高橋氏指摘 盛土法案審議入り
衆院本会議
(写真)質問する高橋千鶴子議員=29日、衆院本会議 |
盛土規制法案(宅地造成法規制改正案)が29日の衆院本会議で審議入りし、日本共産党の高橋千鶴子議員が質問しました。
死者・行方不明者28人という静岡県熱海市の土石流災害を受け、ようやく国は本法案を出しました。高橋氏は、これまでもたびたび盛り土の崩落事故があり、全国一律の規制・立法化が求められていたとして政府の不作為を批判。「土砂災害警戒区域など盛り土行為を禁止する区域を定め、それ以外は区域を定めず盛り土行為を規制すべきだ」と主張。リニア中央新幹線の南アルプス静岡工区のトンネル残土置場について、静岡県知事が自然環境への悪影響を懸念しているとして、同地は規制区域へ指定できるかとただしました。
斉藤鉄夫国土交通相は「過度な規制とならないよう」などと繰り返しました。
高橋氏は「残土処理と盛り土規制を一体で法制定すべきだ」と指摘。斉藤国交相は「元請け業者が果たす役割を明確にし、搬出先も適正化・明確化を図ることが重要だ」としか述べませんでした。
高橋氏はリニア中央新幹線の建設に関わり、山梨県の南アルプストンネル工事から出る残土の最終処分先が決まらず、土砂災害警戒区域内に堆積されたままだとして、早急な搬出・撤去を求めました。さらに、建設残土が最終処分先に搬入されているかをチェックするトレーサビリティー制度をつくるべきだと主張すると、斉藤国交相は必要性を認めました。
盛土規制法案 高橋議員の質問(要旨)
衆院本会議
日本共産党の高橋千鶴子議員が29日の衆院本会議で行った盛土規制法案(宅地造成規制法改正案)に対する質問(要旨)は次の通りです。
昨年7月、静岡県熱海市で発生した土石流災害は、死者27名、行方不明者1名の大惨事でした。不適切な盛土の崩落による「人災」です。こうした危険な盛土は全国に存在し、たびたび崩落事故などを起こし、全国一律の規制、包括的な法律が要望されていました。
法案は被害を生まない決め手になるのか。少なくない地方自治体が土砂条例などを制定しています。しかし、権限や罰則も弱く、条例のない自治体へ土砂が持ち込まれる問題もあります。政府は立法化を避けてきた責任を認め、実効ある法整備を行うべきです。
法案は、盛土により人家などに被害を及ぼし得る区域を規制区域と指定し、区域内で行う盛土などに知事の許可を必要とします。森林や農地まで広く規制区域としますが、区域外への盛土行為は防ぐことができません。土砂災害警戒区域など、盛土行為を禁止する区域を定め、それ以外は区域を定めず、盛土行為を規制対象にすべきではありませんか。
例えばリニア中央新幹線の南アルプス静岡工区のトンネル残土は、標高約1300メートルにある燕沢(つばくろさわ)に置き場をつくる計画です。東京ドーム3倍分にあたります。ここは規制区域に指定できますか。
危険な盛土などの要因の一つが、建設残土の不適切な処理です。熱海の土石流となった土砂は、建設残土である可能性は大いにあります。
総務省「勧告」によると、土砂条例で対応した無許可埋め立て58事案のうち、土砂流出発生が14事案、うち是正は1事案です。建設工事の発注者、残土の発生者責任を明確にし、最終処分先まで管理を行う建設残土の処理に関する法律を盛土規制と一体で制定すべきではありませんか。
工事現場内で利用されなかった建設発生土は2割強、年間5873万立方メートルです。
リニア工事で発生する残土は約5680万立方メートルですが、最終処分先が決まっている量はどれくらいですか。山梨県の南アルプストンネル工事では、最終処分先が決まらず、土砂災害警戒区域内の仮置き場に堆積されているといいます。早急に処分先を確保すべきではありませんか。
公共事業では、発注の際に最終処分先を指定し、契約を結ぶ指定処分が制度化されています。民間工事も義務化すべきです。建設発生土が最終処分先に搬入されているかチェックできるトレーサビリティー制度をつくるべきです。工事発注者は、最終処分場が確保されるまで工事に着手しないようにすべきです。
(「しんぶん赤旗」2022年3月30日付)
-議事録ー
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)
昨年七月、静岡県熱海市で発生した土石流災害は、死者二十七名、行方不明者一名という大惨事でした。不適切な盛土の崩落による人災であることは論をまちません。こうした危険な盛土は全国に存在し、度々崩落事故等を起こしてきたため、危険な盛土に関する全国一律の規制、包括的な法律が要望されていました。
本法案は、こうした被害を二度と生まないための決め手になるのでしょうか。
少なくない地方自治体が土砂条例などを制定しています。しかし、条例では権限や罰則も弱く、その上、条例のない自治体へ土砂が持ち込まれる問題もあります。政府は、これまで立法化を避けてきた責任を認め、実効ある法整備を行うべきです。
