国会質問

質問日:2020年 11月 20日 第203国会 国土交通委員会

交通政策基本法・国土強靭化基本法

高速交通優先に反対 高橋氏

 交通政策基本法・国土強靭(きょうじん)化基本法改正案が24日、衆院本会議で賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。両基本法は、「国際競争力の強化」など大規模開発を推進する根拠にされています。改正案は、コロナ禍、豪雨災害の激甚・頻発化などを受け、交通施設のコロナ対策、労働者の処遇改善、赤字の事業者への財政的支援強化を盛り込む点で改善されています。

 日本共産党の高橋千鶴子議員は20日の国土交通委員会での質疑で、移動制約者の交通権・移動する権利の保障を明記する改正こそ必要だと提案。発議者の小宮山泰子議員(立憲民主)は「重く受け止める」と応じました。

 高橋氏は「基幹的な高速交通網」について「リニア新幹線、整備新幹線、東京外環道などの高速道路のことか」と質問。発議者の盛山正仁議員(自民)は「指摘のモードは含まれる」と認めました。

 高橋氏は、地域交通廃止の一方で、国民にニーズがあるかのように高速交通網を進めるのはおかしいと指摘。「高速交通網の形成」に当たっては、地域住民の理解・納得が前提であり、計画、工事の各段階で合意形成に努めるべきだと語りました。住民合意については法案に関する「決議」に盛り込まれました。

ー議事録ー

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 盛山提出者の「鉄道に対する公的関与」と題した論説を拝読しました。運輸官僚の経験をもとに、少子高齢化が進む我が国にあって、採算がとれる路線のみの鉄道輸送サービスを行うことだけで国民の移動ニーズに対応することができるだろうかと問題提起されていること、赤字路線にも国の財政支援をという趣旨が、今回の提案につながったものと考えます。この点は全く共感するものです。
 一方、新型コロナ感染拡大、近年の水災害等の激甚・頻発化のもと、地域公共交通の運行の維持確保が一層困難になっています。高齢者等増大する交通制約者の足を守り、地域経済社会の基盤を守るためにも、交通政策基本法に交通権、移動する権利の保障を明記すべきと考えますが、御意見を伺います。


○小宮山委員 御指摘の交通権や移動する権利については、交通政策基本法の制定時や平成三十年のバリアフリー法改正の際にもさまざまな議論がありました。また、同年十一月三十日の当委員会におけるユニバーサル社会推進法案の審議において、御党の宮本岳志委員から移動の権利について質問がなされ、提案者から、具体的な措置については、この法案が成立、施行された後、政府で検討されることと期待しているとの答弁がありました。
 移動の権利の法定にはケース・バイ・ケースの判断が必要であり、国、地方公共団体、交通事業者、そのほか全てが責任を負うことはできない等、問題があるため、国民のコンセンサスがいまだ形成されていないと考えられております。また、具体的にどのような権利として構成するのかといった問題や財源の問題など、さまざまな論点についても国民の合意形成が図られなければなりません。
 令和二年四月三日の当委員会におけるバリアフリー法改正のときに、私の質問において、赤羽国交大臣から、現状ではなかなか難しいとしかお答えできないですけれども、こうしたものが将来、継続的に検討しながらも、実態としてはしっかりとしたものを進めていかなければならないと答弁がありました。
 その上で、災害時における地域の公共交通の維持確保や、地域経済社会の維持発展のために、交通制約者を始め、地域住民の足を確保することが重要であることは、高橋委員の御指摘のとおり、重く受けとめております。本法案は、まずこうした点を明記するものと考えております。


○高橋(千)委員 小宮山提出者の、もとの党が出した法案、交通基本法の中でこれが盛り込まれていたものでありますし、それからもう大分時間がたっているということで、議論をするときではないか、このように思っております。私自身も、ことし四月の地域公共交通活性化再生法の質疑の中でも、このことを指摘をさせていただきました。
 それで、続けますけれども、法案第十六条に、「人口の減少その他の社会経済情勢の変化に伴い、国民の交通に対する需要が多様化」とあります。この「需要が多様化」とは具体的に何を指しているのか、伺います。


