高橋氏 「抜け道ない規制を」
(写真)質問する高橋千鶴子議員=6日、衆院国交委 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は6日の衆院国土交通委員会で、盛土規制法案で抜け道を許さない規制を求めました。
熱海の土石流災害をめぐって高橋氏は、事業者が県への届け出を上回る盛り土をし、既存の土地利用規制で対応できなかったと指摘し、法案で許可対象となる盛り土の規模を質問しました。国交省の宇野善昌都市局長は「現行の500平方メートル以上を基本に検討し、災害発生の恐れのある特定盛り土等規制区域は今後検討する」と答弁。高橋氏は、盛り土工事が許可内容と違うなど、住民からの通報で行政が動ける仕組みも求めました。
山間部に太陽光パネルを設置する際、盛り土行為が伴うことから、高橋氏はメガソーラーが土砂災害につながる事例や対処を質問。環境省の白石隆夫審議官は9年間で1700件、1万6000ヘクタールの林地で太陽光発電が行われていると述べるとともに、「都道府県が再エネ促進区域を設定する際、土地の安定性確保のため除外する区域等を定めるよう、省令で義務づけている」と答えました。経済産業省の苗村公嗣審議官は、太陽光発電設備の事故が2019年度135件、20年度235件起きたとし、技術基準を見直していると述べました。
(「しんぶん赤旗」2022年4月15日付)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
熱海の土石流災害から今月三日で九か月となりました。私も現地視察に参加させていただきましたが、土のうが盛られていることや、土砂が流出し、深くえぐられた源頭部、いわゆる起点にセンサーやカメラが設置されている以外は、発災当時と余り変わっていないように思いました。
大切な家族を亡くした御遺族や被災者の気持ちは少しも癒えていないと思います。改めて、お悔やみとお見舞いを申し上げます。
静岡県は、現場にまだ二万立方メートルの土砂が残っているものの、今年の雨季を乗り越えてから撤去を行うと説明しておりました。不安が残ります。国の直轄事業も動いておりますが、応急対策に万全を取るようお願いしたいと思います。
今回の法案がもっと早く成立していたらあの災害は防げていたのか、ずっと考えております。
そこで、大臣に伺います。昨年七月の熱海土石流災害において崩落した盛土は建設発生土であるという認識でよろしいでしょうか。そして、今回の法案は、熱海のような被害を防ぐことができるでしょうか。
○斉藤鉄夫国務大臣 昨年、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害の際に崩落した盛土の由来については不明でございますが、建設発生土が含まれていた可能性もある、このように認識しております。
本法案におきましては、新たに造成される盛土等について、土地の用途にかかわらず許可に係らしめ、全国一律の基準により安全確保を図ること、既存の盛土等についても、災害防止のため必要なときは土地所有者や行為者等に対し是正措置を命令することを可能とすること、さらに、無許可行為や命令違反等について厳格な罰則を適用すること等の措置を講じております。
また、法制度を実効あるものとするため、地方公共団体における執行体制の確立や、盛土担当部局と廃棄物の担当部局、警察など関係部局との連携強化も促してまいります。
国土交通省としては、二度と熱海市と同様の悲劇を繰り返さないよう、関係省庁と連携しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 できると思うかという問いに対して、答えにくいと思いますけれども、そういうつもりで作ったという理解をすればよろしいということでしょうか。
○斉藤国務大臣 二度とこういう悲劇を繰り返さないという決意の下に作りました。
○高橋(千)委員 現場でも、斉藤熱海市長などが、このようなことが二度と起きないようにと立法化を強く求めてきたということをおっしゃっておりました。
その気持ちはみんな一緒だと思うんですけれども、だからこそ、国交省自身がお話しされている隙間のない規制というのが、本当にそうだろうかということで、今回の、既に委員会でも議論が出ておりますが、ゾーニングの問題ですとか、やはり本当の意味での隙間のない規制にしていかなければ、抜け道を許さないという立場に立たなければ、審議を通して、政府自身も思い切って修正をかけるという気持ちを持って臨んでいただきたい、このように思っております。
そこで、静岡県土採取等規制条例に基づく届出は三・七万立方メートルだったけれども、実際に崩れたのははるかに多い五・五万立方メートルで、かつ、まだ二万立方メートルが残っていると聞きました。県も市も、届出を正確にとか、産廃が混じっているんだとか、様々これまでも指導してきました。
