国会質問

質問日:2013年 6月 12日 第183国会 厚生労働委員会

精神障害者福祉、保護者制度は廃止に

質問する高橋ちづ子議員=12日、衆院厚生労働委

質問する高橋ちづ子議員=12日、衆院厚生労働委

 日本共産党の高橋ちづ子議員は衆院厚生労働委員会で12日、精神保健・障害者福祉法改定案について質問しました。
 高橋氏が、精神障害者に対する保護者制度は一人の人間として扱わない差別法と指摘すると、田村憲久厚労相は「偏見が色濃くあった。他にない特異な制度なので廃止する」と答弁しました。
 高橋氏は、保護者制度を廃止したものの、医療保護入院に「家族等の同意」を残したことについて再検討を求めました。
 高橋氏はさらに、重症化を防ぎ、長期入院を防ぐためにも家族支援がカギだと提起。桝屋敬悟厚労副大臣は「基幹相談支援センターの設置なども進めていきたい」と述べました。
(しんぶん赤旗 2013年6月23日より)

 

―― 議事録 ――――――――――――――――――――――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、精神保健福祉法改正案に絞って質問をいたします。
 一九〇〇年、明治の時代につくられた精神病者監護法以来、法律の名前や一部改正はあったものの、変わらずに根幹とされてきた保護者制度の廃止を決めるものとして、関係者の期待は大きかったはずであります。
 昨日の参考人質疑でも、全国精神保健福祉会連合会の川崎洋子さんは、他の障害や疾病と違い、精神障害者のみに設けられた保護者制度は一人の人間として扱われない差別法と指摘をしており、非常に重いものだと思います。
 改めて、保護者制度廃止の意味について、国連障害者の権利条約に照らしても、保護者制度の廃止は待ったなしと思いますけれども、大臣の認識を伺います。

○田村国務大臣 この保護者制度でありますけれども、精神障害者に対する偏見が非常に色濃くあった時代、また医療や福祉サービスが脆弱であった昭和二十五年に、精神障害者に適切な医療、これを医療機関とつなげるという意味で創設をされたわけでございまして、そのような意味からいたしますと、他の疾患でありますとか、また障害等々にはない、そのような特有の制度であったというわけであります。
 今般は、例えば、精神科のデイケアでありますとか、また障害者総合支援法等々によりまして、福祉サービスというものがかなり充実をしてきておるわけでございまして、そのような意味からいたしますと、時代は変わってきておるわけでございまして、今委員がおっしゃられましたとおり、他の障害者の制度もしくは疾患等々にはないこの保護者制度というものに関して、今般の改正でこれを廃止するというふうに決めさせていただいておるという次第であります。

○高橋(千)委員 他の障害や疾患にはないのだということが差別そのものなんだという認識に立っていらっしゃるのかどうかということが伺いたかったわけでありますけれども、いかがですか。

○田村国務大臣 差別といいますか、今まで、そのような形で、保護者制度という、保護者の方々にしてみれば、これは過重な負担でありますし、精神障害者の方からしてみても、他の制度と違う中においてこのようなことが運用されてきておったわけでございまして、そういうものを今般廃止をして、他の制度と横並びにさせていただくということであります。

