ちづ子へのエール住民とともに(質問のエピソードと会議録など)
政策と提案

東北の漁業を守り、発展をめざして(案)

【05年5月14日 日本共産党東北ブロック事務所】

日本共産党東北ブロック事務所と東北各県の県委員会は、14日開催した漁業シンポジウムを機会に、政策提言「東北の漁業を守り、発展をめざして」(案)をまとめました。今後、皆様からのご意見をふまえ充実させつつ、漁業関係者、住民のみなさんとの協力・共同のとりくみをつよめていきたいと考えています。皆様からの提言に関するご意見・ご要望をおまちしております。

 

1, かけがえのない漁業の存在

 ○東北の基幹産業  沖には豊かな潮流が流れ、複雑な海岸線と無数の河川をもつ東北地方は、地形的にも漁業の適地です。ここで先人の労苦や優れた技術が受け継がれ、漁業が発展してきました。その盛衰は、東北経済に直結するとともに、自治体や地域集落の維持・存亡にかかわるほどです。漁業は文字通り基幹産業です。

○食料供給に重要な位置  いうまでもなく、わが国は世界有数の魚食の国です。魚介類は、栄養のバランスのとれた食生活に不可欠な食料として、動物性蛋白質の4割を担うとともに、嗜好上もきわめて人気があります。世界的にも、魚食は増える傾向にあります。

消費者に安全・安心の水産物を供給する上で、東北6県合計で17,670(このほかに内水面漁業で1,100)を数える漁業経営が占める位置は重要です。都道府県別でみると、海面漁業(養殖含む)生産量では宮城が全国2位、青森が3位、岩手が7位です。岩手は、わかめ、あわびが1位、さけ・ます、うに、こんぶは2位、かきで4位の生産を誇ります。宮城は、あわび、わかめ、かきで2位、ほたてがいが3位です。青森のほたてがい生産は全国2位で、北海道に迫っています。

○多面的機能に新たな光  さらに漁業・漁村が、食料供給以外の多面的機能をもつことも明らかになってきました。昨年8月日本学術会議がとりまとめを行ったものです。陸上から放出される物質循環の役割、生態系の保全、海難救助など生命財産の保全、都市との交流や地域社会の形成、伝統文化の継承など、さまざまな機能に光があてられました。これらに対する国民的理解や支援策が課題になっています。

○「水産基本法」は施行されたが・・  しかし、我が国の漁業は200カイリ後の遠洋漁業の縮小、開発優先の漁場破壊、水産資源の衰退という状況に直面し、さらにその上に水産業のグローバル化による輸入の急増、バブル経済破綻後の経済不況が直撃しました。その影響は全国津々浦々に及び、漁業者の経営・生活の維持は、きわめて大変な状況におかれています。多くの漁業者が、「魚価が安すぎる。きびしい労働が報われない」と悲痛な叫びをあげています。この10年、東北で4,756の漁業経営がなくなりました。

4年前、漁業者が今後の望みをたくした「水産基本法」が制定されました。水産業の役割を法的に明確化し、「水産資源の持続的利用」による「健全な経営発展」をめざすものです。しかし、その計画にそった生産増大による自給率向上も漁業経営の改善も展望がもてる段階とはとうてい言えません。その積極的な目標や施策を実現させる努力をいっそう強めていかなければなりません。

○ともに力を合わせよう   漁業は、地域によって様々なので、とりくみはそれぞれ違いますが、大まかには次のような課題が重要と考えます。年金や医療・社会保障はじめあらゆる分野で深刻さが広がっています。農林業、中小企業も危機的な状況におかれています。日本の経済・社会は抜本的な改革が必要です。日本共産党はそのことをめざしつつも、ここではこと漁業を守り、その発展をめざして、党派を問わず、ともに協力を訴え、実現に奮闘するものです。

 

2,とりくむ課題

(1) 消費者への安心・安全

○水産物の冷蔵施設、衛生管理に配慮した施設整備をすすめるとともに、貝毒やノロウイルスなど自主的に行っている検査への支援措置を図る。また、これらリスクの除去を図る技術開発を国、県の責任ですすめる。

○生鮮水産物、水産加工品の原産地などの表示対象を拡大するとともに、行政による調査や国民監視の体制を強める。表示の徹底は、輸入食品の氾濫のなかで地域ブランド製品の販売拡大につながる。

○大都市圏対象の大口水産物出荷とあわせ、地域の学校給食をはじめ、地産地消のとりくみを支援する。魚食の栄養面での優位性などを普及する食育を推進する。

○漁業と車の両輪の関係にある地域の水産加工業について、地域の漁業との連携を強めること、消費者の需要にあった加工製品の開発、消費や販路の拡大などの支援を強化する。

 

(2)水産資源の持続的生産

○漁船漁業では、藻場の復活、海域条件にあった稚魚放流、資源保護のための操業規制など、水産資源の回復計画をたて推進する。秋田のハタハタ復活のようなとりくみを各地で推進する。養殖では漁場の環境保全に留意した生産につとめ、清浄な海域環境を維持する。

○国・県の試験研究体制を強め、これらの計画策定、推進を支援できるようにする。行政が責任をもって漁業調整をすすめ、大型トロールや巻き網については、資源の持続的利用や海底環境の維持の観点から見直し・調査を行い、必要な規制を強化する。

○資源回復、環境保全の推進のため、やむを得ず行う休漁、操業規制等には、経営や生活への支援策を講じる。

 

(3)漁業経営の維持安定

○地域の水産物のブランド化へのとりくみを励まし、販路拡大や宣伝、アンテナショップなどへの支援を強める。付加価値をつける加工品、新商品の開発を援助する。

○必要な魚種では、生産調整の自助努力を行いながら、豊漁の時に一時保管する生産調整保管事業を効果のあがるように改善することをめざす(買取価格の適正化、買取団体の放出時の損失補てんなど)。

