衆院予算委分科会 高橋氏迫る
2022年2月17日(木)
(写真)質問する高橋千鶴子議員=16日、衆院予算委分科会 |
日本共産党の高橋千鶴子議員は16日の衆院予算委員会分科会で、化学物質過敏症(CS)の問題を取り上げました。
CSは、シックハウス症候群や電磁波障害、香害などを総称し、患者数は予備軍を含め1千万人とも言われています。高橋氏は、周囲に理解されず専門医が少ないため、多くの患者が苦しんでいるとして、「一日も早く標準医療に位置付け、せめて全都道府県に一つ以上の専門外来を配置すべきだ」と迫りました。
後藤茂之厚生労働相は、発症メカニズムが未解明で、「診断基準や治療法は存在しない」などと述べ、対応に背を向けました。
高橋氏は、約9割の子どもにアレルギー疾患があり、学校生活管理指導表で共有していることを示し、化学物質も含めるべきだと主張。2012年の参考資料で、文部科学省自身が、アトピー性皮膚炎などと化学物質過敏症の関係を認めていると指摘しました。
さらに、国民生活センターの情報提供にもとづき、香料の規制を求めたのに対し、厚労省の鎌田光明医薬・生活衛生局長は、「発症メカニズムが未解明」などと同じ答弁を繰り返しました。
高橋氏は、CSは障害年金の照会様式にもなっているなど事実は積み上がっており、いつまで未解明と言うのかと厳しく批判。後藤厚労相は、「厚生労働科学研究」として取り組んでおり、解明に取り組んでいきたいと答えました。
(「しんぶん赤旗」 2022年2月17日(木) 付)
ー議事録ー
○高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。
最初に一問、新型コロナウイルス感染について、大臣に伺います。
オミクロン株が猛威を振るい、国内の感染者も累計で四百万人となりました。当初は重症化しないと言われておりましたが、感染力が強く、じわじわと重症者、死者も増えております。
質問は、自宅療養が五十四万人を超えたという中で、みなし陽性がどのくらい含まれているのか。実態が分からなくなる、あるいは、みなし陽性とされた当事者の不安も大きく、きちんと検査による診断に結びつけていくべきだと考えますが、大臣のお考えを伺います。
○後藤茂之大臣 一月二十四日に、地域の感染状況に応じて、診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合に、自治体の判断で実施することが可能な対応の一つとして、二次感染リスクが高いとの専門家の評価も踏まえた、同居家族などの感染者の濃厚接触者が有症状となった場合には、医師の判断により検査を行わなくても、臨床症状で診断することをお示ししたところでございます。
この対応により診断された疑似症患者につきましては、自治体の公表において、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数に含めていただくようお願いするとともに、その際、新規陽性者数の内数として、その人数を明示する形で公表するように周知をいたしております。
自治体の判断で地域の感染状況に応じた対応がなされている中において、現時点では、各自治体の公表状況について確認中でございますけれども、東京都や大阪府では既に疑似症患者を含めた陽性者数を公表していると承知をいたしております。
本件の取扱い、現在の感染状況を踏まえまして、地域の状況に応じて、診療・検査医療機関への受診に一定の時間を要する状況となっている等の場合や、外来医療の逼迫が想定される場合において、都道府県知事の判断で行うことが可能な対応を示したものでございますけれども、その見直しの必要性については、感染状況、医療機関の状況、専門家の意見等を踏まえまして、総合的に判断する必要があると考えております。
○高橋(千)分科員 数自体は、内数ということで、混ぜるんじゃないんだということをおっしゃったと思うんですが、自治体の判断、知事の判断と三回おっしゃいました。そこに、やはり厚労省の責任がどうなのかなということを指摘させていただきたいと思います。
今月五日のNHKニュースで、墨田区の東京曳舟病院を取材されて、一月に救急搬送された九百六十四人のうち五十八人がPCR検査で陽性だった、つまり隠れオミクロンではないかということが指摘されておりました。けがなどで運ばれても必ず検査をしなければならないし、一定の時間を要するということで、それ自体が現場の重い負担になっております。特に今回は、医療従事者自身が家族の感染などで出勤できず、医療提供体制に深刻な矛盾を引き起こしております。