○高橋(千)委員 まずスタートラインに立つということだったと思うんですね、今回は。ほかとは違うものを取り払うんだということが関係者の期待であって、だから、その一点において、いろいろあるけれども渋々賛成をした、そういう御意見も昨日ありました。しかし、私は、本当にそういう気持ちをよく酌みながら、同時に、これから指摘をする、家族等の同意などが結局それに取ってかわることによって、その趣旨がそがれてしまうのではないかということをやはりあえて言わなければならないなと思っております。
 現在、精神科病床の入院患者数は三十二万三千人、そのうち医療保護入院は十三万千九十六人と言われており、その一割が二十年以上の在院期間、まさに七万人とも言われる社会的入院を解消し、障害、病気があっても地域で暮らせる環境づくりが急がれております。
 こうした中、厚労省の新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームが、第三ラウンドとして、二〇一〇年の十月から、保護者制度、入院制度について議論をして、昨年六月二十九日に取りまとめが公表されました。
 ところがであります。午前の質問で横路委員からも指摘があったように、このメンバーのうち十一名、ほとんどなんですけれども、資料の二枚目にあるように、ことしの五月十七日に、田村大臣宛てに意見書が出されております。まさに抗議とも言えるものであります。
 まず、最初の二段落目のところで、「「検討チーム」では、精神保健福祉法から保護者の義務規定をすべて削除すべきだとし、さらに強制入院としての医療保護入院を維持すべきだが、それを保護者の同意を要件としない入院制度に改めるべきだという結論を出しています。」、まず結論をきちんと確認をしております。
 そこで、真ん中の段落ですけれども、「現在の保護者の同意による入院の制度は、保護者と精神障害者との軋轢を生じさせ保護者の大きな負担となっている上、退院を事実上保護者の意思に依存させる結果となり、入院から地域精神医療への円滑な移行を妨げていると考えたのであります。」、それが趣旨だったということです。
 しかし、その下の段ですが、「「家族等」のうちの誰でも医療保護入院に同意しうるとされることによって、その負担を負う者は拡張される結果となっております。これは完全な逆コースであり、現在の精神医療福祉の矛盾をさらに拡大するもの」である。こういう大変厳しい指摘をしているわけですね。
 「どのような経緯でこのような改正案が作られてしまったのか、理解に苦しむ」と述べ、原点に立ち戻り再検討を求めているわけであります。
 副大臣にお願いしていますが、厚労省として、この意見書に対してきちんとお答えをいただけるでしょうか。

○桝屋副大臣 これは、ずっと議論をしてきたことであります。
 今委員から、保護者制度の廃止、せっかく多くの皆さんの声を受けて廃止したにもかかわらず、家族等のどなたか一名の同意、この要件があるばかりに、それが帳消しになったんではないか、こういう話でありますが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、保護者制度、これはやはり多くの皆さんの声を受けて実現したというふうに私は思っております。
 その上で、では、なぜ検討チームの報告を変えて、精神保健指定医一名の診断と、それから家族等のどなたか一人の同意というふうにしたかということでありますが、もう繰り返しになって恐縮ではありますが、これは、やはり一般の医療でもインフォームド・コンセントがますます重要視されているという中で、家族等に十分な説明が行われた上で、家族等が同意する手続を法律上明記すべきではないか、それから、本人の意思によらない入院を精神保健指定医一名の診断のみで行う仕組みは、患者の権利擁護の観点から見て適切かといった観点を踏まえて、新たに、家族等のうちいずれかの者の同意というものを要件とさせていただいた。こういうことでございます。御理解をいただきたいと思います。

○高橋(千)委員 資料の一枚目に戻っていただきたいんですが、今読み上げた意見書を出されたチームの代表の方である町野朔氏が、昨年の九月十日に、福祉新聞にこうした形で論壇を寄せているわけです。真ん中のところを読ませていただきますと、「保護者がこれからも精神障害者を支える存在であることに変わりはないが、実質的には一般の医療における家族と同じものになった。一世紀以上にわたって日本の精神医療法制の基盤の一つだった保護者制度は、実質的に終わったのである。」、こういうふうに、一世紀以上にわたるものが終わったのだと。そして、その上で、保護者制度改革は第一歩なのだと。これから地域に踏み出してさまざまなことをしなきゃいけないということを書いているんですね。
 ですから、これを書いたときに、まさか、ひっくり返るというか、想定していなかったと思うんですよ、九月に書いているんですもの。だから、今、五月にこうした抗議をしているわけでしょう。そういう何の説明もしていないわけですよ。ですから、今副大臣がおっしゃったようなことはもう十分議論をした上でこの結論を出したこと、それに対して、全く答弁にはなっていないということを言わなければならないと思います。
 今おっしゃった、指定医一名だけでは患者の権利擁護が図られないとか、十分な説明が足りないんではないかとか、そういうことは、それはもちろん議論されましたよ。その上で、検討チームとして、代弁者制度をあわせて提案をしていたはずであります。それが、参議院修正によって検討規定ということではなったわけですけれども、なぜそれがそもそも政府案に盛り込まれなかったんでしょうか。

