高橋氏 盛土規制法案ただす
(写真)質問する高橋千鶴子議員=13日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は13日の衆院国土交通委員会で、盛土規制法案(宅地造成規制法改正案)について質問に立ち、建設発生土の適正処理と盛り土規制を一体で行うべきだと主張しました。
高橋氏が建設発生土の抑制が大前提だとただすと、斉藤鉄夫国交相は「その通りだ」と述べ、「発生土を抑える。発生土が出た場合は、現場での利用が大原則だ」と答えました。
その上で高橋氏は、年間建設工事で発生する約3億立方メートルのうち、内陸受け入れ地へ搬出されている約6千万立方メートルの建設発生土の一部が不適切に処理されている可能性が高いと指摘。ダンプ労働者から、処分先が下請けに丸投げされ、不法投棄や過積載になっているとの告発を紹介し、仮置き場の基準を明確にすべきだとただしました。
国交省の宇野善昌都市局長は「崩れれば人命に影響を与える恐れもあり、技術的基準を策定する」と答えました。
高橋氏はリニア中央新幹線の建設に関わり、静岡県の南アルプストンネル工事から出る残土の置き場計画について川勝平太静岡県知事が県条例では認めないと述べた報道に触れ、残土置き場を新法の規制区域に県が指定することに国は口出ししないことを確認。斉藤国交相は「(規制)区域を指定するのは都道府県知事だ」と答えました。
(「しんぶん赤旗」2022年4月20日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
先週六日の質疑で、大臣は、熱海の土石流災害で崩落した盛土は建設発生土であった可能性は否定できないと答弁をいたしました。
昨年末の総務省の建設残土対策に関する実態調査の結果について、そのポイントというペーパーを一枚、資料の一枚目につけてあります。この報告は、令和二年、二〇二〇年四月一日時点で土砂条例を制定している十二都道府県、二十九市町村を調査。そのうち、十二都道府県全てが不適切事案があると回答し、市町村の七割が不適切事案があると回答しており、合わせて百二十事案、つまり、自治体一つに対し複数の事案を抱えていることになります。
そのうち、土砂条例に違反した無許可埋立て事案が五十八事案。土砂条例で対応したものの、土砂流出などの被害を出した事案が十四件、うち是正されたのは一件にすぎないと言われています。危険な盛土と建設残土の問題は深く関わっており、切り離せないものという認識は一致しているのではないでしょうか。
そこで、大臣に伺います。
熱海のような被害を二度と繰り返さないために法案を作ったというのであれば、建設発生土の適正な管理についても一体として立法化すべきではなかったんでしょうか。
○斉藤鉄夫大臣 本法案は、危険な盛土等に伴う災害から人命を守るという観点から、建設発生土等のいわば出口としての盛土について、安全性を確保するための対策を講じるものです。
一方、建設発生土は、基本的に再利用を促進していくべきものであり、搬出先の適正性の確保と資源としての有効利用を一体的に図ることが不適正処理の防止に効果的であることから、本法案とは別途の対応を検討しているところです。
具体的には、資源有効利用促進法の省令等を見直し、搬出先での盛土等の行為が本法案に基づく許可を得ていることを事前に確認するなど、元請業者に搬出先が適正であることを確認させる仕組み等を構築します。
あわせて、公共工事において、発注段階で搬出先を指定する指定利用等を徹底していくこととしております。
国土交通省としては、二度と熱海市と同様の悲劇を繰り返さないよう、盛土の安全性の確保と併せて、建設発生土の適正処理の確保にしっかりと取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 改めてまじまじと聞いて、出口としての盛土ということにフォーカスを当てて、あとは省令でやるんだというお話だったと思うんですが、やはり入口からきちんと規制して、そこで一体としてやるべきではなかったのかなと改めて指摘をしたいと思うんですね。
そういう視点で、少しるる個別に議案を聞いていきたいと思うんですが、今述べた総務省の勧告で指摘された十四事案については、国交省の建設発生土の取扱いに関わる実務担当者のための参考資料、これは二〇一七年八月です、既に掲載されておりました。国交省としても、建設工事から出た土砂の不適切な処理について認識はしていたということだと思います。
昨年十月の第二回盛土による災害の防止に関する検討会でも、神奈川の黒岩知事から、盛土規制はもちろんのこと、建設発生土の処理について直接規制する法律がないから、各自治体の条例により対応しているのが現状であり、毎年国に法制化を要望してきたと発言がありました。