また、国立感染研によると、大阪、福岡始め十三府県において、昨年十月までの超過死亡が例年の同時期より多いことが分かっています。
みなし陽性や自宅療養の措置が医療現場を守るためというのなら、やはり逆さまで、自費検査や訪問医療に取り組む民間の医療機関、コロナ患者以外の重い疾病を受け入れる医療機関に対してもきちんと評価をするなど、全体として医療機関と従事者たちを全力で支えていくべきだと思います。
このことを指摘しまして、本日のテーマであります化学物質過敏症について質問したいと思います。
最近はもう少し広い意味で環境過敏症とも言われておりますが、大量に、あるいは微量でも化学物質に長時間繰り返し暴露されたことで、ごく微量の化学物質に対しても不快な症状を示すようになる疾患。シックハウス症候群や、化学物質あるいは電磁波障害などがあって、化学物質過敏症の六割の方が電磁波障害の症状を訴えていること、また最近では柔軟剤などの香料が原因である香害が注目されているところです。患者数は百万人以上、予備軍も入れると一千万人とも言われているところです。
私自身は、二〇一七年の予算委員会の第六分科会で最初にこの問題を取り上げました。その後、厚労省もホームページでコーナーを設けて各省庁とのリンクを張ったり、各都道府県もホームページ上で何らかの情報提供を行っております。なので、前進がないとは言いません。しかし、依然として、周囲の人に理解されず、診察してくれる医療機関にたどり着けないまま、苦しんでいる方が多数いらっしゃるのです。
先月寄せられた相談を一部読み上げますので、どうか大臣、聞いてください。そして、用意されたいつもの答弁ではない、大臣なりのお答えをいただきたいと思うんです。
もうどうしていいか分からなくて、何度も何度も壊れそうになります。化学物質過敏症と電磁波過敏症の重度のものです。二十五年前から膠原病系の腰椎関節炎や脳脊髄液減少症、慢性疲労症候群で、体の痛みやだるさに起き上がれない日が週の五日くらいあります。四年前、東京のマンションで呼吸困難、激しい頭痛、目まい、心臓痛でいられなくなり、七十五歳の母に車椅子を押してもらい、山の中に引っ越し、ブレーカーを落とし、冷暖房なし、電気なしで、無農薬、無添加の生活を二年続けました。でも、そこに5Gの基地局やホテルの建設や、病院に行ってもWiFi、そして薬も化学物質ということで、行き場所がないと。壮絶なんですね。
大臣は、化学物質過敏症についてどのように認識されていますか。一日も早く標準医療を目指して、どこでも相談に乗れる体制や、せめて全都道府県に一つ以上の専門外来が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○後藤大臣 今、高橋委員から御指摘があって、化学物質過敏症で本当に悩んでおられる方が大変な状況にあるということについてはよく承りました。
御指摘の中で、化学物質過敏症について、例えば標準医療に位置づけてというようなお話がありましたけれども、この問題の難しさというのは、現時点では、どのような化学物質が関与しているのか、どのような体内の変化が症状を引き起こすのか、病態や発症メカニズムなど未解明な部分が多いというふうに考えています。専門外来と申しますのは、疾患に対して専門的に医学的な相談や治療を行う外来医療機関ということを認識しておりますけれども、化学物質過敏症については、いまだ確立した診断基準や治療法は存在していないという事態でございます。
このため、現時点において、各都道府県に化学物質過敏症の専門外来を配置する状況にはない、まずは病態の解明を進めることが重要であると考えております。化学物質過敏症の解明をしっかりと進めていくことが必要だということは痛感いたします。
○高橋(千)分科員 やはり全く同じ答弁でありました、残念ながら。気持ちは、大変だということは分かってくださったと思うんですけれども、答弁が全く同じなんですよね。
やはり、診断基準については一九九七年に北里大学の石川哲先生が既に作っておりますし、ICD10、国際疾病分類の対応標準病名マスターに既に登録されています。今年、三十年ぶりにICD11が改定されたところでありますけれども。
