国会質問

質問日:2022年 3月 30日 第208国会 国土交通委員会

所有者不明土地で高橋議員

発電設備 限定が必要

衆院国交委

写真
(写真)質問する高橋千鶴子議員=30日、衆院国交委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は30日の衆院国土交通委員会で、所有者不明土地利用特措法改正案について質問しました。

 同改正案は、人口減少や高齢化に伴い増加する所有者不明土地について、NPOや企業などが公共目的に利用できる「地域福利増進事業」に、防災施設や再生可能エネルギー(再エネ)発電設備の整備を加え、土地使用権の上限期間の延長などを行うものです。

 高橋氏は地域福利増進事業について、事業計画等の公告縦覧期間を6カ月から2カ月へ短縮しようとしている上、再エネをめぐるトラブルが増え、資源エネルギー庁の報告でも住民から5年間で738件の相談が寄せられていると指摘。一方、再エネ業界団体は利用手続きの迅速化を要望しているとして、1000キロワット未満の小規模発電も同事業に追加するにあたっては、「地産地消、災害用電源など厳密に限定すべきだ」とただしました。

 斉藤鉄夫国土交通相は「あくまで地域住民等の共同の福祉、または利便の増進に資するものに限る」「政令で定める」などと述べました。高橋氏は、1000キロワット以上の規模の大きい再エネは地域福利増進事業になじまない上、公告期間の短縮で住民が知らぬ間に計画が始まったということにならないよう「住民合意が必要だ」と指摘しました。

(「しんぶん赤旗」2022年3月31日付)

-議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 委員会の冒頭に、建築着工統計調査の大幅遅れについて大臣から発言がありました。昨年末に発覚した建設工事受注動態統計と同じ基幹統計であり、検証と再発防止策を、まさにその途上であると思います。
 委員会において集中審議を行うべきと思います。委員長にお取り計らいをお願いいたします。

○中根一幸国土交通委員会委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議いたします。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 私は東北の選出ですので、東日本大震災被災地の職員の皆さんが、土地の所有主をめぐって外国までも探しに行くという大変さを目の当たりにしてまいりましたので、今回の所有者不明土地の利用円滑化、この解決に向けて、基本的賛成の立場であります。とはいえ、憲法二十九条、財産権に関わる重要な改正でありますので、十分な審議と慎重な対応が求められると思います。ダブるところもあると思いますが、整理の都合上、なるべく逐条で聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、今回、一筆の所有者不明土地に対して、一見して同じ土地と思えるような、かつ所有者が分かっている隣接する土地についても、管理不全であるということで勧告まではできるようにすると言います。この隣接という考え方、初めてのことではないでしょうか。
 所有主が本来分かっているんですから、管理不全で外部不経済をもたらす土地の管理者に対しては、土地基本法もあり、現行制度でも対応できると思うんですが、あえて本法案で書いた趣旨は何か。また、必ずしも一筆の所有者不明土地に対して隣が一筆という意味ではなくて、面的に、複数の筆、者があるというふうに考えてよろしいでしょうか。

○市川篤志政府参考人 お答え申し上げます。
 今般の改正におきまして、市町村長は、管理不全状態の所有者不明土地の確知所有者に対し、災害等の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう勧告する場合に、この所有者不明土地に隣接して、地目や地形が類似している管理不全状態にある土地、管理不全隣接土地につきましても併せて勧告することができることとしております。
 このような制度とした趣旨でございますが、所有者不明土地とこれに隣接する所有者が判明している土地とが一体となって管理不全の状態に陥っているケースが多く、こうした管理不全状態を解消するためには、所有者不明土地だけ勧告の対象としたのでは不十分であり、所有者不明土地に隣接する土地についても併せて勧告することを可能とすることが適当であると考えたためでございます。
 また、所有者不明土地法における所有者不明土地は、一筆の土地をいうこととされていることから、一筆ごとに管理不全状態であるか否かが判断されますが、他方、これに隣接する土地については、一筆の土地ではなく、複数の筆の土地であることがあり得ます。