しかし、資料の一枚目にあるように、県の条例では県内全域が対象だけれども、条例自体は大変優れていると検討会の中でも指摘をされているんです、ただ、効力がとても弱いと。条例という限界があります。一ヘクタール未満として届出をしていたことや、そのために、森林法に基づく開発許可という点でも要件を満たさないとか許可も必要ないとか、宅地造成法の区域ではあるけれども宅地造成ではないからとか、そういった理由で土地利用規制では網がかからなかったということが示されていると思うんですね。
そこで、一般論で伺いますが、本法案は、宅地造成等規制区域において、都道府県知事の許可の対象とする盛土行為等は、面積、容量を、下限値、どのようにするのでしょうか。また、特定盛土等規制区域においても、届出制になるんですが、一定の要件、規模が大きい盛土というイメージがありますが、許可にすると思います、どの程度を考えているでしょうか。
○宇野善昌政府参考人 お答え申し上げます。
本法案の許可の対象となる盛土の規模については、今後、有識者の御意見も承った上で検討することになります。
具体的には、宅地造成等工事規制区域については、現行の宅地造成工事規制区域における規制対象をベースにして検討することを想定しております。
また、特定盛土等規制区域については、今般新設する規定であるため、これに対応する現行の宅地造成等規制法の基準はございませんが、大規模な崖崩れ又は土砂の流出を生じさせるおそれのある盛土等として適当な規模等について検討の上、定めることとしております。
○高橋(千)委員 結局、そこでまた、現行ベースとおっしゃいましたけれども、やはり一定の高いところから始まるというのであれば、厳しく規制をしますといっても意味がなくなってくるんではないかなと思うんですね。
五百平米以上かということがちょっと議論されておりますが、そのくらいだと思ってよろしいでしょうか。
○宇野政府参考人 先ほど申し上げました現行の宅地造成工事規制区域における規制対象が、面積五百平米を超えるものということになっておりますので、それをベースに検討させていただきますし、決して穴がないように、きちんと、危ない盛土を規制できるような規模にしていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 その上で、今回の、これも一般論ですけれども、既に災害が起きてしまった場所、それは、現行の宅地造成法にはひっかからない場所であったり、いろいろあると思うんですね。でも、もう災害が起きてしまったような場所は今回の規制区域に含める、そういうふうにするべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○斉藤鉄夫国務大臣 御指摘のように、過去に土砂災害等が発生した箇所においては、同様の災害が発生する可能性が高い、このように考えます。このため、現行の宅地造成等規制法に基づく規制区域の指定に当たっての留意事項としても、指定の対象とすべき区域の自然的要件として、過去に大きな土砂災害が発生した地域等を挙げております。
本法案では、国が、規制区域の指定に関する考え方を含む基本方針を定めるとともに、区域指定に関する具体的なガイドラインを示すこととなっておりますが、それらの中で、過去に大きな土砂災害が発生した地域が的確に区域指定されるよう取り組んでいきたいと思っております。
○高橋(千)委員 確認をさせていただきました。ありがとうございます。
昨年七月六日の静岡新聞にこんな記事がありました。長年にわたり盛土、住民、やはりこの場所との言葉を紹介しています。崩落現場は、山林の奥まで進入路がつながり、土を運んだダンプカーがしきりに出入りしていた。何年も土を階段状に積み上げていた、一体何をしているのかと思っていたという近隣の会社員の声を紹介しています。私たちも、大型バスは通れない、余りに細い坂道を登って、ここをダンプカーが通ったのかと大変驚きました。
法案では、知事の許可を得た盛土等は公表し、住民に周知を図ることになると思います。一方、許可の内容と実際が違うということもあるわけですよね。それを防がなきゃいけない。なので、住民による情報が、通報されればすぐ行政が動くというような、連携ですかね、仕組みをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○宇野善昌政府参考人 お答え申し上げます。
本法案においては、許可を受けた盛土について、工事現場による標識の掲示義務や、都道府県等による許可を受けた土地の公表を行うこととしており、これにより住民等による通報を促す仕組みを整えています。
また、住民等から通報があった場合には、盛土規制担当部局だけでなく、廃棄物担当部局や警察等と情報共有を速やかに図るとともに、これらの部局と緊密に連携し、是正命令等の措置を的確に実施するよう、国としても、不法な盛土への対応方法をまとめたガイドラインを示してまいりたいと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
情報の共有、非常に大きなポイントだと思いますので、しっかりお願いしたいと思います。
一つ飛ばして、次の質問に行きます。
