司令塔の役割果たせ/高橋議員、復興庁の後継組織で質問
日本共産党の高橋千鶴子議員は14日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、復興庁廃止後の後継組織が「司令塔」としての役割を果たすべきだと主張しました。
8日に閣議決定された復興に関する新たな基本方針には、2021年3月末までに廃止される復興庁の「後継組織」設置の方針が示されました。高橋氏は、同庁が「勧告権」を行使したことがあるかと質問。渡辺博道復興相は一度も行使していないと認めました。
高橋氏は、安倍晋三首相が記者団に述べたように後継組織も「司令塔」としての役割が求められるとして、復興・創生期間後も被災3県の市町村に人材確保支援を行うかと質問。渡辺氏は「すべては人だ」として、全国知事会などに要請していると説明しました。
高橋氏は、宮城県保険医協会が石巻市内の医療機関に行った原子力災害時の避難計画についてのアンケートで「屋内退避の条件が整っていないベッドは7割」「転院先医療機関が確保できていない」などの結果が出たと紹介。医療機関だけでは避難計画はできず、「国として実態把握すべきだ」と主張しました。
山本哲也内閣府政策統括官は、病院の避難には「特別な配慮が必要」「実効ある体制ができているかしっかり確認していきたい」と答弁。高橋氏は現実的避難計画がなければ「再稼働できないと考えるべきだ」と述べ、宮城県の女川原発再稼働を問う県民投票条例要求署名が11万人以上に達しており、民意に従うよう要求しました。
(しんぶん赤旗 2019年03月19日付より)
ー議事録ー
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
東日本大震災と原発事故から八年が過ぎました。改めて、犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表します。
三月八日、復興の基本方針が改正され、閣議決定されました。二年後の三月三十一日をもって廃止と法定された復興庁の後継組織が最も注目されていましたが、被災三県の首長らは、被災地の要望が通ったと評価をしています。私的には、具体の検討はこれからということで不満を持っておりますけれども、まずは大臣に認識を伺いたいと思います。
復興庁設置法第八条には、「必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができる。」とあります。これまで何らかの勧告を出したことが復興庁はあるのか、あれば、その回数とテーマを教えていただきたい。
そして、資料の一にあるように、復興庁は、内閣官房と内閣府の間にあり、他の省庁との横並びではありません。連絡調整だけではなく、勧告の権限もあることは復興庁の大事な役割と思ってきたが、それが果たされてきたと言えるんでしょうか。
また、後継組織にあっても、復興大臣の、まあ、何という大臣になるかはまだわからないんですけれども、権限はそうあるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○渡辺国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。
まずは、復興庁設置法において、関係行政機関の長に対して勧告することができるというふうにありますけれども、この勧告についての、勧告権を行使したことがあるかという御質問でございますが、これは今までありません。
しかしながら、復興庁が勧告権を背景とした総合調整機能、権限を持っていることにより、各省庁の縦割りを排し、円滑な調整を進めることができると考えているわけであります。
以上です。
○高橋(千)委員 資料の二枚目に、これは被災三県の地元紙が安倍総理にインタビューをしたものですけれども、「政治の責任で復興完遂」ということで、この中に、三段目に傍線を引いてありますけれども、「現在と同様に司令塔として省庁の縦割りを排した組織を置く。」と明確に答えているわけですね。ですから、私が先ほど読み上げた第八条の精神というのは残すという意味で言っていると思うんですよ。だけれども、八年たったけれども、今までもやっていない。やはり、その立場は、もしかしたら縮小されたりいろいろなことがあったとしても、復興庁を置いたときの趣旨というのは忘れてはいけないんだということ。
だから、何をやるにしても、結局、いやいや、建設のことだったら国交省に聞いてくださいとか、そういうことが何度もあったものですから、これは私、後継組織と地元は歓迎しているけれども、あえて今そのことを指摘させていただきたいと思います。
そのことを含めた上で次の答弁をお願いしたいんですけれども、資料の三に、被災市町村が要望した人材確保、これに対してどれだけ応えてきたかという表を載せております。
