国会質問

質問日:2022年 3月 16日 第208国会 地方創生に関する特別委員会

国施策の試行手段に

高橋氏 構造改革特区法案に反対

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=16日、衆院地方創生特委

 衆院本会議で17日、構造改革特区法案が採決され、賛成多数で可決されました。日本共産党、れいわ新選組は反対しました。高橋千鶴子議員は16日の衆院地方創生特別委員会で反対討論し、特区法の5年延長について「地方発の形をとりながら、業界の要望と国の施策の実験的試行のツール(手段)とされてきた」と批判しました。

 法案は、国立大学法人の土地貸し付けがイノベーション創出に資すると特区認定された場合、現行の認可制から事前届け出制に変えるもの。質疑で高橋氏は、特区内の国立大学法人の土地であれば、土地の範囲やテーマの追加も可能かと質問。内閣府の三浦聡審議官は、文科省の貸し出し基準に準ずるとしつつ、特区計画に記載された内容と関連していれば可能と答えました。

 高橋氏は、東北大学施設を貸し付ける六角牧場風力発電事業について、特区では事実上ノーチェックとなり、住民置き去りにならないかと迫りました。野田聖子地方創生担当相は「不適切な貸し付けが行われないよう対処した上で、地域の活性化をしていく」と答弁。六角牧場など七つの風力発電計画について環境省の白石隆夫審議官は、「県の意見書でも厳しい指摘がされている」と述べ、「他事業との累積な影響を考慮することが重要だ」と答えました。

(「しんぶん赤旗」2022年3月29日付)

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 構造改革特区法の一部改正について質問いたします。
 国立大学法人が有する土地の貸付けは、これまでも認可制ではあるが認められてきました。今回、あらかじめ構造改革特区を地方公共団体が申請、認定されれば、国立大学法人は届出のみとなり、しかも、特に期限も決められておりません。
 条文では、当該構造改革特区におけるイノベーションの創出としか記されておらないんですが、特区計画には何をどこまで書くんでしょうか。

○三浦聡政府参考人 お答え申し上げます。
 本特例は、国立大学法人法の特例として措置をしておりますので、具体の手続については、国立大学法人法に規定された貸付けの認可に係る基準に準拠することとしております。
 構造改革特区計画においては、当該構造改革特別区域のイノベーションの創出に資する研究開発、事業、施設に貸し付けることを予定している土地等の範囲、契約の相手方若しくは相手方の選定方法等を記載することとなります。このほか、貸付けに係る国立大学法人内の学内規則や、契約書のひな形等を提出させることを想定しております。

○高橋(千)委員 今、国立大学法人の土地貸付けの認可に準拠するというお答えがありました。
 確かにそれは個々の土地について認可をしていたわけですよね。今までは、例えば、貸し出す土地を特定し、どこどこの番地の何ヘクタールとかとなって契約書案を添付をし、貸付期間と貸付終了後の使用予定を明記していると思います。だけれども、特区計画の場合は、例えば、AI店舗の研究だとか再エネだとかが計画にあったとすれば、具体の土地の範囲は明確でなくてもいいんでしょうか。
 つまり、その大学の法人の土地がいっぱいあって、そのうちの一部を最初は使うんだけれども、その後は、後で追加されてもいいという意味なのか。テーマも、最初は想定していたのはAI店舗なんだけれども、その後また追加されていく、それも届出でよい、そういう意味なんでしょうか。

○三浦政府参考人 お答えを申し上げます。
 本特例は、先ほど申し上げましたように、国立大学法人法の特例でございますので、基本的に手続については国立大学法人法に準拠ということでございまして、特例における土地等の貸付けについても、当該基準に記載する事項が満たされることが確認できるように、関係省庁と具体的なところは調整しているところでございます。
 議員の御指摘する土地の特定などなど、詳細のところについては、実際に土地等の貸付けを受けて事業を開始するまでに特区計画及び届出書で確認をしていくということになります。個々の事項において、特区計画の記載時点で求めるのか、それとも届出書の記載時点で求めるかについては、引き続き関係省庁と調整の上で規定することとなります。
 いずれにしても、従来の基準で規定される事項については、特区計画及び届出書においてしっかりと確認をしていきたいというふうに考えております。
 また、もう一点お尋ねのあったテーマについて、別のテーマになった場合はどうなるのかということでございますけれども、追加となる研究開発が既に認定された区域計画に記載された内容と関連しているということであれば、引き続き届出による土地等の貸付けを行うことはできますけれども、別テーマの研究開発になるということであれば、当該研究開発の内容を踏まえて区域計画の変更等の要否について判断するということになってきます。