神奈川県が土砂条例を制定したのは平成十一年、一九九九年です。建設発生土の不法投棄が多発したのは昭和六十三年、一九八八年頃からだということであります。ですから、本当に待たれていたと言わなきゃならないんですね。
土砂条例では罰則も弱いといった限界もある上、条例のない自治体もあるために、県境を越え、条例のない市町村に流入されるといった問題が表面化しており、一律の規制が求められてきた。このことは国交省も認識しているのではないでしょうか。確認します。
○宇野善昌政府参考人 大変失礼いたしました。
一律の規制をずっと求められてきたのかという御質問でございますが、全国知事会の方からも、条例によっては、強い規制がかかっているところと弱い規制がかかっているところがあって、弱い規制があるところにどうしても不適正な盛土が行ってしまうということを聞いておりまして、その中で、全国一律の基準によって包括的に盛土を規制する法案を作っていただきたい、こういう要望をいただいているので、私どもも認識をしていたというところでございます。
○高橋(千)委員 まず認識を一致させるところから始めたいと思ったわけであります。ありがとうございます。
当初は、今日も随分議題になったわけですが、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストのような仕組みを採用して、搬出元から搬出先まで追跡記録を残すトレーサビリティー制度を検討しているという報道もあったし、なぜ今回出されなかったんでしょうか。
○長橋和久政府参考人 お答え申し上げます。
今先生から御指摘あった当初の報道については、済みません、私自身確認できませんでしたけれども、本法案と併せて建設発生土の搬出先の明確化の取組が必要であるということは考えてございます。ただ、建設発生土は廃棄物とは異なりまして、それ自体が生活環境等に支障を生じさせるものではないことから、経済活動に過度な規制とならないよう留意する必要があると考えております。
この点については、政府の有識者会議の提言でも、同様の観点から、現行の資源有効利用促進法に基づく搬出計画制度の仕組みを強化することが適切とされたところでありまして、国交省としての対応は、先ほど大臣からの答弁もございましたけれども、マニフェスト制度と同様に、土砂が実際に搬出された先の確認を求めるという点では、今回、搬出計画制度を強化して、元請業者が搬出先が適正であるかどうかを事前と事後にしっかり確認させるよう検討するとともに、元請業者から計画について発注者にも報告を義務づけるということを検討を今しているところでございます。
○高橋(千)委員 何か今のは、トレーサビリティーを検討したことはないかのような答弁をされたと思うんですが、それはあり得ないと思うんですよね。
だって、建設リサイクル推進計画二〇二〇で、このことは明確にと記者発表の資料にも出ておりますし、内陸受入れ地に搬出されている建設発生土は約六千万立米、現場から搬出されるものの約四割を占めている。これらの土の一部が、残土処分場に持ち込まれた土や工事での使用が未定の土などが含まれており、これらの土が不適切に処理されている可能性が高く、そういう認識を持っていたと思うんですよね。今後は、適正な受入れ地等へ搬出する徹底した仕組みの構築や建設発生土のトレーサビリティー確保が課題であると考えられるということで、これは本文を今読みましたけれども、プレスリリースの中にも三つの主要なポイントということで書いてあって、当然、取り組むつもりだったんじゃないんでしょうか。
○和田信貴政府参考人 建設リサイクル計画のトレーサビリティーのことにつきまして、これは、今、直轄工事で試行をやっておりますけれども、指定利用等をしているものが、しっかりとその経路どおりにきちっとされているかということをICTを使ったシステムで検証していこう、そしてそれをちゃんといいものにしていこうということを計画に書き、そして、その後の試行で実施しているというところでございます。
○高橋(千)委員 でも、今読み上げた文章は、六千万立米ですから、それは指定利用だけではない、全体の調査に基づく数字ですよね。おかしいと思います。
それで、続けて聞きますけれども、公共工事では、今お話しされたように、土砂の搬出先もあらかじめ決まっている指定処分がほぼできていると言われておるんですが、一部の自治体の公共工事が追いついていないということや、民間工事では処分場が指定されていないために、元請業者に委ねられている場合が多いです。指定処分を民間工事にも広げるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○長橋和久政府参考人 委員御指摘のとおり、公共工事では、発注者が土砂の搬出先を指定する指定利用等の取組が進んでおりまして、国の発注工事ではほぼ全ての工事で指定利用等が行われています。
