開発の規制も含めて
水循環法改正案に高橋氏
(写真)質問する高橋千鶴子議員=2日、衆院国交委 |
地下水の保全と利用を水循環の中に位置付ける水循環基本法改正案が3日の衆院本会議で、全会一致で可決されました。日本共産党の高橋千鶴子議員は2日の衆院国土交通委員会で、地下水保全法(仮称)の検討やトンネル工事による地下水流出など、開発規制も含めるよう求めました。
地下水は、民法上、土地所有権に付随します。地下水の公共性をただした高橋氏に対し、発議者の小宮山泰子議員は「地下水も国民共有の財産で公共性が高い。法改正でさらに公共性は高まる」と答えました。
高橋氏は、JR東海が大阪府の摂津市との地盤沈下防止協定を無視し、同じ新幹線基地内にある隣接の茨木市から地下水をくみ上げた事例を紹介し、複数の自治体で流れる地下水は、自治体の条例だけではカバーできないと指摘しました。
高橋氏は、リニアの南アルプスを貫くトンネル工事で、地下水が大井川から減水する問題で、静岡県の求める「全量戻し」が不可能になっているとして、工事による地下水の流出・消失も、採取制限の対象とすべきだと指摘。小宮山氏は「事業による流出等は想定していないが、地域の実情に応じて、適正な保全、利用に必要な範囲で適切な措置はありうる」と答えました。
(「しんぶん赤旗」2021年6月2日付より)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
私も議連の役員の一人に加わらせていただきましたが、本改正に向けて精力的に議論を重ねてきた提案者の皆様、またフォローアップ委員会の皆様に心から敬意を表したいと思います。
早速ですが、まず与党提案者に質問します。
本法案は、国の責務に地下水の適正な保全及び利用に関する施策を加え、そのために必要な措置として、地方公共団体の条例制定を念頭に置いて書かれているかと思います。
既に、全国六百五十六の地方公共団体で八百三十四の条例、実に三五%が、何らかの地下水に関係する条例を制定しています。議員連盟としても、地下水保全法の制定を準備したこともあったと思いますが、改めて検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○津島委員 高橋委員に御質問いただきまして、ありがとうございます。
地下水については、これまで、全国的に共通する事項については、例えば工業用水法など、国法レベルでの規律がなされているところではございますが、基本的に、地下水が存在するその地下構造や地下水の利用形態が地域ごとに大きく異なるという特徴があることから、これまで、持続可能な地下水の保全と利用を図るため、地域の実情に応じて、地方公共団体が主体的に条例等による取組を行っているところでございます。
具体的には、地下水に関する課題についての共通認識を醸成することや、地下水の利用や挙動等の実態把握とその分析、可視化、水量と水質の保全、涵養、採取等に関する地域における協議やその内容を実施する、いわゆる地下水マネジメントが行われているものと承知をしております。
提案者といたしましては、このことを踏まえて、国が統一的な規制を行うよりも、まずは、引き続き、地域の実情に応じて、地方公共団体が行う地下水マネジメントの取組に対して支援をするということが有効であると考えております。この法案は、それを後押しするものとなっていると考えております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
地域の実情に応じてとお話がございました。可視化することや、自治体を超えたマネジメント、協議の場を設けていくというのはとても大事なことだと思います。趣旨説明の中にもあったかなと思うんですね。
ただ、地下水は地方公共団体の境界線を越えて流動しているにもかかわらず、条例が規制できる範囲が当該地方公共団体の範囲に限定されるために、効力が限界があると思うんですね。その点についてどう考えるか、伺います。
○津島委員 ありがとうございます。
高橋委員御指摘のとおりでございまして、地下水は複数の地方公共団体にまたがって流れている場合が多くございまして、他方、条例で規制できる範囲は、基本的には、その条例を制定した地方公共団体の行政区域に限定されるところでございます。
この問題について、地方公共団体からも、地下水に対する取組を行うに当たっては、関係地方公共団体や関係者等から成る協議の場が必要である、そういう御意見も拝聴しているところでございます。
これを踏まえて、今回、十六条の二において、国及び地方公共団体は、地域の実情に応じて、地下水の適正な保全及び利用に関する協議を行う組織の設置又はこれに類する業務を行う既存の組織の活用に努めるものとするとしているところでございます。
提案者としましては、この改正に基づき、地域の実情に応じ、関係地方公共団体や関係者等で協議を進め、地下水の適正な保全及び利用に取り組んでいただきたいと考えているところでございます。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
とはいえ、条例の規制について訴訟となったケースも少なくないと思います。