○高橋(千)委員 届出制にする割には、どのタイミングで何を出すのか、どこまで出すのかということがはっきりしていないというのが私は問題だと思うんです、中身以前に。
 文科省に聞くと、文科省は貸出基準は所管しているけれども、特区なんだからそれは内閣府に聞いてくださいと言うんですよ。内閣府に聞けば、それは文科省が決めることですと。それは、違う制度にするんだから、そういう答えは困るんですよ。
 ただ、今、最後におっしゃった、テーマが関連していれば届出でよいと言ったので、大概は関連していることになると思うんですね。それがやはり事前のチェックがないということにつながっていくのかなと思います。
 文科省に伺います。
 貸出基準の範囲内というんですけれども、貸出基準は、当該国立大学法人の業務の範囲内又は附帯業務というふうになっております。実際に貸し出される相手先企業が行う事業について、本来の教育研究の範囲内なのか否か、貸出期限が終了した場合若しくは中止された場合でも原状回復がされるのかというように、貸し出した後どうなったか、言ったとおりだったのかとか、そういうのが確認されない仕組みになっていると思いますが、いかがですか。

○森田正信政府参考人 お答え申し上げます。
 国立大学法人が所有する土地等の貸付けの認可に当たりまして、文部科学省では、当該貸付けにより教育研究活動の実施に支障が生じないこと、法人の財産を毀損するおそれがないこと、公益を損なうおそれがないこと等を確認の上、認可を行っておりますが、御指摘の貸付先については、認可後の当該法人による公募に基づいて決定されることとなります。
 このため、実際の認可手続においては、貸付先事業者の利用用途を個別具体に確認するのではなく、貸付条件が当該法人の学内規則や公募する際の公告案等に明記されていること、このことを確認するという手続を取っております。
 また、貸付期間終了後の取扱いや事業が中止された場合の取扱いにつきましては、これは貸付けの認可後に行われる当該法人と貸付先事業者との個別の契約によるものでございますので、文部科学省では、契約締結時点で契約書等の写しの提出を求めておりまして、それによって報告を受けているというところでございます。

○高橋(千)委員 報告を受けているけれども、国立大学法人と企業との関係の問題だという、文科省がやっているわけではないというお答えだったと思います。
 時間がもったいないので、一つ飛ばして具体の話に行きたいと思います。
 宮城県大崎市にある東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターの土地が、いろいろあるんですけれども、北山地区というところ、三百七十六万平米を二十年間貸し付けるということが平成三十年に東北大学から申請をされ、翌三十一年、二〇一九年に認可をされ、二〇二〇年三月に川渡風力発電株式会社と契約を締結しています。最大出力七万キロワットの風力発電を計画、環境アセスの手続をしております。
 住民が問題にしているのは、資料の一枚目にそのフィールド全体の地図があるんですけれども、この真ん中ら辺の六角と書いてある黄色いところ、ここを六角牧場発電と言っているんですが、この六角牧場を入れて宮城北部地域だけで七つの風力発電事業が準備されておって、合計二百基にもなる。つまり、東北大学の敷地だけじゃなくて、いろいろなところを合わせると二百基にもなるんですね。
 地域全体でやはり総合的な影響を見なきゃいけないと思うんですが、環境省に伺います。

○白石隆夫政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、議員御指摘の東北大学が貸付公募した区域における事業、いわゆる六角牧場風力発電事業、これにつきましては、鳴子温泉を始めとした宮城県を代表する観光地への影響の懸念から、宮城県のアセスの方法書に係る意見書でも厳しい御指摘がなされていると承知しています。
 その前段階の環境アセスメント手続におきまして、環境省におきましても、令和二年九月に計画段階の環境配慮書に対して環境大臣意見を経産大臣に提出してございますが、その中におきましては、宮城県が作成いたしました風力発電に係るゾーニングのマップがございまして、その中に当該事業の計画地があるわけですが、そのマップを拝見する限り、要は、適地以外に、関係法令や地形の制約が強くて、保護を優先すべき、あるいは立地困難だというエリア、それから、立地に当たって関係法令とか社会的配慮や調整が必要なエリアというのが含まれているので、こういった整理をされた区域が含まれるから、今後、宮城県と協議等を行い、実施区域を設定すること等を求めてございます。
 議員御指摘の地域全体の環境負荷の低減の観点ということにつきましては、行政といたしましてもゾーニングとかいろいろやっているわけですけれども、本事業のように、事業者や近隣で予定されている地域が多いということにつきましては、事業者サイドにおきましても、事業者同士が連携、情報を共有することによりまして、他事業との累積的な影響を考慮して事業計画の検討を行っていただくということが重要でございます。
 このため、例えば、優良な事例でございますけれども、地域における協議会を立ち上げていただくとか事業者間の情報交換を行って、環境保全措置とか事後調査の内容を連携して検討する取組がなされているという優良な事例もございます。
 いずれにいたしましても、環境大臣が意見を言いましたのはまだ配慮書の段階でございますが、さらに、本事業を含むアセスの手続におきまして、地域全体の環境負荷の低減の観点からもしっかりと審査をしてまいる所存でございます。