発注者による指定利用等の取組は、建設発生土の有効利用や適正処理を進める上で大変効果的でありますので、適切な費用負担と併せまして、今後は、地方公共団体の発注工事を含めて公共工事での原則化に取り組んでまいりたいと考えております。
また、民間工事につきましても、継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者は、公共工事と同様に指定利用等を行うなど、より積極的な役割を果たすことが求められると考えておりまして、この旨、今後ガイドライン等で明確化した上で、様々な機会を捉えて周知していきたいと考えております。
なお、民間工事で指定利用等を原則化するということは、民間工事の発注者は、個人の施主を含め様々あることから、基本的には、専門的知見を持った、建設工事の施工全般に責任を持つ元請業者が適切に搬出先の選定等の役割を担うことが大事だと思いますが、発注者には適切に費用負担してもらうということが必要だと考えておりますので、ちょっと先ほども触れましたけれども、計画について元請業者から発注者に報告するということを今回義務づけを検討しておりますけれども、発注者もそういう計画を踏まえて適切な費用負担をしていただけるように、今後は周知徹底をしていきたいと思ってございます。
○高橋(千)委員 一つ確認しますが、今、民間の工事であっても、継続的に大規模な工事をやっているようなところには積極的に受け入れてもらいたいとおっしゃったこと、すごく大事なことだと思います。確かに、規模によって一遍にはできないだろうというのは分かって聞いておりますが、そういう意味でも、もうほぼ公共事業だよというようなところがあるんだろうと。
その中で、今、最後にお答えになった、やはり発注者の責任、今の建設資材の再生利用の計画でいいますと、元請が計画を持って、それをちゃんと作って、ちゃんと保存してというふうなところになっていますが、やはり、元請の責任をきちっとやらせるためにも、発注者の責任というのが今回大きな役割を果たすんだということで、もう一回確認をしたいと思います。
○長橋政府参考人 御答弁申し上げます。
先ほども申し上げましたけれども、適切に費用負担をした上で、それで処理されるということにならないと、やはり適切な処理が進まないと思っておりますので、これはこういうところに処分してここに持っていくということの計画を含めて発注者に認識していただくということを進めるとともに、発注者にも適切な費用負担をしていただけるよう、あらゆる機会を通じて私どもとしては普及してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
そこで、指定処分ではない場合、処分先が下請業者任せになるために、土砂の運搬料についても積算されていない可能性があるわけですよね。そのことが、下請事業者にとっては少しでも安くとなっちゃうので、どうしても過積載などにつながっている指摘もあります。総務省の勧告の中にも、運搬費や処分代を定額で積算するなど、搬出のコストを建設請負業者への支払い代金に適切に反映していないと指摘をしているところです。
公共工事では、ダンプなどの労務費を現在一日当たり幾らで積算しているでしょうか。民間もそこに準拠すべきだと思いますが、いかがなのか、また、どのように徹底していくかについてもお話しください。
○長橋政府参考人 御指摘のとおり、建設発生土の適切な処理のためには、建設工事の受発注間及び元下請間の契約で必要な処理費用が適切に支払われることが重要でございます。
御質問のあった公共工事の積算におきましては、土の運搬にかかるコストは、距離と搬出される量に応じて立米当たりの単価を用いておりますけれども、この単価の基となる運転手の労務費としましては、公共工事設計労務単価より、例えば東京都であれば一日当たり二万千百円となってございまして、こういう労務費の部分と、ほかにかかるいろいろな運搬費用の部分も考慮した上で単価設定をしているというふうに聞いております。