○岡田政府参考人 今回の改正法案の内容につきましては、昨年六月の検討チームの報告を受けまして、厚生労働省内で、保護者制度を廃止するに伴いまして、医療保護入院の手続をどうするのか、それから、医療保護入院者の退院を促進するための措置について、法案化のための必要な検討を行った上で、そういう形での提案をさせていただいたところでございます。
 代弁者制度につきましては、検討会のチームの検討におきましても、家族であるとか、ピアの方になっていただくとか、さまざまな御議論がありますし、それから、どういう役割をしていただくかについてもさまざまな御議論があったということで、仮に法律上に位置づけますと、どういう方が何をやるのかというのを明確に位置づける必要があるというようなことでございますが、現段階では、そうしたものが関係者の中で合意が得られていないということで、今回見送らせていただいたということでございます。

○高橋(千)委員 いろいろ議論があったということを検討会が終わってから、だったらもう一度ちゃんと議論すればいいんですよ。それを、終わってから自分たちが直しておいて、全く違う結論が出てきて、それで、議論があったから仕方ないんだという理屈にはならないんです。
 イエスかノーかできちっと答えていただきたいんですけれども、本人の権利擁護のための仕組みとして、入院した人は、自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする代弁者を選ぶことができる仕組みを導入するべきであることについては意見は一致した、この点では間違いありませんね。

○岡田政府参考人 昨年六月の検討会のチームの報告では、そういう形でございます。

○高橋(千)委員 そのことなんですよ。要するに、まず一致しているんです。そこから先、誰がとか、どうかという、いろいろなことを今理由にしているけれども、一致したものについて触れていないということをまず問題にしている。そこが、まず一点、指摘をしたことであります。
 そこで、代弁者については、参議院で池原参考人が、先ほども議論が出ていますけれども、福岡県弁護士会で二十年近い経験が蓄積されていると。それで、精神保健当番弁護士制度というシステムを紹介しています。これについては、たった今聞いてびっくりではなくて、当然厚労省も知っていることであって、平成十年から十一年度の厚生科学研究である精神障害者の人権擁護に関する研究、こういうまとめがきちっとございます。詳細に報告をされています。
 簡潔に紹介しますと、当時、福岡県弁護士会会員の約三割が参加をして、七年間で延べ七百人の精神入院患者が退院とか処遇改善を求めて相談をしています。
 これは、七百人が多いか少ないかといいますと、人権擁護委員会への人権侵犯救済申し立て件数が年間約二十件前後と比べると、年間百件前後の入院患者だけの申し込みということでは、非常に多いと言えると思うんですね。それから、審査手続中に、もう解決しちゃった、取り下げちゃったというのも含めますと、退院あるいは退院予定だ、処遇改善、そういう形で審査会請求をした案件のうち、実に過半数が相談者の希望に沿う結果で終わっております。
 重要なことは、医師から見て、弁護士がかかわったことによるよい影響があったと答えているのが七割なんですね。また、保護者にとっても、社会に、この病気に対する偏見、差別、社会から置いてきぼりにされているこの病気への対処の仕方に新しいよりどころを得たような気がする、そういう前向きな評価がされているわけです。
 こうした実績が既にあること、しかも十年以上前にまとまっている。その上に、障がい者制度改革推進会議や今の検討チームの重ねてきた議論があることを踏まえれば、政府として、踏み込めない、一字も書けない、そういう理由はないはずですよね。大臣、どうでしょうか。

○田村国務大臣 今もお話があったわけでありますけれども、代弁者というものに関しては、議論の中で、こういうものが必要であるという一致は見たわけでありますが、ただ、問題は、その中身が全く詰まっていなかったということが、実は法律になかなか書きづらいということ。
 それから、今のお話の中で、福岡の弁護士の方々が協力されて、ボランティア、ほとんどボランティアだったというふうにお聞きいたしておりますけれども、そういう形で参画されて、代弁者になったといいますか、代弁者というような形で入院者の方々の対応をいただいた。これはこれですばらしい取り組みだというふうに私は思いますが、ただ、これを全国展開できるかどうか。
 それは、全ての地域で弁護士の皆様方がボランティアでやっていただければそういうものもできるのかもわかりませんけれども、当然、今ほど来の御質疑の中でも、これは有償化にすべきだというような御質疑もあったわけでありまして、そうなってくれば、これは大変な費用がかかる。さらには、十三万人とも言われております医療保護入院の方々に対して対応ということになれば、本当にかなりの弁護士の方々がここに参画をいただかなきゃならぬという話になってまいります。物理的にどうなんだという問題もあるのかもわかりません。
 そういうことを考えますと、まだまだやはり議論をしていただかないことには、そもそも、弁護士でいいと言う方もおられれば、ピアサポーターの方がいい、家族の方がいい、議論の中にもさまざまあったというわけでございまして、そのような中、なかなか法案の中にそのものを書くというわけにはいかなかったと。
 本当は、思いとしては、そちらの方に進めたいということで、これからも検討を進めていかなければならぬとは思っておりますけれども、しかし、今般の法律の中にはこれがなかなか盛り込むことができなかったというふうに御理解をいただければありがたいと思います。