○小宮山委員 御質問ありがとうございます。
 「交通に対する需要が多様化」するとは、例えば、少子高齢化の進展などにより、より柔軟な通院を可能とするコミュニティータクシーの需要が高まることなどを想定しております。
 第十六条の改正は、そのような状況においても、従来から通勤通学を含めた人の移動の基礎となってきたバスなどの基本的な交通手段が淘汰され、その利用者の移動が制限されることのないよう、交通手段の確保そのほか必要な措置を講ずることを明記したものでございます。
○高橋(千)委員 今御説明いただいた、例えばコミュニティータクシーなどは、先ほど私がお話しした地域公共交通活性化再生法の問題のときにも議論したわけですけれども、逆だと思うんですよね。やはり、基幹的なバスですとか地域鉄道とかが廃線になったり、そういう中で、その代替策として生まれてきたものじゃないか。だから、柔軟とは言えるかもしれないけれども、それはニーズではない、それは違うんじゃないかと指摘をしたいと思います。
 それで、この趣旨に近い条文、趣旨というのは、移動する権利に近い条文として、第二条には、「国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図るために欠くことのできないものであることに鑑み、将来にわたって、」「国民その他の者の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要」と明記をされています、第二条に。この条文は、さわっていないわけですよね。
 国民のニーズが充足されるということを書きながら、一方では、今回、多様化していると書くというのはいかがなものか。地域公共交通の審議でも指摘したとおり、路線バスは、この十年間で一万三千キロが廃止され、地域鉄道は、二〇〇〇年以降、八百九十五キロ、四十一路線が廃止されました。むしろ、多様化ではなく、地域公共交通へのアクセスが困難になっている方の方がふえているのではないかと指摘したい。
 そこで、交通政策基本法第二十条の「地域の活力の向上に必要な施策」として、「基幹的な高速交通網の形成」を追加しています。この「基幹的な高速交通網」とは何か。リニア中央新幹線、整備新幹線、東京外環道などの高速道路を指すんでしょうか。


○盛山委員 高橋先生の今ほどの御指摘、大変重く受けとめたいですし、交通輸送サービスをどのようにいろいろな形で維持するのかということで我々はこの法案を提出したということを、ぜひ御理解賜りたいと思います。
 その上でお答えしますが、先ほどの岡本先生のところでも御質問にもお答えしたところでございますが、この第二十条の改正の趣旨といいますのは、地方の都市の活力、これを衰退させないようにするためのものでございます。そういう点では、新幹線、高速道路、空港、こういったものも含めての高速輸送サービスの存在というのが、地域の活力を高めるために不可欠であると考えております。
 新たに、今回、「基幹的な高速交通網」としてございますけれども、これは、若年層の流出を防いで地域社会を維持し、更に地域社会を発展させることに資する高規格の道路、鉄道などを想定しております。
 御指摘のとおり、地域間の人や物資の移動を容易にするとともに、在来の道路、鉄道等ではなく、高規格のインフラ、輸送サービスが提供されることで、簡単に被災することなく、災害時においても代替輸送等のルートとして機能することが期待されている高規格の道路、鉄道、空港、港湾の整備、これが地域社会の維持発展に重要な役割を果たすと考えておりますので、先生が御指摘のモードについては、含まれるというふうに考えております。


○高橋(千)委員 含まれるということでありました。
 先ほどからの続きで、やはり国民の需要が多様化という条文も、まさに今私が指摘したようなリニアも新幹線も、さまざまにと読むことができると思うんです。もちろん、新幹線も高速道路も全部反対と言っているんじゃないんですよ。だけれども、御存じのように、それが住民の中で大きな争点になっている、反対になっているというものがあるんだということはお認めいただきたいと思うんですね。
 北海道新幹線の札幌延伸が進む一方で、ことし五月に廃止した札沼線、九月に廃止合意された日高線など、在来線、駅の存廃問題に揺れている。つまり、生活の足は失われるけれども、大都市へのアクセスだけが延びていく。これが本当に正しい姿なのか。住民の反対運動があったり、利用者が少ないとはいえ、住民にとっては重要な足である。そういう深刻な問題が実際にあるわけですよね。そこを振り切っていく、そういう法案であってはいけないと思うんです。
 そこで、高速交通網の形成に当たっては、今言ったような地域住民の理解、納得が前提だと考えます。事業の必要性や工事の進め方について、計画段階あるいは工事段階でも、各段階で住民等関係者との合意形成に十分努めるべきだと考えますが、伺います。


○小宮山委員 先生の御指摘はごもっともだと思いますが、高速交通網の形成は、国、地域社会の維持及び発展を図るものでございまして、御指摘のとおり、事業を進めるに当たっては、地域住民の理解や納得が得られるよう、計画段階や工事段階において地域住民等関係者との合意形成に努めていくことが重要と考えております。


○高橋(千)委員 残念ですが、時間になりましたので、これで終わります。
 ありがとうございました。

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