ちづ子へのエール住民とともに(質問のエピソードと会議録など)
政策と提案

東北地方の地震対策を抜本的に拡充するために─宮城県北部地震の教訓を生かし総点検と共同の行動を呼びかけます─

二〇〇三年九月八日

日本共産党衆議院議員      松本 善明

日本共産党東北ブロック事務所  高橋ちづ子

五島  平

佐藤 秀樹

日本共産党宮城県委員会委員長  中島 康博

[一]、宮城県北部地震の教訓を生かして、いつでもどこでも大規模地震が起こりうるという前提にたった防災対策に転換を

 

我が国は世界の地震の一割が集中している地震国で、気象台による観測が始まった一九二七年以降だけでも東北地方では震度五を超える地震が四十三回発生しています。北海道と並んで青森県に大きな被害を出した十勝沖地震(一九六八年)、ブロック塀の倒壊による犠牲者を生んだ宮城県沖地震(一九七八年)、地震発生直後の津波に襲われた日本海中部地震(一九八三年)などは記憶に新しく、約二万二千人が亡くなった明治三陸地震(一八九六年六月十五日)など複雑な地形をもつ三陸沿岸では地球の反対側のチリ地震による津波でも一四二人が犠牲者になっており、大規模地震と津波に対する備えは東北地方の住民の切実な願いです。

今年五月二十六日、岩手県・大船渡市や宮城県・石巻市で震度六弱を記録した地震が発生して港湾や住宅などに被害を出したのに続き、七月二十六日には震度六クラスのゆれを三度も経験した宮城県北部連続地震が発生しました。この地震は、負傷者が鳥取県西部地震を上回る六七四名に達し、住家等の被害も全壊一〇二九棟、半壊二二九八棟、一部破損八二三三棟の計一万一五六〇棟(九月五日現在、宮城県調べ)で、阪神・淡路大震災後の被害地震としては最大規模のものになりました。阪神・淡路大震災の死者の九割が建築物の倒壊によるものだったことから、個人住宅・公共施設・ライフラインの耐震化が叫ばれていたにもかかわらず、住宅、病院・学校などに大きな被害が発生し、地震対策がほとんど手つかずだったことが浮き彫りになりました。被災後の生活再建や住宅再建に対する支援策も、被災地住民にとって全く不十分なものにとどまっています。

こうした事態を生んだのは、大型開発を優先にして震災対策を後まわしにして、阪神淡路大震災の被災者が求めた個人被害への公的支援も拒み続け、東北地方における地震の観観測・監視体制を東海地方などと比較して大きく立ち遅れた状態にしてきた政治にその責任があります。政府は阪神淡路大震災後、活断層調査とそれにもとづく被害想定を鳴り物入りで進めてきました。ところが、鳥取西部地震(二〇〇〇年十月六日)に引き続いて宮城県北部地震も、政府が調査対象にしていない所で地震が発生して大きな被害をもたらしたものであり、特定の地震を想定した対策が、災害への備えとしてまったく不十分なことを示しました。今回の地震を教訓に、いつでもどこでも地震は起こりうるという前提に立った防災対策に転換することが求められているのではないでしょうか。

こうした立場から、地震の観測・研究や防災行政に関わる人、建築、通信、教育、輸送、放送、医療など防災や災害時の即応体制に関わる人をはじめ広範な市民の方々に、宮城県北部地震の教訓を生かして東北地方の震災対策を抜本的に拡充するために、現状の総点検と共同の取り組みを呼びかけるものです。

[二]、宮城県北部地震の被災者の生活を再建するための緊急要求

宮城県北部地震の被災地の要望に対応するために、個人被害に対する公的支援を拡充することをはじめ、政府のこれまでの政策を転換することが緊急に求められています。

災害の発生後、被災者の住宅と生活を一刻も早く再建することは、地域経済の再建はもとより、地域の復興をいち早く可能にするかなめです。阪神淡路大震災の被災市民は、五百万円の住宅再建と二百五十万円の生活再建資金を求め運動をおこしました。しかし政府・自民党は、投機に失敗した住宅金融専門会社や銀行には巨額の財政を支出して救済する一方で、「個人住宅は私有財産だから」という理由で被災者の住宅再建への支援は拒み続け、生活再建についても生活再建支援法の支援額を一世帯当たり百万円に縮小してしまい、その運用にあたっては所得制限等を設けて対象者も限定してしまいました。政府の姿勢が、宮城県北部地震でも鋭く問われるものになっています。

(1) 生活再建支援金を拡充して、住民生活の実態に合わない要件は改め、営業と営農も対象にする

現行の「被災者生活再建支援法」にもとづいて宮城県で初めて生活再建支援金が宮城県北部地震の被災者に支給されることになりました。しかし最高でも百万円と金額が少ないうえに、世帯主の年齢、世帯の収入合計額による制限があります。宮城県北部地震の被災は特別扱いされて一市七町が適用対象になりましたが、施行規則ではルームエアコンと電気カーペット(青森県と秋田県では電気ごたつも)が東北六県で「必要な経費」に算入されておらず、住民生活の実情に合わない問題点が浮き彫りになっています。