一方、民間企業における契約額は受発注者間で取り決められることになりますが、建設発生土の適切な処理に要する費用を含めて、適切な価格による工事発注が行われることが重要と考えておりますので、これは先ほども触れましたけれども、今回新たに発注者に対しても計画の報告を義務づけるということもございますので、あらゆる機会を捉えまして働きかけをしてまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 建交労のダンプの関東の支部の皆さんが現場の価格について実態等試算をしてくださっているんですが、例えば、首都圏各地の工事現場から搬出された、ストック場から運搬する場合、ダンプに支払われる運搬単価が一トン当たり千二百円程度だというんですね。その多くが、埼玉から群馬県、栃木県、茨城県など県外の処分場に搬出されるので、栃木県の県北地域までなら片道百七十キロ、二・五時間から三時間くらい、燃料代と高速代を合わせると約一万五千円になるんですね。そうすると、法定積載量が十トン前後なわけですから、一台一万二千円にしかならないと。
先ほど、法定の労務単価は二万一千百円ですよとお話ししてくれたんですが、やはりそれにプラス処分代が、一トン五百円くらいの処分代も払うわけですから、これはもう三倍積まないと、過積載をやらないと元が取れないよという環境になっている。だから、やはりこれを適正なものにしていくことで国交省の責任を果たしてもらいたいなと思うんですが、いかがでしょうか。
○長橋政府参考人 お答え申し上げます。
一つ、公共に対しても、自治体とかに対しましても、先ほど、総合政策局長からも午前中に答弁がありましたけれども、今年四月に初めて、こういった盛土の処理に関する費用をしっかりと計上して発注をお願いしたいということの通知も総務省さんと一緒に行いましたし、民間に対しましては、今後、省令改正とかいろいろな制度改正の機会等、それに当たる前の段階からも、いろいろな問題意識について、各関係団体の方には十分周知して、働きかけをしていきたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 資料の三枚目を見ていただきたいと思うんですが、実際には、最終処分先が決まらず、仮置場に堆積している場合も多いと聞きます。
これは、今言った建交労の栃木県のダンプ支部の提供なんですが、上と下が同じ写真で、一年後の写真なんですね。上は二〇二〇年の六月、まだ田んぼに水が張っている様子がうかがえますが、下の写真は二〇二一年五月で、手前の盛土が台風で崩れたという状態で、ダンプが見えていると思いますが、周りの色が変わっているということが分かると思います。
ですから、処分場確保は下請丸投げであるがために、今現在はですよ、運搬料もまともに払ってもらえない中、こうしたことが起きているということの認識に立って、何としても避けていくというふうなことが必要ではないか。
そのことと、併せて伺いますが、今、ここに関係しますが、建設副産物適正処理要綱には、工事間利用の促進ということで、仮置場、いわゆるストックヤードの確保ということが明記をされています。国交省は、どの程度ストックヤードが確保され、活用されているのか把握していますか。また、把握していないとすれば把握すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○和田信貴政府参考人 委員がおっしゃられた建設副産物適正処理推進要綱におきましては、主に、地方公共団体等が日頃から把握して、あるいは指定利用等で把握しているような、こういう土石の一時的な堆積地であるストックヤード、こういったものを念頭に置いて記載してございます。
それぞれの公共発注者のところで、ストックヤード、必要なものについて、指定利用の際などに使ってございます。その分での把握はございますが、網羅的に、全国的に把握しているという状況にはございません。
今回の法案におきまして、土石の一時的な堆積地についても、全国一律の安全基準などに基づく許可制度などを設けることとしてございます。これをきっかけとしまして、許可情報や定期報告などから、一時的な堆積地の状況をできる限り把握していきたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 一時的な堆積とおっしゃいましたが、そうなっていないから指摘をしているわけですよね。
資料を一枚戻っていただきたいと思います。資料の二です。
よく言われる、建設発生土が年間約三億立米発生するのに対して、別の工事などへの有効利用が行われず、内陸の受入れ地へ搬出される、その土砂が約六千万立米である、この円グラフの黄色の部分ですよね、これはよく言われますよね。
それが、内訳を聞いたんですが、ここにストックヤード八百四十万立方メートル、これは再利用なしと書いてありますよね。このときの調査の中身だと思うんですが、必ずしも、一時的というのは、タイムラグがあるけれども、次の工事にまた利用するよという意味だと思うんですよ、だけれども、そうなっていない、一時だと言いながら、ずっと期限なく使われているという実態があるのではないかということなんです。
