国会質問

質問日:2021年 3月 23日 第204国会 本会議

流域治水関連法案 ダム依存から転換を

高橋氏が質問 衆院本会議

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(写真)質問する高橋千鶴子議員=23日、衆院本会議


 台風・豪雨災害の激甚化を受け、ダムと堤防主体の治水から、市街地を含む流域全体の治水に転換する流域治水関連法案が、23日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の高橋千鶴子議員が質疑に立ちました。

 同法案は、ダムと堤防による従来の治水対策が降雨量の大幅増で限界にきているとして、遊水池や雨水貯留施設の整備、浸水地域の開発規制、利水ダムの事前放流の拡大など、流域全体での対策へと見直すもの。共産党は、ダム依存から脱し、流域治水対策を強化するよう繰り返し求めてきました。

 高橋氏は、昨年の九州豪雨で氾濫した球磨川(熊本県)をめぐり、国土交通省が「川辺川ダムがあれば被害は軽減された」と発言したと指摘。地元は数十年にわたる議論の末、2008年に「ダムによらない治水対策」を決断したのに、ダムに固執する同省により河川整備計画がつくられなかったと批判しました。

 その上で、氾濫を受けた球磨川の治水対策案には、同省が不可能だと言い続けてきた河道掘削などが盛り込まれていると述べ、「12年前から対策を進めていれば、昨年の被害は軽減されていたのではないか」と国の責任を追及。赤羽一嘉国交相は、対策を「着実に実施してきた」と強弁しました。

 高橋氏は、「浸水被害防止区域」を創設し、開発・建築を規制することについて、「防災集団移転の際の自己負担分、移転元と移転先の地価逆転による不利益も考慮した支援策を検討すべきだ」と強調しました。
(「しんぶん赤旗」2021年3月24日付より)


ー議事録ー


    〔高橋千鶴子君登壇〕
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、流域治水法案について質問します。(拍手)
 近年、毎年のように甚大な豪雨災害が発生しています。
 昨年七月の社会資本整備審議会答申、気候変動を踏まえた水災害対策のあり方についてでは、二度C上昇までに抑えても、降雨量は約一・一倍、洪水発生頻度は約二倍と試算し、従来の管理者主体の事前防災対策だけではなく、集水域と河川、氾濫域を含む流域全体、流域の関係者全員参加で被害を軽減させる、流域治水への転換を提言しました。
 その具体策について、順次質問していきます。
 まず、治水計画等に将来の気候変動による降雨量の増大を見込むとしています。その見込み量をどのように試算するのか、工程と併せてお答えください。
 次に、ダム依存の治水政策からの転換について。
 国交省は、昨年七月の九州豪雨を受けた球磨川豪雨検証委員会の初会合で、川辺川ダムがあれば被害は軽減されたと発言しました。その後、蒲島熊本県知事が川辺川ダム建設を容認しました。
 川辺川ダムをめぐっては、数十年にわたる住民、有識者らの検討を経て、二〇〇八年、ダムによらない治水対策を決断しています。しかし、ダム建設に固執する国交省によって事実上棚上げされ、河川整備計画も作られていません。
 現在進められている球磨川流域治水対策プロジェクト案には、ダムによらない治水を検討する場で議論された意見や、国交省ができないと言い続けた河道掘削等も盛り込まれています。つまり、十二年前からこうした対策を進めていれば、昨年の被害は低減されていたのではないか。河川管理者である国の責任をどう考えるか、伺います。
 二〇一八年の西日本豪雨では、洪水調節を行った二百十三ダムのうち八ダムが、翌年、東日本台風では六ダムが、いわゆる緊急放流を行いました。昨年六月のダムの洪水調節に関する検討会取りまとめを受け、本案では、河川管理者、電力会社などの利水者による法定協議会を設置し、事前放流が可能なダムを増やすとしています。現在、事前放流が可能なダムはどのくらいで、どう増やしていくのか、伺います。
 また、ダムの洪水調節容量を広げるため、堆砂除去は有効です。緊急浚渫事業費を補助制度にする考えはないか、伺います。
 東日本台風では全国百四十二の堤防が決壊し、うち八十四か所が実は完成堤防でした。越流が主な要因とされ、決壊しにくく、決壊するまでの時間を少しでも長くする粘り強い堤防を整備すべきと答申でも明記されました。どのように進めていくのか、伺います。
 次に、流域治水の進め方についてです。先行している緊急治水対策プロジェクトでは、どのように住民参加を図っているのでしょうか。また、上流と下流の住民間の調整をどのように進めていくのか、伺います。
 法案では、流域水害対策計画を策定すべき特定都市河川を増やすといいますが、その趣旨を伺います。
 浸水被害防止区域を創設し、開発や建築行為について規制します。これまで、十分な情報提供がされないままの造成宅地の被害が多くありました。防災集団移転を行う際の自己負担分、移転元と移転先の地価の逆転による不利益も考慮した支援策を検討すべきではないでしょうか。
 法案では、民間の施設などによる雨水貯留浸透施設の整備を進めるため、補助や固定資産税減免を行います。一方、保水、遊水機能を有する土地を貯留機能保全区域として知事が指定しますが、ここにも固定資産税などの減免措置を考えるべきではないでしょうか。また、内水被害防止にとって重要な下水道の耐水化、老朽化対策の現状と今後の見通しを伺います。
 最後に、流域治水について、ある国交省幹部は、ある意味で治水政策の敗北とも受け取られかねない、河川部門の担当者には抵抗感を持つ人もいたと発言したとの報道があります。本音ですか。国交省こそが、従来の発想を転換し、流域全体で取り組む治水対策へちゅうちょなく取り組むべきです。
 以上述べて、質問とします。(拍手)