○WTOの水産物交渉では、水産物の自給率向上に打撃を与えないように、一律的な関税の引き下げを阻止する。韓国との関係でノリIQ(輸入割当)制度がWTOに訴えられているが、この堅持とともに他の水産物に波及しないように全力をあげる。

輸入が急増した場合、生鮮水産物という特性に配慮し、敏速なセーフガードができるように、発動のしくみの改善を行う。また、IQの枠外になっている調整品も対象に含むこと、相手国の環境・資源を破壊・衰退させるような水産物輸入は抑えることができるようにする。適切な水産物貿易ルール確立が求められる。

○自然災害を被りやすい漁業では、とくに被災時の対策が不可欠である。漁業共済制度の掛金への助成や、償還金の支払延期など金融面での支援策を強める。漁場への流木や土砂の流入など復旧事業への国の対策を整備・強化する。始まったばかりの無担保無保証融資制度の拡充を図る。

 

(4)後継者を育てる

○漁業で食べていけるのか、心配なくふるさとに若者がIターンできるようにすることが対策の基本である。同時に、漁業外の就業者も確保できるような対策を強化する。これら双方を対象に、漁協や漁家、公的な機関などで研修したものへ生活や技術習得への支援策を確立する(青年漁業就漁援助制度)。

○地域の実態や合意に応じて、規模拡大や共同経営への希望に対しては、施設・漁船などへの助成を拡充する。

○漁業の魅力や重要性、役割などについて理解させる子供達への教育をすすめる。都市と漁村との交流行事を活発にする。

 

(5)環境保全とリサイクル

○海と山、川を一体のものとし、漁業者やボランティアによる広葉樹の植樹の運動を強める。また、大きな面積を占める国有林で、広葉樹伐採の規制や積極的な植栽・保育事業、針広混合林への誘導及び治山事業を強める。

○漁業廃棄物の処理・リサイクル化の試験研究を強め、これらの促進を図っていく。

○下水道、漁業集落環境排水事業、合併浄化槽への助成を拡充し、遅れている漁村での汚水・排水処理を促進する。

○漁業者・地域住民の浜辺や海、川のごみの清掃活動への支援をすすめるとともに、ヘドロ化など漁場環境が悪化したところでは、計画的な改善に取り組む。

 

(6)明るく住みよい漁村づくり

○漁業協同組合事業の発展や漁村づくりには、組合員、地域住民の知恵や意見を集めるよういっそう努力する。漁協合併についても、自主性・民主性の尊重、相互扶助など、協同組合の精神で大いに議論することが重要である。

○女性の労働や子育てなどでの条件の改善、家庭や地域での男女平等の向上にとりくみを強める。

○漁業集落と中心街へのアクセスの改善をめざし、必要な道路の整備、交通手段の確保に努める。遅れている下水道など、生活環境施設の整備を強める。

○海洋の監視、清掃事業、伝統文化の保存、都市との交流など、漁業・漁村の多面的機能に対する支援策を拡充する。本年度から新たに離島対象にできた離島漁業再生支援交付金を漁村一般にも拡大することをめざす。

○漁村が都市住民のレクリェーションの上で大きな役割があり、その見地からも魅力ある漁村つくりが大事である。また、生業としての漁業と遊漁との調整をすすめ、条件に応じ、遊漁を地域活性化に生かしていく。

○津波、地震等防災対策を強化し、地震発生による津波予知、住民への通報の迅速化、避難場所の確保などをいっそう発展させる。

 

(7)国際関係と漁業

○マグロの乱獲に対する国際的な資源管理体制が進んでおり、規制の網をくぐる便宜置籍船の廃止の方向をいっそう推進する。国際的な資源の保存・管理による減船には、補償措置の拡充を図る。

○日ロの漁業関係では、領土問題の打開をめざしつつ、ロシアの支配海域に出漁する場合に必要な入漁料、経費負担等に対して国の支援を拡充する。また、共同の資源を利用する実態からして、両国共同の資源状況調査や漁法、管理、栽培増殖の研究など、相互調査研究・管理体制を強化する。

○外国の漁場開発や資本投下による生産や我が国への輸出を行う場合は、生産方法や我が国漁業への影響などの情報の開示、相手国の資源の衰退や環境破壊に留意することなど、国際的なルールの確立をめざす。

 

(8)内水面漁業の維持・発展

○山村地域や湖沼における内水面漁業の維持・発展は、山里の活性化や観光資源としても重要である。外来魚対策や魚病対策を強め、生態系の保全・復元に努める。生育環境を破壊するダムやコンクリート護岸、道路などを環境面から規制する。海面漁業と同じく、資源管理や共同施設整備、販路拡大へのとりくみを支援する。

 

(9)水産予算の見直し

○漁港など水産公共事業は重要な役割を果たしたが、整備が進んだ今でも国の水産予算の公共、非公共の予算比率はほぼ7対3と変わりない。このため県、市町村の事業もむしろ国以上に公共(ハード)優先になっている。しかし、経営対策や担い手対策、試験研究・指導体制整備など非公共事業の要望が多く、地域の漁業に何がもっとも切実か、自治体や漁協の意見が反映されるよう水産予算の見直し、改善をめざす。

○公共事業では、とくに削減のしわよせを受けている零細な漁港整備や集落排水事業など要望の強い事業を優先する。地域・集落に必要な漁港、排水、道路、施設など、縦割りでなく一体的に自治体の裁量で行えるよう、予算を改善させていく。

以上

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