○高橋(千)委員 別に弁護士と書けとは言っていないわけですね。代弁する人を本人が選べる、それが結論ですから。
 ボランティアでいいなんて言っていません。報告書の中できちんと、今はボランティアだけれども、有償にすべきだというふうに言っているんであって、全国展開をすべきです。
 これは、社会的入院を解消することによる経済効果から見たら安いものじゃないか、そういうふうに見るべきですよ。それが、十年前に出された報告書に対して、今さら、何も中身が詰まっていなかったというのは、やはり怠慢のそしりを免れないというふうに指摘をしたいと思います。検討規定が入ったわけですから、急いでお願いしたいと思います。
 そこで、入院するときは、家族等の同意が一人でもあれば入院させることが可能となる。しかし、退院については、保護者の引き受け責任もないかわりに、同意した者がその後について責任をとるわけではないわけです。そうすると、入院が必要ではなくなった患者の退院の決定について、また、退院後の生活についてはどのように決めていくのでしょうか。

○岡田政府参考人 精神科病院に入院しています精神障害者につきまして、退院できる状態にあるかどうかの判断は、基本的には精神科病院の担当医師が医学的判断に基づいて行うものだというふうに考えております。
 退院後の生活につきましては、保護者制度はなくなりましたが、家族が、他の疾病や他の障害の方と同じように、家族として精神障害にかかわっていただき、今回の改正で位置づけました、退院後生活環境相談員であるとか地域援助事業者などが、入院中から精神障害者の地域移行への取り組みを行い、退院後にアウトリーチであるとか障害福祉サービスが活用されて、そういうことの活用を通じて、精神障害者の地域移行を進めていきたいということで考えているところでございます。

○高橋(千)委員 家族がかかわっていただくという答弁があって、結局、ここに担保しておくのかなと。いろいろなトラブルがあったとき、また、最後の引き受けがないとき、そうしたときに、同意ということが最初にあったから、やはりここに最後に担保しておくというのがどうしても残るのではないかという懸念があるということをあえて指摘しておきたいと思います。
 そこで、先ほど大臣、大西委員とのやりとりの中で、病院管理者も、地域移行を促進するための義務を書いたんだとおっしゃいました。経営のために入院させておくものではないんだとちゃんと弁解をされたわけであります。
 確かに、三十三条の六に、病院管理者が地域生活への移行を促進するための必要な体制の整備とか支援の措置を講じなければならないと明記しているわけで、それが今の答弁とやはり関係してきて、ちゃんと病院の管理者がやらなきゃいけないわけですよね。
 では、そのためにどういうことが本当にできるのかということなんですけれども、やはり、この間ずっと公費負担で、措置入院があるからということで病床もふやしてきた、そういう負の遺産、長い一世紀の歴史という根深いものがあるわけですから、なかなか一遍にはいかないということが当然あるわけですよね。そこをまず見なければいけない。
 それで、簡単に聞きますけれども、指定病院在院患者の状況で、終日閉鎖病棟、これがどのくらいいるのか、それがふえているのかどうか、簡単にお願いします。

○岡田政府参考人 指定病院在院患者のうち、終日閉鎖をしている病棟にいる患者数は、平成十八年度が約十三・七万人であったものが、平成二十二年度には約十四万人となっておりまして、微増の状況にございます。