それで、伺いますが、ストックヤードは何によって、つまり根拠法令を何によって許可されているのか、どのくらいの容量まで認めるのか、仮置きだとしても、それはいつからいつまでなのか、そうしたことを明確にするべきではないでしょうか。
さっき、新しい法律では確保されますというふうなことをおっしゃいましたけれども、それは盛土規制区域内に設置する場合は許可が必要になるから、当然、その範囲で技術審査などが出てくるわけですけれども、そうでない区域に置いちゃ駄目とはっきり言ってくれるなら、それはそれでいいですよ。そうじゃなかったら、やはり何らかの基準が必要だと思います。いかがでしょうか。
○宇野善昌政府参考人 お答え申し上げます。
本法案により、人家等が存在するエリアのほか、人家等に被害を及ぼし得る斜面地のエリアなども含め、規制区域に指定することができ、人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な規制区域が指定されることとなります。
規制区域内においては、土砂の仮置場を含め、一定規模以上の土石の堆積等については許可の対象となります。
許可に当たっては、工事主から、最大時に堆積する土石の高さや面積等のほか、土石を堆積する期間等を申請させる予定としており、堆積した土石の安全確保に関する技術的基準に適合することを求めることとなります。
技術的基準については、地盤の安全性に詳しい有識者等により構成された有識者会議を今後速やかに立ち上げ、堆積の高さや斜面の勾配などに関する基準について具体的な検討を行うこととしております。
また、規制区域につきましては、国から都道府県等に対し、基本方針として考え方を示すとともに、具体的なガイドラインを示し、法の趣旨に沿って的確な指定がなされるよう支援してまいります。
○高橋(千)委員 私が聞いた、いつからいつまでとか、そういうことについては、規制区域内であれば、当然その審査の対象になるということだったと思うんです。
では、それ以外は、規制区域の外でストックヤードを造ることがあるんですか。あるんだったら、今言った基準をちゃんと適用するという意味なのか、いやいや、規制区域の中でしか造れないよ、規制区域の中で許可を得た場合でしか造れないと思っているよと、どっちなんでしょう。
○宇野政府参考人 お答え申し上げます。
本法案は、人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な規制区域を指定する、そういう制度でございます。
そういう意味で、一時的な土石の堆積に当たる仮置場につきましても、それが崩れることによって人家等に被害を及ぼさないよう、区域内において規制をかけているというものでございます。
○高橋(千)委員 答えになっていないんだけれども。でも、多分、それは、崩れる場合は人命にも影響を与えるよということを考慮して規制区域をかけていくという趣旨で私としては読ませていただきました。違うのであれば違うとおっしゃってください。
それで、大臣に改めて伺いますが、やはり、いろいろ、資源ですよとか言っても、それがうまくいかずに堆積しているというのが、今お話ししたとおりなんです。そういう意味では、やはり建設発生土の抑制に努める。「その現場内利用の促進等により搬出の抑制に努めなければならない。」と、これも副産物の要綱の中にちゃんと書いてあるわけですよね。そういう意味では、発生を抑制するというのがまず大前提だと思いますが、いかがでしょうか。
○斉藤鉄夫大臣 そのとおりだと思います。
まず、いろいろな工法を工夫して発生土を抑える。しかし、発生土が出た場合は、できるだけその現場の中でそれを利用するということが大原則だと思います。
公共工事における建設発生土については、指定利用等のほか、事業の計画、設計の工夫による現場内での有効利用などを進めてきており、地方公共団体にもその徹底を改めて要請してまいります。
また、民間工事においても、継続的に大規模な建設工事を発注している発注者は、公共工事と同様に指定利用等を行うなど、より積極的な役割を果たすことが求められると考えており、この旨をガイドライン等で明確化するとともに、様々な機会を捉えて周知していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 あらゆる施策の上に、まずその大前提であるということを貫いていただきたいと思います。
二十九日の本会議では、リニア中央新幹線において、昨年九月末時点で、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土のうち約七割の受入先を確保しているという答弁がありました。