○高橋(千)委員 力のこもった答弁をありがとうございます。
 実は、本当に県のアセスの中も物すごい意見がいっぱい出ていて、代表が私は絶対反対だとか、猛烈な意見が出ているんですよ。それを出す側が本当にアセスを受けるという立場に立っているのかということを厳しく指摘をされる、そういうような状況があって、今大事だったのは、やはり、いろいろな事業者がいるんだけれども、総合的に見なきゃいけないということを今環境大臣意見を出してくださって、それを仕組みとして確立をしていないので、いろんな提言をしてくださったんだけれども、ちゃんと今後見ていく必要があるのかなと思うんですね。
 東北大学に戻ります。資料を見てください。
 これは、川渡フィールドセンターの住民に対する説明資料なんですね。それで、一枚目に書いているように、林地、草地、耕地がバランスよく配置される大学附属農場としては全国唯一の規模なんです。なので、共同利用施設として全国から教育を受け入れている。
 二枚目を見てください。それで、その実績が書いてあります。小学校、高校、大学、一般市民、東京や京都からも学びに来ます。ところが、資料の三枚目、これは上下で見てください。明治以来のものもあって、施設が老朽化しているんですね。毎年、改善費用を国に要求をして、だけれども認められず、人件費が削減され、技術職員も不補充だと。これはもうどうしようもないところに追い込まれているんですよ。
 文科省の貸出基準は、その土地が現に使用しておらず、将来も当面使用する必要がない土地というふうになっています。だけれども、本当は、大学自身が訴えているように、本来、ちゃんとした予算がつけば、フィールドセンターならではの充実した教育研究ができた場所なんじゃないでしょうか。ここをちゃんと支援していくという気持ちはあるでしょうか。伺います。文科省。

○森田正信政府参考人 お答え申し上げます。
 東北大学の川渡フィールドセンターは、森林生物、生態系など、多種多様な教育研究を実施する農学分野の全国的な教育研究拠点であるというふうに認識をいたしております。教育関係共同利用拠点として文部科学大臣の認定も受けておりまして、運営費交付金の支援も行っているところでございます。
 なお、東北大学は、この川渡フィールドセンター全体の敷地の一部の貸付けを行いつつ、貸付地以外の同センターの敷地において引き続き教育研究機能を維持しているというふうに聞いているところでございまして、引き続き、運営費交付金での支援等を行っていくという状況でございます。

○高橋(千)委員 今、引き続きとおっしゃってくださったんですが、足りないと、国が応えてくれていないと言っているわけですから、引き続きというんじゃなくて、きちんと拡充していくというふうにしていただきたいと思うんですね。
 次のページですが、震災前の放牧と震災後の放牧というのがあるんですね。大震災で汚染して、除染が完全には無理なことから放牧が不可能になったということで、実は、土地貸付けの認可申請書を東北大学が出しているんですね。放牧によって自然の餌を得て、労力もとてもよかったし、自然の循環ということでの農業もやることができた。だけれども、それが放射能によって結局餌を買わなきゃいけなくなってお金がないということが、このポンチ絵はお札がいっぱいついていますけれども、そういうことを主張しているわけなんです。
 それで、公募をしたんですね。公募したら、手を挙げたのが風力発電で、五ページの風力発電事業と連携した研究構想というふうになってきた。だから、やはり後づけの話ではなくて、私は、本来持っている自然を生かした、あるいは、よそにはない、そういうものをちゃんとやればよかったのになと。
 二十年貸し付けて、放射能、トータルすると三十年たつので、そうすると、また放牧すると書いているんですよ。本当にそれができると思いますか。

○森田政府参考人 お答え申し上げます。
 東北大学からの土地の貸付認可申請書におきましては、御指摘のとおり、貸付期間終了後の将来的な使用予定については、放射性物質による汚染解消確認後、飼育牛の放牧を中心とした教育研究フィールドとして使用するとされているところでございます。
 貸付期間終了後の当該土地の使用につきましては、当該大学の判断において実施されるべきものでございまして、大学からの申請書において、その使用予定について大学の判断が示されており、それを含め、認可基準が満たされておりましたところから、文部科学省として認可を行ったところでございます。