JR東海が大阪府摂津市と茨木市にまたがる東海道新幹線鳥飼車両基地で進める地下水の取水をめぐり、摂津市が地盤沈下のおそれがあるとして差止めを求めた訴訟が、二〇一八年三月八日、最高裁で上告が棄却され、市側の敗訴が確定しました。
一九六四年の新幹線開業後に、旧国鉄による取水で地盤沈下があったということで、摂津市が七七年に、取水を原則禁止する環境保全協定を旧国鉄と締結したものです。しかし、JR東海は車両基地内でわずか三%しか面積のないお隣の茨木市側で取水をしたために、一審では、協定は摂津市のみに限られるということで、負けたわけであります。高裁は、逆に、同じ車両基地を使っているということで、茨木市にも適用されると変更したものの、制限されるのは地盤沈下などの具体的な危険性が認められる場合に限るとして、対象外とされました。
これも、条例の規制が及ぶ範囲がその地方公共団体のみに限定しているためによるものだと思います。まさに、広域に流れる地下水の特質からいっても、矛盾するのではないかと思います。
そこで伺いますが、公水とされてきた河川水とは異なり、地下水は、土地所有権に付随するものとして扱われており、土地所有者等の裁量で利用できる環境に置かれています、これはフォローアップ委員会でも指摘をされているところですが。一方、循環する水は、国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものと水循環基本法には位置づけられているわけであって、この改正案によって、地下水の定義は見送った、じゃ、公共性ということについてはどのように整理されたんでしょうか。
○小宮山委員 現行の水循環基本法三条二項では、「水が国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いもの」とされており、地下水も水の一部であるため、国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものであることは、今回の改正前後を通じて変わりありません。
なお、今回の責務規定や基本的施策の改正は、このような地下水の公共性を前提とするものであり、今回の改正により、地下水の公共性が一層明確になったと考えております。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
民法二百七条は、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と定めておって、条例を運用する地方自治体では、法令が存在しないために訴訟リスクを抱えてしまうという課題があります。今言った、例に出したのも、まさにそのとおりなんですね。
制限に関わる法令なくして土地所有権を制限する行為というのは、憲法二十九条の財産権を侵害するおそれがあるということも課題であると、これもフォローアップ委員会の報告書にも書かれていると思うんですね。だから、改めて、地下水保全法が必要なんじゃないかなと思っています。
そこで、開発行為の規制についてはどうかということです。
今は取水について聞きましたけれども、取水ではなく、掘削によって地下水脈に影響を与える場合です。整備新幹線やリニア新幹線、高速道路などにつきもののトンネル工事において、掘削する際に地下水の流路に突き当たって流れを止めたり変更したりする、こうしたことを、公共団体の条例で定める地下水の採取の制限の中に含まれると見てよろしいのか、伺います。
○小宮山委員 ありがとうございます。
高橋委員の指摘は大変鋭いものがあると常に感じております。
今般、国及び地方公共団体の地下水に係る努力義務規定の例示として十六条二に規定した地下水の採取の制限については、地下水を何らかの用途に使用すること等を目的に取る行為をその対象として想定しており、事業に伴い地下水が流出するような場合については想定をしておりません。
もっとも、十六条二は、全体としては、国又は地方公共団体が地下水の適正な保全及び利用を図るため、地域の実情に応じ、必要な措置を講ずるよう努めることを規定しているものであることから、事業に伴って地下水が流出するような場合については、地域の実情に応じて、地下水の適正な保全及び利用に必要な範囲で適切な措置が講じられることはあり得るものと考えております。
○高橋(千)委員 あり得るものという答弁でありました。
やはり、事業者が地下水を活用するためでなくても、工事などにより地下水を流出、消失させるなどは取水と同様であって、やはり規制の対象とすべきだと思います。
今現実に起こっている、南アルプスを掘削し、トンネルを造るリニアの新幹線静岡工区、まさに静岡県が、大井川への流入が毎秒二トンも減るとして、JR東海に全量戻しを求めているわけであります。当初は全部戻すと約束したんだけれども、技術的には困難で、山梨、長野側へ湧水を流出せざるを得ない、完成後に戻しますよと言っているんだけれども、それには十年から二十年かかるというわけであって、それでは六十二万人の生活用水を守るということと非常に対立する問題である、水と生活を犠牲にすることはあってはならないだろうということで、やはりこの水循環基本法の改正がそうしたことにもしっかりと対応できるようにしていくべきではないか、このことを指摘して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。