色がいろいろついていまして、必要数が赤なんですが、自治法派遣、市町村任期付職員、復興庁スキーム、その他、このその他のところは、例えば任期つき職員として雇用した方たちが正職員になった、そういうものなども含まれているということでありますし、充足率が九二・五%ということで、八年たって、直後にまずは応援職員というところから始まって、ここまで続いてきたということは非常にありがたいことだと率直に思っております。
同時に、各県がどんな人材を求めているのかという内訳を、三県ずつ、それぞれつけております。細かいので全部はあれですけれども、見ていただきたいと思うんです。
これを見ていきますと、やはり、岩手でいうと陸前高田、宮城は石巻、福島は南相馬というように、被害の大きかった自治体ほど多くの支援を求めているのが見てとれると思いますし、その職種が土木、建築というふうな、ああ、それはそうだよなと思うところと同時に、保健師が特記されているということはすごく注目をいたしました。
これは、三・一一の当日の前後に報道が随分ありまして、復興公営住宅の孤独死がふえているというのがありました。やはり、今も強調されているように、心のケアだとか、それだけではなく、体力の低下、運動能力の低下、そんないろいろなことでもきめ細やかな対応が必要だ、そういうときにも大事な役割を果たしてくれるという意味で保健師さんが必要だという声が上がっているんじゃないのかな、こういうふうに思いました。
こうして見ると、これらの仕事というのは、復興・創生期間とともに、じゃ、もういいねというわけにはいかないわけで、自治体の要望に応じて、必要なところへの人材確保にはこれからも国費支援を続けていくということでよろしいか、確認したいと思います。
〔委員長退席、冨樫委員長代理着席〕
○渡辺国務大臣 復興・創生期間後においても、復興に必要な事業が継続する限り、これは全て人の問題でありますので、人材の確保は大変重要でございます。被災自治体の人材確保については非常に重要だという認識を私自身も持っております。
そして、そのために、復興庁は、総務省やその他関係省庁と連携しながら、全国の自治体からの職員派遣、さらには被災自治体による任期つき職員の採用、それから、復興庁において非常勤の国家公務員を採用して被災市町村に駐在させる取組等によって人材確保を行っているところであります。特に、自治体からの職員派遣や任期つき職員の採用等に関する経費については、全額国費で負担をしているところでございます。
また、私からは、直接、全国知事会の場で職員の派遣の継続や協力の要請を行ってまいりました。関係省庁と連携して、知事会に対して文書による依頼も行ったところでございます。
今後とも、復興・創生期間内においては、関係省庁と県とも連携しながら、引き続き、全額国費で支援することを含め、さまざまな形で地域の実情に応じた人材確保に取り組んでまいりたいと思っております。
また、閣議決定した復興の基本方針でお示ししたとおりでございますが、人材確保対策に係る支援は、復興・創生期間後も対応の検討が必要な課題であると認識をしておりますので、今後、具体的なあり方を検討してまいりたいと思います。
〔冨樫委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋(千)委員 今、大変力強い答弁だなと思ったら、最後に引き続き課題であるという表現をしたので、あ、そこはまだ課題なんだと思ってちょっとどきっとしたんですけれども。
ここは国が強力なメッセージを示していかないと、自治体の方でも、ああ、国は積極的にそうではないんだということが伝わってしまうと、どうしても必要ですということを言いにくくなってしまうわけですから、それはもう必要だというのがわかる、必要なものにはちゃんと応えていくということは、やはり大臣の決意としてお答えいただきたい。
一言お願いします。
○渡辺国務大臣 認識の、人によって評価がちょっと違うということでございますけれども、私の決意は、やはり復興をなし遂げていく、そのためには人が必要だということは私自身申し上げているとおりでございまして、さらに、これは、今後について具体的なことはこれから検討するということは、当然のことだと私は思います。
ただ、私の決意としては、人の必要性は、本当に必要だということは申し上げたいと思います。
○高橋(千)委員 どんな事業でも人がいなければということで大臣の決意を伺ったと思っておりますので、これが期間で区切られるということがないように強く要望したいと思います。確認させていただきました。
次に、今の三県のやつを繰っていただいて、資料の七を見ていただきたいんですけれども、「地域防災計画・避難計画の策定と支援体制」という内閣府防災からいただいた資料をつけておきました。