国交省では、その七割については具体的に把握しているのでしょうか。また、残り三割についても、どのような見通しを持っているのか伺います。
○上原淳政府参考人 お答えいたします。
平成二十六年八月にJR東海が作成した環境影響評価書によりますと、リニア中央新幹線品川―名古屋間の工事では、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土が生じることが見込まれております。
これらの建設発生土につきましては、環境影響評価法に基づきまして、平成二十六年七月十八日に出しました国土交通大臣意見におきまして、JR東海に対し、関連する事業等と調整して建設発生土の最適な利用先を選定できるよう十分に検討し、可能な限り早期に多量の建設発生土の利用先を確保することなどを述べております。
リニア中央新幹線の建設主体であるJR東海におきましては、令和三年九月末時点で、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土のうち約七割の最終受入先を確保しているものと承知いたしております。
個別具体に網羅的にその受入先を承知しているものではございませんが、具体的には、新本牧ふ頭整備事業や大鹿村総合グラウンド整備、その他民間事業の造成等が活用先として確保されております。
なお、残りの三割につきましては、現在、複数の候補地と受入れの協議を進めていると聞いております。
いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、先ほどの環境影響評価の国土交通大臣意見に基づきまして、建設発生土が適切に処理されるようにJR東海を指導監督してまいります。
○高橋(千)委員 資料の四枚目ですけれども、今、一部お話ししてくださったんですが、JR東海から、国交省が問合せをしてまとめてもらったものであります。
東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知、各都県で発生する残土に対して、主な活用先ということと、発生土の量が右にあるんですが、これを足し算しますと、主なものですからきっちりにならないのは分かるんですが、五千三百二十万立米、すると九三・六%でほぼ決まっているということになっちゃうんですが、これ、そうではないですよね。ほぼ決まっている、九割以上ですよということではなく、主な活用先と言っているのも実はまだ調整中という理解でよろしいですか。そうでないと、七割、三割の関係がおかしくなっちゃう。
○上原政府参考人 お答えいたします。
この資料に記載いたしていますとおり、一番右側の欄には、環境影響評価時点の総量をこの右側に記載させていただいておるものでございます。
○高橋(千)委員 ですから、九割ではなく七割だという意味ですよね。もう一回。
○上原政府参考人 資料に記載のとおりでございますが、右側に書いてありますのは総量を記載しておりまして、先ほど申し上げましたとおり、最終受入れ地の確保が大体できているところは七割だということでございます。
○高橋(千)委員 二十九日の本会議では、南アルプス静岡工区のトンネル残土について質問しました。標高約一千三百メートルにある燕沢に置場を造る計画だということです。
川勝静岡知事は昨年十月の記者会見で、トンネル工事で出る残土について、熱海市の土砂災害のときの盛土の六十七倍に当たる三百七十万立米の盛土なので、条例でほとんど認められることはないと述べたと報じております。これは二十六日の日経の静岡版ですが。
大臣に伺います。
本法案で規制区域を指定するのは当然知事でありますが、知事が許可できないということに国は口出しをしないということで理解してよろしいですか。
○斉藤鉄夫大臣 本法案に基づく規制区域の指定については、都道府県知事等において、盛土等に伴う災害から人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な区域が的確に指定されるものと考えております。
また、個別の許可については、都道府県知事等において、科学的知見に基づき客観的に定められた技術的基準等の要件に適合することが認められれば適切に許可されるものと考えております。
○高橋(千)委員 当然、感情論で議論するわけではないですので、きちんと根拠を持って知事が指定するということになると思います。当然、条例も既に持って、運用の経験を持っているわけですからね。だとしたら、国が、当てはまらないよなんて言うことはないということでいいですね。