全国から患者さんが通っていた国立盛岡病院の水城まさみ先生が一昨年お亡くなりになって、先生を頼っていた患者さんの多くが行き場を失い、全国で数少ない専門医も次々リタイアをしているんです。本当に不安の声が寄せられています。でも、水城先生も元々は呼吸器の医師であって、最初から専門ではなかったわけです。やはり、当事者と試行錯誤して築いてきたと思うんですね。
それで、資料の一枚目ですけれども、日本年金機構が出している、障害年金の請求にかかる照会について。これは、化学物質過敏症照合様式とあります。過敏症の特徴、ごく微量の化学物質に反応するとか、多臓器にまたがるとか、原因物質、たばこの煙や殺虫剤や香水や芳香剤や、様々書いてくださっています。
こうした照合様式を作成した背景と、是非、周知徹底をお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○宮本直樹政府参考人 お答え申し上げます。
障害年金の障害等級の認定に当たりましては、傷病名にとらわれず、障害の程度について、日常生活能力や稼得能力によって個別具体的に判断しております。
化学物質過敏症につきましては、障害年金の認定に際して、障害の程度判定の参考となる検査数値等の異常が見られない事例が多く、障害等級の判定が困難であったことから、平成二十四年に、過去の認定事例を参考に、審査に当たって必要となる症状の重症度などの事項について主治医に照会をし記入していただく照会様式を作成し、診断書と併せて提出をいただいているところでございます。
これにつきましては、関係部局ともよく連携しまして、周知に努めてまいりたいと考えております。
○高橋(千)分科員 私は、これだけ詳細な照合様式が障害年金の認定にあるのだから、何年たっても診断基準がないという答弁はやめるべきだと思っているんです。逆に、診断基準が確立しなければ診察や相談さえも断られて、せっかく受けられる障害年金の申請に、診断書を書いてくれる医師がいないという八方塞がりの状態になっているんです。何としてもこれをこじ開けたいと思います。
それで、資料の三を見ていただきたいんですが、これは、児童のアレルギー疾患について保護者と学校、主治医などが理解を共有するために活用されている、学校生活管理指導表です。学校生活上の留意点、食べ物や、プールはどうかとか、常用する薬をどうかとか、大事な情報を医師が書き込むことになっています。
私は、前回の、二〇一七年六月の厚労委員会で、これを化学物質過敏症にも使えないかと質問したんですね。答弁は、一律にアレルギー疾患と同様の評価はできないので、代わりに保護者が記入する保健調査票というのがあるので活用したいというものでした。
確かに、保健調査票には自由記述欄があるので、家庭の要望も書きやすいかもしれません。でも、その後、化学物質過敏症の児童の状況がこれによってどれだけ把握されているのでしょうか。また、具体的活用例があれば教えてください。文科省に。
○淵上孝政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の平成二十九年六月の政府参考人答弁は、いわゆる化学物質過敏症の子供たちについても、保健調査票を活用するなどにより、学校、保護者、学校医あるいは主治医等と個々の症状について共通理解を持って対応することは重要なことと考えている旨を申し上げたものでございます。
この保健調査票と申しますのは、御案内のとおりかと思いますが、子供たちの健康状態とともに、健康上の課題などについて学校に知らせておきたいことなどを保護者等が記入するというものでございまして、子供に何らかの対応が必要な症状があれば学校での対応につながっていくということで、必ずしも、いわゆる化学物質過敏症に厳密に該当しない場合であっても、保護者さんの方からのお申出などを踏まえて柔軟に対応できる、こういうものとしてお示しをしたところでございます。
お尋ねの子供たちの状況の把握についてでございますけれども、いわゆる化学物質過敏症の原因や症状などが様々であると承知をしておりまして、現時点において、一定の何らかの定義などを設けまして対象の範囲を特定をして調査をするということ自体はなかなか難しいというふうに考えておりますけれども、他方で、現に症状に苦しんでいる子供たちに対して個別に丁寧な配慮を行っていくということは極めて大事なことだというふうに考えておりますので、私どもとしては、既に作成をしております対応の参考資料などを参考にしていただきながら、各学校で適切な対応をお願いしたいというふうに思っております。
また、具体的な活用例というお尋ねがございました。