また、農家の被災者が多いため、作業小屋の補修や解体・撤去・建て替えなどの営農を続けることに関わる支援が必要になっていますが、現行の被災地生活再建支援法が農家の営農や自営業者の営業等を保障対象にしていない問題点が浮かび上がっています。

住民の生業が成り立つようになり、そこに住み続けることができなければ地域は復興しません。生活再建支援金は、ただちに支給要件を大幅に緩和して住民生活の実態に合ったものに改める必要があります。

「被災者生活再建支援法」は、法制定から五年後に見直すことになっており、日本共産党は、(1)当面の生活の維持への支援とともに、住まいの再建を支援対象とし、あわせて一千万円(上限)を支給する、(2)生活の基盤をなす農家の営農や中小業者の事業等の再建も支援対象とする、(3)有珠山や三宅島噴火災害のような長期の避難生活という事態にも、即座に支援金が支給できるようにする、(4)被災者の自立にとって大きな障害となっている既存ローンの負担を軽減する、などを内容とした法改正が必要だと考えています。

(2)政府が来年度予算に盛り込もうとしている住宅再建の公的支援制度は、宮城県北部地震の被災者に適用し、宅地の擁壁や住宅の解体も対象とし金額を引き上げる

政府は、来年度予算概算要求に、被災した住宅の再建を支援して一世帯最高二百万円を支給する新制度を創設する要求を盛り込みました。被災地生活再建支援法は、支援金の申請期間を「自然災害が発生した日から起算して十三ヶ月を経過する日まで」と定めており、来年四月から住宅被害に対する支援がスタートするのならば、宮城県北部地震の被災者を適用の対象にすべきです。また、住宅再建の前提になる住宅の解体や宅地の擁壁の補修・再建も支援の対象にしてより実効あるものにし、金額については生活の維持への支援と合わせて上限を一千万円程度まで引き上げることが必要ではないでしょうか。

(3)病院、学校など地域住民が最低限必要とする公共施設を再建するための国の支援

病院、学校、福祉施設など、地域住民が最低限必要とする公共施設の再建に関わる国の支援を実現します。

宮城県北部地震では、河南町の北村小学校が使用不能になり、建て替えることが決まりました。病院では、鹿島台町立国保病院(百十三床)が、老朽化していた北棟(八十一床)の柱や壁に亀裂が入って建て替えが必要になっていますが、約三十億円の資金が必要です。

河南町と矢本町による一部事務組合で設立している公立深谷病院も大きな被害を受け、さしあたり、医療機器購入や放射線棟・調理棟改築工事費、手術棟ボイラー工事費などの建設改良費に計三億九千万円を計上して病院機能の回復を進めています。しかし西病棟は使用不能で取り壊さざるをえず、病室の半分にあたる九十七床を失うことになりました。再建するためには六十~百億円が必要といわれており、国の特別の支援実現をめざします。

(4)がけ崩れ対策の改善

宮城県北部地震によるガケ崩れの被害で、今の制度では救済されないケースがあり、制度を改善して国の対策の適用範囲を拡大します。地震により家屋密集地区に被害を及ぼす可能性が高い「急傾斜地崩壊危険箇所」における「急傾斜地崩壊防止施設」の整備は、青森県六七・八%、岩手県三九・二%、宮城県一九・〇%、秋田県四七・八%、山形県五二・三%、福島県三八・〇%にとどまっています。とくに宮城県は、全国平均の三二%を大きく下回る一九・〇%にとどまっており、その対策を急ぎます。

[三]、大規模地震に備えるための―各県と市町村の「地域防災計画」の見直し、総点検と耐震化の推進を呼びかけます

地震の発生は防げなくても、被害を最小に抑えるのが防災対策です。しかし宮城県北部地震では、鹿島台町国保病院も公立深谷病院も耐震化が行われていなかったために、被災した傷病者に十分な医療を提供することができず、逆に他の病院に入院患者を搬送する事態になりました。

東北地方の医療機関の耐震化は、青森県五六・一%、岩手県四四・五%、宮城県五〇・五%、秋田県四七・九%、山形県五四・九%、福島県三八・一%と、全国平均(五六%)に達しない県が多いのが実状です。

また、小中学校等の学校施設では、耐震補強がされていなかった河南町の北村小学校が宮城県北部地震で使用不能になりましたが、耐震化されていた南郷中学校などは被害を免れ、明暗がハッキリ分かれました。北村小学校の関係者は、「夏休み中で、子どもたちが不在の時間帯だったことが幸いだった。もし授業中だったら、救急車が何台もくるような事態になっていただろう」と、警鐘を鳴らしています。