    〔国務大臣赤羽一嘉君登壇〕
○国務大臣(赤羽一嘉君) 高橋千鶴子議員から、まず、気候変動を踏まえた治水計画の見直しについてお尋ねがございました。
 気候変動について、河川工学や気象学等の専門家から成る検討会で御検討いただいたところ、今後は、気候変動を踏まえ、各水系の治水計画で目標とする降雨量は、過去の実績降雨より求めた降雨量の約一・一倍とすべきことが示されたところでございます。
 国土交通省としては、この検討会の結果を踏まえ、近年、大規模な洪水が発生した河川より、順次、治水計画の見直しに着手し、治水対策の加速化を図ってまいります。
 球磨川の治水対策についてお尋ねがございました。
 球磨川では、平成二十年度末から、ダムによらない治水の検討を開始し、平成二十一年度から、河道掘削、築堤、宅地かさ上げ等を着実に実施してきたところであり、昨年七月の洪水に対しても一定の効果はありました。
 しかしながら、昨年七月の豪雨では、戦後最大を大きく上回る洪水が発生し、未曽有の被害となったことを受け、再度災害を防止するため、本年一月に球磨川の緊急治水対策プロジェクトを取りまとめたところでございます。
 本プロジェクトでは、段階的に進めてきた治水対策に、更なる宅地かさ上げや流域対策等を追加するとともに、熊本県知事が三十回にわたり地元の御意見を直接お聞きした上で、地元の意向として御要望された流水型ダムの調査検討を盛り込んでいるところでございます。
 国土交通省といたしましては、被災地の住まいやなりわいの再建が一日でも早く実現するよう、緊急治水対策プロジェクトを全力で推進してまいります。
 事前放流の対象ダムと堆砂除去についてお尋ねがございました。
 事前放流の対象となるダムは、本年三月一日時点で、一級水系では、ダムのある九十九水系の九百五十五ダム全てについて事前放流の運用を開始しております。また、二級水系では、二百五十二水系の三百九十三ダムについて事前放流の運用を開始しておりますが、令和三年出水期までに、必要な全てのダムにおいて運用の開始を目指します。
 緊急浚渫推進事業の期間終了後の在り方につきましては、地方公共団体の取組状況などを踏まえ、検討する必要があると考えております。
 粘り強い河川堤防の整備に関する進め方についてお尋ねがございました。
 粘り強い河川堤防は、氾濫の危険性を解消することが当面困難で、決壊した場合に甚大な被害が発生するおそれがある区間において、越水した場合でも決壊しにくい構造に強化していくものであります。
 引き続き、強化に使用する材料や工法の信頼性、経済性等の評価を行うとともに、民間や大学の技術も取り入れながら、粘り強い河川堤防の整備を進めてまいります。
 緊急治水対策プロジェクトにおける住民参加についてお尋ねがございました。
 緊急治水対策プロジェクトは、甚大な被害が発生した河川において、再度災害の防止対策を取りまとめるものであり、河川の整備につきましては、河川法に基づき、上流、下流を含む住民の意見を反映させることとしております。
 さらに、プロジェクトに含まれるそれぞれの事業の実施段階においても、地域住民の皆様に丁寧に内容を説明し、御理解を得ながら推進してまいります。
 流域水害対策計画の策定対象となる河川の拡大の趣旨と、防災集団移転の際の支援策についてお尋ねがございました。
 特定都市河川の対象の拡大により、今後は、浸水被害防止区域において建築物の安全性を事前に確認できるようになるとともに、防災集団移転促進事業により、被災前に安全な土地への移転も可能となります。
 また、防災集団移転促進事業の実施に当たりましては、自治体において、移転元の土地、建物の買取りを行うほか、引っ越しの費用や移転先の住宅取得に係る住宅ローンの利子に対する支援を行っており、国がその費用のうち約九四%を負担する、手厚い支援制度となっております。
 貯留機能保全区域での支援策と下水道の耐水化等についてお尋ねがございました。
 貯留機能保全区域の指定に当たりましては、土地所有者への支援策も重要であることから、今後、関係省庁とも連携しながら検討してまいります。
 下水道については、耐水化が必要なポンプ場が現在約五割となっております。また、標準耐用年数である五十年を経過した下水道管路は、現在は約二万キロメートルでございますが、今後、加速度的に老朽化が進むと見込んでおります。
 このため、国土交通省といたしましては、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策を活用するなど、引き続き、必要な支援を行い、下水道施設の耐水化や老朽化対策を推進してまいります。
 流域治水に関する報道についてお尋ねがございました。
 御指摘の報道における発言につきましては私自身は承知をしておりませんが、いずれにいたしましても、気候変動の影響により激甚災害が頻発化する我が国において、国民の皆様の命と暮らしを守るため、国土交通省を挙げて流域治水を始めとする防災・減災、国土強靱化対策に全力で取り組んでまいりますことをお約束いたします。
 以上でございます。(拍手)


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