の優秀な研究者等が研究開発等に、活動に参画することを想定しております。また、それにとどまらず、その家族も含めた立地地域周辺への居住や滞在に加え、関係する研究、教育あるいは産業化の人材も含めて、当該地域への集積を期待しているところでございます。そうしたことを念頭に置いて取組を進めていきたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 そこが曖昧だから、市町村に居住環境を整えてねといったって困るよねという話をしたのに対して、数百名しか答えがない。一回目の有識者会議のときは、一千名の規模で議論をしているわけですよね。そこから見ても、まるっきりめどが分からなくなってきたということを言わなきゃいけないと思います。
 もう残念ながら時間になりましたので、有識者会議の最初のときに、やはり普通の暮らし、福島の沿岸部、八町村の方々がその地域で普通に生活できること、その地域をきちんと新たな町として再生し、ある程度の人口を戻して、新たな産業を持ってくること、最終的にそこに生活を取り戻せるかどうかというのが本来の目的という発言があって、私はそれが一番大事なことだと思うんですね。本当は大臣に聞くつもりだったんですが、時間がなくなりましたので。
 やはり、トップレベルだとか優秀なとか言っている前に、まず、そこが、福島の皆さんの思いが全然抜け落ちてしまわないように指摘をさせていただいて、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

ー反対討論ー

○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、福島復興再生特別措置法の一部改正案に反対の討論を行います。
 三月末に決定された福島国際研究教育機構基本構想では、「福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとする」とあります。政府・与党の、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除するとの方針には私も賛同しています。
 しかしながら、原発に最も近い四つの町では、五割から六割がまだ戻らないと答えています。既に避難先に基盤を設けている方も多いのですが、帰還できない理由の第一は、医療・介護施設の再開です。命綱である医療、介護の減免制度も段階的に縮小、廃止されてしまいます。福島国際研究教育機構が目指す世界に冠たる創造的復興の中核拠点は、そうした被災者にどんな意味があるでしょうか。
 法案は、新産業創出や国際競争力の強化のための研究開発等を行ういわば特区であって、福島の復興再生につながるかは不確定どころか、負の遺産にもなりかねません。
 政府は、基本計画、中期目標、各事業年度の実績等評価、中期目標終了時の検討などの過程において、総合科学技術・イノベーション会議からの意見聴取を必須としています。福島県知事や復興推進会議からの意見聴取も行うとはいえ、総合科学技術・イノベーション会議の指揮の下、地元が置き去りにされかねません。
 そもそも、国際教育研究機構として検討が開始され、地元の定着につながる大学などの教育機能が期待されていたにもかかわらず、名称すらも変更されました。世界トップレベルの研究などとうたえばうたうほど、地元企業との連携や人材育成からも遠ざかることになります。広大な未利用地と書かれたように、土地の提供を始めとした設立時の出資や生活環境としての負担だけが地元自治体に押しつけられることになりかねません。
 最大の問題は、決まっていないことが多過ぎることです。
 復興庁の設置期限は二〇三〇年度末であり、それ以降の運営や財源については全く未定であることです。復興大臣は主務大臣でさえありません。
 理事長に世界トップレベルの研究者を招聘するためには一億円規模の報酬が必要ではないかといった議論がある一方、沖縄科学技術大学院大学のように常勤なのかさえも未定です。クロスアポイントメント制度や連携大学院制度等の活用といいますが、一体どれだけの研究者が福島に居住するのかも不明です。
 研究テーマについて、まず福島イノベーション・コースト構想との関係が曖昧です。十兆円規模の大学ファンドを構築する国際卓越研究大学との差別化という点でも、危惧があります。
 終わりに、基本構想には「原子力政策を推進してきた国の責任」という記述があります。まさに、この責任の上に、長期にわたる廃炉の作業、トリチウムの分離技術の確立など、負の遺産を将来の希望につなげる研究にこそ、集中的に取り組むべきだと考えます。
 以上述べて、反対討論とします。

2022年5月10日 衆議院東日本大震災復興特別委員会 提出資料

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