これは真ん中のところに、内閣府、そのうち原子力防災担当が支援、支援という矢印が出ているわけですけれども、県や市町村がそれぞれの防災計画、避難計画をつくる、あるいは地域ごとの緊急時対応をつくる。この中で、どのような支援を具体的に、あるいはかかわりをしているのか伺いたいと思います。
○あきもと副大臣 お答えいたします。
原子力災害にかかわる地域防災計画、避難計画は、内容の具体性や実効性が重要であると認識しております。
その具体化等を進めるに当たりまして、関係自治体のみでは解決が困難な対策等もございます。このため、地域原子力防災協議会を設置しまして、関係各省とも連携し、政府を挙げて、地域防災計画、避難計画の具体化そして充実化に向けて、財政的な支援を含め、関係自治体を支援しております。
その上で、地域全体の避難計画を含む緊急時対応につきましては、地域原子力防災会議において、原子力規制委員会が策定する原子力防災対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることを確認するとともに、総理を議長とします原子力防災会議で承認することとしております。
○高橋(千)委員 今、副大臣がお答えいただいた、具体性、実効性が重要であるということ、それから自治体のみでは困難であるということは、私は全く同じ問題意識を持っています。それが現実にそうなっていないということで、どうするのかということをきょうは伺いたいなと思うんですね。
資料の八なんですけれども、これは「「緊急時対応」の取りまとめ状況」ということで、印のついている、できていますというところが、果たしてそれが十分なのかということの検証はまた別途必要だと思いますが、本州全体が空白に、まだできていないとなっておりまして、これはそれだけの苦労、できない理由があるんだと思うんです。
資料の九を見てください。
宮城県が、女川原発のUPZに立地する病院、有床診療所の数並びに避難計画の策定状況をまとめたものであります。
これはUPZ圏内、大体三十キロ圏内、石巻市、東松島市、登米市、女川町と四市町が入るわけですけれども、二十機関二千百九十六床が対象となるわけなんですね。そして、その中で、策定状況が十六機関、四機関だけがまだ未策定であるということが書かれております。そうすると、それなりに進んでいるのかなというふうに思うわけですよね。
だけれども、この状態に対して、宮城県の保険医協会が、最後のページにあるようなアンケートをとりました。そして、実際に、受入れ体制、いざというときに避難する先の体制が確保できていますかとか、引率体制ができていますかとか、県とかいろいろな機関との調整ができていますかとか、さまざまなことをこのアンケートで聞いているわけなんです。
そうすると、回答がいただけたものが、石巻市内に絞ってやったものですから、回収が五割で、六医療機関、千百十二床なんですけれども、避難計画は策定はされているんだけれども、県や医師会等々の関係機関とあらかじめ連携するということになっているんだけれども、情報が入っていないとなっている。
あるいは、屋内退避について、要するに、原発に一番近い、PAZのところはばっと避難なんだけれども、それ以外のところはまず屋内退避となっていますよね。そのときに、県のガイドラインは、「一般的に遮へい効果や建屋の気密性が比較的高い」、そういう中での「コンクリート建屋への屋内退避が有効である。」と書いているんです。
ところが、そういう構造になっていない、未整備というところが、ベッドでいうと七割なんですね。避難の引率体制がとれていないのが、ベッドでいうと九割が、どこに行くか、引率がとれる状態じゃないですよという答えになっている。転院先、避難先は、調整中の一件を含めて全件が未確保、まだ確保できていないというふうなことになっている。
こうした実態は、ガイドラインはあるんだけれども、受入先を自力で見つけてください、こういうふうな医療機関任せになっていて、実際は、現実的でない、できないだろうなと、まさに実効性がないという印象を持ちました。
やはり、これは国としても実態把握をするべきではないか。その実態把握といったときに、できています、何割できていますというのではなくて、何ができて何ができていないのか、なぜできないのか、どういうプランをつくっているのか、そこまで踏み込んで把握をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○山本政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘の女川地域につきましては、先ほど副大臣から答弁ありましたように、女川地域の原子力防災協議会というものを設置しておりまして、その枠組みのもとで、宮城県やあるいは三十キロ圏内にあります市町村、これは地域の実情をよく知っている自治体でございますので、こういう関係自治体と私どもが一体となりまして、地域防災計画、避難計画の具体化、充実化に向けた検討を進めておるところでございます。