私の地元青森市内には、国道から見えるところにメガソーラーが広がっていて、どこの県にもあると思いますが、その隣が、沢を埋め立てておりまして、次なるメガソーラーを造るところでありました。熱海と同じようなことが起きないかというふうに思いました。
そして、現実に起きているわけでありますが、資料の二枚目、これは、昨年九月二十七日付の読売新聞です。「太陽光施設崩落相次ぐ」という見出しであります。この写真に出ているのは二〇一八年の神戸市須磨区ですが、西日本豪雨による土砂崩れで、山陽新幹線の間際までパネルが落下しました。記事の下から二段目に書いてあるんですが、西日本豪雨では十九か所の太陽光発電施設でパネルが損傷し、うち十一か所は土砂崩れだったと書いています。太陽光パネルの飛散、落下などの事故は二〇一九年度に百三十五件とあります。
そこで、まず環境省に伺います。
山間部のメガソーラー設置というのは、今話したように、沢を埋めるなど盛土行為を伴うものと思います。全国でどのくらいあるんでしょうか。計画も含めて、分かる範囲で伺います。
今月一日から施行された温対法に基づき、地方自治体が再エネ促進区域を設定することになると思いますけれども、盛土崩落による災害のおそれ、これを考慮すべきと思いますが、どのようになっているでしょうか。
○白石隆夫政府参考人 お答え申し上げます。
お尋ねの盛土行為、直接、統計というものではないですが、近似的なものといたしまして、林野庁の調査によりますと、林地開発許可の対象となる一ヘクタール以上の林地開発行為において、太陽光発電事業を目的としたものにつきましては、平成二十四年度から令和二年度までの九年間で千七百件程度、一万六千ヘクタール程度が実施されているということでございます。
それから、二番目の御指摘の、改正温対法に基づく促進区域、こちらは、環境への適正な配慮の観点から、土地の安定性の確保が必要でございます。このため、再エネ事業により土砂災害等の懸念が生じないよう促進区域を設定するということとしております。
具体的に、促進区域の設定に当たって遵守すべき基準を定めた環境省令も施行いたしましたけれども、土砂災害の防止の観点から規制対象となっている砂防三法等の指定区域につきまして、市町村が土地の安定性の確保に支障を及ぼすことがないよう検討することを義務づけてございます。
また、同じ環境省令によりまして、各都道府県が促進区域の設定に関する基準を定める場合には、土地の安定性の確保について検討した上で、除外すべき区域等を定めるということを義務づけてございます。
さらに、この省令は、現行法を前提とした省令でございますが、今般御議論いただいております盛土規制法、こういったものの状況を踏まえまして、更に関係省庁と連携をいたしながら、環境省におきましても適宜必要な対応を順次行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。既に千七百件のこうした山間部のソーラー、メガソーラーというのが起こっているということでありました。
そういう意味で、非常に住民の懸念というのは高まっているわけですが、今お話ししていただいたように、省令ができて、促進区域といえども、やはり区域としては含めない方がよいというところを含めないことということで、基準案の資料を私見ておりますけれども、しっかり明記をして、その上で、新しく法律ができていけば適時見直していくというお答えだったと思います。
今まさに議論している盛土等規制法の問題がそこに反映されていくという理解でよろしいのかなと思います。是非しっかりとお願いしたいと思います。
そこで、今度はエネ庁に伺います。
近年で、太陽光パネルの飛散、落下などの事故、どのくらいあるんでしょうか。そのうち、土砂崩れなどに、災害につながった事例がどのくらいあって、どのようにそれを分析、対策を考えているのか、伺います。
○苗村公嗣政府参考人 お答えいたします。
電気工作物の設置者は、一定の要件を満たす事故が発生した場合には、経済産業省に対して事故報告を提出することが義務づけられております。
自家用の太陽電池発電設備に係る事故報告の件数は、二〇一九年度は百三十五件、二〇二〇年度は二百三十五件となっております。さらに、二〇二一年度につきましては、本年二月まで集計した速報値で約二百五十件となっております。
こうした事故の原因を分析をいたしましたところ、二〇二〇年度に発生した二百三十五件の事故のうち、約七割は電子基板の破損等によるものであり、土砂流出や地盤流出等を伴う事故は四件となっております。
経済産業省といたしましては、こうした事故を踏まえまして、二〇二〇年二月に、太陽電池発電設備に係る技術基準を改正し、土砂流出又は地盤の崩壊を防止する措置を講じなければならないことを規定するとともに、二〇二一年十二月には、NEDO、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構が作成した傾斜地設置型等に対応した設計、施工方法のガイドラインを技術基準に取り込むといった対策を講じてきたところでございます。