法案では、盛土により人家等に被害を及ぼし得る区域を規制区域として指定し、区域内で行う盛土等に都道府県知事の許可を必要とします。森林や農地まで広く規制区域としますが、区域外への盛土行為は防ぐことができません。土砂災害警戒区域など、盛土行為を禁止する区域を定め、それ以外は区域を定めず、盛土行為を規制対象にすべきではありませんか。
例えば、リニア中央新幹線の南アルプス静岡工区のトンネル残土は、標高約一千三百メートルにある燕沢に置場を作る計画です。東京ドーム三杯分に当たる三百六十万立方メートルになり、静岡県知事は自然環境への悪影響を懸念しています。ここは規制区域に指定できますか。
次に、危険な盛土等の大きな要因の一つが、建設残土の不適切な処理です。熱海の土石流となって崩落した大規模な土砂は、どこから持ち込まれたものか判明していません。しかし、工事現場から発生した建設残土である可能性は大いにあります。
総務省の建設残土対策に関する実態調査結果に基づく勧告によると、土砂条例で対応した無許可埋立て五十八事案のうち、土砂流出の発生が十四事案、そのうち是正されたのは一事案にすぎません。建設工事の発注者、元請業者など建設残土の発生者責任を明確にし、最終的な処分先まで適切な管理を行う建設残土の処理に関する法律を盛土規制と一体で制定するべきではありませんか。答弁を求めます。
建設残土のうち、廃棄物を取り除いた建設発生土は、工事現場等で資源として有効活用することが基本です。しかし、工事現場内で利用されなかった建設発生土は、全体の二割強、年間五千八百七十三万立方メートル、実に東京ドームの五十倍ほどです。これは確実に最終処分先に運び込まれているのですか。
例えば、リニア中央新幹線のトンネル工事で発生する残土は約五千六百八十万立方メートルという膨大な量ですが、現時点で最終処分先が決まっている量はどれくらいですか。一時仮置場に堆積している残土はどれくらいか、伺います。
山梨県の南アルプストンネル工事では、搬出した土砂のうち、最終処分先が決まらず、土砂災害警戒区域内の仮置場に堆積されたままになっているといいます。地元では、いつ崩落するかと不安が広がっています。早急に処分先を確保し、仮置場から搬出、撤去すべきではありませんか。
公共事業の場合は、発注する際に最終処分先を指定して工事契約を結ぶ指定処分が制度化されています。この指定処分の徹底を図るとともに、民間工事に対しても指定処分を義務化すべきです。
建設残土は、工事現場から一旦は仮置場や中間処理場に搬出されます。仮置場などの位置づけが曖昧であり、基準を明確にすべきではありませんか。建設発生土が最終処分先に確実に搬入されているかチェックできる、トレーサビリティー制度をつくるべきです。
最後に、新幹線や高速道路などの大規模なトンネル掘削工事は大量の残土を排出します。工事発注者は、最終処分場が確実に確保されるまで工事には着手しないようにすべきです。
以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
○斉藤鉄夫大臣 高橋千鶴子議員から、実効ある法整備等についてお尋ねがありました。
盛土については、これまで、宅地造成等規制法のほか、森林法や農地法等の各法令等により規制してきたところですが、各法令等の目的に応じた規制であることから、必ずしも規制が十分でないエリアが存在しています。
また、一部の地方公共団体では条例を制定して盛土を規制していますが、規制の内容には地域差があるほか、条例による罰則では抑止力として十分に機能していないとの指摘もあります。
このような中、昨年、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生したことを踏まえ、今般、本法案を提出し、宅地や森林など土地の利用区分にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制するとともに、罰則の厳格化等の措置を講じ、盛土等に伴う災害を防止することとしております。
規制の対象とする区域についてお尋ねがありました。
本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、許可制により厳しい権利制限をかけるものです。
このため、過度な規制とならないよう、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしています。
また、盛土行為を全面的に禁止することについては、土砂災害警戒区域など土砂流出等の危険性のある区域であっても、憲法第二十九条に基づく財産権の保護との関係で困難であると考えております。
本法案に基づく具体的な規制区域の指定は都道府県等が行うものであり、ここで個別地区についての回答は差し控えますが、過度な私権制限とならないよう配慮しつつ、盛土等に伴う災害から人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な区域が指定されるものと考えております。
建設残土の発生者責任の明確化についてお尋ねがありました。