○高橋(千)委員 複数の分かっている隣接の土地がある可能性があるというお答えだったと思います。
 国土審議会の企画部会の議論の中でも、所有者が分かっている場合でもやはり法律事項として立てていった方がいいんじゃないか、そういう議論がされて、やはりこれが出てきた。だから、私は、むしろ所有者も含めて見えていて、そっちの議論もやはり出てきたのかなと。
 そうすると、今回は一応勧告ということにとどめております、所有者不明土地の方は代執行まで書いていますが。その先をやはり見込んでいるというふうに受け止めた方がよろしいでしょうか。

○市川政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、国土審議会におきまして、所有者が不明でない管理不全状態にある土地についても、もう全国各地で地方公共団体の皆様が条例で代執行制度等をつくっておられますが、法律でも対応すべきではないかという議論は確かにございました。
 ただ、他方で、やはり、所有者が分からない土地というのが将来ほっておかれる蓋然性が極めて高いので、法律に基づいて、条例では対応できない分野ですので、制度を創設する必要があるという判断を審議会でも御議論いただいた上で、いたしたところでございます。
 ただし、その所有者不明土地の不全状態を解消するに当たって、隣接する土地も併せて、まずお勧め、勧告ですからお勧めですね、行政指導レベルの話でございますが、した方が、問題解決に資するケースが多いので、今回はそのような仕組みとさせていただいたということでございます。

○高橋(千)委員 お勧めとおっしゃいましたけれども、勧告って結構厳しい表現ですよね。だから、そこに至る前に努力をして、そういう努力の中で、やはり代執行ということも、所有者不明土地も一体としてということがあるんじゃないかと。そこを丁寧にやはり説明をしないと、心配になってくるということなのであります。
 それで、代執行の問題ですけれども、市町村長は相当の期間を定めて代執行を行う旨を公告しなければならない、ここで言う公告期間とはどのくらいでしょうか。

○市川政府参考人 お答えいたします。
 管理不全状態にある所有者不明土地について市町村長が代執行しようとする場合には、相当の期限を定めて、確知所有者が災害等防止措置を講じないときは市町村長が講ずる旨をあらかじめ公告しなければならないこととされてございます。
 この公告の期間でございますが、対象となる所有者不明土地の管理不全の状況ですとか、周辺地域への悪影響の度合い、それから、災害等防止措置の内容などに応じまして、社会通念上、合理的に必要な長さを市町村長の方で判断をし、決定することとなると考えてございます。

○高橋(千)委員 もう少し、目安くらいは言ってくださらないと。幅とか、そのくらい言ってくださってもいいんじゃないでしょうか。もしお答えできるなら、次、答えてください。
 それで、命令する相手がいない土地の代執行をするわけですよね。だけれども、一方では、費用負担については行政代執行法の準用を書いております。どういう場合を想定していますか。

○市川政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの、市町村長が判断し決定される公告の期間でございますが、他の例で大変恐縮でございますが、空き家法に基づく代執行の最近の実例をホームページで確認してみましたところ、公告期間は、短いもので一日というものがございました。多分、切迫度合いがかなり高かったということだと思いますが。それから、長いもので三・五か月という幅のある期間が設定されている実態がございました。
 それから、二つ目のお尋ねでございます、命令する相手がいない土地の代執行を明記する場合でございますけれども、本法案におきましては、代執行に要した費用の徴収方法として、代執行に関する一般法である行政代執行法の第五条及び第六条を準用することとしております。
 今般創設する代執行制度の対象は、所有者の全部又は一部が不明である土地でありますが、確知所有者や、代執行時点では不明であったものの後に所在が判明した所有者から、行政代執行法第五条及び第六条に従って費用を徴収することを想定してございます。

○高橋(千)委員 せっかく調べてくださったのなら最初に答えてくださればよろしいじゃないですか。一日というのは結構衝撃でありましたけれども。
 それで、行政代執行法を準用するという点では、例えば、第六条は、国税滞納処分の例によりこれを徴収すると書いているわけなんですね。そうすると、今日るる皆さんもお話しされていたと思うんですが、遠方にいる所有者が、望まない相続や、そもそも相続していることを知らずにいるなどとして、管理不全土地、今話題となっている、土地に責任を持てない、あるいは経済的負担ができないのに、今の行政代執行法が適用されて、例えばその人が東京に住んでいたとしたら、東京のおうちとか差押えされるという場合もあるということでしょうか。