○斉藤大臣 個別の許可については、もう一度繰り返しになりますが、都道府県知事等において、科学的知見に基づき客観的に定められた技術的基準等の要件に適合することが認められれば適切に許可されるもの、このように考えております。
○高橋(千)委員 別に、静岡知事に口出しするなと聞いているんじゃないんですよ。一般論で、規制区域をつくるのは知事ですから、知事が決めたことに対して、リニアだから駄目よとか、そういうことではなく、国だって、客観的に科学的でなきゃいけないわけですから、そういう意味では口出ししないということで、一般論で聞いています。
○斉藤大臣 区域を指定するのは都道府県知事でございます。
○高橋(千)委員 次に、リニア中央新幹線の残土について、山梨県内の置場は十二か所で、全て早川町内にあると言います。このうち塩島と西之宮の二地区にある六か所は土砂災害警戒区域に、中洲地区にある一か所は、より災害の危険性が高い特別土砂災害警戒区域にそれぞれ置かれています。県内の残土は約六百八十万立方メートルで、二〇二〇年度までに約百万立方メートル、四割が仮置場に保管されていると言われています。これは二〇二一年十二月十四日の読売新聞。
これから雨季を迎え、住民の不安も大きいわけですが、最終処分場への搬出先はめどが立ったんでしょうか。
○上原淳政府参考人 お答えいたします。
山梨県早川町内の建設発生土置場は合計十四か所ございまして、そのうち、奈良田地区に一か所、湯島地区に三か所、中洲地区に二か所、塩島地区に四か所、西之宮地区に二か所、雨畑地区に一か所、この合計十三か所が建設発生土の仮置場として使用されているものと承知いたしております。
この十三か所のうち、塩島地区、西之宮地区、中洲地区にある合計八か所につきましては、土砂災害警戒区域に位置いたしております。また、中洲地区の二か所の一部につきましては、土砂災害特別警戒区域にも位置しております。
これら仮置場につきましては、地形や地質に関する調査を踏まえて安全対策を講じた上で、建設発生土を盛土するための区域の届出など、山梨県の条例などの関係条例に従った必要な手続を行っているものと承知をいたしております。
また、議員より、最終受入先への搬入のめどについてお尋ねがございましたが、JR東海によれば、山梨県からの情報提供やあっせん等を受けまして、建設発生土の最終受入先を決定してきておりますが、仮置場で管理されている建設発生土の搬出につきましては、最終受入先である公共事業等の受入れ体制が確保できた箇所から順次搬出を行っているものと承知をいたしております。
○高橋(千)委員 報道の時点よりも調査が進んだという意味だと思いますが、十三か所の仮置場、そのうち八か所が警戒区域の中に、特別も含めて、あるというお話でありました。
最終処分地への、努力というんでしょうか、進めているというお話だったと思うんですが、これからは、やはり、そういうところにそもそも置かないということが大事だと思うし、仮置きだからこそ、住民がとても不安を感じているわけですよね。一刻も早い搬出をまずは目指すべきだと思います。
同様に、長野県でも、掘削に伴って、およそ九百五十万立方メートルの残土が発生する見込みになっているんですが、その残土置場候補地の三十か所のうち、少なくとも、飯田市と阿智村の二か所は、土砂災害や土石流の危険性があると県が公表していた場所だったと判明しました。
清水沢川は、台風や豪雨のときには一気に増水します。JR東海や県は、残土を置く際の危険性の話はせず、事業を推し進めようとしていると、川沿いに住む六十代男性の声を紹介したのは、信州のNHKウェブですけれども、専門家も、土石流危険渓流や崩壊土砂流出危険区域というのは、法的規制がないかもしれないけれども、熱海の経験に学び、極力避けるべきだとコメントしているんですね。
ですから、分かっているんだったら、搬出の大変さよりも、初めから予定地から除外すればよいと思うんですが、いかがでしょうか。
○上原政府参考人 お答えいたします。
委員より御指摘がございました長野県における二か所の建設発生土置場につきましては、JR東海によれば、長野県からの情報提供やあっせん等を受けまして、現在、地元と協議を行っている、今現在は候補地でございまして、今後、長野県と調整しながら地元への説明を行うものと承知をいたしております。
今後の調整におきましては、現地の地形や地質に関する調査を踏まえて安全対策を講じることとなるということ、関係法令等に従った必要な手続も行っていくということにつきまして、丁寧に説明を行う予定であるとJR東海から聞いております。
いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、建設主体であるJR東海が、関係法令等に従って地元との協議を適切に行うよう、引き続き指導してまいります。