学校において子供たちの症状を把握する端緒といたしましては、保健調査票ももちろんあるわけでございますけれども、それ以外にも、日常的な健康相談などで把握するということもございます。
教育委員会や関係機関からの聞き取りによりますと、例えば、体育館の塗装工事に伴って体調不良を訴える生徒の保護者からの求めに応じて体育館に換気扇を設置をしている事例ですとか、いわゆる香りについて過敏なお子さんに配慮して席の配置を窓際にするとか、あるいは、通常はいいんだけれども、学校に工事が入るような場合にはお子さんが過敏になるというふうな保護者さんからの元々の訴えに対して、工事に入る際に事前に情報提供するといったような事例があると承知をしております。
私どもとしては、様々な機会を捉えて、これまでも参考資料の累次の周知を図っておりますけれども、担当指導主事などの協議会などを通じて、事例の共有なども更に図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)分科員 現に大変な症状に苦しんでいる子供がいるということは認識しているというお答えだったと思います。私は、それをやはりもう少し網羅的に把握するべきだということを重ねて述べてきたわけなんですよね。
例えば、教科書のインクのにおいが駄目で天日干しなどの対応本を注文している生徒は、教科書協会が把握しているということで、前回質問しました。増えていると思いますが、二〇一七年と二〇二一年の数字でお答えください。簡潔に。
○淵上政府参考人 いわゆる化学物質過敏症の子供たちの教科書に関する対応本といたしましては、大きく三種類ございます。インクを使用しない全ページのコピー本と消臭紙のカバーで包んだ本、天日干し本の三種類あるわけでございますけれども、この三種類の対応本の配付実績でございますが、二〇一七年度では、小学校七十二名、中学校二十九名、高等学校十一名の合計百十一名でございます。直近のデータは、二〇二〇年度実績でございますけれども、小学校八十五名、中学校四十七名、高等学校八名の合計百四十名という状況でございます。
○高橋(千)分科員 二〇一七年が百十二名から二一年百四十名ということで、教科書一つとっても増えているということが分かると思うんですね。
資料の四を見てください。
令和元年度の養護教諭の職務などに関する調査です。配慮や管理が必要なアレルギー疾患を有する児童生徒はいるかに対して、八九・一%がいると答えています。非常に多いです。また、はいと答えたうち九四・一%が学校生活管理指導表を活用しているというんですね。
それで、厚労省のシックハウス症候群病態解明検討委員会のメンバーとして、環境過敏症の疫学研究に取り組んできた北条祥子尚絅学院大学名誉教授らの二〇一九年の調査研究でも、化学物質過敏症、やはり、何らかのアレルギー疾患のある人はシックハウスを起こしやすいとか、過敏症の患者の八四%が何らかのアレルギー疾患を持っているとか、特にアトピー性皮膚炎を合併している患者は強い反応状況を示す、こういう結果が出ているんですね。
実は、先ほど来答弁に紹介されてあります二〇一二年に文科省が作成した学校における化学物質における健康障害に関する参考資料、この中にも学校環境衛生基準の問題がありまして、「特に、アトピー性皮膚炎や気管支ぜん息をはじめとするアレルギー関連疾患の既往等があり、皮膚・粘膜の防御機能に障害ある者については、当該基準値を上回る濃度でのばく露が持続した場合、皮膚や粘膜の症状が増悪するおそれがある」ということで、化学物質とアレルギーとの関係を実は認めているんですよね。
だから、先ほどの私が言った九割近いアレルギー疾患がある子供がいる、この中に含まれているんじゃないかと。まずそのことを認めるべきではありませんか。一言で。
○淵上政府参考人 いわゆる化学物質過敏症につきましては、先ほども申し上げましたとおり、その原因、症状は様々であるということでございますので、現時点においてなお、それが具体的にどういうことなのかということを定義したり確定するということはなかなか難しいというふうに思っておりますけれども、先ほど来申し上げております子供たち一人一人の状況にきちんと寄り添った丁寧な対応をしっかり現場レベルで行っていただけるように、私どもとしても取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)分科員 子供の実態が深刻だということを認めていながら、肝腎のところを認めない、同じ答弁を繰り返しているということは、非常に逆に矛盾が生じていると思うんですね。