○市川政府参考人 お答えいたします。
 所有している土地から遠方に居住されており、その土地を所有することを望んでいるわけではない所有者の方であっても、自らが所有する土地を適正に管理する責務を有しているところであります。
 このため、制度上は、管理の適正化のために必要な措置を市町村長が代執行した場合の費用につきましては、第四十条において、所有者の負担とすることと規定しており、その費用の徴収方法については、行政代執行法第五条及び第六条に従って、国税滞納処分の例によって費用徴収することとしております。
 実務上は、具体的な費用負担につきましては代執行を実施した市町村長が判断することとなります。所有者の判明の状況ですとか、あるいは講じた措置の内容に応じまして、例えばでございますが、共有持分に応じた負担を求めることとするなどの対応をすることも想定されるものと考えております。

○高橋(千)委員 だから、平たく言えば、差押えだってありですよということだと思うんですね。
 この間、民法の改正も進めてきて、登記の義務化という大きな改正もありました。これから相続が起こる方にとっては、そこから義務化なんだから気をつけようとなるわけですが、これまで分からなかった方、登記をしていなかった方にも遡及して義務がかかりますので、これはしなければ過料が生じることになります。
 こういう、法務省も国交省も、双方の改正が進んできたことによって、所有者探索も進んでいるわけですね。逆に、でも、そのことによって、本人が望まないにもかかわらず管理保全義務だけは発生し、罰則や差押えもある、そういうところに今来ているわけです。だったら、一方では、放棄する権利も認められないとおかしいと思います。法務省に伺います。

○堂薗幹一郎政府参考人 お答えいたします。
 土地の所有者は、単に権利を有するだけではなくて、その土地の管理について一定の責務を負っていると考えられるところでございます。したがいまして、土地の所有者に、一方的な意思表示のみでその所有権の放棄を広く認めることについては、その責務を一方的に免れることを許すことになりかねないため、慎重な検討が必要であると考えております。
 他方で、現行民法においても、法定相続人が相続財産中の土地やその管理に関して生じた債務の承継を望まない場合には、相続の放棄をして被相続人の権利義務を一切承継しないといったことができることとされております。
 また、昨年の民事基本法制の見直しにより創設された相続土地国庫帰属制度では、相続人が相続の承認をしたものの、相続財産の中にその取得を望まない土地がある場合に、一定の要件の下で土地を手放して国庫に帰属させることができるとされたところでございます。
 この制度は令和五年四月二十七日からスタートし、その事務は各地の法務局で行われますので、法務省及び法務局といたしましては、施行に向けて関係省庁と連携して、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

○高橋(千)委員 国庫帰属法は令和五年からということでありましたが、一歩前進ではあると思うんですよね。ただ、本当の意味での私が言っている放棄ではない。あるいは、崖地のような危険なところはそもそも対象にならないということで、やはり悩みはなかなか解決しないわけなんです。なので、本当の意味で管理不全土地を何とかしよう、あるいは所有者不明土地を何とかしようと思ったら、本当にもう要らないんだけどな、負担できないんだけれども困っているなという人たちの救済措置も本当に考えていただきたい。これは国交省にも併せて求めたいと思います。
 それで、企画部会の議論の中でも、所有者不明土地と聞くと浮かぶイメージは、原野ですと答える方と、市街地の中で空き家もセットなので宅建業者を活躍させてという議論とか、環境保護なんだから自然に帰そうとか、様々な議論がありました。ですから、この法案自体のターゲットがどこなのかということが結構分からない中で法案にできてきたのかなと。なので、これを議論することが非常に大事だと思うんですね。
 そこで伺いますが、市町村が所有者不明土地利用円滑化推進法人を指定できることになっています。これは所有者不明土地対策協議会とセットで進めるという発想だと思いますが、この四十七条の規定を見ますと、いわゆる推進法人、不動産会社やディベロッパーを指定することも可能なんじゃないでしょうか。