学校は、地震の際の避難所にも指定されていますが、東北地方の小中学校等の耐震化率は、青森県四七・二%、岩手県四四・五%、宮城県五七・六%、秋田県四五・八%、山形県三六・三%、福島県四一・六%と、全国平均の四六を下回っている県が多く、宮城県は仙台市以外の市町村では大きく立ち遅れているのが現状です。

現状の総点検と各県・各市町村が策定している「地域防災計画」の見直しを進め、以下の点で施策を転換・充実させる必要があるのではないでしょうか。

(1)現状と各自治体の「計画」の総点検、地震に強いまちづくりと公共施設・ライフラインの耐震化を進める

地震防災対策のための施設整備等を確実に進めるため、各県が策定している「地震防災緊急事業五箇年計画」が地域の実情にあったものかどうかの総点検を行います。

地震に強いまちづくりをめざして、病院、学校、生活避難路等の防災上重要な施設や福祉施設・保育所などの耐震化を進めます。避難所として計画されている学校体育館などに対する国の財政支援を強化します。

また、水道・ガス・電気などのライフラインの耐震化を重視し、地震継手を有するダクタイル水道管、耐震性にすぐれたポリエチレン管へのガス管の切り替えを進めます。

(2)個人住宅の耐震補強に必要な負担を大幅に軽減する

住宅の倒壊等による犠牲や震災後の救援活動の障害を減らすために、個人住宅や宅地擁壁などの耐震性確保に必要な補強工事などの負担を、国の責任で軽減します。

(3)消防力増強と地震が発生した場合の即応体制、被災地の復興につながる公的支援制度の確立を進める

大規模災害が発生した場合に広域的な応援体制をとることは当然ですが、対応の空白を作らないために自治体ごとに最小限必要な防災能力を確保することが必要です。地域の防災事情を把握し、災害予防や発生時の中心部隊である消防力の増強をはかります。

自治体の災害対策、とりわけ対策本部の設置や避難勧告・指示の発動などに際して、専門的事象の理解と判断を補佐するための人的支援体制の確立、ITをはじめ先進的技術の導入・活用を進めます。

災害発生後の住宅再建と生活再建を進める公的支援制度を確立するとともに、地震保険制度などを公的制度に加えた任意の制度として機能させます。

(4)観測・監視、研究および情報伝達体制の強化をはかる

 全国的な地震の観測研究体制については、特定の想定や特定の地域に偏重している現状を改め、震災の社会的影響の大きさを配慮しつつ、適正な体制に改めます。

内閣府は来年度予算の概算要求に、宮城県沖地震や三陸沖地震を含む「日本海溝周辺地震に関する専門調査会」を設置して基礎的資料・データの収集に着手するための対策費を盛り込みましたが、東北地方の地震観測研究体制は他地域に比べてまだ立ち遅れており、気象台をはじめとした東北地方の地震の観測監視体制や研究体制の強化をはかります。

(5)原子力発電所等の原子力施設の「耐震設計審査指針類」の見直しと総点検を進める

阪神大震災の際、神戸市六甲台の岩盤上の記録が公表され、その一部で原発の耐震設計値を超えていたことが問題になり、原発の「安全神話」は耐震性の分野でも再検討が求められています。福島県でも宮城県・女川でも、既存原発は老朽化が進んで性能劣化が懸念されており、「原発震災」の発生を回避するため、原発システム全体の耐震性の確認が迫られています。

既存原発について、阪神淡路大震災の具体的検討を経た基準にもとづいて総点検を実施し、その結果にもとづいて「耐震設計審査指針類」の見直しや、「原発震災」対策を「防災計画」(地震篇)に加えるなど必要な措置をとります。

日本における原発の過酷事故は地震を契機として発生する可能性があります。過酷事故対策を電力会社まかせにしている現状を改めて、公的規制機関のもとでこれを実施するようにします。経済産業省という原発推進機関の中に規制機関のはずの原子力保安院が置かれているのは国際的な取り決めに反しており、独立した規制機関に改めます。

(6)「開発」優先から防災を考慮した「住民参加のまちづくり」に転換し、実情にあった震災対策の策定と推進を地域の共同で進めます

阪神淡路大震災の被災地がいまだに復興せず、震災対策を進める財政措置がまったく不十分なものにとどまってきたのは、都市計画や公共事業が「開発優先」に歪んでいて、防災が後景に追いやられてきたからです。まちづくりそのものを「開発優先」から防災を考慮した「住民参加のまちづくり」に転換します。

各地域の「地域防災計画」は、住民参加で実情にあったものにして、住民、企業、NPO等のさまざまな主体が参加して自らの問題として防災対策にとりくみ実効あるものにする共同の取り組みを進めます。

国と地方の公共事業からムダな事業を一掃し、震災対策を公共事業の柱の一つに位置付けて推進します。

以上

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