こうした取組の中で、今御指摘のありましたようなUPZ内の医療機関についても、その避難をどうするかということにつきましても、関係自治体と連携しながら、実態の把握、それから避難先の確保などの検討、調整を進めているところでございます。
実態の把握という点では、先ほど先生がお示しいただいた資料のように、宮城県の調査によりますと、UPZ内の医療機関の数、病床数、これは、対象が二十機関、二千百九十六床になります。それから、避難先の候補となる医療機関、これはUPZ外になりますけれども、九十六機関、二千二百八十六床などの情報は私は得ております。
しかしながら、先生御指摘のように、病院に入っておられる方の避難に当たりましては、特別なやはり配慮が必要でございます。避難先においても十分なケアができる体制をとるとか、あるいは、その移動手段におきましても、その入居者の症状に応じまして、バスが可能であればバス、福祉車両が必要であれば福祉車両を確保する、そして、その必要台数がどうであるか、避難経路がどうであるか、そういったことを一つ一つ検討しながら、避難先や避難手段の確保のこういう課題にそれぞれ一つ一つ的確に対応できるように、そして、その結果をそれぞれの医療機関の避難計画、あるいは各自治体の地域防災計画に反映していく、こういう検討を進めていければと思っております。
そのために、私ども国もしっかり関与しながら、関係自治体とともに、さらなる実態把握の検討、調整を進めまして、地域防災計画、避難計画の具体化、充実化に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
○高橋(千)委員 今、お一人お一人にいろいろな事情があるからということをおっしゃっていただいた。そこはよくわかっていただいていると思うんですね。やはりそれは、女川に限らず、全国どこでも、今、避難計画をつくれと言われたときに、現実的じゃないんですよ。
平時であっても、そもそも医師も足りない、スタッフも足りないという状況が、今、全国で起こっているのに、もし、別に災害じゃなくたって、病院を引っ越すとなったらえらいことじゃないですか。もう一年かけていろいろな細かい計画を立てて、いわゆる酸素をどうするのかとか、点滴をどうするのかとか、そういう細かい計画を立てるわけですね。それをやって初めて引っ越しができるのに、それを災害のときにできる体制は本当にできるのかということでは、国が、今、関与してとおっしゃいましたけれども、きちんとそこも、国も確認をする、できているのかということでいいのですねということを確認したいと思うんです。
まず、そこをお願いします。
○山本政府参考人 お答えいたします。
先ほど申しましたように、地域協議会の枠組みがございますので、その中で、関係自治体でも検討して、そういう実効のある体制ができているかどうか、これをしっかり確認してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 やはり、原発の再稼働の判断と避難計画を切り離して考えるのは、私はだめだと思うんです。諸外国なら、本来はそれが条件になっている。
だって、規制委員会とも何度もやりとりしましたけれども、再稼働の条件になぜしないのかと。それは避難計画をつくることになっているからというんですね。でも、それが本当にできているかと現場に落としていくと、もう、現実的じゃありません、できませんと手を上げているような状態なんですよ。だけれども、つくれと言われるからとりあえず決めましたといっても、それじゃ絵に描いた餅になるわけですから、それが不可能なんだ、できないんだということや、そういう実態もちゃんと見ながら、やはりそこは、現実的な避難計画をつくれないというときに、再稼働を切り離さないで、それは再稼働はできないんだというふうなことを考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○あきもと副大臣 お答えいたします。
私の立場は、環境省の外局としての独立性の高い第三条委員会である原子力規制委員会を所管しまして、また、あわせて原子力防災担当副大臣も兼務している立場でございますので、再稼働の是非につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
○高橋(千)委員 宮城県では、十一万を超える県民条例を請求する署名が集まって、今まさに県議会で議論されています。判断する立場じゃないとおっしゃいましたが、県民の声が判断したとき、それに従っていただきたい、そのことを重ねて要望して、終わります。