○市川篤志政府参考人 お答えいたします。
 所有者不明土地利用円滑化等推進法人は、特定非営利活動法人、一般社団法人若しくは一般財団法人又は所有者不明土地の利用の円滑化等の推進を図る活動を行うことを目的とする会社であって、所有者不明土地法に規定された業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを指定することが可能でございます。
 したがって、制度上は、お尋ねの不動産会社やディベロッパーが参加している特定非営利活動法人、一般社団法人若しくは一般財団法人のほか、所有者不明土地の利用の円滑化等の推進を図る活動を行うことを目的とする会社である不動産会社やディベロッパーが指定されるケースもあり得ます、制度上は。
 なお、この推進法人は、比較的土地の利用ニーズ、需要が少なく、民間市場を通じた土地取引がなかなか期待できない地域での活動を主に想定しておりますので、一般的には、このような地域において、不動産会社やディベロッパーが単独で活用するというのは期待しにくいのではないかとは考えてございます。

○高橋(千)委員 否定しなかったと思います。なかなか人が見つけられない自治体がやはりそういうところに、ディベロッパーに頼ってしまうということがあるわけですね。そうすると、本来の主題とは違ってくるのではないかということは、一言言っておきたいなと思います。
 それで、地域福利増進事業の公告期間を二月に短縮し、かつ、使用権設定の期間を二十年にするといいます。今でも一千キロワット以上の再エネは認められます。この期間についてはどうなりますか。

○市川政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねのありました、現行制度においても対象事業として認められている千キロワット以上の再生可能エネルギー発電設備につきましては、他の事業と同様、縦覧期間については六か月から二か月に短縮することとしておりますが、これにつきましては上限二十年に延長することはしないこととしております。
 なお、千キロワット以上の大規模な発電設備につきましては、収用適格事業でありますことから、長期にわたる土地の使用が想定される場合には、土地の取得をすることが通常であると考えております。

○高橋(千)委員 ここがまた中途半端なんですよね。短縮はするわけなんです。
 それで、もう時間がないので大臣に伺いますけれども、やはり企画部会の中で、再エネの地域とのトラブルが非常に多いということが、経産省、例えば七百三十八件も五年間の中でありましたよと報告があって、一方では、業界からは、やはり今、山林なんかでは所有者不明土地がいっぱいあって難しいんだ、そういう声だとか、小規模な再エネを認めてほしい、そういう議論があって今がある、今の法案が出てきたのかなと思うんですね。
 だとすれば、私は、一千キロワット以上の大規模な再エネはなじまないと思うんです、福利増進事業に。それはもうそういうふうに見切ったらどうでしょうか。そして、今回の小規模のやつをやはり地域限定、地産地消に限定していく、そして住民の合意を条件とすると思いますが、一言だけお願いします。

○斉藤鉄夫大臣 所有者不明土地法第二条第三項におきましては、収用適格事業である、電気事業法による発電事業の用に供する電気工作物を整備する事業であって、地域住民等の共同の福祉又は利便の増進に資するものであれば、地域福利増進事業の対象事業とされております。
 したがって、千キロワット以上の再生可能エネルギー発電設備を整備する事業の全てが地域福利増進事業制度を活用できるということにはなっておらず、あくまで都道府県知事が地域住民等の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして判断するものに限って地域福利増進事業となりますので、地域福利増進事業になじまないということではないと考えております。
 先ほどの議論もございましたが、地域福利増進事業という公的な目的と、それから、所有者不明土地の利用という、その利便とバランスの問題かと思いますけれども、それは政令の中で、あくまでも福利増進事業というふうに地元が、自治体が判断をするということを政令に落とし込んでいきたいと考えております。

○高橋(千)委員 一言で終わります。
 そういうときに、最後に自治体に責任を転嫁しないように、政令で落とすと言っているわけですから、先ほど来議論があるように、限定的なものにするべきなんです。一千キロワット以上だってふさわしいものがあるかもしれないと大臣はおっしゃっているんだと思うんです。だからこそ、住民合意と言っています。
 公告期間を短くしたことで、知らないうちに始まっちゃってということになるんだ、だから住民合意が必要なんですということを指摘をして、終わりたいと思います。

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