一言、厚労省に伺いますが、今回、学校生活管理指導表を出すに当たっては、これは医師の診断書と同じ扱いをするわけですので、料金がかかる。しかも、ばらばらだと。無料のところもあれば、五千円とか、もっと高いところもあるということで、養護の先生方からも要望が出ておりました。
この度、中医協の中で、この医師の情報料を保険適用にすることを検討されていると聞いていますが、どのようになるでしょうか。
○浜谷浩樹政府参考人 お答えいたします。
アレルギー疾患を有する児童等が安心して安全に学校等に通うことができるように、主治医と学校医等の連携を推進することが重要であると考えております。
令和四年度の診療報酬改定におきましては、中医協の議論を踏まえまして、アナフィラキシーの既往歴のある患者若しくは食物アレルギー患者さんにつきまして、主治医が学校医等へ学校生活管理指導表を用いて必要な情報の提供を行った場合につきまして、診療情報提供料として評価することといたしております。これによりまして、御指摘の料金のばらつきへの対応にもつながるものと考えております。
○高橋(千)分科員 一歩前進だと思うんですね。是非これを機会に、学校生活管理指導表の中に化学物質も加えることを御検討ください。本日、厚労省と文科省が同席しているわけですから、譲り合わないで、協議をしていただきたい。これは要望にとどめたいと思います。
そこで、国民生活センターは、消費者庁に伺いますが、二〇一三年、そして二〇一九年四月に柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供を行っています。その相談の特徴と、情報提供をどこにどのように行っているか、簡潔にお答えください。
○片岡進政府参考人 お答え申し上げます。
柔軟仕上げ剤のにおいに関しましては、国民生活センターが二度にわたって実施いたしました情報提供におきまして、例えば、柔軟仕上げ剤のにおいで頭痛や吐き気があるなどの相談が紹介されてございます。
これらの相談や国民生活センターが行った商品テストを基に、消費者に対して、商品選択に当たっては香りの強さの目安を参考にすることや、使用に当たっては過度な使用を避けるといった注意点を情報提供をしてございます。
また、消費者だけではなくて、業界団体であります日本石鹸洗剤工業会に対しましても、香りの強さの目安の表示や適正な使用量を守ることを促す取組を要望しているということでございます。
○高橋(千)分科員 具体の数字をおっしゃらなかったんですが、二〇一四年以降、九百二十八件の相談が寄せられて、五百九十四件が実際に危害を受けたということが出ておりますし、情報提供を行った二〇一三年から一八年に向けて、国内製造業の柔軟仕上げ剤の販売量が二十八・二万トンから三十七万トンと増加している。やはりここは非常に問題だと思うんですね。
業界団体の自主基準があって、適正な量をお使いください、周りの方に御配慮をと書かれているようです。ただ、御配慮をだけでは、ほぼ効力がありません。なぜなら、周りで困っている人がいるということが分からないのですから。
資料の五に、消費者庁、文科省、厚労省、経産省、環境省が連名で作った「その香り 困っている人がいるかも?」という啓発ポスターがあります。このポスターについて、香害の当事者からは、一歩前進ですが、健康被害としては認めていない内容で残念ですと言われました。確かに、下に書いてあるのは、「香りの強さの感じ方には個人差があります。」と。これだけなら、自己責任でしかないんです。
いわてCSの会のアンケートでは、家族が来ると洗剤のにおいがある、風下に立たない、ドアを開けないで応対する、入ってもらうが窓を開けて酸素吸入をしなきゃいけない。日々香りから避難をしなければならないんです。身近な人との関係でもそうなんです。困ったことに、介護施設やヘルパーさんの利用ができないという方がほぼ全員でした。八割が就労又は就学ができないと答えています。
理解されないために苦しむ、言い出せない。私は、少なくとも、マイクロカプセルや香りづけのためだけに使用する製品などは販売しないなど、規制を検討するべきだと思います。
大臣、先ほど紹介した北条先生らの調査でも、三十年疫学調査に取り組んできました、その中でシックハウス症候群を訴える人は減ったと言っているんです。それは、厚労省が二〇〇三年に保険対象疾患に指定して、建築基準法の改正など、住環境の改善につながったからなんです。つまり、同じように、取り除けば改善が見込めるんですよ。