○高橋(千)委員 今、山梨、長野など、土砂災害警戒区域などに予定されている一次仮置場の問題を指摘しました。
新法の運用に当たり、やはり、リニア中央新幹線のように規模が大きく、公共工事に匹敵するものは、先ほど答弁があったのが、まさにリニアだなと思って聞いていましたけれども、やはり、規制区域内かどうかにかかわらず規制するべきではないかと思うんですね。
そして、先ほど来指摘したような場所に置くのはやめるべきだと思います。そもそも、残土が多過ぎて無理があるんですから、私たちは、もちろんリニアそのものをやめるべきだと思っておりますが、少なくとも、そこにきちんと責任を果たしてもらいたい。
発注者であるJR東海はもちろんのこと、政府保証を与えている国自身が、情報公開も含め、適正処理についての責任を持つべきではないでしょうか。
○上原政府参考人 委員御指摘の適正処理に関する責任につきましては、関係法令等に基づき、法令等の範囲内で、事業主体であるJR東海が負うものであると承知しておりますが、リニア中央新幹線につきましては、平成二十六年の工事実施計画の認可の際に、国土交通大臣からJR東海社長に対しまして、一、地域の理解と協力、二、環境の保全の措置、三、安全かつ確実な施工、この三点を指示したところでございまして、建設発生土の処理を含めまして、工事の過程で発生する様々な課題の解決に当たってもこれらが大原則だと考えております。
国土交通省といたしましても、引き続き、これら三点の事項について、継続して指導監督してまいります。
○高橋(千)委員 今紹介いただいた大臣意見の二〇一四年七月十八日ですが、一番最後に、土砂の流出があった場合に近隣河川の汚濁のおそれがある区域等を回避することとはっきり書いております、大臣意見として。やはりそういう立場に立って、本当の意味での指導をしていただきたいと思っております。
それから、公共事業として、やはり情報公開なども、民間会社だからということではなくて、しっかりやらせていく、そういう意味での国の役割を果たしていただきたい、そのことを重ねて指摘をしたいと思います。
最後に、大臣に伺うんですが、私が本会議のときに、あらかじめ禁止する区域を決めてもよいのではという質問をしました。これ、全部禁止しろと言ったんじゃないんです。本当に危険なところは禁止したらどうかというお話をしたときに、土砂災害警戒区域など土砂流出等の危険性のある区域であっても、憲法二十九条に基づく財産権の保護との関係で、困難であるとの答弁でした。過度な私権制限とならないよう配慮しつつ、盛土等に伴う災害から人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な区域が指定されるものと答えているんですね。
ここで言う私権制限とは、土砂を搬出する業者あるいは発注者のことを言っているんでしょうか。わざわざ憲法二十九条をここで持ち出したのは、やはり、そういう搬出する業者とか発注者の財産権を保護するためなんでしょうか。それによって、万一土砂災害が起これば、何の関係もない人命や財産、人家とかが脅かされることになって、そういう人たちの財産権は守れないことになるわけですよね。どう考えていらっしゃるんでしょうか。
○斉藤鉄夫大臣 本法案は、盛土等に伴う災害を防止するため、私人の土地に対して利用規制を行おうとするものですが、その規制に当たっては、憲法二十九条に基づく財産権の保護の観点に照らして問題のないことが求められます。
この点、法律による土地利用規制の在り方として、私人の土地について盛土行為を安全性にかかわらず全面的に禁止することは、憲法二十九条に基づく財産権の保護との関係で、困難であると考えております。
このため、本法案においては、盛土等を全面的に禁止するわけではありませんが、谷筋の急傾斜地など、地形、地質上危険度の高い区域においては、それに応じた厳しい安全基準を設定し、それに適合しなければ許可しないなど、盛土による災害から人家等を保護するために万全を期すものでございます。
○高橋(千)委員 過度な規制にならないようという言葉が、始まるそばから先に出てくるというのは、やはり私は違うんだと思うんです。この間、災害がすごく続いて、ハザードエリアにおける新規立地、開発行為の抑制ということが、やはりかなり、国交委員会でも法改正をしてきて、私人の自己の業務の用に供する施設の開発行為自体も規制の対象になるというのは、四月から施行されたばかりなわけですね、都市計画法の見直し。
こうした形で、やはり考え方は発展してきているわけですよ。そういう立場に立たなきゃ駄目だ、このことを指摘して、終わります。