○高橋(千)委員 ですから、さっきから言っているように、認可基準というのは、取りあえずそこに、ほかに使わないとか、業務に関連しているとか、その程度の基準で、何に使うのかということは書いていないわけですよ。
ま それで、地域の住民の皆さんが、騒音だとか、振動だとか、じんあいだとか、視覚的な不快感だとか、電磁波だとか、様々心配しているので、実際どうなのと情報公開を求めたのに対して、東北大学の回答が昨日総務省を通して返ってきたんですね。大臣、聞いてください。
 本学が貸し付けた土地で行われる風力発電事業は国の制度の下で実施されるものであり、環境への影響も国のアセス制度において適切に判断されるものだから、本学は説明する立場にないと。
 FIT事業の認可を受けるとかアセスを受けるとかということを通して、国の制度なんだと言って説明しないというのはおかしくないですか。そんなことを言ったら全部が国の制度になってしまうわけなんですよ。
 住民の皆さんは住民説明会一回、大学からは区長向け説明会一回。会の皆さんには一回です。住民にはほとんど知られていません。今回のような事前届出でよいとされる改正で、ますます住民への説明会がなくなったり、本当は一緒に盛り立てなきゃいけないのに、合意ができなくなるんじゃないでしょうか。一言お願いします。

○野田聖子大臣 今の総務省の大学のあれは伺っていなかったのでお答えできないんですけれども、今回の特例措置というのは、当然、それに係る区域計画を地方公共団体が作成する際には、貸付先や用途などが公益に反しないことを確認することを求めるとともに、国が区域計画の認定を行う際には、実際に貸付けを受けて行われる事業の内容が関係法令に反しないものであることを十分確認するということにしています。
 今回の特例措置の運用では、不適切な貸付けが行われないようしっかり対処した上で、地域のイノベーション創出に資する革新的な研究開発、これをしっかり促進して、その地域の活性化を促してまいりたいとしているところであります。

○高橋(千)委員 時間になりました。
 住民の声を是非聞いてください。終わります。

ー反対討論ー


○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、構造改革特区法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 主な反対理由は、構造改革特区内で国立大学法人の土地等の貸出しを認可から届出にすることです。特区内、かつイノベーションに資するという名目で、事実上のノーチェックになってしまうからです。
 政府は、事例として、スタートアップ企業が入居する地域のイノベーション拠点施設や、再生可能エネルギー、最新テクノロジーを導入した商業施設などを挙げていますが、それぞれ、現行の認可制度でできることです。特区に認定されれば、特に期限もないため、新たな事業の追加や拡充が容易になり、国の関与も及びません。
 本日の質疑でただした東北大学の川渡フィールドセンターにおける風力発電事業は、環境アセスの中で、県からも、経産省や環境省からも、景観や自然環境、生活環境への影響が指摘され、住民から強い懸念が上がっています。今でさえ住民への説明も十分ではないのに、今後は届出で決まっていくとなれば、一層地域住民が置き去りにされることになりかねません。
 経団連は、二〇一九年四月のソサエティー五・〇の実現に向けた政府研究開発投資に関する提言の中で、企業が直接投資することが困難な創発的研究は、大学や研究開発法人が中心的な役割を担うことになるとして、運営費交付金の配分見直しを求めています。
 一方、国立大学法人に対しては、国立大学法人改革の名で、資産運用などの更なる自己資金獲得が迫られてきました。今回の特例措置もその一環であります。
 国民の共有財産であり、教育研究のためにこそ使われるべき国立大学法人の資産を、もうけの道具としてはなりません。運営費交付金を拡充すべき国の責任をも放棄するものであります。
 なお、職能開発短期大学校から大学への編入学の道を開く特例措置については、地域で物づくりに関わる技術者や技術者を目指す若者らがより高度な知識、技術を学び、身につける機会になることから、反対はしません。
 しかし、文科省自身が述べていたように、編入学は学校制度の根幹に関わることであり、制度上の担保と外部評価の仕組みを検討して、特区ではなく、全国統一の対応を目指すべきです。
 構造改革特区法は、国民の暮らしや環境、教育を守るために必要な規制を緩和あるいは撤廃へ道を開くため、二〇〇二年に成立し、以来五年ごとの延長と特例措置の追加を重ねてきました。しかし、地方発の形を取りながら、その実際は業界の要望や政府の施策の実験的試行のツールとされてきたにすぎず、延長は必要ありません。
 真に必要な規制の緩和は根拠法の改正などで行うべきであることを述べて、討論とします。

2022年3月16日 衆院地方創生に関する特別委員会提出資料

▲ このページの先頭にもどる

高橋ちづ子のムービーチャンネルへ
街宣予定
お便り紹介
お問い合わせ
旧ウェブサイト
日本共産党中央委員会
しんぶん赤旗
© 2003 - 2024 CHIDUKO TAKAHASHI