そういう意味で、もう一歩踏み込んで使用禁止や限度基準などを検討するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○鎌田光明政府参考人 お答えいたします。
御指摘の業界団体の表示に関する自主基準、存じ上げております。我々としても、それに合わせまして、先生御紹介いただきました啓発ポスターを作成して、こういった方々がいらっしゃるということでマナーの呼びかけを行っているところでございます。
ただ、繰り返しで恐縮でございますが、化学物質過敏症、病態、発症メカニズムは未解明でございまして、特定の物質との因果関係というのは科学的知見が得られていないというものでございまして、まずは病態解明ということで、今現在その病態に関する研究を進めているところでございます。
○高橋(千)分科員 解明する気があるんでしょうか。未解明と何年も答え続けているというのはどういうことなのかと言わなきゃいけないと思うんですね。
内閣府に伺います。障害者差別解消法が昨年六月に改正され、合理的配慮が民間事業者にも義務づけられました。
前回の質問のときに、障害者の権利条約に基づき、「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」という定義に照らせば、化学物質過敏症も障害者差別解消法の対象になると答弁がありました。
今、全国三十五の都道府県でも条例を持ち、国も自治体も事例集などを公表しています。ただ、残念なことに、化学物質に関しての記述が見当たらないんですね。いわゆる身体、知的、精神、発達、難病などの名称には分類されなくても対象となるようにせっかく広く定義をしたのに、実際に内閣府の合理的配慮サーチを見ると、見事に障害ごとにしか書かれていないんです。どこにも入っていない。
そこで伺いますが、基本方針や障害者基本計画第四次の見直しの中に、化学物質過敏症を始めとする環境過敏症やアレルギー疾患などを一言加え、また、事例集に化学物質過敏症に対応した事例も加えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○難波健太政府参考人 お答えします。
障害者差別の解消のためには、国民のお一人お一人の障害に対する理解を促進することが重要だと考えておりまして、昨年六月に公布されました改正障害者差別解消法の施行におきましては、このような観点も踏まえつつ、現在、障害者政策委員会におきまして、政府の全体の方針である基本方針の改定に係る審議を進めていただいているところでございます。
引き続き、こうした基本方針の改定、あるいは、それと併せまして国民全体への周知啓発といった施行前の必要な準備をしっかりと行ってまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)分科員 団体の要望も前日届けさせていただいておりますので、具体的な検討を是非これからやっていただきたいと思います。
最後に、資料の最後に日医のニュースをつけております。化学物質過敏症について、原因、悪化因子は何か、どのような症状が出るのか。この中で、同じ物質を微量でも吸入することで症状が出るし、別の種類でも、つまり複数の原因物質になっていく、こういうことを書いています。
そこで、最後のところに「診断されて治療を始めるには、患者自身と医師が、「化学物質過敏症ではないか?」と気づくことが何より重要です。」と書いてくれている。本当にそのとおりなんです。
だけれども、今、スタートラインにも立てないまま苦しんでいる方たちがいるんです。さっき言ったように、いつまで解明しないつもりなのか。そのためのいろいろな事例が既に積み上がってきているんです。一歩前へ出るべきだと思います。
大臣、一言お願いします。
○後藤大臣 現在、厚生労働科学研究において、化学物質過敏症等の病態の解明に関する研究が進められております。
厚生労働省としては、まず、こうした研究の支援を通じまして、引き続き、病態の解明につきまして、科学的な知見の収集にしっかり取り組んでいきたいと思います
○高橋(千)分科員 今度こそ、未解明と言わずに解明をするんだという立場で頑張っていただきたいと思います。
そのことを訴えて、終わります。ありがとうございました。