○高橋(千)委員 病棟は全体として減っているわけですよね。その中で、今おっしゃったように、閉鎖病棟と閉鎖病棟の入院患者はふえている、こういう実態があるわけです。やはりここに政治の問題というのがあると思うんですね。
 この間、ずっと、家族ですとか病院の側の意見があったんですけれども、働く側の、従事者の方の意見というのを聞かせていただいたんですけれども、本当に、病院の中に半世紀以上住んでいる人もいます。ですから、引き取り手は当然おりません。そういう中で何ができるかということが問われるわけですよね。
 昔歩いていた人が車椅子にもうなっている。当然、手が足りないです。高齢化で何らかの合併症があります。通院に付き添うことも必要ですが、それは看護ではないと言われるわけです。外泊訓練、院内散歩など、社会に出て生活できるために効果的なリハビリですけれども、その体制もありません。治療で改善が見られるよと告げると、家族からは一生面倒を見てくれる約束じゃなかったのかと言われて、本当に負担が大きいのに報われない、そういう思いを抱えています。
 これはもう歴史的に、精神科特例で、医師も看護師も一般病床より少なくてよい、要するに、何もしないで監視、拘束さえしておけばいいんだという思想が根底にあって、それが入院の長期化をつくってきたと言えないでしょうか。このことを認めるのかどうか。
 その上で、医療法における精神科特例をやめて、急性期のみに重点配分ではなくて、せめて一般病床並みの人員配置を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○岡田政府参考人 医療法施行規則では病院に配置します人員の標準を定めておりますが、その中で、精神科病院につきましては、医師、看護職員の配置につきまして、長期に入院される方が多いということもありまして、一般病床よりも低い療養病床と同等の配置基準とされているところでございます。
 一方で、精神病床といいましても、その有する機能にはさまざまなものがあることから、例えば、手厚い人員配置で急性期医療を提供する病床を診療報酬上評価するなど、精神科医など限りのある医療資源を有効に配置しつつ、早期の退院に向けた取り組みを行ってきたところでございます。
 今回の法案では、精神障害者の医療に関する指針を定める旨の規定を設けておりまして、この指針の中で、精神病床の一層の機能分化を進める上での急性期医療のあり方などについて、その方向性を示すことを考えているところでございます。
 指針の具体的な内容については、法律の改正後、速やかに関係者による議論の場を設けて検討していきたいと考えているところでございます。

○高橋(千)委員 長期だから人手が少なくてもいい、逆に言うと、人手が少なくてもいいということで長期化をつくってきた、そういうことを指摘しているんです。
 今後、地域移行を支援しなくちゃいけないわけでしょう、さっきから議論しているわけですが。それを、医師、看護師だけではなく、いろいろな職種で支えていくと言っている。だけれども、それも丸めで、要するに、今までの体制の中にそういう人が入ればいいというだけではなくて、上乗せしなければ、結局、望むような効果は得られないと思いますが、いかがですか。

 ○岡田政府参考人 今回の法律では、先ほども御説明しましたように、精神障害者の医療に関する指針を定めることにしていますが、その中で、精神病床の機能分化に関する事項などを定めるという形にしているところでございます。
 この精神病床の機能分化につきましても、昨年六月に検討会、先ほどの保護者制度の問題とは別の検討会でございますが、その検討会の報告書がまとめられておりまして、その報告書の中で、新規入院患者の入院期間が短縮傾向である一方、二十万人を超える長期入院者が存在しているという現状から、急性期では、一般病床と同等に精神科医を多く配置し、早期退院を前提とした濃密な精神科医療を提供し、他方で、長期入院の方については、精神科医は少ない配置にするけれども、精神保健福祉士などを十分に配置し、退院支援や生活支援に重点を置いた医療を提供することが提言されているところでございます。
 指針の具体的内容につきましては、先ほども御説明しましたように、関係者による議論の場を設けるなどで検討していきたいというふうに思っております。
 また、精神科病床の機能分化だけでなくて、アウトリーチであるとか多職種連携のあり方や入院の長期化を防ぐための方策などについても検討していくことにしているところでございます。

○高橋(千)委員 多職種で支えるということ、福祉をふやすということを悪いと言っているのではないですからね。それが結局、プラマイ・ゼロで体制は同じよというのでは意味がないんだということを重ねて指摘したい。これから具体的に指針をつくっていくということですので、具体的にぜひ大臣にも要望したいと思います。
 そこで、家族の支援についてなんですけれども、やはり家族への効果的な支援こそが、重症化を防ぐし、長期入院を解消する鍵だと私は思っています。
 それで、〇九年に家族と専門職の共働による早期支援・家族支援のニーズ調査というのがやられているんですけれども、やはり、家族の誰かが発症することで退職や停職を余儀なくされる方が四割、本当に家族の生活が一変してしまうわけですよね。家族関係が悪くなった、四六・〇%、自責の念に責められている、四八・七%、本人と一緒に死んでしまいたい、三七・八%など、本当に家族が追い詰められている実態が示されています。
 また、昨日の参考人質疑でも、家族の立場として、川崎洋子さんから、医療機関に連絡すると、まず連れてきてと言われる、それができないから本人も家族も引きこもるんだ、三百六十五日、二十四時間、気軽に相談でき、適切な情報が得られる専門的な支援が必要だということを訴えられていました。これについて、いかがでしょうか。