○高橋(千)委員 ちょっと語尾が聞き取れなかったところがあったんですけれども、七割は電子基板とかの事故であるというお話で、それはそんなに大きくないよという趣旨でおっしゃったのかなと思うんですけれども、この間、ガイドラインを作ったりとか対応してきたということは、さっき環境省に対しても質問いたしましたけれども、やはり、ソーラーそのものが盛土行為にもなったりするわけですから、そこの対策はしっかりしていないと土砂流出とか災害による影響というのがあるということを意識して取り組んできたという理解でよろしいでしょうか。済みません、もう一回、整理。
○苗村政府参考人 はい、そのとおりでございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
盛土による災害の防止に関する検討会、この中でも、ソーラーの専門家の方もいらっしゃいましたし、随分議論がされておりました。また、経産省が、イコールみたいに、盛土行為だからイコール危険だみたいな議論をしちゃいけないみたいなことをおっしゃいました。これは正しく理解する必要があると思うんですよね。
それで、大臣に伺いたいと思うんですが、提言の中では、盛土総点検に加えて太陽光発電の点検を実施している地方公共団体もあるということを言って、地方公共団体との情報共有や連携を指摘しつつ、温対法による再エネ促進区域設定の検討に当たっては、土砂災害の防止の観点から規制されているエリアについて、近年の土砂災害等の懸念を踏まえつつ、土地の安全性を含む環境保全の観点から十分に考慮すべきであると指摘をされています。
先ほど環境省にも再エネ促進区域と盛土等の関係は聞きましたが、再エネ設置のための盛土工事に対しても、当然、今回の区域の設定ですとか許可要件ですとか、そういう中で十分に考慮されるべきだという議論だと思うんですが、大臣の認識を伺います。
○斉藤鉄夫国務大臣 先ほど高橋委員御指摘あったとおりでございます。昨年の有識者会議よりいただいた提言では、地域温暖化対策の推進に関する法律に基づく再エネ促進区域の設定に当たり、土砂災害防止の観点から規制されている区域について十分に配慮することについて指摘されております。
国土交通省としては、再エネ促進区域設定に当たって遵守すべき基準の策定に際し、環境省と連携して取り組んできたところでございまして、引き続き、制度の円滑な運用に向けて連携して取り組んでまいります。
また、本法案に基づく規制区域において、太陽光発電設備の設置に伴い、一定規模以上の盛土等がされる場合については、本法案に基づく安全基準への適合を求めることとしており、再エネ促進区域の適切な運用に併せて、盛土等に伴う災害の防止に向けて取り組んでいきたいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。しっかりと位置づけていただけると思います。
再エネ、本当に、伸ばしたいという気持ちはみんな持っているわけで、協力したいと思っているけれども、現実に住民との間で、やはりきちんとした意見を聞いてもらえないとか、そういう災害が起こった地域であるということで適地ではないんじゃないかという意見に対して、事業者との間で現実にはトラブルが起きているという中で、やはり沢を埋め立てるということはそういうことになるんじゃないか、その上にパネルが載っかるわけですから、単なる土が崩れるだけではなくて二重の被害になるということをやはりちゃんと見る必要があるのでないかなと思います。
それで、ちょっとの時間ありますので、さっき飛ばしたところを一つ伺いたいと思うんですね。
土地の所有者や工事主らが許可を得て工事を完了した後も常時安全な状態に維持するように努めなければならないと、安全の確保義務があります。これは現行の宅地造成等規制法にも同じような条文があるんですけれども、今回、ただ同じく書いたというのではない、違いがあるのかなと期待するわけですが、いかがでしょうか。
○宇野善昌政府参考人 お答えいたします。
現行の宅地造成等規制法では、規制区域である宅地造成工事規制区域内の宅地が工事完了後も適切に管理され、崖崩れや土砂流出といった災害が生じることのないよう、その所有者等に対し、常時安全な状態に維持する努力義務が課せられております。
今回の法案におきましても、新たな規制区域である宅地造成等工事規制区域内及び特定盛土等規制区域内の盛土等が行われた土地について、その所有者等に対し、常時安全な状態に維持する努力義務を課すこととしており、その法的な性格は現行法の努力義務規定と同様です。
なお、今回の改正では規制区域が指定されるエリアや規制対象行為が従来よりも拡大することから、これに伴い、努力義務の対象が広がることとなります。
○高橋(千)委員 既に宅地造成そのものが崩落をして被害が、大きな災害につながったとか、そういう既にあるものに対してもしっかりと安全確保義務をかけていく、それが担保されるということが非常に大事だと思っておりますので、そのことを質問させていただきました。
今日は最初に大臣に聞いた建設発生土の問題、次のときにまとめて質問したいと思います。
終わります。ありがとうございました。