建設発生土の適正処理を確保するためには、発注者や元請業者が果たすべき役割を明確にし、建設発生土の搬出先の適正化、明確化を図っていくことが重要と考えています。
公共工事については、発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組を徹底していくとともに、入札及び契約の適正化の観点も踏まえ、適切な費用負担の徹底に取り組んでまいります。
また、建設発生土の不適正処理の防止には、搬出先の適正確保と資源としての有効利用を一体的に図ることが効果的であることから、民間工事も含めて、現行の資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化します。
具体的には、専門的知識を持ち、建設工事の施工全体に責任を持つ元請業者に対し、搬出先が適正であることの事前確認や、実際にそこに搬出されたことの確認を義務づけるとともに、発注者には適切な費用負担を求めてまいります。
国土交通省としては、建設発生土の適正処理の確保にしっかりと取り組んでまいります。
建設発生土の搬出先についてお尋ねがありました。
平成三十年度においては約六千万立方メートルの建設発生土が最終受入れ地等に搬出されていると回答されておりますが、この調査は工事の受注者から発注者を通して回答されており、この回答は受注者のみならず発注者も見た上で取りまとめた回答となっております。
リニア中央新幹線の建設主体であるJR東海においては、令和三年九月末時点で、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土のうち、約七割の最終受入先を確保しているとともに、残りの約三割についても複数の候補地と受入れの協議を進めていると聞いております。また、令和三年三月末時点で、一時仮置場に堆積している残土は約五十五万立方メートルであると聞いております。
さらに、御指摘の山梨県南アルプストンネル工事で発生する残土の仮置きについては、JR東海によれば、地形や地質に関する調査を踏まえて安全対策を講じた上で、残土の仮置きを行う区域の届出など、山梨県条例などの関係条例等に従った必要な手続を行っており、仮置き期間が終了するまでに最終受入先を決定するものと承知しております。
リニア中央新幹線における建設発生土の取扱いについては、工事実施計画認可を受けた工事着手後に事業主体が地方自治体からのあっせん等を受けて受入れ候補地を選定し、建設発生土が実際に発生する時期や土質、運搬距離等を考慮した上で事業主体により決定されていると承知しております。国土交通省としましては、地方自治体の条例等に従い、建設発生土が適切に処理されるよう、JR東海を指導監督してまいります。
指定処分についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、公共工事では、発注者が土砂の搬出先を指定する指定利用等の取組が進んでおり、国の発注工事ではほぼ全ての工事で指定利用等が行われています。
発注者による指定利用等の取組は、建設発生土の有効利用や適正処理を進める上で大変効果的であり、適切な費用負担の徹底と併せて、今後は、地方公共団体の発注工事を含めて公共工事での原則化に取り組んでまいります。
一方、民間工事の発注者は、個人の施主を含め様々であることから、基本的には、専門的知見を持ち建設工事の施工全般に責任を持つ元請業者に適切な搬出先の選定等の役割を担わせ、発注者には費用の適切な負担を求めることが適当と考えております。
なお、継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者は、公共工事と同様に指定利用等を行うなど、より積極的な役割を果たすことが求められると考えており、この旨をガイドライン等で明確化するとともに、様々な機会を捉えて周知してまいります。
トレーサビリティー制度の創設についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、新たな盛土規制と併せて、建設工事から発生する土の搬出先の明確化や、実際に適正に搬出されたことを確認する仕組みが必要と認識しております。
このため、建設現場から搬出される建設発生土の約八割を占める公共工事について、工事の発注段階で建設発生土の搬出先を指定する指定利用等の徹底に取り組んでまいります。
また、民間工事も含めて、搬出先の適正確保と資源としての有効活用を一体的に図ることが不適正処理の防止に効果的です。このため、現行の資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化し、元請業者に搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。
なお、御指摘のいわゆる仮置場等で行われる土砂の一時的な堆積についても、新たな盛土規制の許可対象となることから、搬出先の事前確認を行うこととなります。
国土交通省としては、建設発生土の搬出先の明確化等に向けてしっかりと取り組んでまいります。