○桝屋副大臣 高橋委員からは、患者、それから特に家族への支援ということを言われました。もう個人的には、全く私もそのとおりだと思っております。強く申し上げたい。
 やはり、精神障害者とその家族の地域での生活を支援するためには、必要なときに、今委員おっしゃった、地域で迅速かつ十分な時間をかけて、医療と生活の両面にわたる支援を提供することが重要というふうに思っております。
 ただ、それが今日まで長き精神科医療の中でなかなかできなかった、そこを、昔からの精神病院の体質も変わり、援護寮をつくり、徐々にやってきて、やっとこの体制になったわけであります。
 平成二十三年度から、医療機関の医師、看護師、精神保健福祉士等の専門職がチームを組んで、必要に応じて居宅に出向いて訪問支援を行う精神障害者アウトリーチ推進事業、これをモデル事業として実施しております。
 これは、例えば私の地元の岡山なんかでも、既にそういう体制、モデルができ上がっているわけでありまして、そうした事例を参考に組んだものでございますが、受療中断者等の在宅の精神障害者やその家族に対して、二十四時間三百六十五日の体制により支援を行い、精神障害者の在宅生活の継続、病状の安定を図るものであるということでございます。ぜひとも、このモデル事業をさらに具体的に進めてまいりたい。
 さらには、障害者総合支援法、これで地域定着支援を法定給付化したということも御案内のとおりでございまして、今後、やはり地域に、一般相談支援事業あるいは特定相談支援事業などを行います基幹相談支援センターの設置もしっかり進めていきたいというふうに思っているわけであります。
 いよいよ、家族の高齢化や核家族化の進展などの社会環境の変化にも対応するため、こうした体制づくりにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに決意してございます。

○高橋(千)委員 さすが、副大臣の地元の岡山は飛び抜けて地域移行の支援が多いわけですが、まだ地域格差が非常に大きくて、ゼロのところもございますということで、桁も違うということで、それは本当に急がれることだと思います。
 最後に、やはり経済的な支援というのも非常に大きい。さっきのように仕事をかえるような事態も起こっているのに、家族が障害基礎年金だけで暮らしている当事者を支えているというような状況になっております。
 自立支援法改正のときから課題とされてきた自立支援医療、この負担を見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○田村国務大臣 自立支援医療に係る低所得者の利用者負担については、平成二十二年一月の障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国との基本合意文書、これは民主党政権時代でございましたけれども、この中において、当面重要な課題というふうにされたわけでありますが、その後も、予算の編成等々におきまして、やはりなかなか財源というものを捻出することができないということで、今に至っておるような次第であります。
 福祉サービスの方は本当に無料という形になったわけでありますが、しかし、低所得者に対して、自立支援医療の方はそうなっていないというような形でございますが、なかなかやはり財源のところは厳しいわけでございまして、この合意等々に関して、まだまだこれにそぐったような形になっていないということでございます。
 とにかく、財源というもの、我々は大変厳しい状況でやるわけでございまして、それは政権はかわったわけでありますけれども、このときの合意は合意であるわけでありますが、そう思いながらも、予算というものの中においてなかなか実現はできていないということでございまして、御理解をいただければというふうに思います。

○高橋(千)委員 やはり経済的負担という縛りがとれることで地域移行が進むんだという立場で提言をさせていただきました。
 家族のみに負わせていた負担を社会で担って、障害当事者が地域で暮らせるようにという目標を持っていたはずなんですよね。だけれども、社会保障制度改革推進法に社会保障は本人と家族の責任という趣旨が書かれていますので、やはりこの分野が押しつけられることになるのかな。そうすると、国連の権利条約の批准どころか、明治の時代に逆戻りになってしまいますので、やはり、この検討チームの原点に立ち返ってやり直すべきだということを指摘して、終わりたいと思います。

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